短編小説(2庫目)

 その日は雨が降っていた。
 夜、頭から布団を被っている。
 強く、強く、何も聞こえなくなるように。
 それでも頭の中で回る、今日あったこと、失態の数々。
 言わなければよかった、やめておけばよかった、そもそも行動が間違っていた、浮かぶのは後悔と否定だけ。
 何が、なんて特定できない。あまりにも多すぎて処理がめちゃくちゃになって、思考は嵐のように真っ黒だ。
 こんなことになるのが嫌だから俺は一人で過ごしているのに。
 こんなことになるのが嫌だから、俺は誰とも関わらないのに。
 いくら避けようとしてもぶち当たる。人間は社会的生物、一人きりで生きていくことなどできない。
 だから関わることになる。怖くても、嫌でも。
 雨音が大きい。布団をもっと強く被る。強く握った手に伝わるひしゃげた綿の感触。
 どうしてこんなことになったのだろう。
 どうしてこんなところにいるのだろう。
 ここから逃げることはできない。いくら逃げようとしても俺自身がそれを拒んだ。
 非生産的だ。自分に布団を押し付けるのなんてやめて普通に布団を被って、すぐ寝てしまえばいいのに。
 思う端から消えていく。黒い嵐が俺の全てをジャミングする。強く、強く。
 叶うなら、俺の全てをかき消して欲しい。
 俺の嵐。
 どうして俺はひとりなのだろう。

 外は荒れ狂うだけで、何も答えなかった。
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