短編小説(2庫目)
目にクマを作った青年が、銀髪の青年の腕を掴んで話しかけている。
「恨んでるんです」
と目にクマを作った青年。
「はあ、それが」
と銀髪の青年。
「だから、恨んでるんです」
目にクマを作った青年はなおも言いつのる。
「それがどうしたって言ってるの」
「あなた、恨み晴らし屋でしょう。俺が恨んでる奴を始末してくれるんじゃないんですか」
「またぶっそうな。そんなことしないよ、僕は」
銀髪の青年はコキ、と首を鳴らす。
「そんな……あなたならなんとかしてくれると思ってここに来たのに」
がくりと肩を落とす、目にクマを作った青年。
「そう言われてもねえ……僕は恨み晴らし屋じゃないし、何もできないよ」
「ひどいです」
「ひどいって?」
「ここに来たらなんとかなると思ったのに!」
「いやそういう君のなんか責任を他人に押しつける性格が君自身を追い込んだんじゃないのか」
「………………」
目にクマを作った青年は黙り込む。
「もしもし?」
「……んですよ」
「はい?」
「そうなんですよ! 俺は昔からそう! 結局俺が全部悪いんですよ!」
「急にどうしたの」
「なんでもね! 俺が悪いんですよ! 俺が勝手に恨んでるだけで! ほんとは俺が全部悪いんですよ!」
「どうどう、落ち着け青年」
「落ち着いてなんかいられませんよ! 俺が全部悪いのに! もう死んだ方がいいんだ!」
「待て~。急に極端に振れるな~。僕君の性格だんだんわかってきたよ」
「えっそうなんですか」
「何そのキラッキラの目」
「俺のことがわかるなんて、あなたはやっぱりすごい人ですね!」
「いや何、ほんとどうした? 大丈夫?」
「大丈夫じゃないからここに来てるんですよ」
「そう言われてもなあ……僕、恨み晴らし屋でもなんでもないし……」
「なんとかしてくれるんじゃないんですか」
「見ず知らずの君のことをなんとかするとか、無理でしょ……」
「だいぶ話したから、もう見ず知らずじゃないですよ」
「不審者の論理やめて。君なんか変な人って言われない?」
「なんでわかるんですか」
「いやわかるでしょ……」
「とにかくあなたは救世主なんですよ! 俺の! 救ってください!」
「無理だよぉ……やめてよぉ……君そんなんだから人生苦労するんだよぉ……」
「やっぱり俺のことなんでもわかるんだ……」
「いやマジでやめて。僕、君に関わるつもりないから」
「もうだいぶ関わっちゃってる気がしますけど」
「そりゃ僕が優しいからだよ……ほら、これあげるから帰って」
銀髪の青年は何やら紙に書き付けると、それを目にクマのできた青年に渡す。
「何ですかこれは! 恨みを晴らすメモですか!」
「違うよ……これはカウンセリングルームの電話番号だよ」
「なんで俺がそんなとこに電話しないといけないんですか」
「だって君あぶないじゃん……そのまま生きると大変なことになりかねないよ」
「大変なことになったのは俺のせいじゃないんですけどね……」
「知ってる」
「知ってるんですか!」
「そんな気がしただけだよ。とにかく電話しな。まあなんとかする気がないなら電話しなくてもいいけど」
「電話します!」
「今ここじゃなくていいよ。帰ってからにしな」
「わかりました!」
「二度と来ないでね」
「ありがとうございます!」
目にクマを作った青年は帰って行った。
◆
次の日。
「恨み晴らし屋さん!」
「君、二度と来ないでって言ったよね?」
「ここで働かせてください!」
「いや、意味がわからない」
「恨んでる人に直接文句を言ったらクビになったので」
「いや……いや、マジで」
「お願いします!」
「心底嫌だ~~~~~!!!!!!」
おわり
「恨んでるんです」
と目にクマを作った青年。
「はあ、それが」
と銀髪の青年。
「だから、恨んでるんです」
目にクマを作った青年はなおも言いつのる。
「それがどうしたって言ってるの」
「あなた、恨み晴らし屋でしょう。俺が恨んでる奴を始末してくれるんじゃないんですか」
「またぶっそうな。そんなことしないよ、僕は」
銀髪の青年はコキ、と首を鳴らす。
「そんな……あなたならなんとかしてくれると思ってここに来たのに」
がくりと肩を落とす、目にクマを作った青年。
「そう言われてもねえ……僕は恨み晴らし屋じゃないし、何もできないよ」
「ひどいです」
「ひどいって?」
「ここに来たらなんとかなると思ったのに!」
「いやそういう君のなんか責任を他人に押しつける性格が君自身を追い込んだんじゃないのか」
「………………」
目にクマを作った青年は黙り込む。
「もしもし?」
「……んですよ」
「はい?」
「そうなんですよ! 俺は昔からそう! 結局俺が全部悪いんですよ!」
「急にどうしたの」
「なんでもね! 俺が悪いんですよ! 俺が勝手に恨んでるだけで! ほんとは俺が全部悪いんですよ!」
「どうどう、落ち着け青年」
「落ち着いてなんかいられませんよ! 俺が全部悪いのに! もう死んだ方がいいんだ!」
「待て~。急に極端に振れるな~。僕君の性格だんだんわかってきたよ」
「えっそうなんですか」
「何そのキラッキラの目」
「俺のことがわかるなんて、あなたはやっぱりすごい人ですね!」
「いや何、ほんとどうした? 大丈夫?」
「大丈夫じゃないからここに来てるんですよ」
「そう言われてもなあ……僕、恨み晴らし屋でもなんでもないし……」
「なんとかしてくれるんじゃないんですか」
「見ず知らずの君のことをなんとかするとか、無理でしょ……」
「だいぶ話したから、もう見ず知らずじゃないですよ」
「不審者の論理やめて。君なんか変な人って言われない?」
「なんでわかるんですか」
「いやわかるでしょ……」
「とにかくあなたは救世主なんですよ! 俺の! 救ってください!」
「無理だよぉ……やめてよぉ……君そんなんだから人生苦労するんだよぉ……」
「やっぱり俺のことなんでもわかるんだ……」
「いやマジでやめて。僕、君に関わるつもりないから」
「もうだいぶ関わっちゃってる気がしますけど」
「そりゃ僕が優しいからだよ……ほら、これあげるから帰って」
銀髪の青年は何やら紙に書き付けると、それを目にクマのできた青年に渡す。
「何ですかこれは! 恨みを晴らすメモですか!」
「違うよ……これはカウンセリングルームの電話番号だよ」
「なんで俺がそんなとこに電話しないといけないんですか」
「だって君あぶないじゃん……そのまま生きると大変なことになりかねないよ」
「大変なことになったのは俺のせいじゃないんですけどね……」
「知ってる」
「知ってるんですか!」
「そんな気がしただけだよ。とにかく電話しな。まあなんとかする気がないなら電話しなくてもいいけど」
「電話します!」
「今ここじゃなくていいよ。帰ってからにしな」
「わかりました!」
「二度と来ないでね」
「ありがとうございます!」
目にクマを作った青年は帰って行った。
◆
次の日。
「恨み晴らし屋さん!」
「君、二度と来ないでって言ったよね?」
「ここで働かせてください!」
「いや、意味がわからない」
「恨んでる人に直接文句を言ったらクビになったので」
「いや……いや、マジで」
「お願いします!」
「心底嫌だ~~~~~!!!!!!」
おわり
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