短編小説(2庫目)

 本当の世界を見ようとして、躓く。
 半透明の化け物が増えすぎた。
 それともそれを作っているのは俺自身なのかもしれない。
 世界が化け物を増やす。それを見た俺がさらに化け物を増やす。そうやってこの部屋の外には化け物が増えてきた。
 恐ろしいものたちと話がしたくて、認めてもらいたくて、俺は化け物を増やした。
 愚かにも世界は善なのだと信じたくて、愚かにも世界は悪だと信じたくて、そういうことがずっと続いたから俺はモノクロの世界を生きることになって、化け物は半透明になった。
 どこにも行けないまま、この部屋で朽ちてゆく。
 おかしいと思った、理不尽だと思った、けれどそれすら「世界」への認識の一つで、ほんとうのことなど何一つありはしない。
 何もかもがまやかしだというのなら俺はどうして生きてゆけばいい?
 認識の枠を破壊してしまえば俺は俺でなくなる。
 俺でなくなった俺はうまく別人になるのか、それとも完全に壊れてしまうのか。
 やってみる価値は大いにある?
 やってみるリスクは大きすぎる?
 俺は臆病なまま自分の形を保って、何にもならない塔を積み続ける。
 苦しい。
 から、
 助けてほしい。
 誰が?
 何を?
 助けは来ない。
 俺にしかわからない。
 だから積み続ける。
 そんな繰り返しを何度も回してきた思い出。
 どこから狂っていったのか、そんなことを考えるのはもう無駄なのに、世界を壊したくない俺は考え続ける。
 原因がわかれば世界は許してくれるから?
 その原因が許されないものなら俺はどうなる?
 化け物たちが俺を責める。
 どうにもならないからずっとこうしている。俺の全てはまやかしでできている。
 破壊しようとして、もう夜が遅くて、明日にしようと思いながらまた眠る、
 そうやって明日も過ごすのだろう。
 と、
 思った。
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