探しものは月より
顧客の家に商品を届けた帰り、売り子はぶらぶらと歩いていた。
「今日の仕事も一件きり。はー、ヒマだなー」
詰め所の前を通りがかり、目を留める。
「ん?」
◆
「なーにやってんですかっ」
「う、売り子!」
涙目の保安官は吸いかけの煙草を急いで隠そうとして隠せず、ため息をつく。
「そんなまずそうに煙草吸う人見たことない」
「いや、これは、うまいもまずいもない、煙草は……その……」
「嫌いなんですか? 泣くほど咳き込むぐらいなら吸わなきゃいいのに」
「……煙草ぐらい吸えなければ、他の保安官たちに示しがつかん」
「へえ?」
売り子が煙草をひょい、と取り上げる。
「あっ、お前」
そのまま煙草を吸う売り子。
「……」
ふう、と煙を吐く。
「おいしいやつ買ってんのにもったいないよ。健康に悪いし、これからやめな?」
はい、と煙草を返す売り子。
保安官は一瞬固まった後、
「か……返すんじゃない!」
と叫ぶ。
「え?」
不思議そうに、売り子。
「お前一回吸っただろう! 一度吸ったものを返すんじゃない!」
「あー。それ気にします?」
「ふざけるなよ……」
「ごめんごめん」
返した煙草をもう一度受け取り、口にくわえる売り子。
「保安官さんって意外に潔癖だったのね」
「意外には余計だ、意外には。感染症とか、あるだろう」
「ああ、マルウェアとか? データ開いたら感染とかありますもんね」
「知っているなら気をつけろ。あの店の教育はどうなっとるんだ」
「ごめんって」
「……まったく」
「でも友達契約したらその辺りフリーになるしー? いいんじゃないですか?」
「お前と契約はせん! 保安官は民間人と友になぞなってはいけないのだ!」
「あらあら」
売り子は苦笑する。
「俺は保安官さんと友達になりたいですけどね」
「な……」
絶句する保安官。
「帰れ!」
「はは、ごめんって」
保安官に出口まで押し出され、ばたんと扉が閉まる。
「また怒らせちゃったな……」
歩き出して、あ、と立ち止まる。ポケットに手を入れる売り子。煙草の箱がある。
「パクってきちゃった」
「今日の仕事も一件きり。はー、ヒマだなー」
詰め所の前を通りがかり、目を留める。
「ん?」
◆
「なーにやってんですかっ」
「う、売り子!」
涙目の保安官は吸いかけの煙草を急いで隠そうとして隠せず、ため息をつく。
「そんなまずそうに煙草吸う人見たことない」
「いや、これは、うまいもまずいもない、煙草は……その……」
「嫌いなんですか? 泣くほど咳き込むぐらいなら吸わなきゃいいのに」
「……煙草ぐらい吸えなければ、他の保安官たちに示しがつかん」
「へえ?」
売り子が煙草をひょい、と取り上げる。
「あっ、お前」
そのまま煙草を吸う売り子。
「……」
ふう、と煙を吐く。
「おいしいやつ買ってんのにもったいないよ。健康に悪いし、これからやめな?」
はい、と煙草を返す売り子。
保安官は一瞬固まった後、
「か……返すんじゃない!」
と叫ぶ。
「え?」
不思議そうに、売り子。
「お前一回吸っただろう! 一度吸ったものを返すんじゃない!」
「あー。それ気にします?」
「ふざけるなよ……」
「ごめんごめん」
返した煙草をもう一度受け取り、口にくわえる売り子。
「保安官さんって意外に潔癖だったのね」
「意外には余計だ、意外には。感染症とか、あるだろう」
「ああ、マルウェアとか? データ開いたら感染とかありますもんね」
「知っているなら気をつけろ。あの店の教育はどうなっとるんだ」
「ごめんって」
「……まったく」
「でも友達契約したらその辺りフリーになるしー? いいんじゃないですか?」
「お前と契約はせん! 保安官は民間人と友になぞなってはいけないのだ!」
「あらあら」
売り子は苦笑する。
「俺は保安官さんと友達になりたいですけどね」
「な……」
絶句する保安官。
「帰れ!」
「はは、ごめんって」
保安官に出口まで押し出され、ばたんと扉が閉まる。
「また怒らせちゃったな……」
歩き出して、あ、と立ち止まる。ポケットに手を入れる売り子。煙草の箱がある。
「パクってきちゃった」