秋だ! 鏡水たまり氏コラボ・虚無きのこ祭り会場
「なぜあんなきのこを作った」
「え~だってあのままにしてたらあのきのこ滅んじゃってたしぃ」
「世界の主たる魔王は種の存続に関与してはいけない、あれほど教えただろう!」
「だってさ~かわいそうじゃない? きのこは何にも悪くないのにさ~滅んじゃうんだぜ?」
「だからといって虚無を合成することは許されんぞ……」
「絶対面白くなると思ったんだって!」
「好奇心からではないか!」
「世界は面白い方がいいに決まってるじゃん? 毎分毎秒面白いことが起こってくれないとつまらない! 虚無って面白いじゃん? なんでもしてくれちゃう! 虚無のせいで滅びかけてるとこがあったりさ、可能性の塊じゃん? そんな虚無の可能性を広げてあげるのも俺達魔王の仕事だと思うんだよね~」
「要はお前が退屈したくないというだけであろう。はあ。救えない奴め……我はもう帰る」
「え~もうちょっといてよ~つまんない」
「虚無でも見てればよいだろう。虚無好き魔王め」
「待ってよ~あーあ、つまんないの」
魔王は空中に浮かんだウィンドウに目を戻す。
そこにはきのこの口に飲み込まれる人間、動物、建物、そんなものがぼんやりと映っていた。
◆
「またウィンドウを眺めておるのか」
「眺めるよ~。それが魔王の仕事って教えてくれたのは君じゃん?」
「我だがな。あまり根を詰めすぎると疲労が蓄積し、効率が落ちる」
「魔王に疲労なんてないよぉ」
「精神を持っている以上、疲労は存在するのだ。疲労が設定されておらぬ概念でもない限りは」
「あっそれ面白そう!」
「生命を弄ぶのは愚かぞ」
「俺がやろうとしたことわかっちゃったのぉ?」
「疲労が設定されておらぬ概念を作ろうとしたのだろう」
「ビンゴ! さすが先輩!」
「やめておけ、ろくなことにならぬのはわかりきっている。きのこの件で実感したろうに」
「え、きのこで俺なんか困ったっけ?」
「お前の世界は大変なことになっているだろうが」
「大変なこと? 面白いことの間違いじゃなーい? 俺はあのきのこ作ってよかったと思ってるぜ?」
「お前は本当に愚かだ。魔王としての矜持はないのか?」
「あるわけないだろ、そんなつまんないもの! 矜持なんて腹の足しにもならない! まあ俺たちに空腹なんて概念はないけどねー! でも強いて言うなら俺が食べて喜ぶのは絶望とか苦しみとかそういうものだよ」
「悪趣味な……」
「魔王らしいでしょ? っていうかそういう君は随分真面目っていうか、固いっていうか、まるでカミサマみたいだよねぇ~つまんない、あーつまんない」
「我は魔王ぞ」
「はー、ほんとかなぁ? 俺みたいなのこそ真の魔王って言うんじゃなぁい?」
「……」
「無言で俺の存在滅そうとするのやめて、ごめん、わかったから」
「わかれば良い」
「はー冗談のわかんない子」
「何だと」
「冗談だってばぁ!」
◆
「思ったんだけどさ~、魔王城にあのきのこ生えてきたら結構やばくない?」
「嫌な想像をしてくれる……しかし、ない話ではない」
「虚無配合済みにつきどこでも生存可! っていうのもあのきのこのセールスポイントだしさ~、なくはないよねぇ」
「お前がそうなっても我は助けぬぞ」
「冷たいなぁ。魔王のよしみで助けてよぉ」
「どうせ我が助けても『なんで助けたの、面白かったのに!』などと抜かすのであろう」
「えーなんでわかるの? すごくない?」
「お前がどういう奴かはこの数千年でよくわかった」
「すごいじゃん! ひょっとして俺のこと好き?」
「はあ……」
「ため息つかないでよ~ひどい」
「我は帰るぞ」
「帰っちゃうの!?」
「お前は虚無でも見ていればよかろう」
「……そうしようかな」
「……? やけに物わかりがいいな」
「俺だってたまには素直になるよぉ。またね!」
「ああ」
消える魔王。残されたのは虚無好き魔王。
その足下には生えかけのきのこ。
「『また』かぁ……まあでもその方が面白いってのは否定しない。ループなんて面白そうじゃん? 抜けられるのかどうかはわかんないけど、楽しみではあるよね!」
きのこを踏みそうになって、あぶね、と魔王。
「踏んだら潰れちゃう、大事に育てないと! ……次にあいつが来るまでに育ちきるのかなぁ~心配だな! って心配なのか~? ……よくわかんないけどまあいいか!」
けらけらと笑うその顔は今までで一番楽しそうで、玉座の間のウィンドウには崩壊しかけの世界が映っていた。
「え~だってあのままにしてたらあのきのこ滅んじゃってたしぃ」
「世界の主たる魔王は種の存続に関与してはいけない、あれほど教えただろう!」
「だってさ~かわいそうじゃない? きのこは何にも悪くないのにさ~滅んじゃうんだぜ?」
「だからといって虚無を合成することは許されんぞ……」
「絶対面白くなると思ったんだって!」
「好奇心からではないか!」
「世界は面白い方がいいに決まってるじゃん? 毎分毎秒面白いことが起こってくれないとつまらない! 虚無って面白いじゃん? なんでもしてくれちゃう! 虚無のせいで滅びかけてるとこがあったりさ、可能性の塊じゃん? そんな虚無の可能性を広げてあげるのも俺達魔王の仕事だと思うんだよね~」
「要はお前が退屈したくないというだけであろう。はあ。救えない奴め……我はもう帰る」
「え~もうちょっといてよ~つまんない」
「虚無でも見てればよいだろう。虚無好き魔王め」
「待ってよ~あーあ、つまんないの」
魔王は空中に浮かんだウィンドウに目を戻す。
そこにはきのこの口に飲み込まれる人間、動物、建物、そんなものがぼんやりと映っていた。
◆
「またウィンドウを眺めておるのか」
「眺めるよ~。それが魔王の仕事って教えてくれたのは君じゃん?」
「我だがな。あまり根を詰めすぎると疲労が蓄積し、効率が落ちる」
「魔王に疲労なんてないよぉ」
「精神を持っている以上、疲労は存在するのだ。疲労が設定されておらぬ概念でもない限りは」
「あっそれ面白そう!」
「生命を弄ぶのは愚かぞ」
「俺がやろうとしたことわかっちゃったのぉ?」
「疲労が設定されておらぬ概念を作ろうとしたのだろう」
「ビンゴ! さすが先輩!」
「やめておけ、ろくなことにならぬのはわかりきっている。きのこの件で実感したろうに」
「え、きのこで俺なんか困ったっけ?」
「お前の世界は大変なことになっているだろうが」
「大変なこと? 面白いことの間違いじゃなーい? 俺はあのきのこ作ってよかったと思ってるぜ?」
「お前は本当に愚かだ。魔王としての矜持はないのか?」
「あるわけないだろ、そんなつまんないもの! 矜持なんて腹の足しにもならない! まあ俺たちに空腹なんて概念はないけどねー! でも強いて言うなら俺が食べて喜ぶのは絶望とか苦しみとかそういうものだよ」
「悪趣味な……」
「魔王らしいでしょ? っていうかそういう君は随分真面目っていうか、固いっていうか、まるでカミサマみたいだよねぇ~つまんない、あーつまんない」
「我は魔王ぞ」
「はー、ほんとかなぁ? 俺みたいなのこそ真の魔王って言うんじゃなぁい?」
「……」
「無言で俺の存在滅そうとするのやめて、ごめん、わかったから」
「わかれば良い」
「はー冗談のわかんない子」
「何だと」
「冗談だってばぁ!」
◆
「思ったんだけどさ~、魔王城にあのきのこ生えてきたら結構やばくない?」
「嫌な想像をしてくれる……しかし、ない話ではない」
「虚無配合済みにつきどこでも生存可! っていうのもあのきのこのセールスポイントだしさ~、なくはないよねぇ」
「お前がそうなっても我は助けぬぞ」
「冷たいなぁ。魔王のよしみで助けてよぉ」
「どうせ我が助けても『なんで助けたの、面白かったのに!』などと抜かすのであろう」
「えーなんでわかるの? すごくない?」
「お前がどういう奴かはこの数千年でよくわかった」
「すごいじゃん! ひょっとして俺のこと好き?」
「はあ……」
「ため息つかないでよ~ひどい」
「我は帰るぞ」
「帰っちゃうの!?」
「お前は虚無でも見ていればよかろう」
「……そうしようかな」
「……? やけに物わかりがいいな」
「俺だってたまには素直になるよぉ。またね!」
「ああ」
消える魔王。残されたのは虚無好き魔王。
その足下には生えかけのきのこ。
「『また』かぁ……まあでもその方が面白いってのは否定しない。ループなんて面白そうじゃん? 抜けられるのかどうかはわかんないけど、楽しみではあるよね!」
きのこを踏みそうになって、あぶね、と魔王。
「踏んだら潰れちゃう、大事に育てないと! ……次にあいつが来るまでに育ちきるのかなぁ~心配だな! って心配なのか~? ……よくわかんないけどまあいいか!」
けらけらと笑うその顔は今までで一番楽しそうで、玉座の間のウィンドウには崩壊しかけの世界が映っていた。