ロッカーを開けるとそこは

 出勤してきてふと隣のロッカーを開けたら、古風なデザインの手紙が入っていた。後輩のことを思い出す。

 その日、間違えて隣のロッカーを開けたら見慣れない景色が広がっていた。
 「中世ヨーロッパ風」の建物に、妙な衣装を着て杖を持った少女が何やら唱えている。
 これはアレだ。「異世界」だ。瞬間的にそう悟った。
 俺はロッカーを閉め、自分の席に戻った。

 ここのところずっと疲れている、とぼやいていた後輩にロッカーのことを教える。
「えっマジですかそれはもう行くしかないでしょ、先輩後のことはよろしくお願いします」
 後輩が喜々として向こう側に行ったのを見届けてから、俺はロッカーを閉めた。ここには何もなかった。

 後輩からの手紙には、異世界での生活のことやそこでできた仲間たちのことが生き生きと綴ってあった。
 あれから残務処理が大変で、送り出したのを後悔したこともあったが、元気にやっているようで何よりだ。
 少し考えてから卓上メモに返事を書き、例のロッカーに放り込んで扉を閉める。

 翌朝確認のためにロッカーを開けると、そこには何もなかった。
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