短編小説
主は僕に「宇宙へ出ろ」と言った。
主の言うことを全て守るつもりはないけれど、苗木として生息域を広げるということは大事だと思ったので僕は宇宙に出る準備をした。
「宇宙に行くの? 無茶振りだねぇ」
「まあ仕方ないよ、宇宙木の苗木として生まれた以上、誰かはやらなきゃいけないんだ。それが僕だっただけで」
葉を大きく広げながら、僕。
「はー困ったもんだね。ついていってあげようか?」
「そういうわけにもいかないだろ。主が許可を出してない」
「まあ、そうかぁ」
案外すぐに納得した友木にまあそんなもんだよなと思いつつ、早朝、苗木たちに見送られて宇宙に発つ。
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
「元気でね~」
「ちゃんと惑星見つけるんだよ~」
「わかってるわかってる、いってきます」
根が土を離れ、浮遊。上って上って、成層圏の外。
他の惑星なんて本当に見つかるのだろうか。
他の惑星なんてもうないなんて噂もあるけれど、主がそう言ったのなら守らなきゃいけないし、主が言うならあるんだろうとも思うし。
幸い宇宙木は宇宙でもなんとか生きていけるようにできている。原理は知らない。他の生物たちが苦労してきた宇宙をなんなく渡れる宇宙木って何者なんだと思うけど、他の生物とかだと宇宙クジラなんかも宇宙で暮らしているし、まあそんな感じなんだろう。
進む方向を勘で決めて、僕は眠ることにした。
◆
「……」
目が覚めると、知らない星にいた。
何光年来たのかはわからない。元の星がどこに見えるのかもわからない。でも、目的の星になんとか辿り着けたということはわかる。
『――』
主とコンタクトを取ろうと試みたが、繋がらない。それはそうだ。宇宙木の通信はそこまで長く届かない、せいぜい1光年が限界。
『――ザ』
ん?
『やあ』
『やあって、きみ……』
『目の前ー』
「わ」
僕から少し離れた場所で根を張っているのは、友木だ。
「ついてきちゃった」
「はー。きみは本当に困った木だな……」
「友木がいないと寂しいでしょ?」
「いや……まあ……」
退屈はしないかな、と呟く。
「でしょでしょ?」
「だけどこれ、どっちが主になるのか決まらないな……」
「ダブル主! これだね!」
「あーきみはほんとそういうの好きだよね……いいけど……」
権限を設定する。成立。
「自由だー! 自由な毎日があらわれた!」
はしゃぐ友木。
僕はというと、苗木に無茶振りしない主になろうと思った。
(おわり)
主の言うことを全て守るつもりはないけれど、苗木として生息域を広げるということは大事だと思ったので僕は宇宙に出る準備をした。
「宇宙に行くの? 無茶振りだねぇ」
「まあ仕方ないよ、宇宙木の苗木として生まれた以上、誰かはやらなきゃいけないんだ。それが僕だっただけで」
葉を大きく広げながら、僕。
「はー困ったもんだね。ついていってあげようか?」
「そういうわけにもいかないだろ。主が許可を出してない」
「まあ、そうかぁ」
案外すぐに納得した友木にまあそんなもんだよなと思いつつ、早朝、苗木たちに見送られて宇宙に発つ。
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」
「元気でね~」
「ちゃんと惑星見つけるんだよ~」
「わかってるわかってる、いってきます」
根が土を離れ、浮遊。上って上って、成層圏の外。
他の惑星なんて本当に見つかるのだろうか。
他の惑星なんてもうないなんて噂もあるけれど、主がそう言ったのなら守らなきゃいけないし、主が言うならあるんだろうとも思うし。
幸い宇宙木は宇宙でもなんとか生きていけるようにできている。原理は知らない。他の生物たちが苦労してきた宇宙をなんなく渡れる宇宙木って何者なんだと思うけど、他の生物とかだと宇宙クジラなんかも宇宙で暮らしているし、まあそんな感じなんだろう。
進む方向を勘で決めて、僕は眠ることにした。
◆
「……」
目が覚めると、知らない星にいた。
何光年来たのかはわからない。元の星がどこに見えるのかもわからない。でも、目的の星になんとか辿り着けたということはわかる。
『――』
主とコンタクトを取ろうと試みたが、繋がらない。それはそうだ。宇宙木の通信はそこまで長く届かない、せいぜい1光年が限界。
『――ザ』
ん?
『やあ』
『やあって、きみ……』
『目の前ー』
「わ」
僕から少し離れた場所で根を張っているのは、友木だ。
「ついてきちゃった」
「はー。きみは本当に困った木だな……」
「友木がいないと寂しいでしょ?」
「いや……まあ……」
退屈はしないかな、と呟く。
「でしょでしょ?」
「だけどこれ、どっちが主になるのか決まらないな……」
「ダブル主! これだね!」
「あーきみはほんとそういうの好きだよね……いいけど……」
権限を設定する。成立。
「自由だー! 自由な毎日があらわれた!」
はしゃぐ友木。
僕はというと、苗木に無茶振りしない主になろうと思った。
(おわり)
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