即興小説まとめ(全37作品)

 公園や校庭に置いてあった滑り台や鉄棒。それらには、必ず塗料がぱりぱりになってはげやすくなっている箇所があった。
 俺はそれらを剥がすのが趣味だった。好きな形に剥がせたときの達成感は何物にも代えられない。
 その日も俺は塗料をぱりぱり剥がしていた。前日に雨が降っていて、鉄棒の青い塗料は少し湿っていた。湿った塗料を剥がすと、隣の塗料もつられて剥げる。ぱりぱりぱりぱりやっていた。
 剥げるところをだいたい剥がし終えたので、顔を上げると、見知らぬ人が俺を覗き込んでいた。青いぼろぼろの服を着て、じっと俺を見ている。
 俺は驚いて、そこから逃げた。その人は追ってこなかった。
 その日から、青い服の人はいつも公園にいた。俺が公園に行くと、じっとこっちを見るのだ。
 何が目的かはわからない。
 引っ越してから、公園には行かなくなったので、その人を見ることもなくなった。
 雨が降ると思い出す。青い服を着て立っていたその人の目が俺をじっと見ていたさまを。
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