短編小説
僕は約束ができない。約束ができないから友達もできない。
幼い頃から遅刻癖があり、約束した友達を待たせてしまうことも多かった。友情が壊れたことも多くあった。
目覚ましを複数セットしてみたり、約束の数時間前に着くようにしてみたり、色々やってはみたのだがどれもしっくりこず、遅刻癖は治らない。
じわじわと僕は約束が怖くなり、学校を卒業し、新たに入学し、一年経って二年経って、そして僕は約束することをやめた。
どうせ外にも出たくないし。
そうと決めれば楽だった。誘いを全て断る僕の友達は次第にいなくなり、僕は部屋に引きこもり。
一人は楽だ。一人なら誰にも迷惑をかけずにすむ。
楽なはずだ。
だけどどうして、こんなことになってしまったのだろう。
セミの声が響く夕刻、ふと我に返って考える。
いったい何が悪かったのか。
いつの間にか僕は生産性のない、社会のお荷物になってしまった。遅刻癖が悪かったのか、約束をやめたことが悪かったのか。
約束ができないから面接にも行けない。約束ができないから医者にも行けない。
できないことばかりだ。
おかしいな、うまい方法だと思ったのに。
傾いた日差しの中で僕は一人、ただ首を捻っていた。
(おわり)
幼い頃から遅刻癖があり、約束した友達を待たせてしまうことも多かった。友情が壊れたことも多くあった。
目覚ましを複数セットしてみたり、約束の数時間前に着くようにしてみたり、色々やってはみたのだがどれもしっくりこず、遅刻癖は治らない。
じわじわと僕は約束が怖くなり、学校を卒業し、新たに入学し、一年経って二年経って、そして僕は約束することをやめた。
どうせ外にも出たくないし。
そうと決めれば楽だった。誘いを全て断る僕の友達は次第にいなくなり、僕は部屋に引きこもり。
一人は楽だ。一人なら誰にも迷惑をかけずにすむ。
楽なはずだ。
だけどどうして、こんなことになってしまったのだろう。
セミの声が響く夕刻、ふと我に返って考える。
いったい何が悪かったのか。
いつの間にか僕は生産性のない、社会のお荷物になってしまった。遅刻癖が悪かったのか、約束をやめたことが悪かったのか。
約束ができないから面接にも行けない。約束ができないから医者にも行けない。
できないことばかりだ。
おかしいな、うまい方法だと思ったのに。
傾いた日差しの中で僕は一人、ただ首を捻っていた。
(おわり)
103/190ページ