the Goblet of Fire
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「あら、皆、何を見ているのかしら?」
ハーマイオニーが隣で首を傾げた。大広間へ足を踏み入れた途端、普段とは違う光景が目に飛び込んできたからだ。大勢の生徒達がテーブルの中央に集まり、何かを熱心に覗き込んでいる。辺りを見回すと、どの寮のテーブルでも同じような現象が起きていた。ラインは皆が何を見ているのか気になりつつも、隅の席に1人で座る友人の元へ急いだ。親友と仲違いしている彼はさぞかし心細いだろうと思ったからだ。
「おはよう、ハリー」
ラインがそう声をかけた途端、テーブルの中央に集まっていた生徒達が一斉に動きを止めて、こちらを振り向いた。
「ライン……僕、見るのを止めるように言ったんだ……」
集団の中にいたロンが申し訳なさそうな顔で言葉を詰まらせた。
「シェーマス、それを見せてちょうだい」
ハーマイオニーは何かを察したようだった。シェーマスははじめ抵抗していたが、ハーマイオニーに睨み付けられると、観念したような顔で手に持っていた日刊予言者新聞を差し出した。
――――――――――――――――――
日刊予言者新聞 リータ・スキーター著
〜生き残った女の子ライン・マーリン、幸薄の美少女か、魔性の爆発女か〜
今年度、ホグワーツ魔法魔術学校に新たな嵐が巻き起こった。かのマーリン一族の末裔、ライン・マーリンが4年生として編入学したのだ。彼女は幼少期、例のあの人の配下により母親を殺され……
(中略)
……彼女のお気に入りは、権力を持つ生徒のようだ。聖28一族、マルフォイ家の跡取り息子ドラコとは"良い関係"のようで、密室でかなり親密にしていたとの噂。また、かの有名なハリー・ポッター(彼は今年、三大魔法学校対抗試合の4人目の代表選手に選ばれた。先週の記事を参照)とは同じグリフィンドール寮に所属し、箒に2人乗りして背中に抱き付くなど、熱烈にアプローチをかけているそう。その他にも、言い寄ってきた男子生徒とは誰とでも"親密な関係"になるとの評判で……
(中略)
……濡れた絹のような滑らかな肌だ。この美しい背中に浮かぶ赤い痕は、果たして誰によって付けられたものだろうか?本誌は今後も彼女の動向を見守っていこうと思う。
――――――――――――――――――
記事の下に載っている写真を見て、ラインは頭が真っ白になった。そこにはキャミソールがはだけた姿でこちらに背を向ける、自身の上半身が写っていたからだ。顔こそ写っていないものの、背格好で本人と特定することが容易な写真だった。背景に自習室が写っているため、先日ピクシーをけしかけられた時に撮られたものだろう。いったい、誰が撮ったのだろうか──
ラインは居た堪れない気持ちになり、廊下へ向けて駆け出した。友人が自分の名前を呼ぶのが聞こえたが、一度も振り返らなかった。足元を睨みつけて、溢れそうな涙を堪えるのに精一杯だった。
――――
「おはよう、マリー。隣に座っても良いかしら?」
平静を装ってそう聞くと、レイブンクローのローブを着た女の子がこちらを振り向いた。いつもと変わらない彼女の微笑みを見て、強張った心がほぐれていく。
「いつも1番前に座っていて、偉いのね」
「……皆が後ろに座りたがるから」
この年下の友人との出会いは、ホグワーツ特急で同じコンパートメントに座ったことだった。彼女は熊のナッツ入りチョコレートを気に入ったようで、ラインは彼女に会う度に手持ちを渡していた。
1限は1年生と一緒に魔法史の授業だ。ビンズ先生の授業は寝不足のラインにとって拷問のようだったが、時々、自身のご先祖様が登場するのは興味深かった。彼等は人々から尊敬を集める大魔法使いとして登場することもあれば、邪悪な闇の魔法使いとして登場することもあった。
その日は昼食も摂らなかった。大勢の生徒達が集まる大広間に行きたくなかったからだ。ラインにとってなによりショックだったのは、同寮の男子生徒達があの記事を好奇の対象にしていた事だった。彼らとは毎日挨拶をするし、世間話だってする。彼らは自分のことを1人の人間として尊重してくれるはずだと、勝手に思い込んでいた。
午後からは変身術の個人授業を受けて(キャビネットをウサギに変えることに成功した。キャビネットはいくつか爆発したが、それがウサギで無くて本当に良かった)その後はいつもの自習室に篭って呪文の練習をしていたが、さすがに糖分が不足してきたのか、頭が働かなくなってきた。どこか食事を摂れる場所は無いだろうかと考えていると、頭の中に優しい森番の笑顔が思い浮かんだ。そうだ、ハグリッドを訪ねてみよう──しかし、ラインが重い腰をあげたその時、扉をノックする音が教室に響いた。それを聞いて先日の嫌な記憶が蘇り、ラインは身体を硬くした。
「──ライン?そこにいるのかい?」
聞こえてきたのは予想外の声だった。急いで扉を開けると、今にも溢れそうなくらい沢山の食べ物が載ったバスケットと、その後ろに覗く赤毛が見えた。
「献上品だよ。さすがにそろそろ、腹が限界なんじゃないかと思ってね」
ジョージは机の上にドサリとバスケットを下ろした。
「厨房からくすねてきたんだ。好きなだけ食べてくれよ」
ジョージに後光が差しているように見えた。厨房から食べ物をくすねて来た事はさておき、自分の為に行動してくれたことが嬉しかった。
「──食事に行っていないこと、貴方にばれていたのね」
ラインはサンドウィッチを頬張りながら、急に恥ずかしい気持ちになった。何も後ろめたい事は無いのだから、逃げ隠れするのではなく、もっと堂々としているべきだったと思う。
「大広間に行きたくなかったんだろ。あんな事されたら、誰だってそう思うさ」
ジョージはそう言うと、何やらバスケットの中を探り始めた。
「あったぞ──ほら、好物だろ?」
彼はキャラメルパイが1ダースほど載った紙皿を持ち上げて、にっこりと笑った。
「嬉しい、ありがとう」
ラインは彼の気遣いが嬉しかった。彼が自分の好物を覚えてくれていたことも。
「そういえば、今日はフレッドと別行動なのね」
糖分を補給して、頭が再び回転を始めると、ラインは疑問を覚えた。2人はいつも一緒に行動しているイメージがあったからだ。
「あいつは今、授業中だよ」
ジョージがさらりと答えた。
「そっか。まだ、16時だものね……あれ、貴方は大丈夫なの?」
「俺はサボった。でも心配はいらない。今頃、あいつが2人分の飛び跳ね毒キノコを始末しといてくれてるだろ」
ジョージはさも当たり前のことを話すような口調で言った。
「さすがだわ。すごい」
ラインは動揺して、フレンチトーストを噛まずに飲み込んだ。もしかしたら彼にとって、授業をサボる事は珍しいことでは無いのかもしれない。しかし普通の感覚で考えれば、自分の為にそこまでしてくれる人はなかなかいない。
「──この机なの」
空腹が満たされた頃、ラインは壁際にある机の角を指差した。
「呪文のコントロールが上手く出来なくて、後ろに吹き飛ばされた時に──ここに背中をぶつけて痣になったの」
「あんな馬鹿げた記事を、俺が信じたと思うかい?」
ジョージはいつになく真剣な目でそう言った。ラインは彼があの記事を信じるような人ではないと分かっていた。でも、万が一にでも誤解して欲しくなかったのだ。
「君と話したことのある奴なら、誰だって分かるさ。君がどんなに真面目で誠実な人間か。ついでに、初心だって事も」
「──私、そんな風に思われてる?」
ジョージは面白そうに笑って、ラインの質問には答えなかった。自分はどうして、彼にそう思われているのだろう?なんだか恥ずかしくなって俯いていると、再び、扉を叩く音が教室に響いた。
「ジョージ、ここにいるの?貴方、また授業をサボったでしょう。こんなところで何をしているの?」
「ペニー?どうしてここに?後輩の手伝いをしてるんだ」
扉が開くと、おそらく上級生だと思われる女性が顔を覗かせた。ブロンドのパーマヘアが華やかだ。彼女はラインの存在を認識した途端、唇をキュッと結んだ。ラインはその仕草から彼女とジョージの関係性と、彼女が自分に抱いているであろう印象を悟った。何か言おうかと思ったが、今の自分の印象では全てが言い訳のように聞こえてしまうだろう。彼女は硬い表情のまま、こちらを見つめている。
「手伝いをしているようには見えないけど」
彼女の言う通りだと思った。ラインは山盛りのご馳走を頬張り、ジョージは机に腰掛けてそれを眺めていたところだった。
「じゃあ貴方が最近デートしてくれなくなったのは、この子が原因ってこと?」
ペニーの眉がキッと吊り上がった。美人の睨みには迫力がある。
「困っている人がいたら、君だって助けるだろう?この子は弟の友達で、妹みたいなものだ」
ジョージは珍しく落ち着いた声で話した。ラインは彼の発した"妹"という単語に納得していた。彼が気にかけてくれる理由が分かったからだ。
「この子の手伝いなら、他の人がやれば良いじゃない!なんで貴方なの?それに、他の誰よりも、恋人を優先するべきでしょう!?」
ラインはペニーの意見が正論だと思った。逆の立場なら、自分もそう思っただろうから。
「君を傷付けたなら、ごめん」
「貴方って……本当に最低」
ペニーはそう言い残し、教室を出て行ってしまった。最後の台詞はラインに向けられていたと思う。彼女を酷く傷付けてしまったことに、心がヒリヒリとした。
「──本当に、ごめんなさい」
「君のせいじゃないさ。謝らないでくれ。もともと、上手くいってなかったんだ」
ジョージはそう言って笑顔を向けてくれたが、ラインの心は沈んでいた。ペニーを傷付けてしまったことだけが原因では無いような気がしたが、それには気が付かないふりをした。
ハーマイオニーが隣で首を傾げた。大広間へ足を踏み入れた途端、普段とは違う光景が目に飛び込んできたからだ。大勢の生徒達がテーブルの中央に集まり、何かを熱心に覗き込んでいる。辺りを見回すと、どの寮のテーブルでも同じような現象が起きていた。ラインは皆が何を見ているのか気になりつつも、隅の席に1人で座る友人の元へ急いだ。親友と仲違いしている彼はさぞかし心細いだろうと思ったからだ。
「おはよう、ハリー」
ラインがそう声をかけた途端、テーブルの中央に集まっていた生徒達が一斉に動きを止めて、こちらを振り向いた。
「ライン……僕、見るのを止めるように言ったんだ……」
集団の中にいたロンが申し訳なさそうな顔で言葉を詰まらせた。
「シェーマス、それを見せてちょうだい」
ハーマイオニーは何かを察したようだった。シェーマスははじめ抵抗していたが、ハーマイオニーに睨み付けられると、観念したような顔で手に持っていた日刊予言者新聞を差し出した。
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日刊予言者新聞 リータ・スキーター著
〜生き残った女の子ライン・マーリン、幸薄の美少女か、魔性の爆発女か〜
今年度、ホグワーツ魔法魔術学校に新たな嵐が巻き起こった。かのマーリン一族の末裔、ライン・マーリンが4年生として編入学したのだ。彼女は幼少期、例のあの人の配下により母親を殺され……
(中略)
……彼女のお気に入りは、権力を持つ生徒のようだ。聖28一族、マルフォイ家の跡取り息子ドラコとは"良い関係"のようで、密室でかなり親密にしていたとの噂。また、かの有名なハリー・ポッター(彼は今年、三大魔法学校対抗試合の4人目の代表選手に選ばれた。先週の記事を参照)とは同じグリフィンドール寮に所属し、箒に2人乗りして背中に抱き付くなど、熱烈にアプローチをかけているそう。その他にも、言い寄ってきた男子生徒とは誰とでも"親密な関係"になるとの評判で……
(中略)
……濡れた絹のような滑らかな肌だ。この美しい背中に浮かぶ赤い痕は、果たして誰によって付けられたものだろうか?本誌は今後も彼女の動向を見守っていこうと思う。
――――――――――――――――――
記事の下に載っている写真を見て、ラインは頭が真っ白になった。そこにはキャミソールがはだけた姿でこちらに背を向ける、自身の上半身が写っていたからだ。顔こそ写っていないものの、背格好で本人と特定することが容易な写真だった。背景に自習室が写っているため、先日ピクシーをけしかけられた時に撮られたものだろう。いったい、誰が撮ったのだろうか──
ラインは居た堪れない気持ちになり、廊下へ向けて駆け出した。友人が自分の名前を呼ぶのが聞こえたが、一度も振り返らなかった。足元を睨みつけて、溢れそうな涙を堪えるのに精一杯だった。
――――
「おはよう、マリー。隣に座っても良いかしら?」
平静を装ってそう聞くと、レイブンクローのローブを着た女の子がこちらを振り向いた。いつもと変わらない彼女の微笑みを見て、強張った心がほぐれていく。
「いつも1番前に座っていて、偉いのね」
「……皆が後ろに座りたがるから」
この年下の友人との出会いは、ホグワーツ特急で同じコンパートメントに座ったことだった。彼女は熊のナッツ入りチョコレートを気に入ったようで、ラインは彼女に会う度に手持ちを渡していた。
1限は1年生と一緒に魔法史の授業だ。ビンズ先生の授業は寝不足のラインにとって拷問のようだったが、時々、自身のご先祖様が登場するのは興味深かった。彼等は人々から尊敬を集める大魔法使いとして登場することもあれば、邪悪な闇の魔法使いとして登場することもあった。
その日は昼食も摂らなかった。大勢の生徒達が集まる大広間に行きたくなかったからだ。ラインにとってなによりショックだったのは、同寮の男子生徒達があの記事を好奇の対象にしていた事だった。彼らとは毎日挨拶をするし、世間話だってする。彼らは自分のことを1人の人間として尊重してくれるはずだと、勝手に思い込んでいた。
午後からは変身術の個人授業を受けて(キャビネットをウサギに変えることに成功した。キャビネットはいくつか爆発したが、それがウサギで無くて本当に良かった)その後はいつもの自習室に篭って呪文の練習をしていたが、さすがに糖分が不足してきたのか、頭が働かなくなってきた。どこか食事を摂れる場所は無いだろうかと考えていると、頭の中に優しい森番の笑顔が思い浮かんだ。そうだ、ハグリッドを訪ねてみよう──しかし、ラインが重い腰をあげたその時、扉をノックする音が教室に響いた。それを聞いて先日の嫌な記憶が蘇り、ラインは身体を硬くした。
「──ライン?そこにいるのかい?」
聞こえてきたのは予想外の声だった。急いで扉を開けると、今にも溢れそうなくらい沢山の食べ物が載ったバスケットと、その後ろに覗く赤毛が見えた。
「献上品だよ。さすがにそろそろ、腹が限界なんじゃないかと思ってね」
ジョージは机の上にドサリとバスケットを下ろした。
「厨房からくすねてきたんだ。好きなだけ食べてくれよ」
ジョージに後光が差しているように見えた。厨房から食べ物をくすねて来た事はさておき、自分の為に行動してくれたことが嬉しかった。
「──食事に行っていないこと、貴方にばれていたのね」
ラインはサンドウィッチを頬張りながら、急に恥ずかしい気持ちになった。何も後ろめたい事は無いのだから、逃げ隠れするのではなく、もっと堂々としているべきだったと思う。
「大広間に行きたくなかったんだろ。あんな事されたら、誰だってそう思うさ」
ジョージはそう言うと、何やらバスケットの中を探り始めた。
「あったぞ──ほら、好物だろ?」
彼はキャラメルパイが1ダースほど載った紙皿を持ち上げて、にっこりと笑った。
「嬉しい、ありがとう」
ラインは彼の気遣いが嬉しかった。彼が自分の好物を覚えてくれていたことも。
「そういえば、今日はフレッドと別行動なのね」
糖分を補給して、頭が再び回転を始めると、ラインは疑問を覚えた。2人はいつも一緒に行動しているイメージがあったからだ。
「あいつは今、授業中だよ」
ジョージがさらりと答えた。
「そっか。まだ、16時だものね……あれ、貴方は大丈夫なの?」
「俺はサボった。でも心配はいらない。今頃、あいつが2人分の飛び跳ね毒キノコを始末しといてくれてるだろ」
ジョージはさも当たり前のことを話すような口調で言った。
「さすがだわ。すごい」
ラインは動揺して、フレンチトーストを噛まずに飲み込んだ。もしかしたら彼にとって、授業をサボる事は珍しいことでは無いのかもしれない。しかし普通の感覚で考えれば、自分の為にそこまでしてくれる人はなかなかいない。
「──この机なの」
空腹が満たされた頃、ラインは壁際にある机の角を指差した。
「呪文のコントロールが上手く出来なくて、後ろに吹き飛ばされた時に──ここに背中をぶつけて痣になったの」
「あんな馬鹿げた記事を、俺が信じたと思うかい?」
ジョージはいつになく真剣な目でそう言った。ラインは彼があの記事を信じるような人ではないと分かっていた。でも、万が一にでも誤解して欲しくなかったのだ。
「君と話したことのある奴なら、誰だって分かるさ。君がどんなに真面目で誠実な人間か。ついでに、初心だって事も」
「──私、そんな風に思われてる?」
ジョージは面白そうに笑って、ラインの質問には答えなかった。自分はどうして、彼にそう思われているのだろう?なんだか恥ずかしくなって俯いていると、再び、扉を叩く音が教室に響いた。
「ジョージ、ここにいるの?貴方、また授業をサボったでしょう。こんなところで何をしているの?」
「ペニー?どうしてここに?後輩の手伝いをしてるんだ」
扉が開くと、おそらく上級生だと思われる女性が顔を覗かせた。ブロンドのパーマヘアが華やかだ。彼女はラインの存在を認識した途端、唇をキュッと結んだ。ラインはその仕草から彼女とジョージの関係性と、彼女が自分に抱いているであろう印象を悟った。何か言おうかと思ったが、今の自分の印象では全てが言い訳のように聞こえてしまうだろう。彼女は硬い表情のまま、こちらを見つめている。
「手伝いをしているようには見えないけど」
彼女の言う通りだと思った。ラインは山盛りのご馳走を頬張り、ジョージは机に腰掛けてそれを眺めていたところだった。
「じゃあ貴方が最近デートしてくれなくなったのは、この子が原因ってこと?」
ペニーの眉がキッと吊り上がった。美人の睨みには迫力がある。
「困っている人がいたら、君だって助けるだろう?この子は弟の友達で、妹みたいなものだ」
ジョージは珍しく落ち着いた声で話した。ラインは彼の発した"妹"という単語に納得していた。彼が気にかけてくれる理由が分かったからだ。
「この子の手伝いなら、他の人がやれば良いじゃない!なんで貴方なの?それに、他の誰よりも、恋人を優先するべきでしょう!?」
ラインはペニーの意見が正論だと思った。逆の立場なら、自分もそう思っただろうから。
「君を傷付けたなら、ごめん」
「貴方って……本当に最低」
ペニーはそう言い残し、教室を出て行ってしまった。最後の台詞はラインに向けられていたと思う。彼女を酷く傷付けてしまったことに、心がヒリヒリとした。
「──本当に、ごめんなさい」
「君のせいじゃないさ。謝らないでくれ。もともと、上手くいってなかったんだ」
ジョージはそう言って笑顔を向けてくれたが、ラインの心は沈んでいた。ペニーを傷付けてしまったことだけが原因では無いような気がしたが、それには気が付かないふりをした。