the Deathly Hallows
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「やった!1人できた!」
ラインはガッツポーズをして、喜びを爆発させた。
「何ができたのですか?ミス・マーリン」
フリットウィック先生が杖を振りながら聞いた。杖先から赤い閃光が飛び出して、仮面とフードを被った男の右腕に命中した。男は「うっ」と呻いて、杖を取り落とした。
「私、生まれて初めて、1人で『姿あらわし』ができました!」
ラインは興奮のあまりぴょんぴょんと飛び跳ねて、杖を拾おうとしている男の頭を蹴り飛ばした。とたんに男の仮面とフードが外れて、焦点の定まらないギョロギョロした目が見えた。
「素晴らしい!やはり、多少頭の出来が悪くとも、素直さがある人間は伸びるものです!」
フリットウィック先生が見事な呪いを放ち、アントニン・ドロホフにとどめを刺した。ドロホフは瓦礫の山の上にドサリと崩れ落ちた。ラインはフリットウィック先生とハイタッチをして喜びを分かち合った。するとフリットウィック先生は初めてラインの存在に気が付いたかのように、ラインの顔をまじまじと見つめた。
「いやはや、ミス・マーリン!」
フリットウィック先生が素っ頓狂な声を上げた。
「なんということだ──戻りなさい!」
ラインは扉に向けて走り出した。とにかく、ジョージを探さなければ。ホグワーツに彼がいると、ラインは確信していた。だって、彼が戦いに参加しないはずがないもの。教室の床でピクピクしている死喰い人たちの身体をしっかりと踏んづけるように気をつけながら、ラインは「フリットウィック先生は決闘チャンピオン」という噂が真実であることを悟った。瓦礫の中を駆け抜け、玄関ホールに続く階段の上に飛び出したところで、ラインは急ブレーキをかけた。階段の下で、赤と緑の閃光が飛び交っているのが見えたからだ。ラインはひとまず深呼吸をした。すると、シェリー酒の匂いが鼻腔を掠めた。
「いきますわよ!」
白く輝く水晶玉がビュンと吹き飛び、階段の下で杖を振り回している死喰い人の頭に命中した。死喰い人は床に倒れて動かなくなった。もうもうと立ち込める土埃の中で的確に狙いを定めるトレローニー先生の投てき技術に、ラインは感心した。
「トレローニー先生、すごい!」
「内なる目で見るのです!」
トレローニー先生は満足げににっこりし、ラインに水晶玉を投げてよこした。ラインの内なる目はまだ開眼していなかったので、ラインは水晶玉を頭上に掲げて階段を駆け下りた。そして、最後の3段をジャンプで飛び降りた勢いのまま、目の前のフード頭を水晶玉で殴り付けた。床に倒れた死喰い人の顔を見るとグレイバッグだったので、ラインは爽快な気分になった。
「ライン──逃げて!」
誰かが悲鳴のような声で叫んだ。ラインは振り向いた。ラインの目が捕らえたのは、鎌首をもたげた大蛇だった。時速60キロでこちらに向かってくる。ラインは外に飛び出した。校庭の端まで走り抜けたところで、ラインはあっと息を呑んで尻もちをついた。目の前に断崖絶壁が現れたからだ。崖の下は湖だ。ラインはおそるおそる振り向いた。蛇の縦に切り込まれた瞳孔が、至近距離からこちらを見つめていた。蛇はかっと口を開けた。ラインは目を閉じた。しかし、痛みは感じなかった。自分が死んだかどうかを確かめるために、ラインは再び目を開けた。しかしラインがその目で捉えたのは、ぐるぐると円を描いて追いかけっこをする蛇とネズミだった。なんとなく見覚えのあるハゲネズミだ。蛇の主食がネズミであることを思い出しながら、ラインは反対方向に向かって駆け出した。途中で疾走する机の群れに突き飛ばされたので、ラインはつんのめって坂を転がり落ちた。机の群れを率いるマクゴナガル先生が何か言っているのが聞こえたけれど、ラインはそれどころではなかった。視界を上下にぐるぐるさせながら、ラインはついに湖のほとりにたどり着いた。
「さてと、ドラコ。この杖の名前が分かるか?」
甲高く冷たい声が聞こえてきた。ラインは顔を上げた。すると、ボートハウスの中に人影が見えることに気がついた。
「それは──ニワトコの杖、私がダンブルドアから奪い、我が君に献上した杖でございます」
震える声が言った。ラインは立ち上がり、ボートハウスににじり寄った。
「その通りだ。そして、またの名を──『死の杖』と言う。この杖は、最後の持ち主を殺した魔法使いに従属するからだ」
ヴォルデモートはゆっくりと、マルフォイに言い聞かせるように言った。ラインは柱の陰から覗き見た。その瞬間、ラインの心臓は飛び上がった。ヴォルデモートの青白いはげ頭越しに、こちらを向いているマルフォイとばっちり目が合ったからだ。
「つまり、ドラコ──お前を殺さぬ限り、この杖は、真に俺様のものになることはできぬ」
マルフォイは目を見開いた。ラインはマルフォイに向けて「す・な・お・が・い・ち・ば・ん」と口パクした。
「ぼ──僕にはできませんでした」
マルフォイが言った。とても小さな声だったので、彼の口元に注目していなければ、何と言ったのか分からなかっただろうとラインは思った。
「今、俺様に何と言った?」
案の定、ヴォルデモートは聞き返した。
「──ダンブルドアを殺すなんてこと、僕にはできなかった!」
マルフォイはやけくそになって叫んだ。
「いいよ、その調子!」
ラインはパチパチと手を叩いてマルフォイを応援した。すると、ヴォルデモートがこちらを振り向いた。ヴォルデモートの赤い目が見開かれ、ラインの頭の中で警告のアラームが鳴り響いた。ヴォルデモートは杖を振り上げてラインを狙った。しかし、ニワトコの杖から放たれた閃光は直前になって進路を変更した。
「貴様、裏切ったな!」
ヴォルデモートが甲高く叫んだ。ラインはキョロキョロ見回した。そして柱の陰の暗がりに、育ちすぎたコウモリがさっと引っ込むのを見た。ヴォルデモートはスネイプ先生に向けて次々と強力な呪文を放ったが、怒りのあまり手元が狂っているように見えた。
「裏切るも何も、彼は初めからこちら側の人間です!」
誰かがヴォルデモートを叱りつけた。ラインは目を見開いた。天井の梁から人語を操るトラ猫が飛び降りてきたことよりも、スネイプ先生が微妙に嬉しそうな顔をしていることの方が驚きだった。ラインがスネイプ先生をまじまじと観察している間に、トラ猫はマクゴナガル先生に変身した。
「行くぞ」
いつのまにかマルフォイが隣にきていて、ラインの腕を引っ張った。ラインは走り出した。振り返ると、スネイプ先生とマクゴナガル先生が呪文を左右へかわしながら、ヴォルデモートと共闘しているのが見えた。坂を駆け上がって校庭に戻ると、戦いは激しさを増していた。
「そうだ!」
巨人のパンチをしゃがんで避けながら、ラインはポケットの中を探った。
「これ、どうぞ。この前、手首の縄を解いてくれたお礼だよ。すごく高い音のゲップが出るの」
ラインはヘリウム・バリウム・キャンディをポケットから取り出して、マルフォイに差し出した。しかし、マルフォイはラインを横ざまに突き飛ばした。ラインは地面に転がり、憤慨しながら顔を上げた。そして、先ほどまで自分がいた場所を、巨人が踏みつぶしているのを見た。ラインは真剣になった。ここで死ぬわけにはいかない。ラインは起き上がり、再び走り始めた。崩れかけた門をくぐって城の中に入った途端、ラインは屋敷しもべ妖精の大軍に飲み込まれた。大軍の先頭で包丁を振りかざしているドビーとクリーチャーに手を振りながら、ラインは玄関ホールを横切り、大広間まで押し流された。外で巨人が暴れているので、人間は城の中に退却せざるをえなかったのだろう。大広間は敵味方が入り乱れた混戦状態だった。しかし、ラインは見逃さなかった。視界の端に映った、世界一大好きな赤色を。四方八方に飛び交う呪いを避けながら、ラインは大広間の奥のステージににじり寄った。
「あの子はどこだ?」
若い死喰い人のローブの襟元を掴み、ジョージが恐ろしく冷たい声で聞いた。
「分からない。でも、あいつのせいでマルフォイの館の生クリームの在庫が全部なくなった」
その瞬間、ゴキッという鈍い音がした。ジョージが若い死喰い人の横っ面を殴り付けた音だった。若い死喰い人は床に倒れた。しかしすぐにむくりと起き上がり、感心したような顔で聞いた。
「お前もたんぱく質を重視しているのか?」
ジョージがどんな顔をしているのか、ラインは確認することが出来なかった。邪魔が入ったからだ。腕が1本無いおじさん死喰い人が、狂気の様相で、こちらに向かって歩いてくる。
「お前を取り逃がした罪を──俺たちがどう償ったか──教えてやろうか」
ラインは恐ろしさに震えた。しかし次の瞬間、ラインは右手に温かさを感じた。振り向くと、隣にマルフォイが立っていた。マルフォイはラインの握り締めた拳を開き、ヘリウム・バリウム・キャンディを受け取った。
「行け」
マルフォイがラインの背中を押した。ラインは一瞬ためらってから、「ありがとう」と言って走り出した。
「ジョージ!」
ラインは叫んだ。ジョージが振り向き、目を見開いた。ラインは足をもつれさせながらステージに上がり、よろよろと恋人に近づいた。
「──君に渡したいものがあるんだ」
ラインが目の前にくると、ジョージは掠れた声で言った。彼はズボンのポケットに手を入れて小さな箱を取り出し、ラインの前に跪いた。
「俺と結婚してくれ」
ジョージが小さな箱を開けた。周囲に飛び交う閃光を反射して、キラキラと輝くダイヤモンドの指輪がそこに入っていた。今が戦いの真っ只中であることも、周囲に何百人もの人がいることも全て忘れて、ラインはジョージに飛びついた。
「──もちろん!」
2人はきつく抱き合った。ジョージの胸に顔をうずめながら、ラインは幸せのあまりぼーっとなった。
「ソノーラス、響け!」
誰かが言った。ラインは顔を上げてきょろきょろと見回した。ステージのすぐ下で、フレッドが自分の喉に呪文をかけていた。
「紳士淑女の皆さま、ステージにご注目ください!本日お集まり頂きましたのは──」
打ち合いぶつかり合う戦いの喧騒を凌ぎ、フレッドの声は大広間の隅々まで轟いた。ラインは息を呑んだ。近くにいた死喰いたちが、フレッドに突進するのが見えたからだ。
「こいつらをぶちのめすためではなく──」
フレッドの杖が空を切った。死喰い人たちは二人一組になってワルツを踊り始めた。
「若き2人の門出を祝福するためです!」
大広間にいる全員の視線が、自分たちに向いているのをラインは感じとった。一瞬の静けさのあと、大広間は歓声とブーイングでどっと沸いた。
「だめよ!」
どこかから悲鳴のような声が聞こえた。
「だって──私、まだ友人代表のスピーチの原稿を考えていないわ!」
「アドリブでいいよ、ハーマイオニー!」
ラインは大広間の中央に親友の姿を見つけて叫んだ。
「じゃあ──ええっと──本日はお日柄もよく──」
「あいにくだけど、お日柄はあんまりよくないぜ!」
ロンがハーマイオニーを引っ張って、床に伏せさせながら叫んだ。戦闘が再開していた。茶番を見せつけられた死喰い人たちは、明らかに苛ついているようだった。ラインは杖をしごき、ステージ下の太った死喰い人に狙いを定めた。カメラを首から下げた小さな男の子にヘッドロックをかけているからだ。
「カンティス、歌え!」
ラインは杖を振った。太った死喰い人は男の子を解放した。それから、死喰い人は足を肩幅に開いて大きく息を吸い込んだ。見事な声量のオペラが大広間に響き渡った、その時だった。
ドーン
鐘を打ち鳴らしたような重低音とともに空気が震えた。ラインは身をすくめた。次の瞬間、大広間の中央に金色の光が湧き上がった。金色の光は一瞬で大広間全体に広がり、死喰い人たちの手から杖を掠め取った。ラインは目を細めて光の源を見た。大広間にいる全員が、ラインと同じ場所を見つめているようだった。
「教え子の素晴らしい結婚式を、みすみす見逃すわけにはいかんでのう」
さざなみのように悲鳴と歓声が広がっていった。死喰い人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。大半の者は扉に向かって走り、運良くまだ杖を持っている者は「姿くらまし」を試みた。しかし、ダンブルドアの呪文が、いともたやすく、まるで見えない糸でひっかけたかのように彼らを引き戻した。死喰い人たちは大広間の後方に集められた。
「ダンブルドア先生、天文台の塔から落ちたんじゃなかったんですか?」
コリン・クリービーがてきぱきと質問した。シャッターチャンスを逃すまいと、その手にはしっかりとカメラが握られている。
「死んだふりというのは、古来からの効果的な戦術でのう」
ダンブルドア先生は朗らかにインタビューに答えた。
「なにせ、わしが生きていることがばれてしまうと、賢く紳士的な友人の身に危険が及ぶ可能性があったのじゃ」
ダンブルドア先生がウインクした。ラインはその視線の先にマルフォイがいることに気が付いた。彼はなんだか居心地が悪そうにしている。おそらく、彼はゲップを我慢しているのだろうとラインは思った。
「実を言うと、わしはマグルの資格マニアなのじゃが──」
ラインは視界の端にピンク色を捉えた。ルーピンに腕を絡めたトンクスが、堪えきれずにくすくす笑っていた。
「牧師の資格が役立つのは、今日が初めてのことじゃのう」
ダンブルドア先生はひょいとステージに上った。それからラインとジョージの前に立ち、厳かな声で言った。
「新郎ジョージ・ウィーズリー、新婦ライン・マーリン。病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も。共に愛し、支え合うことを誓いますか?」
「誓います!」
ラインは食い気味に誓った。ジョージはそれに噴き出したので、ワンテンポ遅れて誓った。
「では、誓いのキスを」
ジョージがラインにキスした。すると、大きな拍手と歓声が沸き起こった。無理やり結婚式に参列させられている死喰い人たちのブーイングも聞こえたけれど、そんなことは気にならないくらい、ラインは幸せだった。それから、さらに幸せなことが起きた。女の子の屋敷しもべ妖精が、見事な3段重ねのケーキをステージ上に運んできたのだ。
「ウィンキーめは、3分間あれば、ウェディングケーキを完璧に焼き上げることができます。ヒック」
屋敷しもべ妖精は千鳥足で退場した。
「ではさっそく、ケーキ入刀といきたいところじゃが──」
ダンブルドア先生があたりを見回した。
「誰か、ナイフを持っている者はおらんかの?」
「──ライン!」
ネビルが満面の笑みを浮かべて、ステージの前に進み出た。
「これで良ければ使って!さっき、組み分け帽子の中から出てきたんだ」
ネビルは、柄の部分にルビーの装飾が施された美しい剣をラインに差し出した。銀色の刀身に「ゴドリック・グリフィンドール」と刻まれているが、夢見心地のラインはそのことに気が付かなかった。ラインはネビルから剣を受け取り、ジョージと一緒に柄を握った。剣をケーキに入刀した瞬間、刀身がキラリと輝いた。それから、ジョージがケーキをラインの口元に運んでくれた。ラインは大きな口を開けてケーキを頬張った。幸せのあまり涙が出たのは、人生で初めてだった。その時、大広間の扉が勢いよく開いた。
「あれ──?」
そこにハリー・ポッターが立っていた。突然目の前に現れた異様な光景に、彼は目を瞬かせている。
「僕──えっと──何か見逃したかな?」
「おいおい、どうして遅刻なんかしたんだよ。今日はラインの結婚式だぞ」
ロンがハリーを問い詰めた。ハリーは慌てふためいて言い訳した。
「ごめん。でも、僕──ヴォルデモートを倒してきたんだ」
ラインは大広間が爆発したと思った。衝撃の叫びや歓声が空気をつんざき、人々がわっとハリーに駆け寄った。ラインはハリーの分のケーキをとびきり大きく切り分けてから、その輪に加わった。遅刻の理由としては、これ以上ないほど正当だと思ったからだ。
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