the Deathly Hallows
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「『インフルエンザA型に罹患し、3日間の自宅待機』だ。頼んだぞ」
コンビーフ入りのサンドウィッチをむしゃむしゃと頬張りながら、父がビルの肩を叩いた。苦笑いしているビルに向かって、ラインは両手を合わせて謝罪のポーズをとった。こうなったら、もう、誰にも父を止めることは出来ないのだ。
「朝食を食べたら、すぐに出発しよう。我々は署の前で係長を待ち受ける。係長が出勤してきたら、君が魔法で記憶を修正する。そうすれば、まるで何事もなかったかのように、私は今日から出勤することができる」
父の計画を聞きながら、ラインは壁の時計を見た。まだ朝の7時半だ。ロンが大欠伸しているのも無理はない。昨日マルフォイの館から「姿くらまし」したあと、ラインたちは貝殻の家──ビルとフラーの新居──に移動した。どうしてグリモールドプレイスに戻らないのかラインが尋ねると、ハーマイオニーは「都合が悪いからよ」と教えてくれた。それが答えになっていないことにも気が付かず、ラインは夕食をたらふく食べてぐっすり眠った。フラーお手製の夕食が全体的にヘルシーな味付けだったこと思い出していると、どうやら朝食を食べ終えたらしい父が、すっくと立ち上がった。
「ライン、よく聞きなさい」
コンビーフ入りのサンドウィッチを頬張っているラインの前にしゃがみ込み、父が大真面目な顔で言った。
「これから先、何が起ころうとも、おまえらしくやりなさい。おまえなら、必ず切り抜けられるとパパは信じているよ。なぜならば、かわいいかわいいパパの女の子は、ママ譲りの素敵な力と、パパ譲りの運の強さを持っているからだ」
ラインはサンドウィッチの咀嚼をいったんやめた。父の言葉が心にグッときたからだ。ラインはサンドウィッチを皿の上に放り出して、父に抱きついた。父の力強い鼓動の音と、ハーマイオニーがすすり泣く声が聞こえた。
「全部終わったら、君の両親を探しに行こう。そして、2人の記憶を元に戻すんだ。僕が必ず見つけてみせるよ」
ロンの囁き声が聞こえた。ラインは顔を上げた。父の肩越しに、頬を涙で濡らしたハーマイオニーがロンにキスするのが見えたので、父の別れの言葉はラインの頭から吹き飛んだ。しかし、ラインはすぐに納得した。やはり、物事は収まるところに収まるものだ。
──
父とビルが「姿くらまし」したあと、フラーはなぜかぷりぷりしながら居間を出て行った。
「私のヴィシソワーズよりも、ビルのサンドウィッチの方が人気があるのは、どうしてでしょーう?やっぱり、イギリス人は味覚がおかしーいでーす」
美食の国フランス生まれのフラーに指摘されたことにより、ラインは初めて自分の味覚に疑問を抱いた。たしかに、うなぎのゼリー寄せとか、ニシンの頭が突き刺さっているパイとかを生み出す国の人間は、ちょっと食に対する感覚がおかしいのかもしれない。しかし、同じく味覚異常のハリーは全く別のことを考えているようだった。
「いましかない。グリンゴッツへ乗り込もう」
ハリーがきっぱりと言った。ロンとハーマイオニーは覚悟を決めたような表情で頷いた。「ポリジューズ薬」とか「金のカップ」とか言いながら、3人はバタバタと階段を上がっていった。何のことか分からなかったので、ラインはとりあえず残りのサンドウィッチを齧った。しばらくすると、2階からバシッという音が聞こえた。そして、時間がたって硬くなったサンドウィッチをフラーのヴィシソワーズに浸して食べ始めた頃、ラインはようやく気がついた──自分は再び、友人たちに置いていかれたのだということに。ラインはしょぼくれながら、食べ終えた食器を持ってキッチンへ向かった。キッチンでは、フラーが泡立て器をガシャガシャさせていた。
「イギリス人の作るスイーツは、カロリーが高すぎまーす。あなたも花嫁になりたいのなら、砂糖を控えるべきでーす」
ラインの姿を見ると、フラーは開口一番に小言を言った。ラインの心はさらにボロボロになった。
「なので、いま、砂糖の代わりにはちみつを入れたマドレーヌを作っていまーす」
マドレーヌの型に生地を流し込みながら、フラーが悪戯っぽく笑った。途端にラインは元気を取り戻した。
「焼き上がったら、あの子たちも呼んで、お茶をしましょーう」
「あのね、フラー。ハリーたちがいなくなったの」
ラインは事実を伝えた。フラーは一切の動きを止めた。
「あの子たちはどこへ?」
「分からない。でも、グリンゴッツかもしれない」
バシッ
玄関の外で「姿あらわし」の音が聞こえた。フラーがキッチンから駆け出て行った。ラインは大急ぎでマドレーヌをオーブンに突っ込み、フラーを追いかけた。居間に入ると、ビルが帰ってきていた。ビルは険しい顔をしていたが、ラインの姿を見るとわずかに表情を緩めた。
「君のパパのほうは上手くいったよ。しかし、それ以外は問題だらけだ。まず、僕の職場に盗人が入った。そして、その盗人というのが、先ほどまでここにいた3人だ」
ビルは大きなため息をついた。ラインは「やっぱり」と思った。
「3人はドラゴンに乗って逃亡したらしい。ロンのやつ、グリンゴッツ破りをするなんて、ただでは済まされないぞ。よくてアズカバン、悪ければ──」
ビルは崩れ落ちるように椅子に腰掛けた。フラーは青白い顔で、目にたくさん涙を溜めていた。
「私がしっかりとあの子たちを見張っているべきでーした。私のせーいで──」
「いいや、フラー。君のせいじゃないよ」
ビルが言った。
「あの3人は、何か強い目的を持って行動している。きっと、誰にも止められなかっただろう」
妻を優しく抱き寄せるビルの姿に、ラインはジョージを重ねて見た。結局、自分はジョージとの約束を破ってしまった。ジョージは怒っているかもしれない。もう、自分のことなんて、抱きしめてくれないかもしれない。ラインが再びしょぼくれていると、突然、居間の中央が銀色に光り輝き始めた。そして、銀色のオオヤマネコがそこに現れた。ラインはその守護霊に見覚えがあった。守護霊は縦に大きく口を開き、キングズリー・シャックルボルトの深い声で話し始めた。
「ハリー・ポッターがホグワーツに到着した。じきに、ヴォルデモートもホグワーツへ向かうだろう。戦うべき時がきた」
喋り終わるとオオヤマネコの姿は消えた。ラインはオオヤマネコが消えたあたりをじっと見つめた。ラインの頭は珍しく冴えていた。ラインはビルとフラーを振り向いた。ビルはすでに覚悟を決めた顔で立ち上がっていた。フラーは怯えた顔をしていたが、手にしっかりと杖を握っている。ラインは2人の正面に立ち、きっぱりと言った。
「お願い。私もホグワーツに連れて行って」
ラインは挑戦的な眼差しでビルを見つめた。今度こそ、置いていかれるわけにはいかない。ラインはドキドキしながらビルの返答を待った。
「分かった」
意外にも、ビルはあっさりと頷いた。
「ただし、君を連れて行くには1つ条件がある。それは、僕の指示に必ず従うということだ。『お腹の音を我慢しろ』や、『キャンディを敵に渡せ』という指示にも従うんだよ」
「うん。絶対に従う」
ラインは力強く頷いた。すると、フラーが威厳に満ちた声で夫に言った。
「この子があなたの指示に従えるか、テストする必要があると思いまーす」
ビルは大きく頷いた。
「じゃあ、ライン。さっそくテストだ。今から10分間、屋根裏部屋に隠れていなさい。絶対に物音を立ててはいけないよ」
ラインは急いで屋根裏部屋に向かった。天井の撥ね戸を開けてはしごを上り、薄暗い屋根裏部屋で、ラインはドキドキしながら体育座りをした。腹時計で10分間を計測し終えたあと、ラインは意気揚々と居間に戻った。そして、もぬけの殻になった居間を見て愕然とした。
「──もう!」
ラインは怒った。どうして、全員が自分を置いて行くのだろう?そんなに自分は足手まといだろうか?ラインはこれまでの自身の行動を振り返った。そして、自分が正真正銘の足手まといであるという結論を導き出した。悔しさのあまり、ラインは声を上げて泣いた。それから、とぼとぼと歩いてキッチンに向かった。焼き上がったマドレーヌを食べると、少し気分が落ち着いた。
「そもそも、『誰かに連れて行ってもらう』という考え方がダメなんだ」
ラインはついに真実にたどり着いた。それから、ポケットの中を探り、昨日ドビーから貰った杖──マルフォイの館でドビーが死喰い人から奪ったもの──を取り出した。最初から、こうするべきだったのだ。ラインは覚悟を決めてキッチンの中央に立った。
「どこへ、どうしても、どういう意図で!」
ラインは叫び、その場で回転した。どこか遠くでバシッという音が聞こえて、あたりが真っ暗になった。ラインは四方八方からぎゅうぎゅうと押し潰される感覚に耐えた。そして、ラインは目を開けた。目を開ける前から、ラインは分かっていた。自分が生まれて初めて、人に頼らず「姿あらわし」を成功させたのだということを。
コンビーフ入りのサンドウィッチをむしゃむしゃと頬張りながら、父がビルの肩を叩いた。苦笑いしているビルに向かって、ラインは両手を合わせて謝罪のポーズをとった。こうなったら、もう、誰にも父を止めることは出来ないのだ。
「朝食を食べたら、すぐに出発しよう。我々は署の前で係長を待ち受ける。係長が出勤してきたら、君が魔法で記憶を修正する。そうすれば、まるで何事もなかったかのように、私は今日から出勤することができる」
父の計画を聞きながら、ラインは壁の時計を見た。まだ朝の7時半だ。ロンが大欠伸しているのも無理はない。昨日マルフォイの館から「姿くらまし」したあと、ラインたちは貝殻の家──ビルとフラーの新居──に移動した。どうしてグリモールドプレイスに戻らないのかラインが尋ねると、ハーマイオニーは「都合が悪いからよ」と教えてくれた。それが答えになっていないことにも気が付かず、ラインは夕食をたらふく食べてぐっすり眠った。フラーお手製の夕食が全体的にヘルシーな味付けだったこと思い出していると、どうやら朝食を食べ終えたらしい父が、すっくと立ち上がった。
「ライン、よく聞きなさい」
コンビーフ入りのサンドウィッチを頬張っているラインの前にしゃがみ込み、父が大真面目な顔で言った。
「これから先、何が起ころうとも、おまえらしくやりなさい。おまえなら、必ず切り抜けられるとパパは信じているよ。なぜならば、かわいいかわいいパパの女の子は、ママ譲りの素敵な力と、パパ譲りの運の強さを持っているからだ」
ラインはサンドウィッチの咀嚼をいったんやめた。父の言葉が心にグッときたからだ。ラインはサンドウィッチを皿の上に放り出して、父に抱きついた。父の力強い鼓動の音と、ハーマイオニーがすすり泣く声が聞こえた。
「全部終わったら、君の両親を探しに行こう。そして、2人の記憶を元に戻すんだ。僕が必ず見つけてみせるよ」
ロンの囁き声が聞こえた。ラインは顔を上げた。父の肩越しに、頬を涙で濡らしたハーマイオニーがロンにキスするのが見えたので、父の別れの言葉はラインの頭から吹き飛んだ。しかし、ラインはすぐに納得した。やはり、物事は収まるところに収まるものだ。
──
父とビルが「姿くらまし」したあと、フラーはなぜかぷりぷりしながら居間を出て行った。
「私のヴィシソワーズよりも、ビルのサンドウィッチの方が人気があるのは、どうしてでしょーう?やっぱり、イギリス人は味覚がおかしーいでーす」
美食の国フランス生まれのフラーに指摘されたことにより、ラインは初めて自分の味覚に疑問を抱いた。たしかに、うなぎのゼリー寄せとか、ニシンの頭が突き刺さっているパイとかを生み出す国の人間は、ちょっと食に対する感覚がおかしいのかもしれない。しかし、同じく味覚異常のハリーは全く別のことを考えているようだった。
「いましかない。グリンゴッツへ乗り込もう」
ハリーがきっぱりと言った。ロンとハーマイオニーは覚悟を決めたような表情で頷いた。「ポリジューズ薬」とか「金のカップ」とか言いながら、3人はバタバタと階段を上がっていった。何のことか分からなかったので、ラインはとりあえず残りのサンドウィッチを齧った。しばらくすると、2階からバシッという音が聞こえた。そして、時間がたって硬くなったサンドウィッチをフラーのヴィシソワーズに浸して食べ始めた頃、ラインはようやく気がついた──自分は再び、友人たちに置いていかれたのだということに。ラインはしょぼくれながら、食べ終えた食器を持ってキッチンへ向かった。キッチンでは、フラーが泡立て器をガシャガシャさせていた。
「イギリス人の作るスイーツは、カロリーが高すぎまーす。あなたも花嫁になりたいのなら、砂糖を控えるべきでーす」
ラインの姿を見ると、フラーは開口一番に小言を言った。ラインの心はさらにボロボロになった。
「なので、いま、砂糖の代わりにはちみつを入れたマドレーヌを作っていまーす」
マドレーヌの型に生地を流し込みながら、フラーが悪戯っぽく笑った。途端にラインは元気を取り戻した。
「焼き上がったら、あの子たちも呼んで、お茶をしましょーう」
「あのね、フラー。ハリーたちがいなくなったの」
ラインは事実を伝えた。フラーは一切の動きを止めた。
「あの子たちはどこへ?」
「分からない。でも、グリンゴッツかもしれない」
バシッ
玄関の外で「姿あらわし」の音が聞こえた。フラーがキッチンから駆け出て行った。ラインは大急ぎでマドレーヌをオーブンに突っ込み、フラーを追いかけた。居間に入ると、ビルが帰ってきていた。ビルは険しい顔をしていたが、ラインの姿を見るとわずかに表情を緩めた。
「君のパパのほうは上手くいったよ。しかし、それ以外は問題だらけだ。まず、僕の職場に盗人が入った。そして、その盗人というのが、先ほどまでここにいた3人だ」
ビルは大きなため息をついた。ラインは「やっぱり」と思った。
「3人はドラゴンに乗って逃亡したらしい。ロンのやつ、グリンゴッツ破りをするなんて、ただでは済まされないぞ。よくてアズカバン、悪ければ──」
ビルは崩れ落ちるように椅子に腰掛けた。フラーは青白い顔で、目にたくさん涙を溜めていた。
「私がしっかりとあの子たちを見張っているべきでーした。私のせーいで──」
「いいや、フラー。君のせいじゃないよ」
ビルが言った。
「あの3人は、何か強い目的を持って行動している。きっと、誰にも止められなかっただろう」
妻を優しく抱き寄せるビルの姿に、ラインはジョージを重ねて見た。結局、自分はジョージとの約束を破ってしまった。ジョージは怒っているかもしれない。もう、自分のことなんて、抱きしめてくれないかもしれない。ラインが再びしょぼくれていると、突然、居間の中央が銀色に光り輝き始めた。そして、銀色のオオヤマネコがそこに現れた。ラインはその守護霊に見覚えがあった。守護霊は縦に大きく口を開き、キングズリー・シャックルボルトの深い声で話し始めた。
「ハリー・ポッターがホグワーツに到着した。じきに、ヴォルデモートもホグワーツへ向かうだろう。戦うべき時がきた」
喋り終わるとオオヤマネコの姿は消えた。ラインはオオヤマネコが消えたあたりをじっと見つめた。ラインの頭は珍しく冴えていた。ラインはビルとフラーを振り向いた。ビルはすでに覚悟を決めた顔で立ち上がっていた。フラーは怯えた顔をしていたが、手にしっかりと杖を握っている。ラインは2人の正面に立ち、きっぱりと言った。
「お願い。私もホグワーツに連れて行って」
ラインは挑戦的な眼差しでビルを見つめた。今度こそ、置いていかれるわけにはいかない。ラインはドキドキしながらビルの返答を待った。
「分かった」
意外にも、ビルはあっさりと頷いた。
「ただし、君を連れて行くには1つ条件がある。それは、僕の指示に必ず従うということだ。『お腹の音を我慢しろ』や、『キャンディを敵に渡せ』という指示にも従うんだよ」
「うん。絶対に従う」
ラインは力強く頷いた。すると、フラーが威厳に満ちた声で夫に言った。
「この子があなたの指示に従えるか、テストする必要があると思いまーす」
ビルは大きく頷いた。
「じゃあ、ライン。さっそくテストだ。今から10分間、屋根裏部屋に隠れていなさい。絶対に物音を立ててはいけないよ」
ラインは急いで屋根裏部屋に向かった。天井の撥ね戸を開けてはしごを上り、薄暗い屋根裏部屋で、ラインはドキドキしながら体育座りをした。腹時計で10分間を計測し終えたあと、ラインは意気揚々と居間に戻った。そして、もぬけの殻になった居間を見て愕然とした。
「──もう!」
ラインは怒った。どうして、全員が自分を置いて行くのだろう?そんなに自分は足手まといだろうか?ラインはこれまでの自身の行動を振り返った。そして、自分が正真正銘の足手まといであるという結論を導き出した。悔しさのあまり、ラインは声を上げて泣いた。それから、とぼとぼと歩いてキッチンに向かった。焼き上がったマドレーヌを食べると、少し気分が落ち着いた。
「そもそも、『誰かに連れて行ってもらう』という考え方がダメなんだ」
ラインはついに真実にたどり着いた。それから、ポケットの中を探り、昨日ドビーから貰った杖──マルフォイの館でドビーが死喰い人から奪ったもの──を取り出した。最初から、こうするべきだったのだ。ラインは覚悟を決めてキッチンの中央に立った。
「どこへ、どうしても、どういう意図で!」
ラインは叫び、その場で回転した。どこか遠くでバシッという音が聞こえて、あたりが真っ暗になった。ラインは四方八方からぎゅうぎゅうと押し潰される感覚に耐えた。そして、ラインは目を開けた。目を開ける前から、ラインは分かっていた。自分が生まれて初めて、人に頼らず「姿あらわし」を成功させたのだということを。