the Goblet of Fire
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もう、何度目だろう?こんなに天井を見上げていたら、シミの配置まで覚えてしまいそうだ。自主練習の時くらい、立ち上がるのを少し先延ばしにしたって良いのでは──ラインはそんな事を考えながら、木の破片が散らばる床に寝転んでいた。相変わらず、呪文を唱える度に周囲の物が爆発する。大きな怪我こそしないものの、溜め息は止まらない。
ラインは13歳まで通っていたマグルの学校で、いわゆる模範生と呼ばれる生徒だった。勉強に手こずったり、問題のある生徒として扱われるのは今回が初めての経験で、今までに築き上げた自尊心が音を立てて崩れていくようだった。しかし長い人生において、時にはこのような経験も必要なのだろう──
ラインがなんとか自分を納得させようとしていた時、突然、教室の外の廊下から誰かの話し声が聞こえてきた。出入り口の扉がカタカタと震え出したと思ったら、次の瞬間には鍵が開錠され、スリザリンのローブを着た学生達が教室の中へ踏み入ってきた。
「ひどい有様だな。さすがはポッターのお仲間といったところだ」
ブロンドの男子生徒はそう言うと、嘲笑うような目でラインを眺めた。彼らがどうしてこの教室へやって来たのかは分からない。しかし、自分に好意を持っていないことだけははっきりと分かった。
「お前、恥ずかしくないのか?マーリンのくせに──呪文の1つもまともに使えないなんて」
ラインは彼の名前に思い当たるものがあった。高慢な性格で、ハリーに対して敵対心を抱いている──おそらく、この人はドラコ・マルフォイだろう。両脇にトロールのような2人(ロンに言わせると)を従えているし。
「あの……危ないから、出て行って貰っても良い?」
「やだね。わざわざ、こんなところまで来てやったんだ。何か呪文を唱えてみろよ。見ていてやる」
ラインは大きな溜息をついた。どうやら面倒な輩に絡まれてしまったようだ。彼らの目的は、呪文に失敗して、情け無い姿を晒す自分を見ることだろう。まぁいい──見ていて貰おう。一度吹き飛べば、それで彼も満足するだろう。しかしラインが杖を構えた瞬間、マルフォイはローブの中から小さな籠を取り出した。籠の中には、群青色の小さな生き物が複数入っている。彼が籠の蓋を開けた途端、それらは勢いよく飛び出してラインに群がった。小さいとはいえ、生態の分からない生き物は恐ろしい。手で振り払おうとすると、その生き物はますます興奮してしまうようだった。
「あーあ、情け無いなぁ。4年生にもなって、ピクシーに手こずるなんて」
マルフォイは意地の悪い笑みを浮かべている。ラインは杖をピクシーに向けてみたが、何の呪文を唱えれば良いのか分からなかった……彼の言う通りかもしれない。一人前の魔法使いはドラゴンさえ手名付けるのに、自分はこんなに小さな生き物を制御出来ない。情けなさに目の奥がツンとした、その時だった。
「いたっ──」
両方の耳を摘まれる感覚があった。あっという間に、足が地面を離れる。まさかこんな小さな生き物に人間を持ち上げる能力があるとは思わず、驚きで身体が硬直した。ピクシーはラインを天井の梁に引っ掛けると、キーキーと鳴きながら教室の外へ飛んで行ってしまった。身動きをすれば、すぐに落下してしまいそうだ。
「おい、僕が助けてやろう。その代わり、下に降りたら礼を言うんだな」
マルフォイが意地の悪い笑みを浮かべ、話しかけてくる。悔しい、彼に礼など言いたく無い──なんとかこの状況を乗り切る方法はないかと思案していると、ふと、自らの呪文に吹き飛ばされた瞬間を思い出した。この教室には、フリットウィック先生のクッション呪文がかけられている。壁に叩きつけられても大丈夫なのだから、床に落下したとしても無事なのでは──
「助けて貰わなくても大丈夫よ。自分でどうにかしてみるから」
「強がる女は可愛くないぞ」
ラインは彼を無視して目を瞑り、落ちるための準備をした。大丈夫だと思うけれど、流石に落下する瞬間は怖い。
「何をしている。素直に助けてくださいと言うんだな」
マルフォイがそう言った時、ラインのワイシャツが妙な音を立てた。生地が変な方向に引っ張られている気がする。すると突如、プツッという音と共に、ワイシャツの第一ボタンが弾け飛んだ。その下の第二ボタンも、今にも弾け飛んでしまいそうだ。ポリエステルの生地に、人間1人を天井から吊り下げておく力は無かったようだ。
「おい、呪文が効かないぞ!どうなっているんだ?」
目を開けると、マルフォイが杖を振っているのが見えた。続けて取り巻きの2人も杖を振り回したが、状況は何も変わらなかった。それもそのはずだ。この教室には、魔力を制御出来ないラインが安全に練習を行えるように、呪文の効果を小さくする細工がしてあるのだ。
ついに全てのボタンが弾け飛び、ラインの身体はするりとワイシャツを抜け出し、床に向かって落下した。ラインはギュッと目を瞑ったが、予想通り全身にふわっとした感覚を感じただけだった。目を上げると、視界の端に青い顔をした3人が映った。
マルフォイがこちらへ歩み寄って来る。ラインが上体を起こすと、彼は少し安堵したように見えた。流石の彼も、怪我をさせたいわけでは無かったようだ。しかしその直後に彼の目が見開かれたのを見て、ラインはハッとした。上を見上げると、天井の梁に自身のワイシャツがぶら下がっている──ラインの上半身はキャミソール1枚しか纏っていなかった。
「お──」
この状況に気が付いたのか、取り巻きの1人が初めて声を発した。この人……喋れたんだ。ラインは彼の無遠慮な視線に肌が粟立つのを感じた。彼らに嫌味の1つでも言ってやりたいが、唇を噛んで涙を堪えることしか出来ない。なんて理不尽なんだろう、悔しい……
マルフォイが自身のローブに手を掛けたのが見える。彼はこれ以上、何をするつもりなんだろう?ラインがマルフォイを睨み付けた時、廊下から誰かの話し声が聞こえてきた。
「──おい相棒、この我らを差し置いて、ピクシーを校内へ撒いた奴のご尊顔を拝みたくはないか?」
「勿論さ。大層ご立派な奴に違いない」
教室の扉がガチャリと開くと、良く似た顔の2人が顔を出した。双子はまずマルフォイ達に目を止めて、次にラインに目を移した。全員が金縛りに遭ったように動かず、まるでこの教室だけ時が止まったようだった。
「──貴様、何してやがる」
双子の1人が唸るような声を出し、杖を抜いた。彼はマルフォイへ向けて呪文を放ったようだったが、この部屋では大した効果は無い。マルフォイと取り巻きの2人は扉へ向かって駆け出した。双子が彼らに掴みかかろうとしたが、捕らえ損なう。
「待ちやがれ!」
「フレッド放っておけ、この子が先だ」
双子がこちらへ向き直った。ラインは今まで、彼らのやんちゃな笑顔しか見た事が無かった。でもこんな風に眉尻を下げている表情を見ると、やはりロンのお兄さんだと感じる。
「近くに行ってもいいかい?」
その問いに頷くと、1人が自身のローブを脱いで渡してくれた。
「それ、良ければ羽織って」
「鼻栓も貸そうか?ジョージのローブの匂いで鼻がもげるかもしれないぞ」
「──鼻栓は大丈夫、ありがとう」
自分の発した声が思っていたよりも鼻声だったので、ラインは恥ずかしい気持ちになった。受け取ったローブを羽織ると、暖炉のような匂いが鼻を掠めた。
「おいフレッド、ハンカチか何か無いのかよ」
「生まれてこの方、持っていた試しがないな」
「気が利かないな」
「お前こそ」
彼らのやりとりを聞いて、ラインは小さく笑った。本当に息の合った2人だ──でも、性格は全く同じではないようだ。よく見れば、表情や仕草に違いがある。
「取り敢えず、医務室に行こう。話はそれからだ」
ジョージに促されて、ラインは教室を出た。医務室へ行く道中で、授業終わりの生徒達とすれ違う。ジロジロとした視線を感じて、ラインは急に、目立つ双子に引率されていることや羽織っているローブが大きすぎること、髪がボサボサなことまでもが気になり出した。
「急いでるんだ、道を開けてくれ──おい、3秒以内に退かないと糞爆弾をお見舞いするぞ」
フレッドがポケットから何かを取り出した途端、モーゼの十戒のように道が開けた。ラインは漂ってきた異臭に顔を顰めた。
「気にするなよ。君は何も悪いことしてないんだから」
ジョージはそう言うと、さりげなくラインを自分の背に隠してくれた。2人の優しさに触れて、ラインの心はじんわりと暖かくなった。
――――
「ライン!」
談話室へ入るなり、ハーマイオニーが駆け寄ってくる。彼女の肩越しに、ハリーとロンの姿が見える。3人とも、この時間まで自分を待っていてくれたのだろうか──
「フレッドとジョージから聞いたわ。奴等は最低よ」
全くもって同感だ。
「僕と友達だから、君はターゲットにされたんだ」
ハリーはソファに沈み込んで、ひどく落ち込んでいるように見えた。
「貴方のせいじゃないわ。それにもし貴方と関わりが無かったとしても、彼等は私をターゲットにしたと思う。だって私も貴方も同じくらい、有名人なのよ」
ラインはハリーに笑ってみせたが、彼はまだ、申し訳なさげな表情をしている。
「それに、例えトロールをけしかけられても、私は貴方と友達でいたいな」
それを聞いたハリーはほんの少しだけ微笑み、元気を取り戻したように見えた。
「とにかく、明日から私達、貴方の練習に付き添うわ」
ハーマイオニーが強く宣言した。ハリーとロンが頷くのを見て、ラインは組分け帽子に感謝した。こんなにも素晴らしい友人が出来たことは、この学校生活における唯一の救いだった。
しかし束の間の平穏も長くは続かなかった。ハリーが三大魔法学校対抗試合の4人目の選手に選ばれたのだ。
ラインは13歳まで通っていたマグルの学校で、いわゆる模範生と呼ばれる生徒だった。勉強に手こずったり、問題のある生徒として扱われるのは今回が初めての経験で、今までに築き上げた自尊心が音を立てて崩れていくようだった。しかし長い人生において、時にはこのような経験も必要なのだろう──
ラインがなんとか自分を納得させようとしていた時、突然、教室の外の廊下から誰かの話し声が聞こえてきた。出入り口の扉がカタカタと震え出したと思ったら、次の瞬間には鍵が開錠され、スリザリンのローブを着た学生達が教室の中へ踏み入ってきた。
「ひどい有様だな。さすがはポッターのお仲間といったところだ」
ブロンドの男子生徒はそう言うと、嘲笑うような目でラインを眺めた。彼らがどうしてこの教室へやって来たのかは分からない。しかし、自分に好意を持っていないことだけははっきりと分かった。
「お前、恥ずかしくないのか?マーリンのくせに──呪文の1つもまともに使えないなんて」
ラインは彼の名前に思い当たるものがあった。高慢な性格で、ハリーに対して敵対心を抱いている──おそらく、この人はドラコ・マルフォイだろう。両脇にトロールのような2人(ロンに言わせると)を従えているし。
「あの……危ないから、出て行って貰っても良い?」
「やだね。わざわざ、こんなところまで来てやったんだ。何か呪文を唱えてみろよ。見ていてやる」
ラインは大きな溜息をついた。どうやら面倒な輩に絡まれてしまったようだ。彼らの目的は、呪文に失敗して、情け無い姿を晒す自分を見ることだろう。まぁいい──見ていて貰おう。一度吹き飛べば、それで彼も満足するだろう。しかしラインが杖を構えた瞬間、マルフォイはローブの中から小さな籠を取り出した。籠の中には、群青色の小さな生き物が複数入っている。彼が籠の蓋を開けた途端、それらは勢いよく飛び出してラインに群がった。小さいとはいえ、生態の分からない生き物は恐ろしい。手で振り払おうとすると、その生き物はますます興奮してしまうようだった。
「あーあ、情け無いなぁ。4年生にもなって、ピクシーに手こずるなんて」
マルフォイは意地の悪い笑みを浮かべている。ラインは杖をピクシーに向けてみたが、何の呪文を唱えれば良いのか分からなかった……彼の言う通りかもしれない。一人前の魔法使いはドラゴンさえ手名付けるのに、自分はこんなに小さな生き物を制御出来ない。情けなさに目の奥がツンとした、その時だった。
「いたっ──」
両方の耳を摘まれる感覚があった。あっという間に、足が地面を離れる。まさかこんな小さな生き物に人間を持ち上げる能力があるとは思わず、驚きで身体が硬直した。ピクシーはラインを天井の梁に引っ掛けると、キーキーと鳴きながら教室の外へ飛んで行ってしまった。身動きをすれば、すぐに落下してしまいそうだ。
「おい、僕が助けてやろう。その代わり、下に降りたら礼を言うんだな」
マルフォイが意地の悪い笑みを浮かべ、話しかけてくる。悔しい、彼に礼など言いたく無い──なんとかこの状況を乗り切る方法はないかと思案していると、ふと、自らの呪文に吹き飛ばされた瞬間を思い出した。この教室には、フリットウィック先生のクッション呪文がかけられている。壁に叩きつけられても大丈夫なのだから、床に落下したとしても無事なのでは──
「助けて貰わなくても大丈夫よ。自分でどうにかしてみるから」
「強がる女は可愛くないぞ」
ラインは彼を無視して目を瞑り、落ちるための準備をした。大丈夫だと思うけれど、流石に落下する瞬間は怖い。
「何をしている。素直に助けてくださいと言うんだな」
マルフォイがそう言った時、ラインのワイシャツが妙な音を立てた。生地が変な方向に引っ張られている気がする。すると突如、プツッという音と共に、ワイシャツの第一ボタンが弾け飛んだ。その下の第二ボタンも、今にも弾け飛んでしまいそうだ。ポリエステルの生地に、人間1人を天井から吊り下げておく力は無かったようだ。
「おい、呪文が効かないぞ!どうなっているんだ?」
目を開けると、マルフォイが杖を振っているのが見えた。続けて取り巻きの2人も杖を振り回したが、状況は何も変わらなかった。それもそのはずだ。この教室には、魔力を制御出来ないラインが安全に練習を行えるように、呪文の効果を小さくする細工がしてあるのだ。
ついに全てのボタンが弾け飛び、ラインの身体はするりとワイシャツを抜け出し、床に向かって落下した。ラインはギュッと目を瞑ったが、予想通り全身にふわっとした感覚を感じただけだった。目を上げると、視界の端に青い顔をした3人が映った。
マルフォイがこちらへ歩み寄って来る。ラインが上体を起こすと、彼は少し安堵したように見えた。流石の彼も、怪我をさせたいわけでは無かったようだ。しかしその直後に彼の目が見開かれたのを見て、ラインはハッとした。上を見上げると、天井の梁に自身のワイシャツがぶら下がっている──ラインの上半身はキャミソール1枚しか纏っていなかった。
「お──」
この状況に気が付いたのか、取り巻きの1人が初めて声を発した。この人……喋れたんだ。ラインは彼の無遠慮な視線に肌が粟立つのを感じた。彼らに嫌味の1つでも言ってやりたいが、唇を噛んで涙を堪えることしか出来ない。なんて理不尽なんだろう、悔しい……
マルフォイが自身のローブに手を掛けたのが見える。彼はこれ以上、何をするつもりなんだろう?ラインがマルフォイを睨み付けた時、廊下から誰かの話し声が聞こえてきた。
「──おい相棒、この我らを差し置いて、ピクシーを校内へ撒いた奴のご尊顔を拝みたくはないか?」
「勿論さ。大層ご立派な奴に違いない」
教室の扉がガチャリと開くと、良く似た顔の2人が顔を出した。双子はまずマルフォイ達に目を止めて、次にラインに目を移した。全員が金縛りに遭ったように動かず、まるでこの教室だけ時が止まったようだった。
「──貴様、何してやがる」
双子の1人が唸るような声を出し、杖を抜いた。彼はマルフォイへ向けて呪文を放ったようだったが、この部屋では大した効果は無い。マルフォイと取り巻きの2人は扉へ向かって駆け出した。双子が彼らに掴みかかろうとしたが、捕らえ損なう。
「待ちやがれ!」
「フレッド放っておけ、この子が先だ」
双子がこちらへ向き直った。ラインは今まで、彼らのやんちゃな笑顔しか見た事が無かった。でもこんな風に眉尻を下げている表情を見ると、やはりロンのお兄さんだと感じる。
「近くに行ってもいいかい?」
その問いに頷くと、1人が自身のローブを脱いで渡してくれた。
「それ、良ければ羽織って」
「鼻栓も貸そうか?ジョージのローブの匂いで鼻がもげるかもしれないぞ」
「──鼻栓は大丈夫、ありがとう」
自分の発した声が思っていたよりも鼻声だったので、ラインは恥ずかしい気持ちになった。受け取ったローブを羽織ると、暖炉のような匂いが鼻を掠めた。
「おいフレッド、ハンカチか何か無いのかよ」
「生まれてこの方、持っていた試しがないな」
「気が利かないな」
「お前こそ」
彼らのやりとりを聞いて、ラインは小さく笑った。本当に息の合った2人だ──でも、性格は全く同じではないようだ。よく見れば、表情や仕草に違いがある。
「取り敢えず、医務室に行こう。話はそれからだ」
ジョージに促されて、ラインは教室を出た。医務室へ行く道中で、授業終わりの生徒達とすれ違う。ジロジロとした視線を感じて、ラインは急に、目立つ双子に引率されていることや羽織っているローブが大きすぎること、髪がボサボサなことまでもが気になり出した。
「急いでるんだ、道を開けてくれ──おい、3秒以内に退かないと糞爆弾をお見舞いするぞ」
フレッドがポケットから何かを取り出した途端、モーゼの十戒のように道が開けた。ラインは漂ってきた異臭に顔を顰めた。
「気にするなよ。君は何も悪いことしてないんだから」
ジョージはそう言うと、さりげなくラインを自分の背に隠してくれた。2人の優しさに触れて、ラインの心はじんわりと暖かくなった。
――――
「ライン!」
談話室へ入るなり、ハーマイオニーが駆け寄ってくる。彼女の肩越しに、ハリーとロンの姿が見える。3人とも、この時間まで自分を待っていてくれたのだろうか──
「フレッドとジョージから聞いたわ。奴等は最低よ」
全くもって同感だ。
「僕と友達だから、君はターゲットにされたんだ」
ハリーはソファに沈み込んで、ひどく落ち込んでいるように見えた。
「貴方のせいじゃないわ。それにもし貴方と関わりが無かったとしても、彼等は私をターゲットにしたと思う。だって私も貴方も同じくらい、有名人なのよ」
ラインはハリーに笑ってみせたが、彼はまだ、申し訳なさげな表情をしている。
「それに、例えトロールをけしかけられても、私は貴方と友達でいたいな」
それを聞いたハリーはほんの少しだけ微笑み、元気を取り戻したように見えた。
「とにかく、明日から私達、貴方の練習に付き添うわ」
ハーマイオニーが強く宣言した。ハリーとロンが頷くのを見て、ラインは組分け帽子に感謝した。こんなにも素晴らしい友人が出来たことは、この学校生活における唯一の救いだった。
しかし束の間の平穏も長くは続かなかった。ハリーが三大魔法学校対抗試合の4人目の選手に選ばれたのだ。