the Deathly Hallows
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「その少女はマーリンの末裔につき──」
甲高く、冷たい声が言った。
「強大な魔力を持つ子供を産む可能性がある」
赤い眼が長いテーブルをぐるりと見回した。テーブルに座っている死喰い人たちは微動だにしなかった。身じろぎをすることで、赤い眼の標的になるのを恐れているかのようだった。
「器が無能でも、血は無能ではない。途方もない力……宿命の杖……すべて、俺様が所有するべきものだ」
ヴォルデモートは物思いに耽り、自身の膝に胴体を預けている大蛇を撫でた。大蛇は満足そうにシューッという音を出した。
「さてと、ドラコ」
ヴォルデモートが青白い顔の青年を見据えた。青年は硬直し、恐怖に目を見開いた。
「お前は与えられた2つの任務のうち、1つを失敗した」
マルフォイは震えながら、隣に座る父親に目で助けを求めた。父親は気が付かれないほどわずかに息子の膝に触れた。
「もし──ダンブルドアを殺しそびれていたら、お前は今ここに座ってはいなかっただろう」
「ああ、わが君……ありがとうございます……お慈悲を感謝いたします……」
ルシウス・マルフォイが息子の代わりにヴォルデモートの足元にひざまずいた。ヴォルデモートはルシウスのローブを踏み付けて立ち上がり、死喰い人たちを見回して残忍な笑みを浮かべた。
「少女を生け捕りにしろ。邪魔をする奴は殺せ」
────
「ライン、みてみて。じゃーん!」
トンクスは部屋に入って来るなり、ラインに左手を振って見せた。グリモールド・プレイスの陰気なダイニングルームでも、それはキラキラと明るい輝きを放っていた。
「わあ──結婚指輪だ!」
ラインははしゃいだ。
「すごく素敵だね」
「でしょ?」
「もっとよく見せて」
トンクスは幸せそうに左手を差し出した。ラインはうっとりした。好きな人と生涯の愛を誓い合うなんて、これ以上にロマンティックなことがあるだろうか。ラインは妄想した。もし、ジョージとお揃いの指輪を薬指に付けるとしたら、何色がいいかな……
カランカラン
玄関のベルが鳴った。それを合図にブラック夫人の金切り声が響いた。しかし、ラインは慣れっこになっていた。トンクスがすぐに部屋を出て行き、ブラック夫人を黙らせた。そして、人を連れて戻ってきた。
「やあ、ライン。久しぶり」
部屋の入り口に立つ青年の姿を見て、ラインは驚きの声を上げた。
「──セドリック!」
ラインは立ち上がり、セドリックに駆け寄った。
「どうして、ここにいるの?」
「僕も騎士団に入ったんだ」
セドリックが誇らしげに言った。
「私の職場の後輩なのよ。魔法省のホープを騎士団に勧誘しないわけにはいかないでしょ?」
トンクスは得意げに胸を張った。
「頼れる青年も来てくれたことだし、私はそろそろ家に帰るね。今晩はリーマスが帰ってくるの」
トンクスは頬を赤らめた。ラインはトンクスとルーピンが2人で家にいるところを想像して、胸がドキドキした。しかし、なんだかいけないことをしているような気がしたので、すぐに想像するのを止めた。
トンクスを見送ったあと、セドリックは手提げ袋の中から銀色のリボンがかかった紙箱を取り出した。そして、その紙箱をにっこりとラインに差し出した。
「はい、これ。君にプレゼント」
「──わあ」
ラインは紙箱を開けて、感嘆の声を漏らした。
「これ、ピエール・スルメのマカロンだ。一度、食べてみたいと思っていたの」
「どうやら、僕は正解を引き当てたみたいだね」
紙箱を拝んでいるラインを見て、セドリックはおかしそうに笑った。ラインはマカロンをじっくりと観察したあと、鼻から大きく息を吸い込んだ。すると、よだれが垂れた。
「どうして、これを私に?」
セドリックに気が付かれないようによだれを拭きながら、ラインは聞いた。
「──君が辛い思いをしているんじゃないかと思って」
セドリックが遠慮がちに言った。
「この屋敷から自由に出ることが出来ないなんて、気が滅入るだろう?」
ラインはちょっと落ち込んだ。しかし、すぐに切り替えた。
「うん。でも、やりたいことは何でも出来るから」
ラインはダイニングテーブルにずらりと並んだステンドグラスクッキー(クッキー生地に穴を開けてキャンディを流し込んだもの)の試作品を指差した。セドリックは微笑んだ。それから、彼はクッキーの皿の下に挟まっている羊皮紙を引っ張り出した。
「ああ、これ、懐かしいな。バーベッジ先生の課題だろう?」
「うん。さっき書き上げたばかりなの」
自分の書いたレポート── 「魔法界におけるマグル差別の歴史とその克服」──をセドリックが真剣に読み始めたので、ラインはドキドキした。
「素晴らしいよ。加点をもらえそうな出来映えだ」
「よかった」
ラインはホッとした。しかし、すぐに自分が置かれている状況を思い出した。
「提出できるか分からないけれど」
「もしかして、もう、学校に戻らないのかい?」
セドリックは眉を下げた。
「うん。いま、マクゴナガル先生と騎士団の大人たちが今後のことを話し合ってくれているの」
ラインは肩を落とした。
「ダンブルドア先生がいなくなってしまったから……もう、ホグワーツは私にとって安全な場所じゃないんだって」
セドリックは一瞬、ラインの肩に手を置こうとしたように見えた。しかし、すぐに手を引っ込めた。
「ライン、ダンブルドア先生は生きているよ。僕たちの前に姿を現さないのは、先生なりの考えがあるからだ」
セドリックが励ますようににっこりした。ラインは頷いた。セドリックの言う通りに違いない。だって、あの時、マルフォイは呪文を言い間違えた。それに、ダンブルドア先生の遺体は見つかっていない。
カランカラン
玄関のベルが鳴った。ブラック夫人が叫んだ。しかし、すぐに黙った。バタバタと足音が聞こえて、部屋の扉が勢いよく開いた。大好きな人がそこに立っていた。
「ジョージ、おかえり!」
ラインはジョージに駆け寄った。ジョージはテーブルに座っているセドリックを見た。それから、ジョージはラインを抱き寄せて、唇にキスをした。
「──ただいま」
ラインはびっくりして固まった。2人きりじゃない場所でキスされたのは初めてだった。どういう心境の変化だろう?
「心配しなくても──」
セドリックが困ったように笑った。
「僕は君の恋人に、指一本触れていないよ」
「前科持ちは信用できない」
ジョージはつかつかと歩いて部屋の中に入り、大きなカバンを床に下ろしながら言った。
「あと、そのクッキーはまだ食べないでくれ。いつも、新作は一番はじめに俺が食べるんだ」
「分かった。僕は君のあとに食べる」
セドリックは大真面目な顔で頷いた。
「悪いな、好青年」
フレッドが思い切りニヤニヤしながら部屋に入ってきたので、ラインは正気を取り戻した。
「誰も彼もが、自分の恋人にプロポーズする隙を狙ってると思い込んでるんだ」
フレッドは大きなカバンを床に下ろすと、ジョージを顎でしゃくって、大げさに肩をすくめてみせた。
「どこかの物好きな坊ちゃんのせいで」
「黙れ」
ジョージが唸った。フレッドは気にも留めず、大きなカバンの中から茶色の紙箱を取り出した。それから、紙箱の中身をテーブルの上に広げて検品し始めた。
「最悪だぜ」
フレッドが顔をしかめて言った。
「全部のパッケージに猫の毛が入り込んでる」
「猫?」
ラインはようやく声を取り戻した。
「そう。ミュリエルおばさんの飼ってるでぶの猫に違いない。ふくろう通信販売の拠点として、部屋を貸して貰えるのはありがたいけどさ──」
フレッドばぶつぶつ言いながらテーブルの上の皿に手を伸ばした。そして、クッキーをつまんで口の中に放り込んだ。次の瞬間、ジョージが杖をフレッドの喉元に突き付けた。
「おい、出せ」
「無理だ。もう飲み込んじまった」
「じゃあ、吐け」
「正気か?」
フレッドは信じられないという顔をした。ジョージがフレッドの口の中に手を突っ込もうとしたので、セドリックは大笑いした。ラインは皿からハート型のクッキーを取って、ジョージの口に押し込んだ。
「ハートはぜんぶ、ジョージのだよ」
ジョージは嬉しそうにニヤニヤした。ラインは感心した。やっぱり、甘いものって偉大だ。みんなをもれなく笑顔にしてくれる。明日も何かを作ろうっと。無くしたもののことを考えるより、今あるものに目を向けた方が楽しいもの。ラインは鼻歌を歌いながら、ステンドグラスクッキーのレシピを羊皮紙にメモし始めた。
甲高く、冷たい声が言った。
「強大な魔力を持つ子供を産む可能性がある」
赤い眼が長いテーブルをぐるりと見回した。テーブルに座っている死喰い人たちは微動だにしなかった。身じろぎをすることで、赤い眼の標的になるのを恐れているかのようだった。
「器が無能でも、血は無能ではない。途方もない力……宿命の杖……すべて、俺様が所有するべきものだ」
ヴォルデモートは物思いに耽り、自身の膝に胴体を預けている大蛇を撫でた。大蛇は満足そうにシューッという音を出した。
「さてと、ドラコ」
ヴォルデモートが青白い顔の青年を見据えた。青年は硬直し、恐怖に目を見開いた。
「お前は与えられた2つの任務のうち、1つを失敗した」
マルフォイは震えながら、隣に座る父親に目で助けを求めた。父親は気が付かれないほどわずかに息子の膝に触れた。
「もし──ダンブルドアを殺しそびれていたら、お前は今ここに座ってはいなかっただろう」
「ああ、わが君……ありがとうございます……お慈悲を感謝いたします……」
ルシウス・マルフォイが息子の代わりにヴォルデモートの足元にひざまずいた。ヴォルデモートはルシウスのローブを踏み付けて立ち上がり、死喰い人たちを見回して残忍な笑みを浮かべた。
「少女を生け捕りにしろ。邪魔をする奴は殺せ」
────
「ライン、みてみて。じゃーん!」
トンクスは部屋に入って来るなり、ラインに左手を振って見せた。グリモールド・プレイスの陰気なダイニングルームでも、それはキラキラと明るい輝きを放っていた。
「わあ──結婚指輪だ!」
ラインははしゃいだ。
「すごく素敵だね」
「でしょ?」
「もっとよく見せて」
トンクスは幸せそうに左手を差し出した。ラインはうっとりした。好きな人と生涯の愛を誓い合うなんて、これ以上にロマンティックなことがあるだろうか。ラインは妄想した。もし、ジョージとお揃いの指輪を薬指に付けるとしたら、何色がいいかな……
カランカラン
玄関のベルが鳴った。それを合図にブラック夫人の金切り声が響いた。しかし、ラインは慣れっこになっていた。トンクスがすぐに部屋を出て行き、ブラック夫人を黙らせた。そして、人を連れて戻ってきた。
「やあ、ライン。久しぶり」
部屋の入り口に立つ青年の姿を見て、ラインは驚きの声を上げた。
「──セドリック!」
ラインは立ち上がり、セドリックに駆け寄った。
「どうして、ここにいるの?」
「僕も騎士団に入ったんだ」
セドリックが誇らしげに言った。
「私の職場の後輩なのよ。魔法省のホープを騎士団に勧誘しないわけにはいかないでしょ?」
トンクスは得意げに胸を張った。
「頼れる青年も来てくれたことだし、私はそろそろ家に帰るね。今晩はリーマスが帰ってくるの」
トンクスは頬を赤らめた。ラインはトンクスとルーピンが2人で家にいるところを想像して、胸がドキドキした。しかし、なんだかいけないことをしているような気がしたので、すぐに想像するのを止めた。
トンクスを見送ったあと、セドリックは手提げ袋の中から銀色のリボンがかかった紙箱を取り出した。そして、その紙箱をにっこりとラインに差し出した。
「はい、これ。君にプレゼント」
「──わあ」
ラインは紙箱を開けて、感嘆の声を漏らした。
「これ、ピエール・スルメのマカロンだ。一度、食べてみたいと思っていたの」
「どうやら、僕は正解を引き当てたみたいだね」
紙箱を拝んでいるラインを見て、セドリックはおかしそうに笑った。ラインはマカロンをじっくりと観察したあと、鼻から大きく息を吸い込んだ。すると、よだれが垂れた。
「どうして、これを私に?」
セドリックに気が付かれないようによだれを拭きながら、ラインは聞いた。
「──君が辛い思いをしているんじゃないかと思って」
セドリックが遠慮がちに言った。
「この屋敷から自由に出ることが出来ないなんて、気が滅入るだろう?」
ラインはちょっと落ち込んだ。しかし、すぐに切り替えた。
「うん。でも、やりたいことは何でも出来るから」
ラインはダイニングテーブルにずらりと並んだステンドグラスクッキー(クッキー生地に穴を開けてキャンディを流し込んだもの)の試作品を指差した。セドリックは微笑んだ。それから、彼はクッキーの皿の下に挟まっている羊皮紙を引っ張り出した。
「ああ、これ、懐かしいな。バーベッジ先生の課題だろう?」
「うん。さっき書き上げたばかりなの」
自分の書いたレポート── 「魔法界におけるマグル差別の歴史とその克服」──をセドリックが真剣に読み始めたので、ラインはドキドキした。
「素晴らしいよ。加点をもらえそうな出来映えだ」
「よかった」
ラインはホッとした。しかし、すぐに自分が置かれている状況を思い出した。
「提出できるか分からないけれど」
「もしかして、もう、学校に戻らないのかい?」
セドリックは眉を下げた。
「うん。いま、マクゴナガル先生と騎士団の大人たちが今後のことを話し合ってくれているの」
ラインは肩を落とした。
「ダンブルドア先生がいなくなってしまったから……もう、ホグワーツは私にとって安全な場所じゃないんだって」
セドリックは一瞬、ラインの肩に手を置こうとしたように見えた。しかし、すぐに手を引っ込めた。
「ライン、ダンブルドア先生は生きているよ。僕たちの前に姿を現さないのは、先生なりの考えがあるからだ」
セドリックが励ますようににっこりした。ラインは頷いた。セドリックの言う通りに違いない。だって、あの時、マルフォイは呪文を言い間違えた。それに、ダンブルドア先生の遺体は見つかっていない。
カランカラン
玄関のベルが鳴った。ブラック夫人が叫んだ。しかし、すぐに黙った。バタバタと足音が聞こえて、部屋の扉が勢いよく開いた。大好きな人がそこに立っていた。
「ジョージ、おかえり!」
ラインはジョージに駆け寄った。ジョージはテーブルに座っているセドリックを見た。それから、ジョージはラインを抱き寄せて、唇にキスをした。
「──ただいま」
ラインはびっくりして固まった。2人きりじゃない場所でキスされたのは初めてだった。どういう心境の変化だろう?
「心配しなくても──」
セドリックが困ったように笑った。
「僕は君の恋人に、指一本触れていないよ」
「前科持ちは信用できない」
ジョージはつかつかと歩いて部屋の中に入り、大きなカバンを床に下ろしながら言った。
「あと、そのクッキーはまだ食べないでくれ。いつも、新作は一番はじめに俺が食べるんだ」
「分かった。僕は君のあとに食べる」
セドリックは大真面目な顔で頷いた。
「悪いな、好青年」
フレッドが思い切りニヤニヤしながら部屋に入ってきたので、ラインは正気を取り戻した。
「誰も彼もが、自分の恋人にプロポーズする隙を狙ってると思い込んでるんだ」
フレッドは大きなカバンを床に下ろすと、ジョージを顎でしゃくって、大げさに肩をすくめてみせた。
「どこかの物好きな坊ちゃんのせいで」
「黙れ」
ジョージが唸った。フレッドは気にも留めず、大きなカバンの中から茶色の紙箱を取り出した。それから、紙箱の中身をテーブルの上に広げて検品し始めた。
「最悪だぜ」
フレッドが顔をしかめて言った。
「全部のパッケージに猫の毛が入り込んでる」
「猫?」
ラインはようやく声を取り戻した。
「そう。ミュリエルおばさんの飼ってるでぶの猫に違いない。ふくろう通信販売の拠点として、部屋を貸して貰えるのはありがたいけどさ──」
フレッドばぶつぶつ言いながらテーブルの上の皿に手を伸ばした。そして、クッキーをつまんで口の中に放り込んだ。次の瞬間、ジョージが杖をフレッドの喉元に突き付けた。
「おい、出せ」
「無理だ。もう飲み込んじまった」
「じゃあ、吐け」
「正気か?」
フレッドは信じられないという顔をした。ジョージがフレッドの口の中に手を突っ込もうとしたので、セドリックは大笑いした。ラインは皿からハート型のクッキーを取って、ジョージの口に押し込んだ。
「ハートはぜんぶ、ジョージのだよ」
ジョージは嬉しそうにニヤニヤした。ラインは感心した。やっぱり、甘いものって偉大だ。みんなをもれなく笑顔にしてくれる。明日も何かを作ろうっと。無くしたもののことを考えるより、今あるものに目を向けた方が楽しいもの。ラインは鼻歌を歌いながら、ステンドグラスクッキーのレシピを羊皮紙にメモし始めた。