the Half-Blood Prince
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「もし私がフェリックス・フェリシスを手に入れたら、それを飲んで城中を探検してみる。もしかしたら、アンブロシウス・フルームの隠し部屋を見つけられるかもしれないから」
ラインは生クリーム4倍盛りのパンケーキにフォークを刺しながら宣言した。
「そのアンブロなんとかって、誰なんだい?」
ロンが怪訝そうに聞いた。昼食を食べる間じゅう、彼は隣に座るハリーのローブのポケットにチラチラと視線をやっていた。そこに、幸運の液体が入った小さな瓶が入っているからだ。ハーマイオニーに言わせると「半純血のプリンス」のおかげで、ハリーはそれを手に入れたらしい。
「アンブロシウス・フルームはハニーデュークスの創設者よ。彼はホグワーツを卒業する時に、この城のどこかに『お菓子の部屋』を作ったと言われているの」
パンケーキを飲み込むのに苦戦しているラインに代わって、ハーマイオニーがきびきびと答えた。
「でもライン、気をつけないといけないわ。あなた、最近歯磨きをおろそかにしているでしょう?」
「うん、そうだったかも。でも、ホグワーツにいる間は大丈夫だよ」
ラインはヘラヘラした。
「虫歯になったって、マダム・ポンフリーが一瞬で治してくれるもの」
「ライン、それは笑い事じゃないよ」
ハリーが真剣な顔で言った。ラインは面食らった。友人の歯磨きに対する意識が、それほどまでに高いとは思わなかった。
「たとえ『お菓子の部屋』を見つけたとしても、むやみに足を踏み入れたりしたらだめだ。あいつの罠かもしれない」
やけに熱の入ったハリーの視線を受け止めながら、ラインはとりあえず頷いた。たぶん、自分は歯磨きについて責められているわけではない。ロンとハーマイオニーをチラリと見ると、2人はやれやれといった顔で昼食後のデザートに取りかかっていた。
「この間だって、あいつは呪いのネックレスでケイティを殺しかけたんだ」
「あいつって、誰のこと?」
ラインが聞くと、ハリーは険しい顔のまま、ラインの耳に顔を寄せて囁いた。
「──マルフォイさ」
────
5限目の授業を終えて、ラインは北塔の7階の廊下をとぼとぼと歩いていた。この後に待ち構えている、闇の魔術に対する防衛術の個人授業が憂鬱だった。昨年末のふくろう試験で魔法薬学を落としたから、今年はスネイプ先生と会わなくて済むと思っていたのに……
「あれ?」
ラインは立ち止まった。
「こんなところに扉がある」
たしかいつもはここに、鼻の頭をぽりぽりと掻く修道士の肖像画がかかっていたはずだ。ラインはおもむろに扉へ顔を近づけて、大きく息を吸い込んだ。そして、目を見開いた。
「──ついに、見つけた」
勢いよく扉を押し開けて、ラインは感嘆のため息を漏らした。そこはまさしく「お菓子の部屋」だった。部屋中に甘い香りとキラキラとした光が満ちている。よく見ると、壁や天井にキャンディが埋め込まれていて、それらが色とりどりの光を反射させていた。
「すごい。チョコレートファウンテンがある」
ラインは恍惚としながら、引き寄せられるように部屋の中へ入っていった。部屋の中央には大きな泉があり、そこからチョコレートが湧き出している。
「たしか、マシュマロを持っていたはず」
ラインはカバンの中を漁った。しかし、マシュマロが見つからない。昨日の夜、確かに大袋を入れた記憶があるのに。がっかりしながら顔を上げて、ラインは息を呑んだ。
「これにチョコレートをつけたらどうだ?」
すぐ隣にドラコ・マルフォイが立っていた。彼は寛大な微笑みを浮かべながら、銀の串に刺さったマシュマロをこちらに差し出している。
「──い、いらない」
ラインは後退りした。まずいことになった。お菓子の部屋の魅力に当てられて、すっかりハリーの忠告を忘れていた。
「なぜだ?甘いものが好きなんだろう?」
「……怪しいから」
ラインは正直に答えた。
「怪しくなんてないさ。ほら」
マルフォイは銀の串に刺さったマシュマロを自ら齧ってみせた。
「マシュマロじゃなくて、あなたが怪しい」
「なるほど。僕が信用できないということか。それもそうだろう」
マルフォイは急に神妙な面持ちになって、居住まいを正した。
「マーリン、あの時は悪かった。僕はただ、君にピクシーを見せてあげようと──」
「分かってるよ。あの時、あなたが転入生をちょっとからかいたかっただけで、ブラウスを剥ぎ取るつもりなんてなかったことくらい」
マルフォイの動向を注意深く伺いながら、ラインは先手を打った。マルフォイは意表を突かれたような顔になった。
「でも、今のあなたは違う気がする」
「どういう意味だ?」
マルフォイが眉を顰めた。
「下心があるように見える」
「はあ?あるわけないだろう。お前なんかに」
マルフォイが吐き捨てるように言った。それからすぐに、やってしまったという顔になった。それを見てラインは警戒を緩めた。気味の悪い紳士面が剥がれて、本来のドラコ・マルフォイが現れたからだ。
「じゃあ今、あなたは純粋な気持ちで、私にマシュマロをプレゼントしてくれているってこと?」
ラインは疑ってかかった。
「お前の言う『純粋な気持ち』というのが、何を指しているのか分からない」
マルフォイが言った。彼の顔には「こいつと会話を成立させるのが気に食わない」と書いてある。
「つまり、ジョージみたいに、私に喜んで欲しい一心でマシュマロを用意してくれたの?」
「お前、あいつに下心がないとでも思っているのか?」
マルフォイが呆れたように言った。ラインは自信満々に頷いた。ジョージが悪意なんて持っているはずがない。彼が持っているのはちょっとした悪戯心だけだ。
「そんなわけないだろ。救いようのないバ──」
突然、マルフォイの動きが止まった。ラインは目を見開いた。マルフォイの表情が奇妙に歪んだからだ。次に彼が口を開いた時、気味の悪い微笑みが、再び彼の顔に張り付いていた。
「──いや、君の言うとおりだ。つまり、僕もウィーズリーと同じ想いを君に抱いている。だから、プレゼントを用意したんだ」
ラインは耳を疑った。そして、おそるおそる口を開いた。
「つまり……私のことが好きだってこと?」
「そのとおりだ」
マルフォイが勿体ぶって頷いた。ラインはあんぐりと口を開けた。どう考えても、マルフォイが自分のことを好きなんてことはあり得ない。彼には何か、そう言わざるを得ない理由があるに違いない。ラインは必死に脳みそを回転させた。そして、閃いた。
「ねえ、もしかして、ピンク色のボトルに入った水を飲まなかった?」
「さあ──どうだったかな」
マルフォイは小首を傾げた。それから、ラインにずいと近づいた。
「……なあ、試してみないか。いつも同じ男じゃ飽きるだろう」
ラインは小さく肩を跳ねさせた。マルフォイに耳元の髪を梳かれたからだ。
「僕ならば、あいつよりもっと深く、君に教えてやれる」
マルフォイの手がゆっくりと下がり、ラインの腰に触れた。ラインは鳥肌が立った。彼の手が氷のように冷たかったからだ。
「よし、ちょっと待っててね」
ラインはポケットに手を突っ込んで、勢いよく杖を取り出した。
「いま、ラブ・ポーションの解毒呪文をかけてあげる。冬休みにジョージに教えて貰ったばかりなの」
「やめてくれ!」
突然、マルフォイが怯えた声で叫んだ。
「怪我はしたくないんだ!」
マルフォイは後ろに飛び退り、そのまま廊下へ走り去った。ラインは呆気に取られて、彼の出て行った扉を見つめた。なんなんだ、マルフォイのやつ。あまりにも情緒不安定すぎないか。おまけに失礼だ。簡単な呪文なら、もう失敗することは無いのに。
「まあ、いいか。ラブ・ポーションなら数時間で効果が切れるし」
ラインは自分を納得させた。それから、マルフォイが置いていったマシュマロを手に取った。さあ、今こそ、巨大チョコレートファウンテンに取りかかる時だ。
ラインは生クリーム4倍盛りのパンケーキにフォークを刺しながら宣言した。
「そのアンブロなんとかって、誰なんだい?」
ロンが怪訝そうに聞いた。昼食を食べる間じゅう、彼は隣に座るハリーのローブのポケットにチラチラと視線をやっていた。そこに、幸運の液体が入った小さな瓶が入っているからだ。ハーマイオニーに言わせると「半純血のプリンス」のおかげで、ハリーはそれを手に入れたらしい。
「アンブロシウス・フルームはハニーデュークスの創設者よ。彼はホグワーツを卒業する時に、この城のどこかに『お菓子の部屋』を作ったと言われているの」
パンケーキを飲み込むのに苦戦しているラインに代わって、ハーマイオニーがきびきびと答えた。
「でもライン、気をつけないといけないわ。あなた、最近歯磨きをおろそかにしているでしょう?」
「うん、そうだったかも。でも、ホグワーツにいる間は大丈夫だよ」
ラインはヘラヘラした。
「虫歯になったって、マダム・ポンフリーが一瞬で治してくれるもの」
「ライン、それは笑い事じゃないよ」
ハリーが真剣な顔で言った。ラインは面食らった。友人の歯磨きに対する意識が、それほどまでに高いとは思わなかった。
「たとえ『お菓子の部屋』を見つけたとしても、むやみに足を踏み入れたりしたらだめだ。あいつの罠かもしれない」
やけに熱の入ったハリーの視線を受け止めながら、ラインはとりあえず頷いた。たぶん、自分は歯磨きについて責められているわけではない。ロンとハーマイオニーをチラリと見ると、2人はやれやれといった顔で昼食後のデザートに取りかかっていた。
「この間だって、あいつは呪いのネックレスでケイティを殺しかけたんだ」
「あいつって、誰のこと?」
ラインが聞くと、ハリーは険しい顔のまま、ラインの耳に顔を寄せて囁いた。
「──マルフォイさ」
────
5限目の授業を終えて、ラインは北塔の7階の廊下をとぼとぼと歩いていた。この後に待ち構えている、闇の魔術に対する防衛術の個人授業が憂鬱だった。昨年末のふくろう試験で魔法薬学を落としたから、今年はスネイプ先生と会わなくて済むと思っていたのに……
「あれ?」
ラインは立ち止まった。
「こんなところに扉がある」
たしかいつもはここに、鼻の頭をぽりぽりと掻く修道士の肖像画がかかっていたはずだ。ラインはおもむろに扉へ顔を近づけて、大きく息を吸い込んだ。そして、目を見開いた。
「──ついに、見つけた」
勢いよく扉を押し開けて、ラインは感嘆のため息を漏らした。そこはまさしく「お菓子の部屋」だった。部屋中に甘い香りとキラキラとした光が満ちている。よく見ると、壁や天井にキャンディが埋め込まれていて、それらが色とりどりの光を反射させていた。
「すごい。チョコレートファウンテンがある」
ラインは恍惚としながら、引き寄せられるように部屋の中へ入っていった。部屋の中央には大きな泉があり、そこからチョコレートが湧き出している。
「たしか、マシュマロを持っていたはず」
ラインはカバンの中を漁った。しかし、マシュマロが見つからない。昨日の夜、確かに大袋を入れた記憶があるのに。がっかりしながら顔を上げて、ラインは息を呑んだ。
「これにチョコレートをつけたらどうだ?」
すぐ隣にドラコ・マルフォイが立っていた。彼は寛大な微笑みを浮かべながら、銀の串に刺さったマシュマロをこちらに差し出している。
「──い、いらない」
ラインは後退りした。まずいことになった。お菓子の部屋の魅力に当てられて、すっかりハリーの忠告を忘れていた。
「なぜだ?甘いものが好きなんだろう?」
「……怪しいから」
ラインは正直に答えた。
「怪しくなんてないさ。ほら」
マルフォイは銀の串に刺さったマシュマロを自ら齧ってみせた。
「マシュマロじゃなくて、あなたが怪しい」
「なるほど。僕が信用できないということか。それもそうだろう」
マルフォイは急に神妙な面持ちになって、居住まいを正した。
「マーリン、あの時は悪かった。僕はただ、君にピクシーを見せてあげようと──」
「分かってるよ。あの時、あなたが転入生をちょっとからかいたかっただけで、ブラウスを剥ぎ取るつもりなんてなかったことくらい」
マルフォイの動向を注意深く伺いながら、ラインは先手を打った。マルフォイは意表を突かれたような顔になった。
「でも、今のあなたは違う気がする」
「どういう意味だ?」
マルフォイが眉を顰めた。
「下心があるように見える」
「はあ?あるわけないだろう。お前なんかに」
マルフォイが吐き捨てるように言った。それからすぐに、やってしまったという顔になった。それを見てラインは警戒を緩めた。気味の悪い紳士面が剥がれて、本来のドラコ・マルフォイが現れたからだ。
「じゃあ今、あなたは純粋な気持ちで、私にマシュマロをプレゼントしてくれているってこと?」
ラインは疑ってかかった。
「お前の言う『純粋な気持ち』というのが、何を指しているのか分からない」
マルフォイが言った。彼の顔には「こいつと会話を成立させるのが気に食わない」と書いてある。
「つまり、ジョージみたいに、私に喜んで欲しい一心でマシュマロを用意してくれたの?」
「お前、あいつに下心がないとでも思っているのか?」
マルフォイが呆れたように言った。ラインは自信満々に頷いた。ジョージが悪意なんて持っているはずがない。彼が持っているのはちょっとした悪戯心だけだ。
「そんなわけないだろ。救いようのないバ──」
突然、マルフォイの動きが止まった。ラインは目を見開いた。マルフォイの表情が奇妙に歪んだからだ。次に彼が口を開いた時、気味の悪い微笑みが、再び彼の顔に張り付いていた。
「──いや、君の言うとおりだ。つまり、僕もウィーズリーと同じ想いを君に抱いている。だから、プレゼントを用意したんだ」
ラインは耳を疑った。そして、おそるおそる口を開いた。
「つまり……私のことが好きだってこと?」
「そのとおりだ」
マルフォイが勿体ぶって頷いた。ラインはあんぐりと口を開けた。どう考えても、マルフォイが自分のことを好きなんてことはあり得ない。彼には何か、そう言わざるを得ない理由があるに違いない。ラインは必死に脳みそを回転させた。そして、閃いた。
「ねえ、もしかして、ピンク色のボトルに入った水を飲まなかった?」
「さあ──どうだったかな」
マルフォイは小首を傾げた。それから、ラインにずいと近づいた。
「……なあ、試してみないか。いつも同じ男じゃ飽きるだろう」
ラインは小さく肩を跳ねさせた。マルフォイに耳元の髪を梳かれたからだ。
「僕ならば、あいつよりもっと深く、君に教えてやれる」
マルフォイの手がゆっくりと下がり、ラインの腰に触れた。ラインは鳥肌が立った。彼の手が氷のように冷たかったからだ。
「よし、ちょっと待っててね」
ラインはポケットに手を突っ込んで、勢いよく杖を取り出した。
「いま、ラブ・ポーションの解毒呪文をかけてあげる。冬休みにジョージに教えて貰ったばかりなの」
「やめてくれ!」
突然、マルフォイが怯えた声で叫んだ。
「怪我はしたくないんだ!」
マルフォイは後ろに飛び退り、そのまま廊下へ走り去った。ラインは呆気に取られて、彼の出て行った扉を見つめた。なんなんだ、マルフォイのやつ。あまりにも情緒不安定すぎないか。おまけに失礼だ。簡単な呪文なら、もう失敗することは無いのに。
「まあ、いいか。ラブ・ポーションなら数時間で効果が切れるし」
ラインは自分を納得させた。それから、マルフォイが置いていったマシュマロを手に取った。さあ、今こそ、巨大チョコレートファウンテンに取りかかる時だ。