the Half-Blood Prince
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「それでね、ネビルったら、とってもかっこよかったのよ。吸血鬼のサングィニさんに肉入りパイを差し出してくれたりして」
「──へえ」
湯気が立ち上る熱いココアをちびちびと啜りながら、ラインは夏休みぶりに会ったジョージに近況報告をしていた。
「『今日は僕がしっかりしなきゃ』なんて言ってね」
「──へえ」
やけに遅いテンポでジョージが相槌を打つので、ラインは首を傾げた。
「ジョージ、もしかして、今日はお仕事が忙しかった?」
「いや」
「じゃあ、もう眠い?」
「いいや」
なぜか、ジョージは頑なにラインと目を合わせようとしない。彼はテーブルの向こう側で行われているロンとジニーの激しい兄妹喧嘩を眺めながら、不機嫌な表情でボリボリとビスケットを齧っている。
「……ねえ、それ、ヌガーサンドビスケットにしてあげようか?」
ラインが提案すると、ジョージはようやくこちらを見てくれた。
「ああ……うん。頼むよ」
「じゃあ、ちょっと待っててね。いま作ってきてあげる」
ラインはビスケットを2枚掴んでいそいそと立ち上がり、キッチンに向かった。それからキッチンをぐるりと見回して、壁際の収納棚の1番上の段にヌガーの瓶が置いてあるのを見つけた。ラインは背伸びをして、ヌガーの瓶を取ろうとした。しかし、手が届かない。
「よっ」
ラインはつま先立ちになってジャンプした。それでも、手は届かない。困った。そもそも、グリモールド・プレイスにある家具類はぜんぶ、背が高すぎるのだ。たぶん、魔法を使って物を取ることを前提に作られているのだろう。ラインが唇を尖らせていると、背後から手が伸びてきて、ヌガーの瓶をひょいと掴んだ。
「はい、どうぞ」
ラインは唇を引っ込めて、ヌガーの瓶を受け取った。
「ありがとう、ハリー。もしかして……また背が伸びた?」
「うん。君がますます小さく見えるよ」
ハリーは笑いながら、シリウスとルーピンの座っているテーブルに戻ろうと歩き始めた。──彼らは「半純血のプリンス」の正体について、話し合っているに違いない──しかし、途中でロンに捕まった。たぶん「ハーマイオニーは本当にマクラーゲンと付き合っているのか?」攻撃を受けているのだろう。ラインはハリーを気の毒に思いながら、ヌガーの瓶の蓋を開けようとした。
「あれ?」
蓋が回らない。たぶん、蓋にヌガーがくっついて固まってしまっている。もしかしたら、シリウスは普段あまりヌガーを使わないのかもしれない。
「どうした?──ああ、貸してみろよ」
背後から手が伸びてきた。その手はラインからヌガーの瓶を取り上げると、ぐっと力を込めて蓋を回した。
「よし、開いたぞ」
「ありがとう。フレッド」
ラインはにっこりした。
「当然だろ。なんてったって、俺たちゃ、熱く抱き合った仲だからな」
「うん。そんなこともあったね」
フレッドの軽口に相槌を打ちながら、ラインはビスケットにヌガーを塗り始めた。美味しいヌガーサンドビスケットを作るのにコツはいらない。とにかく、ヌガーをたっぷり塗る。それだけだ。
「まさか、君からキスをせがまれるなんてなぁ」
「効果てきめんだったね。あのラブ・ポーション」
最後にもう1枚のビスケットを上から乗せれば──よし、完成だ。なかなかの出来映えだ。ラインがにっこりしていると、またもや、背後から手が伸びてきた。
「ああ、これ、美味いんだよな」
ロンはヌガーサンドビスケットをひょいと摘み、そのまま口に入れた。
「あーっ」
ラインは呻いた。
「ねえ、もう1枚作ってよ」
「まったく──」
ロンに文句を言い終わらないうちに、誰かがラインの腕を掴んだ。振り向くと、ジョージが立っていた。彼はなぜか、あらゆる表情筋が凝り固まったような顔をしていた。
「ライン、ちょっと来いよ。渡したいものがある」
フレッドがヒュウと口笛を吹いた。
「ねえ、僕のビスケットは?」
ロンの怪訝な声を背中に浴びながら、ラインは廊下に連れ出された。ジョージにヌガーサンドビスケットを渡せていないことなんてすっかり忘れて、ラインは期待に胸を高鳴らせた。だって、これは間違いなく──プレゼント交換の流れだ。
「嬉しいなあ。私、恋人からクリスマスプレゼントを貰うのって初めて」
「じゃあ──当然、こういうのも初めてだろ」
ジョージはラインの腕をぐいと引っ張り、部屋の中に引き入れた。月明かりが差し込む部屋に、トランクとベッドが2つずつ並んでいるのが見えた。それからすぐに、身体がふわっと浮いた。
「──え?」
気がつけば、視界一面に天井が映っている。ラインの脳みそが情報を整理する前に、ジョージの顔が近づいてきた。耳に熱い息がかかって肩が跳ねた。ジョージがすかさずラインの肩を押さえつけたので、身体の下でベッドのスプリングがギシギシと軋んだ。
「どうしたの?」
ラインはわけが分からなかった。しかし、ジョージは答えてくれない。それどころか、ラインの首をペロリと舐めた。それがあまりにも遠慮のない仕草だったので、ラインは悲鳴を上げた。こんなじゃれ方、おばあちゃんの家の猫としか、したことがない。でも、猫はもっと軽かった。ジョージにのしかかられて、息が苦しい。身動きも取れない。これまであまり意識してこなかったけれど、やっぱり男の子って、自分とは全く別の生き物だ。身体は大きいし、力は強いし──
「ジョージ、私、ちょっと怖い」
ラインは訴えた。
「分かった。ごめん」
意外にも、ジョージはすんなりとラインを解放した。ラインはわけの分からないまま、のろのろと起き上がってベッドに腰かけた。
「でも、君が怖がってくれて安心した。君は誰とでも、距離が近いからな」
ジョージがボソッと言った。彼の拗ねたような横顔を見て、ラインはようやく己の失態に気がついた。
「ごめんね。嫌な気持ちにさせて」
ジョージが他の女の子のことを「可愛い」なんて言ったり、自分を放って親しげに話していたりしたら、ラインだって嫌な気持ちになるに違いない。自分はもっと、彼の気持ちを思いやるべきだった。
「私の大切な人はジョージだけだよ」
ラインは真剣に言った。ジョージの口角がピクリと動いた。
「それに、ぜんぶジョージが初めて」
ラインはジョージの手を握った。ついに、ジョージの顔に嬉しそうなニヤニヤが戻ってきた。
「じゃあ、そんな君に──初めての『恋人からのクリスマスプレゼント』を贈呈しよう」
ジョージが立ち上がった。それから、ベッドの横に置かれているトランクを開けて小さな箱を取り出した。ラインは感激のあまり、言葉が出なかった。
「君は宝石が必要ないタイプの女の子だって分かってるけど、たまにはこういうのもいいだろ?」
しばらくの間、ラインはキラキラと光るネックレスを呆然と眺めた。
「嬉しい……ありがとう」
ラインは思わず涙ぐんだ。恋人からアクセサリーを貰うのって、なんだか特別な感じがする。女の子として大切に扱われている気がするし、自分がこの宝石の輝きに見合う人間だと言ってもらえたようで嬉しい。
「そうだ。私からもプレゼントがあるんだよ。いま、寝室に戻って取って──」
「アクシオ!クリスマスプレゼントよ、来い!」
ジョージが杖を振った。そしてすぐに、彼は部屋の扉を開けた。すると、廊下から茶色の紙袋が飛んできた。ラインは間一髪でそれをかわした。紙袋はジョージの手の中に収まった。
「ありがとよ」
ジョージは満足げににっこりしながら、いそいそと紙袋を開けた。
「わお、これはもしかして──」
「チョコレートとキャンディ。手作りだよ」
ジョージは紙袋からチョコレートを取り出すと、しばらくの間、感慨深そうに眺めた。
「冗談抜きでうまいぜ」
チョコレートを頬張ったジョージが珍しく真面目な顔をしたので、ラインは声を上げて笑った。
「チョコレートの周りにくっついてる、サクサクしたのはなんだい?」
「ライスパフだよ。チョコレートが手にくっつかない方が食べやすいでしょ?それに、友達にも配りやすいし」
「君らしいな。でも、俺は友達には配らないぞ。これはぜんぶ俺のだ」
チョコレートを3つまとめて口の中に押し込みながら、ジョージがモゴモゴ言った。
「実はそのチョコレート、『わらしべショコラ』って名前なの」
「ずいぶんと変わった名前だな。まさか、商品化でもするつもりか?」
ジョージはニヤニヤした。
「こっちもうまいな。でも、普通のレモン味じゃない」
ラインの手作りキャンディを慎重に味わいながら、ジョージが言った。
「口に入れた瞬間はすっぱいけど、どんどん甘くなってくる」
「実はそれ『なるほどレモン・キャンディー』って名前なんだけど──」
ラインは説明しながら真っ赤になった。
「ファーストキスの味を再現したキャンディなの」
ジョージは驚いたように目を見開いた。それから、徐々にニヤニヤ顔になった。ジョージはラインをきつく抱きしめた。次の瞬間だった。
トントン
扉をノックする音が部屋に響いた。
「2人とも、そろそろデザートの時間だよ」
返事をする前にドアが開いて、ルーピンが顔を覗かせた。ジョージはちょっとバツの悪そうな顔でラインから離れた。ラインはデザートの並んでいる食堂を目指して、意気揚々と廊下に足を踏み出した。
「ジョージ、分かっていると思うけれど」
後ろから、ルーピンのヒソヒソ声が聞こえる。先頭を歩きながら、ラインは耳をそば立てた。
「彼女はまだ未成年だよ。あまり急かしては──」
「何もしてない」
ジョージがきっぱりと言った。
「それに、愛し合うことに年齢は関係ないと、俺は思うけどね」
それきり2人が黙り込んだので、不思議に思ったラインは振り返った。なぜか、今度はルーピンがバツの悪そうな顔をしていた。
「──へえ」
湯気が立ち上る熱いココアをちびちびと啜りながら、ラインは夏休みぶりに会ったジョージに近況報告をしていた。
「『今日は僕がしっかりしなきゃ』なんて言ってね」
「──へえ」
やけに遅いテンポでジョージが相槌を打つので、ラインは首を傾げた。
「ジョージ、もしかして、今日はお仕事が忙しかった?」
「いや」
「じゃあ、もう眠い?」
「いいや」
なぜか、ジョージは頑なにラインと目を合わせようとしない。彼はテーブルの向こう側で行われているロンとジニーの激しい兄妹喧嘩を眺めながら、不機嫌な表情でボリボリとビスケットを齧っている。
「……ねえ、それ、ヌガーサンドビスケットにしてあげようか?」
ラインが提案すると、ジョージはようやくこちらを見てくれた。
「ああ……うん。頼むよ」
「じゃあ、ちょっと待っててね。いま作ってきてあげる」
ラインはビスケットを2枚掴んでいそいそと立ち上がり、キッチンに向かった。それからキッチンをぐるりと見回して、壁際の収納棚の1番上の段にヌガーの瓶が置いてあるのを見つけた。ラインは背伸びをして、ヌガーの瓶を取ろうとした。しかし、手が届かない。
「よっ」
ラインはつま先立ちになってジャンプした。それでも、手は届かない。困った。そもそも、グリモールド・プレイスにある家具類はぜんぶ、背が高すぎるのだ。たぶん、魔法を使って物を取ることを前提に作られているのだろう。ラインが唇を尖らせていると、背後から手が伸びてきて、ヌガーの瓶をひょいと掴んだ。
「はい、どうぞ」
ラインは唇を引っ込めて、ヌガーの瓶を受け取った。
「ありがとう、ハリー。もしかして……また背が伸びた?」
「うん。君がますます小さく見えるよ」
ハリーは笑いながら、シリウスとルーピンの座っているテーブルに戻ろうと歩き始めた。──彼らは「半純血のプリンス」の正体について、話し合っているに違いない──しかし、途中でロンに捕まった。たぶん「ハーマイオニーは本当にマクラーゲンと付き合っているのか?」攻撃を受けているのだろう。ラインはハリーを気の毒に思いながら、ヌガーの瓶の蓋を開けようとした。
「あれ?」
蓋が回らない。たぶん、蓋にヌガーがくっついて固まってしまっている。もしかしたら、シリウスは普段あまりヌガーを使わないのかもしれない。
「どうした?──ああ、貸してみろよ」
背後から手が伸びてきた。その手はラインからヌガーの瓶を取り上げると、ぐっと力を込めて蓋を回した。
「よし、開いたぞ」
「ありがとう。フレッド」
ラインはにっこりした。
「当然だろ。なんてったって、俺たちゃ、熱く抱き合った仲だからな」
「うん。そんなこともあったね」
フレッドの軽口に相槌を打ちながら、ラインはビスケットにヌガーを塗り始めた。美味しいヌガーサンドビスケットを作るのにコツはいらない。とにかく、ヌガーをたっぷり塗る。それだけだ。
「まさか、君からキスをせがまれるなんてなぁ」
「効果てきめんだったね。あのラブ・ポーション」
最後にもう1枚のビスケットを上から乗せれば──よし、完成だ。なかなかの出来映えだ。ラインがにっこりしていると、またもや、背後から手が伸びてきた。
「ああ、これ、美味いんだよな」
ロンはヌガーサンドビスケットをひょいと摘み、そのまま口に入れた。
「あーっ」
ラインは呻いた。
「ねえ、もう1枚作ってよ」
「まったく──」
ロンに文句を言い終わらないうちに、誰かがラインの腕を掴んだ。振り向くと、ジョージが立っていた。彼はなぜか、あらゆる表情筋が凝り固まったような顔をしていた。
「ライン、ちょっと来いよ。渡したいものがある」
フレッドがヒュウと口笛を吹いた。
「ねえ、僕のビスケットは?」
ロンの怪訝な声を背中に浴びながら、ラインは廊下に連れ出された。ジョージにヌガーサンドビスケットを渡せていないことなんてすっかり忘れて、ラインは期待に胸を高鳴らせた。だって、これは間違いなく──プレゼント交換の流れだ。
「嬉しいなあ。私、恋人からクリスマスプレゼントを貰うのって初めて」
「じゃあ──当然、こういうのも初めてだろ」
ジョージはラインの腕をぐいと引っ張り、部屋の中に引き入れた。月明かりが差し込む部屋に、トランクとベッドが2つずつ並んでいるのが見えた。それからすぐに、身体がふわっと浮いた。
「──え?」
気がつけば、視界一面に天井が映っている。ラインの脳みそが情報を整理する前に、ジョージの顔が近づいてきた。耳に熱い息がかかって肩が跳ねた。ジョージがすかさずラインの肩を押さえつけたので、身体の下でベッドのスプリングがギシギシと軋んだ。
「どうしたの?」
ラインはわけが分からなかった。しかし、ジョージは答えてくれない。それどころか、ラインの首をペロリと舐めた。それがあまりにも遠慮のない仕草だったので、ラインは悲鳴を上げた。こんなじゃれ方、おばあちゃんの家の猫としか、したことがない。でも、猫はもっと軽かった。ジョージにのしかかられて、息が苦しい。身動きも取れない。これまであまり意識してこなかったけれど、やっぱり男の子って、自分とは全く別の生き物だ。身体は大きいし、力は強いし──
「ジョージ、私、ちょっと怖い」
ラインは訴えた。
「分かった。ごめん」
意外にも、ジョージはすんなりとラインを解放した。ラインはわけの分からないまま、のろのろと起き上がってベッドに腰かけた。
「でも、君が怖がってくれて安心した。君は誰とでも、距離が近いからな」
ジョージがボソッと言った。彼の拗ねたような横顔を見て、ラインはようやく己の失態に気がついた。
「ごめんね。嫌な気持ちにさせて」
ジョージが他の女の子のことを「可愛い」なんて言ったり、自分を放って親しげに話していたりしたら、ラインだって嫌な気持ちになるに違いない。自分はもっと、彼の気持ちを思いやるべきだった。
「私の大切な人はジョージだけだよ」
ラインは真剣に言った。ジョージの口角がピクリと動いた。
「それに、ぜんぶジョージが初めて」
ラインはジョージの手を握った。ついに、ジョージの顔に嬉しそうなニヤニヤが戻ってきた。
「じゃあ、そんな君に──初めての『恋人からのクリスマスプレゼント』を贈呈しよう」
ジョージが立ち上がった。それから、ベッドの横に置かれているトランクを開けて小さな箱を取り出した。ラインは感激のあまり、言葉が出なかった。
「君は宝石が必要ないタイプの女の子だって分かってるけど、たまにはこういうのもいいだろ?」
しばらくの間、ラインはキラキラと光るネックレスを呆然と眺めた。
「嬉しい……ありがとう」
ラインは思わず涙ぐんだ。恋人からアクセサリーを貰うのって、なんだか特別な感じがする。女の子として大切に扱われている気がするし、自分がこの宝石の輝きに見合う人間だと言ってもらえたようで嬉しい。
「そうだ。私からもプレゼントがあるんだよ。いま、寝室に戻って取って──」
「アクシオ!クリスマスプレゼントよ、来い!」
ジョージが杖を振った。そしてすぐに、彼は部屋の扉を開けた。すると、廊下から茶色の紙袋が飛んできた。ラインは間一髪でそれをかわした。紙袋はジョージの手の中に収まった。
「ありがとよ」
ジョージは満足げににっこりしながら、いそいそと紙袋を開けた。
「わお、これはもしかして──」
「チョコレートとキャンディ。手作りだよ」
ジョージは紙袋からチョコレートを取り出すと、しばらくの間、感慨深そうに眺めた。
「冗談抜きでうまいぜ」
チョコレートを頬張ったジョージが珍しく真面目な顔をしたので、ラインは声を上げて笑った。
「チョコレートの周りにくっついてる、サクサクしたのはなんだい?」
「ライスパフだよ。チョコレートが手にくっつかない方が食べやすいでしょ?それに、友達にも配りやすいし」
「君らしいな。でも、俺は友達には配らないぞ。これはぜんぶ俺のだ」
チョコレートを3つまとめて口の中に押し込みながら、ジョージがモゴモゴ言った。
「実はそのチョコレート、『わらしべショコラ』って名前なの」
「ずいぶんと変わった名前だな。まさか、商品化でもするつもりか?」
ジョージはニヤニヤした。
「こっちもうまいな。でも、普通のレモン味じゃない」
ラインの手作りキャンディを慎重に味わいながら、ジョージが言った。
「口に入れた瞬間はすっぱいけど、どんどん甘くなってくる」
「実はそれ『なるほどレモン・キャンディー』って名前なんだけど──」
ラインは説明しながら真っ赤になった。
「ファーストキスの味を再現したキャンディなの」
ジョージは驚いたように目を見開いた。それから、徐々にニヤニヤ顔になった。ジョージはラインをきつく抱きしめた。次の瞬間だった。
トントン
扉をノックする音が部屋に響いた。
「2人とも、そろそろデザートの時間だよ」
返事をする前にドアが開いて、ルーピンが顔を覗かせた。ジョージはちょっとバツの悪そうな顔でラインから離れた。ラインはデザートの並んでいる食堂を目指して、意気揚々と廊下に足を踏み出した。
「ジョージ、分かっていると思うけれど」
後ろから、ルーピンのヒソヒソ声が聞こえる。先頭を歩きながら、ラインは耳をそば立てた。
「彼女はまだ未成年だよ。あまり急かしては──」
「何もしてない」
ジョージがきっぱりと言った。
「それに、愛し合うことに年齢は関係ないと、俺は思うけどね」
それきり2人が黙り込んだので、不思議に思ったラインは振り返った。なぜか、今度はルーピンがバツの悪そうな顔をしていた。