the Goblet of Fire
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その日は激しい雨が降っていて、列車の窓から見える空には稲妻が光っていた。窓が打ち付けられた雨粒でガタガタと揺れている。その空模様はまるで今の気分のようだった。久々の再会を喜ぶ生徒達をかき分けて最後尾まで進み、ようやく席の空いたコンパートメントを見つける。
「──こんにちは、ここ、空いてるかしら?」
窓際で本を読んでいる女の子に話しかけると、彼女は顔を上げて小さく頷いた。1年生だろうか──自分よりかなり幼く見える。彼女の向かい側に腰を下ろし、ふーっと息を吐き出す。窓の外をロンドンの街並みが通り過ぎて行く。到着するまで予習しようと意気込んで基礎呪文集を開いたものの、次に目を開けた時には、外の景色が深い緑の山々に変わっていた。なにしろ疲れ切っていたのだ。この列車に乗り込むまでに、1年分の厄介を味わった気がする。大勢の人が行き交う駅のホームで壁に突っ込む課題があるなら、そう教えておいて欲しかった。
「おい、見ろよ、あの子。見かけない顔だ。基礎呪文集を開いてるけど──新入生には見えないな」
突如聞こえた声に意識を引き戻された。おそらく上級生の何人かが、通路からコンパートメントの中を覗いている。即座に瞼を閉じて、眠り込んでいるふりをする。
「もしかして──例の編入生じゃないか?」
人の気配が増えてきた気がする。通路がザワザワとし始めて、もうこれ以上寝ているふりは出来そうにない。覚悟を決めて瞼を開けようとしたその時、勢いよくブラインドが閉まる音がした。驚いて目を開けると、窓際に座っていた女の子が、溜め息とともに着席するところだった。
「──ありがとう、助かったわ」
お礼を言うと、彼女は小さく首を振ってから微笑んだ。ふと思い立って、鞄の中からチョコレートを取り出す。そのチョコレートはマグルに人気の熊の形をしており、中にナッツが入っているものだった。
「これ美味しいの。良かったら食べてね」
「──これ、動かないの?」
女の子は不思議そうにチョコレートの熊を眺めている。
「ごめんね、残念ながら──動かないのよ」
なるほど、魔法使いのチョコレートは普通動くものなのかもしれない。
「ううん──ありがとう、ライン」
その言葉を聞いて、一瞬、息が止まった。彼女でさえ自分の事を知っている。今後の学校生活が思いやられ、チョコレートを口に放り込む少女を横目に、溜め息をついた。
――――
びしょ濡れの1年生達の組分けが終わり、ようやく食事にありつけると皆がソワソワしだした頃、ダンブルドア校長がゆっくりと立ち上がって右手を挙げた。
「ここで、皆に新しい友人を紹介させて頂こうかの。彼女は14歳じゃが、諸事情により今年度からホグワーツに編入学することになった。1年生と一緒に授業を受けることもあるじゃろう。皆、仲良くするように」
「マーリン、ライン!」
マクゴナガル先生に名前を呼ばれ、恐る恐る立ち上がる。途端に周囲がザワザワとし始めたため、俯きながら歩く。
「──本当だったのね、生き残った女の子の噂」
「だから僕、言っただろ。魔法事故惨事部が急に忙しくなったのは、あの子が復活したからだって──パパに聞いたんだ」
その声に顔を上げると、こちらを見つめる女の子と目が合った。ふわふわとした栗色の髪が顔を縁取っている。
ライン・マーリンは、未だかつて、こんなにも大勢から注目を浴びたことは無かった。帽子を持ち上げる手が震えたが、それが緊張なのか、喋る帽子に対する恐怖なのか分からない。
「ほぉ──久しぶりだねぇ。君のご先祖方は、どの寮であっても、その魔力をもって偉大な魔法使いになった。勿論、偉大という言葉には色々な意味があるがね────君はどうかな?どこにでも染まれる柔軟性、頑固さもある、なるほど。ひどく怯えているが芯は強い。はて、どうしようか──君の望みは?」
「──え、私の望みですか?」
いきなり話しかけられたため、ラインはひどく驚いた。この帽子、会話も出来るんだ──
「その通り。君はどの寮に入り、何をしたいかな?」
震えを抑えて、なるべくはっきり話そうと努力する。
「私は受け入れて貰えるのなら、どの寮でも構いません。でも──友達が欲しいです」
少し子供っぽいが、最後の言葉が本音だった。しかし自分に学生生活を楽しむ余裕はあるのだろうか。もしかしたら、帽子に何か諭されるかもしれない。
「素晴らしい。それならば──」
頭上で帽子が大きく息を吸う感覚があり──帽子が息を吸う?──ラインは身体を硬くして、来たるべき衝撃に備えた。
『グリフィンドール!!!!』
その瞬間、赤色の集団のテーブルから割れんばかりの拍手と歓声が響いた。誰かが指笛を鳴らしている──良かった、自分はどうやら歓迎されているらしい。
「見ろよハリー、もっといかつい子かと思ってたぜ」
赤毛の男の子が隣の男の子を小突いている。さらにその隣の女の子が、男の子達をぎゅうぎゅうと向こうへ押しやり、長椅子に1人分の空間を作った。
「ここ空いてるの、良ければ座って」
「ナイス、ハーマイオニー!」
ハーマイオニーと呼ばれた女の子は、赤毛の男の子を無視して、愛想良く手招きしてくれた。どうか、皆の注目が一刻も早く自分から逸れますように──ラインはそう願いながら、そそくさと彼女の隣に腰掛けた。
「初めまして、私、ハーマイオニーグレンジャーよ。私も10歳までマグルの学校に通っていたの。それとこの人はロン。それでこっちは──貴方、知ってるかしら──ハリーポッターよ」
ハーマイオニーは小声で一気に喋ったあと、にっこりと笑いかけてくれた。その優しさに触れて、新しい学校生活に対する不安が少し和らぐ。
ダンブルドア先生の話が終わると、目の前の机にご馳走が現れた。ラインはもう多少のことでは驚かないと決めていた。いちいち驚いていたら、今日寝るまでに、心臓が一生分の仕事をしてしまうかもしれない。
「──死喰い人に母親を殺されたのよ」
「あのマーリンの家系だろ?なんだか彼女、そんな風に見えないけど──」
あちらこちらから視線を感じて、なんだか居心地が悪い。こちらを見てヒソヒソと話をしているのは、数人だけではなさそうだ。
「気にしないで、ホグワーツの生徒が噂好きなのはいつものことなんだ。すぐに飽きるよ」
隣から気遣うような声が聞こえてきて、ラインは顔を上げた。
「貴方も苦労した?」
「うん、相当ね」
ハリーがそう言ってニヤッと笑ったので、つられて笑ってしまう。生き残った男の子は、案外普通の男の子のようだ。
「ねぇ、君、もう何か呪文を使えるの?」
「──いいえ、まだ何も使えないわ。明日から1年生と一緒に授業を受けたり、先生方に個人授業をして頂いたりして、勉強する予定なの」
「へぇ、何も?」
入れ替わり立ち替わり、他の寮の机からも、わざわざ話しかけに来てくれる人がいる。嬉しいけれど、満足に食事をすることが出来ない。いつのまにか目の前にあったキャラメルパイが消えてしまい、ラインはがっくりと肩を落とした。
「キャラメルパイが食べたかったの?これで良ければあげるよ」
その声に顔を上げると、ぽっちゃりした男の子が自分の皿を差し出している。
「いいの?でも、貴方の分が無くなっちゃうわ」
「遠慮しないで。僕、実はキャラメルパイってそんなに好きじゃないし」
男の子はそう言うと、肩をすくめて笑った。
「嘘つくなよネビル、いつも5つは食ってるじゃないか」
ロンに小突かれて、男の子の耳がほんのりと赤くなった。彼の隣の女の子2人組がクスクスと笑っている。
「ありがとう──本当はどうしても食べたかったの」
ラインはキャラメルパイをネビルから受け取り、口の中に放り込んだ。バターの香りがふわっと広がる。思わず笑ってしまいそうなくらい美味しい。
デザートがきれいさっぱり無くなった頃、ダンブルドア先生が立ち上がった。
「さて、みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。いくつか知らせることがある」
その"いくつかの知らせ"は、生徒達を非常に動揺させるものだった。皆が三大魔法学校対抗試合の開催にどよめき、新たな闇の魔術に対する防衛術の教師、マッドアイ・ムーディに慄いた。ラインは自分への興味が分散されたことに安堵していた。
ダンブルドア先生が腰を下ろし、ムーディ先生と話し始めた頃、マクゴナガル先生がこちらへ歩いてくるのが見えた。
「皆さん、分かっていると思いますが──」
そう話し出した先生の視線は、主に双子の男子生徒へ向けられているように見えた。
「他校の学生達に浮かれ、羽目を外さないように。グリフィンドール寮の生徒として尊敬される行動を期待します。ミスグレンジャー、ミスマーリンを寮まで案内して差し上げて下さい。貴方と同室です」
ネビルの隣の女の子2人組がこちらに手を振っている。彼女達とも同室のようだ。
――――
「ねぇライン、そのシリーズが好きなの?」
ハーマイオニーはラインの足元を指差し、期待に目を輝かせた。ラインは編入初日の全てのイベントを終えて、ようやく自分のベッドに腰を下ろしたところだった。
「そう、大ファンなの。6歳の時に初めて読んでから、何度も読み返してる」
トランクを大きく開いて、彼女に中身を見せる。そこにはマグルの世界で流行っているファンタジー小説が詰め込まれていた。ホグワーツに編入すれば、読書する時間などないことは分かっていたが、手元にこの本があるだけで幸せだった。
「そのシリーズ、私も大好きなの」
そう言った彼女の声は喜びに満ちていた。
「この学校で初めて出会ったわ、その本を読んでる人に!」
「マグルの小説だからよ、ハーマイオニーは誰が好き?」
ラインは興奮を押し殺して聞いた。まさかこちらの世界でも、こんな話が出来るとは思っていなかった。
「──エシャロット先生」
ハーマイオニーが囁いた途端、ラインは歓声を上げた。彼女とは気が合うみたいだ。組分け帽子に本音を言って良かった──なんだか明日からの学校生活も頑張れそうな気がする。
「──こんにちは、ここ、空いてるかしら?」
窓際で本を読んでいる女の子に話しかけると、彼女は顔を上げて小さく頷いた。1年生だろうか──自分よりかなり幼く見える。彼女の向かい側に腰を下ろし、ふーっと息を吐き出す。窓の外をロンドンの街並みが通り過ぎて行く。到着するまで予習しようと意気込んで基礎呪文集を開いたものの、次に目を開けた時には、外の景色が深い緑の山々に変わっていた。なにしろ疲れ切っていたのだ。この列車に乗り込むまでに、1年分の厄介を味わった気がする。大勢の人が行き交う駅のホームで壁に突っ込む課題があるなら、そう教えておいて欲しかった。
「おい、見ろよ、あの子。見かけない顔だ。基礎呪文集を開いてるけど──新入生には見えないな」
突如聞こえた声に意識を引き戻された。おそらく上級生の何人かが、通路からコンパートメントの中を覗いている。即座に瞼を閉じて、眠り込んでいるふりをする。
「もしかして──例の編入生じゃないか?」
人の気配が増えてきた気がする。通路がザワザワとし始めて、もうこれ以上寝ているふりは出来そうにない。覚悟を決めて瞼を開けようとしたその時、勢いよくブラインドが閉まる音がした。驚いて目を開けると、窓際に座っていた女の子が、溜め息とともに着席するところだった。
「──ありがとう、助かったわ」
お礼を言うと、彼女は小さく首を振ってから微笑んだ。ふと思い立って、鞄の中からチョコレートを取り出す。そのチョコレートはマグルに人気の熊の形をしており、中にナッツが入っているものだった。
「これ美味しいの。良かったら食べてね」
「──これ、動かないの?」
女の子は不思議そうにチョコレートの熊を眺めている。
「ごめんね、残念ながら──動かないのよ」
なるほど、魔法使いのチョコレートは普通動くものなのかもしれない。
「ううん──ありがとう、ライン」
その言葉を聞いて、一瞬、息が止まった。彼女でさえ自分の事を知っている。今後の学校生活が思いやられ、チョコレートを口に放り込む少女を横目に、溜め息をついた。
――――
びしょ濡れの1年生達の組分けが終わり、ようやく食事にありつけると皆がソワソワしだした頃、ダンブルドア校長がゆっくりと立ち上がって右手を挙げた。
「ここで、皆に新しい友人を紹介させて頂こうかの。彼女は14歳じゃが、諸事情により今年度からホグワーツに編入学することになった。1年生と一緒に授業を受けることもあるじゃろう。皆、仲良くするように」
「マーリン、ライン!」
マクゴナガル先生に名前を呼ばれ、恐る恐る立ち上がる。途端に周囲がザワザワとし始めたため、俯きながら歩く。
「──本当だったのね、生き残った女の子の噂」
「だから僕、言っただろ。魔法事故惨事部が急に忙しくなったのは、あの子が復活したからだって──パパに聞いたんだ」
その声に顔を上げると、こちらを見つめる女の子と目が合った。ふわふわとした栗色の髪が顔を縁取っている。
ライン・マーリンは、未だかつて、こんなにも大勢から注目を浴びたことは無かった。帽子を持ち上げる手が震えたが、それが緊張なのか、喋る帽子に対する恐怖なのか分からない。
「ほぉ──久しぶりだねぇ。君のご先祖方は、どの寮であっても、その魔力をもって偉大な魔法使いになった。勿論、偉大という言葉には色々な意味があるがね────君はどうかな?どこにでも染まれる柔軟性、頑固さもある、なるほど。ひどく怯えているが芯は強い。はて、どうしようか──君の望みは?」
「──え、私の望みですか?」
いきなり話しかけられたため、ラインはひどく驚いた。この帽子、会話も出来るんだ──
「その通り。君はどの寮に入り、何をしたいかな?」
震えを抑えて、なるべくはっきり話そうと努力する。
「私は受け入れて貰えるのなら、どの寮でも構いません。でも──友達が欲しいです」
少し子供っぽいが、最後の言葉が本音だった。しかし自分に学生生活を楽しむ余裕はあるのだろうか。もしかしたら、帽子に何か諭されるかもしれない。
「素晴らしい。それならば──」
頭上で帽子が大きく息を吸う感覚があり──帽子が息を吸う?──ラインは身体を硬くして、来たるべき衝撃に備えた。
『グリフィンドール!!!!』
その瞬間、赤色の集団のテーブルから割れんばかりの拍手と歓声が響いた。誰かが指笛を鳴らしている──良かった、自分はどうやら歓迎されているらしい。
「見ろよハリー、もっといかつい子かと思ってたぜ」
赤毛の男の子が隣の男の子を小突いている。さらにその隣の女の子が、男の子達をぎゅうぎゅうと向こうへ押しやり、長椅子に1人分の空間を作った。
「ここ空いてるの、良ければ座って」
「ナイス、ハーマイオニー!」
ハーマイオニーと呼ばれた女の子は、赤毛の男の子を無視して、愛想良く手招きしてくれた。どうか、皆の注目が一刻も早く自分から逸れますように──ラインはそう願いながら、そそくさと彼女の隣に腰掛けた。
「初めまして、私、ハーマイオニーグレンジャーよ。私も10歳までマグルの学校に通っていたの。それとこの人はロン。それでこっちは──貴方、知ってるかしら──ハリーポッターよ」
ハーマイオニーは小声で一気に喋ったあと、にっこりと笑いかけてくれた。その優しさに触れて、新しい学校生活に対する不安が少し和らぐ。
ダンブルドア先生の話が終わると、目の前の机にご馳走が現れた。ラインはもう多少のことでは驚かないと決めていた。いちいち驚いていたら、今日寝るまでに、心臓が一生分の仕事をしてしまうかもしれない。
「──死喰い人に母親を殺されたのよ」
「あのマーリンの家系だろ?なんだか彼女、そんな風に見えないけど──」
あちらこちらから視線を感じて、なんだか居心地が悪い。こちらを見てヒソヒソと話をしているのは、数人だけではなさそうだ。
「気にしないで、ホグワーツの生徒が噂好きなのはいつものことなんだ。すぐに飽きるよ」
隣から気遣うような声が聞こえてきて、ラインは顔を上げた。
「貴方も苦労した?」
「うん、相当ね」
ハリーがそう言ってニヤッと笑ったので、つられて笑ってしまう。生き残った男の子は、案外普通の男の子のようだ。
「ねぇ、君、もう何か呪文を使えるの?」
「──いいえ、まだ何も使えないわ。明日から1年生と一緒に授業を受けたり、先生方に個人授業をして頂いたりして、勉強する予定なの」
「へぇ、何も?」
入れ替わり立ち替わり、他の寮の机からも、わざわざ話しかけに来てくれる人がいる。嬉しいけれど、満足に食事をすることが出来ない。いつのまにか目の前にあったキャラメルパイが消えてしまい、ラインはがっくりと肩を落とした。
「キャラメルパイが食べたかったの?これで良ければあげるよ」
その声に顔を上げると、ぽっちゃりした男の子が自分の皿を差し出している。
「いいの?でも、貴方の分が無くなっちゃうわ」
「遠慮しないで。僕、実はキャラメルパイってそんなに好きじゃないし」
男の子はそう言うと、肩をすくめて笑った。
「嘘つくなよネビル、いつも5つは食ってるじゃないか」
ロンに小突かれて、男の子の耳がほんのりと赤くなった。彼の隣の女の子2人組がクスクスと笑っている。
「ありがとう──本当はどうしても食べたかったの」
ラインはキャラメルパイをネビルから受け取り、口の中に放り込んだ。バターの香りがふわっと広がる。思わず笑ってしまいそうなくらい美味しい。
デザートがきれいさっぱり無くなった頃、ダンブルドア先生が立ち上がった。
「さて、みんなよく食べ、よく飲んだことじゃろう。いくつか知らせることがある」
その"いくつかの知らせ"は、生徒達を非常に動揺させるものだった。皆が三大魔法学校対抗試合の開催にどよめき、新たな闇の魔術に対する防衛術の教師、マッドアイ・ムーディに慄いた。ラインは自分への興味が分散されたことに安堵していた。
ダンブルドア先生が腰を下ろし、ムーディ先生と話し始めた頃、マクゴナガル先生がこちらへ歩いてくるのが見えた。
「皆さん、分かっていると思いますが──」
そう話し出した先生の視線は、主に双子の男子生徒へ向けられているように見えた。
「他校の学生達に浮かれ、羽目を外さないように。グリフィンドール寮の生徒として尊敬される行動を期待します。ミスグレンジャー、ミスマーリンを寮まで案内して差し上げて下さい。貴方と同室です」
ネビルの隣の女の子2人組がこちらに手を振っている。彼女達とも同室のようだ。
――――
「ねぇライン、そのシリーズが好きなの?」
ハーマイオニーはラインの足元を指差し、期待に目を輝かせた。ラインは編入初日の全てのイベントを終えて、ようやく自分のベッドに腰を下ろしたところだった。
「そう、大ファンなの。6歳の時に初めて読んでから、何度も読み返してる」
トランクを大きく開いて、彼女に中身を見せる。そこにはマグルの世界で流行っているファンタジー小説が詰め込まれていた。ホグワーツに編入すれば、読書する時間などないことは分かっていたが、手元にこの本があるだけで幸せだった。
「そのシリーズ、私も大好きなの」
そう言った彼女の声は喜びに満ちていた。
「この学校で初めて出会ったわ、その本を読んでる人に!」
「マグルの小説だからよ、ハーマイオニーは誰が好き?」
ラインは興奮を押し殺して聞いた。まさかこちらの世界でも、こんな話が出来るとは思っていなかった。
「──エシャロット先生」
ハーマイオニーが囁いた途端、ラインは歓声を上げた。彼女とは気が合うみたいだ。組分け帽子に本音を言って良かった──なんだか明日からの学校生活も頑張れそうな気がする。
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