リドルさんのお母様になりたい!
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リドルさんは、ちゃんと最後まで席に座って勉強をしていた。
けれど二人きりになり、私がやっと話し掛けようとすると、私に覇気のない声で「お疲れ様」と言い、荷物を持ってすたすたと歩いて行ってしまう。
「リドルさん」
「……」
「リドルさん」
「……」
沈黙が続く。
「このまま無視し続けていたら、あなたのお部屋まで私は行ってしまいますよ」
そう言って、リドルさんはやっと足を止めた。
振り返ったリドルさんは、ひどく傷付いた表情をしていて。
「……フラン、今は放っておいて欲しい」
「……なら、ハグだけしましょう」
「嫌だ」
明確に拒否されたのは、はじめてだった。
しかしリドルさんは言ってしまった後に、何故自分がそれを言ったのかわからないという表情をして首を振った。
「……違うんだ、今は一人にして欲しいだけだ」
「一人にするので、ハグだけさせてください」
「嫌だと、」
「秘密をバラされても良いのですか?」
リドルさんは瞳を見開いてこちらを見る。私は──こんなこと、嘘でも言いたくなかったから。ちょっと目を逸らした。
「……何?キミは……何故」
「リドルさんの部屋まで行きましょうか」
「……なんで」
リドルさんは目に見えて歩みを遅くしたものの、いくら遅くたっていつかは目的地に着いてしまう。
躊躇いはあった。しかしリドルさんの部屋を、リドルさんは思いの外素直に開けた。
「失礼しますね」
私は後ろ手にドアを閉め、すぐにリドルさんを後ろから抱きしめた。リドルさんの小さな肩がびくりと震える。
「リドルさん、リドルさん、大丈夫ですから」
「な、あっ……」
資料を落としてしまいそうだから大きく抵抗できないのを察するが、ちょうどいいのでそのまま続けてやる。彼の首筋へ頬を当てて。
「あなたのことだって、ちゃんと見ていましたよ」
「ひ、な、な……」
「あなたが誰よりも黙々と頑張っているのを、ちゃんと見ていました。嘘ではないです」
頭から頬にかけてを撫でる。なんて形の良い頬なのだろうと思った。
「嫌、やめろっ……」
「嫌ですか?」
「……嫌だよっ」
私はリドルさんから大人しく手を離し、私の方へ向き直るリドルさんへもう何かをする意思がないことを示すため、両手のひらを彼へ見せるように挙げた。
「リドルさん、好きです」
「……」
「あなたのことが、好きです。私は」
「……なん、」
「はい」
「なんで、ボクを」
「誰よりも、頑張っていたから」
「……」
「一人ででも、頑張っていたから」
「……一人で、頑張り続ければ……いいの……?」
はじめて、触れられた気がした。
私が、私がリドルさんを、今、剥き出しの、あまりにも痛々しい、有刺鉄線でがんじがらめのリドルさんを、今。
まだ指先が触れただけなのに、とんでもなく痛かった。
でも、でも。その痛みを少しでも一緒に味わえるのは、何という幸福だろうか。
「ッ……馬鹿っ!」
私が慌てた脳味噌のまま喝破すると、リドルさんはびくりと肩を揺らして、わかりやすく怯えた表情をする。
その顔に顔色を伺う色が入っているものだから、苦しくて苦しくて胸を掻き毟ってしまうかと思った。
ねえ、どうして。
どうしてこの子を叱ることができたの。
ねえ、どうしてなのですか。教えてください。教えろよクソ女。教えて。おい、おい!教えろ!教えろ!!!
わからない、わからない。苦しい。苦しくて苦しくて、痛くて痛くて、痛くて。涙すら出てきて、見られたくなくて、首を振って後退りをし、壁へもたれて、そのままずりずりとずり落ちた。
「フラン……?」
リドルさんが私の様子を見て資料をベッドへ置いて、大丈夫かと私の顔を覗き込もうとするので、やめてくださいと首を振った。苦しい。リドルさんの慌てた表情も、頭がぼうっとしてどこか現実味がなかった。苦しい。
突然耐えられないほど苦しくなってきて──はじめて、自分の呼吸がおかしいことに気付いた。
「フラン、喋らないで、息をゆっくり吐くんだ」
「リドルさ、な、な」
「聞いているのかい!喋るな!」
咳き込み咳き込み、ぜえぜえと呼吸している音がばかみたいで。なんで私がこんな苦しくなってばかみたい。苦しい。悲しくて悲しくて、リドルさんが心配してくれてありがとうございます。
「フラン!」
苦しい。苦しい。苦しいけれど。
リドルさん、ねえ、リドルさん。
心配そうな顔をしないで。あなたが私にそうすると、もっと苦しくなるんです。全身が冷たくなって、ゾッとするんです。
苦しい。
息ができない。息のタイミングが、リズムがわからない。ずっとやってきたのに、忘れてしまっている。
リドルさんにそっと前から抱き締められる。
あたたかい。
あたたかかった。
苦しい。苦しい。
「フラン、ボクの言うことを聞いて」
「っ、っひ、」
「命令だよ、フラン」
酸素が足りない気がして一生懸命呼吸をしている、ばかな頭にも。
澄んだ声が。
「息をゆっくり吐くんだよ。5秒以上は掛けて」
私は回らない頭で、それに従った。
回らなくったって頭は頭で。恥ずかしくて私がこんなになる権利はないのにどうして?あなたにこうして貰えて嬉しくて、もう離さなくってもいいですかね、なんてつらつらと考えていたけれど。
「……少し、落ち着いた?」
彼の胸の中でこくりと頷く。
申し訳がない。居た堪れなくて、彼の顔が見られない。
見られないのに、自分の熱い体温とリドルさんのあたたかさ、嗅ぎ慣れないリドルさんの服のにおいに、思考がとろとろしていくのがわかる。呼吸が落ち着いたら、急に安心してしまった。
後に残ったのは、申し訳なさだけだった。
「……無様な姿を」
「いいよ」
彼に何を言えば良いのか、わからない。
けれど、彼の腰から手を離したくなんてなくって。
「……落ち着いたなら、」
「……」
「あの……」
「……」
リドルさんも離せとは言い辛い様子で、申し訳がないのだけれど。嫌だと首を振ることで表明した。
「……話すには少し、近すぎるかなと」
「ちょうどいいと思います」
「……そうか」
彼は苦笑する。
「キミのそう言う姿はあまり見たことがなかったから、新鮮だよ」
「……」
「……どう、しようかな」
リドルさんの声は本当にどうしようか困っている様子で、申し訳ないとは思うけれど。
「……はじめての患者さんに、なれましたね」
「……あ、そうか。……そうかもしれない」
「そうですよ」
キスでもしてくれたらよかったのに、なんて彼に求めるには到底無理なことを今更のように考えるけれど。
「……あなたに、幸せになってほしい、な」
あまりにも本心な言葉が、口から滑り落ちて。本心すぎて、率直すぎて、部屋の空気が変わったのがわかった。
リドルさんは、首をそうと曲げて、私の次の言葉を待ってくれていて、ねえ、あなたが好きなんです!って駄々を捏ねたいような気分にすらなった。
涙が止まらない。ぐしゅぐしゅと鼻を鳴らしながら。
「あなたが幸せになる為にだったら、私はなんでもします。今まで友だちとやってみたいと思っていたこと、お嫌でなければ私と全部やりましょう」
「……どうして」
「あなたのことが好きだからです」
「……誰にでも、言っているの」
「そんなわけ!」
「……なら、どうして」
「……」
どうしてだかは、わかっていた。
私たち、似てるんです。いいえ、私が勝手にそう思ってるとこもあるかもしれませんけど、でも。似てるから。似てるから。
あなたの中のお母さんへの愛情に勝ちたい。
勝ったら、私の言葉で呪縛を一つずつ解き放ってあげたい。
いつか学校を休んで一緒に遊びに行って、ケーキをいっぱい、後から後悔するくらい食べて、けらけら笑って、ピアスとかもあけちゃいましょうか?お母様に禁止されていたことを出来るだけいっぱいやって、勉強もせずに寝ちゃって、それで、いっぱいいっぱい勉強するんです。それをした上で、いっぱいいっぱい勉強するんです。それで、ちゃんと魔法医術士になって、お母様の拘っていたことに何の意味があったのか、それをしたからって私たちがどう変わったのかって笑ってやるんです。
私たち真面目だから、きっと遊んでいる最中、すごく怖いと思います。ケーキなんて怖くって味がしないかもしれない。その日勉強しなかったことが怖くて、学校を真っ当ではない理由で休んだことが怖くて、夜に眠れないかもしれない。遊びに行くというよりは、延々と度胸試しをしている感じでしょうね。でも、それをする意味は絶対に、絶対にあるんです。
だから、ね。自由になってください。お願いします。お願いしますから。なんて──雁字搦めの私がそんなことを言ってもおかしいですか?いいえ、雁字搦めだからこそ、そう強く強く強く思うんです。
──でも、まだ早いから。まだ、時間があるから。
「……大丈夫、いつか絶対に、教えて差し上げますから。
……それより、次の勉強会は、いつにしましょうか」
いっそ毎日開催でもいいかもしれませんね、と私が言うとリドルさんは何故か視線を彷徨わせた。
「……キミ、勉強会開くと他の寮生の面倒を見てしまうじゃないか。自分自身のことは……」
「え?いや、リドルさんも勉強会の後に個人的に勉強しているでしょう」
「や、やっているけれど、……そんな、キミも……そしたら、勉強会を開いて、キミになんの利益があるんだ」
「リドルさんと一緒の時間を過ごせるのが嬉しいのですよ」
「……嘘だ」
「本当です。それに、リドルさんが寮生に勉強を教えていたり、自分の勉学を進めていたりするのを見ていると、私も頑張ろうと思える」
リドルさんは黙る。
「……いえ、今決めずとも、今度のテストの成績を見て決めていただけたらいいかもしれません」
「……それはそう、だけれど、そうしたら、キミどれだけ頑張らなければいけないか」
「リドルさんに言われたくありません」
私は思わず苦笑した。リドルさんは肩を落として、小さく溜息を吐いた。
けれど二人きりになり、私がやっと話し掛けようとすると、私に覇気のない声で「お疲れ様」と言い、荷物を持ってすたすたと歩いて行ってしまう。
「リドルさん」
「……」
「リドルさん」
「……」
沈黙が続く。
「このまま無視し続けていたら、あなたのお部屋まで私は行ってしまいますよ」
そう言って、リドルさんはやっと足を止めた。
振り返ったリドルさんは、ひどく傷付いた表情をしていて。
「……フラン、今は放っておいて欲しい」
「……なら、ハグだけしましょう」
「嫌だ」
明確に拒否されたのは、はじめてだった。
しかしリドルさんは言ってしまった後に、何故自分がそれを言ったのかわからないという表情をして首を振った。
「……違うんだ、今は一人にして欲しいだけだ」
「一人にするので、ハグだけさせてください」
「嫌だと、」
「秘密をバラされても良いのですか?」
リドルさんは瞳を見開いてこちらを見る。私は──こんなこと、嘘でも言いたくなかったから。ちょっと目を逸らした。
「……何?キミは……何故」
「リドルさんの部屋まで行きましょうか」
「……なんで」
リドルさんは目に見えて歩みを遅くしたものの、いくら遅くたっていつかは目的地に着いてしまう。
躊躇いはあった。しかしリドルさんの部屋を、リドルさんは思いの外素直に開けた。
「失礼しますね」
私は後ろ手にドアを閉め、すぐにリドルさんを後ろから抱きしめた。リドルさんの小さな肩がびくりと震える。
「リドルさん、リドルさん、大丈夫ですから」
「な、あっ……」
資料を落としてしまいそうだから大きく抵抗できないのを察するが、ちょうどいいのでそのまま続けてやる。彼の首筋へ頬を当てて。
「あなたのことだって、ちゃんと見ていましたよ」
「ひ、な、な……」
「あなたが誰よりも黙々と頑張っているのを、ちゃんと見ていました。嘘ではないです」
頭から頬にかけてを撫でる。なんて形の良い頬なのだろうと思った。
「嫌、やめろっ……」
「嫌ですか?」
「……嫌だよっ」
私はリドルさんから大人しく手を離し、私の方へ向き直るリドルさんへもう何かをする意思がないことを示すため、両手のひらを彼へ見せるように挙げた。
「リドルさん、好きです」
「……」
「あなたのことが、好きです。私は」
「……なん、」
「はい」
「なんで、ボクを」
「誰よりも、頑張っていたから」
「……」
「一人ででも、頑張っていたから」
「……一人で、頑張り続ければ……いいの……?」
はじめて、触れられた気がした。
私が、私がリドルさんを、今、剥き出しの、あまりにも痛々しい、有刺鉄線でがんじがらめのリドルさんを、今。
まだ指先が触れただけなのに、とんでもなく痛かった。
でも、でも。その痛みを少しでも一緒に味わえるのは、何という幸福だろうか。
「ッ……馬鹿っ!」
私が慌てた脳味噌のまま喝破すると、リドルさんはびくりと肩を揺らして、わかりやすく怯えた表情をする。
その顔に顔色を伺う色が入っているものだから、苦しくて苦しくて胸を掻き毟ってしまうかと思った。
ねえ、どうして。
どうしてこの子を叱ることができたの。
ねえ、どうしてなのですか。教えてください。教えろよクソ女。教えて。おい、おい!教えろ!教えろ!!!
わからない、わからない。苦しい。苦しくて苦しくて、痛くて痛くて、痛くて。涙すら出てきて、見られたくなくて、首を振って後退りをし、壁へもたれて、そのままずりずりとずり落ちた。
「フラン……?」
リドルさんが私の様子を見て資料をベッドへ置いて、大丈夫かと私の顔を覗き込もうとするので、やめてくださいと首を振った。苦しい。リドルさんの慌てた表情も、頭がぼうっとしてどこか現実味がなかった。苦しい。
突然耐えられないほど苦しくなってきて──はじめて、自分の呼吸がおかしいことに気付いた。
「フラン、喋らないで、息をゆっくり吐くんだ」
「リドルさ、な、な」
「聞いているのかい!喋るな!」
咳き込み咳き込み、ぜえぜえと呼吸している音がばかみたいで。なんで私がこんな苦しくなってばかみたい。苦しい。悲しくて悲しくて、リドルさんが心配してくれてありがとうございます。
「フラン!」
苦しい。苦しい。苦しいけれど。
リドルさん、ねえ、リドルさん。
心配そうな顔をしないで。あなたが私にそうすると、もっと苦しくなるんです。全身が冷たくなって、ゾッとするんです。
苦しい。
息ができない。息のタイミングが、リズムがわからない。ずっとやってきたのに、忘れてしまっている。
リドルさんにそっと前から抱き締められる。
あたたかい。
あたたかかった。
苦しい。苦しい。
「フラン、ボクの言うことを聞いて」
「っ、っひ、」
「命令だよ、フラン」
酸素が足りない気がして一生懸命呼吸をしている、ばかな頭にも。
澄んだ声が。
「息をゆっくり吐くんだよ。5秒以上は掛けて」
私は回らない頭で、それに従った。
回らなくったって頭は頭で。恥ずかしくて私がこんなになる権利はないのにどうして?あなたにこうして貰えて嬉しくて、もう離さなくってもいいですかね、なんてつらつらと考えていたけれど。
「……少し、落ち着いた?」
彼の胸の中でこくりと頷く。
申し訳がない。居た堪れなくて、彼の顔が見られない。
見られないのに、自分の熱い体温とリドルさんのあたたかさ、嗅ぎ慣れないリドルさんの服のにおいに、思考がとろとろしていくのがわかる。呼吸が落ち着いたら、急に安心してしまった。
後に残ったのは、申し訳なさだけだった。
「……無様な姿を」
「いいよ」
彼に何を言えば良いのか、わからない。
けれど、彼の腰から手を離したくなんてなくって。
「……落ち着いたなら、」
「……」
「あの……」
「……」
リドルさんも離せとは言い辛い様子で、申し訳がないのだけれど。嫌だと首を振ることで表明した。
「……話すには少し、近すぎるかなと」
「ちょうどいいと思います」
「……そうか」
彼は苦笑する。
「キミのそう言う姿はあまり見たことがなかったから、新鮮だよ」
「……」
「……どう、しようかな」
リドルさんの声は本当にどうしようか困っている様子で、申し訳ないとは思うけれど。
「……はじめての患者さんに、なれましたね」
「……あ、そうか。……そうかもしれない」
「そうですよ」
キスでもしてくれたらよかったのに、なんて彼に求めるには到底無理なことを今更のように考えるけれど。
「……あなたに、幸せになってほしい、な」
あまりにも本心な言葉が、口から滑り落ちて。本心すぎて、率直すぎて、部屋の空気が変わったのがわかった。
リドルさんは、首をそうと曲げて、私の次の言葉を待ってくれていて、ねえ、あなたが好きなんです!って駄々を捏ねたいような気分にすらなった。
涙が止まらない。ぐしゅぐしゅと鼻を鳴らしながら。
「あなたが幸せになる為にだったら、私はなんでもします。今まで友だちとやってみたいと思っていたこと、お嫌でなければ私と全部やりましょう」
「……どうして」
「あなたのことが好きだからです」
「……誰にでも、言っているの」
「そんなわけ!」
「……なら、どうして」
「……」
どうしてだかは、わかっていた。
私たち、似てるんです。いいえ、私が勝手にそう思ってるとこもあるかもしれませんけど、でも。似てるから。似てるから。
あなたの中のお母さんへの愛情に勝ちたい。
勝ったら、私の言葉で呪縛を一つずつ解き放ってあげたい。
いつか学校を休んで一緒に遊びに行って、ケーキをいっぱい、後から後悔するくらい食べて、けらけら笑って、ピアスとかもあけちゃいましょうか?お母様に禁止されていたことを出来るだけいっぱいやって、勉強もせずに寝ちゃって、それで、いっぱいいっぱい勉強するんです。それをした上で、いっぱいいっぱい勉強するんです。それで、ちゃんと魔法医術士になって、お母様の拘っていたことに何の意味があったのか、それをしたからって私たちがどう変わったのかって笑ってやるんです。
私たち真面目だから、きっと遊んでいる最中、すごく怖いと思います。ケーキなんて怖くって味がしないかもしれない。その日勉強しなかったことが怖くて、学校を真っ当ではない理由で休んだことが怖くて、夜に眠れないかもしれない。遊びに行くというよりは、延々と度胸試しをしている感じでしょうね。でも、それをする意味は絶対に、絶対にあるんです。
だから、ね。自由になってください。お願いします。お願いしますから。なんて──雁字搦めの私がそんなことを言ってもおかしいですか?いいえ、雁字搦めだからこそ、そう強く強く強く思うんです。
──でも、まだ早いから。まだ、時間があるから。
「……大丈夫、いつか絶対に、教えて差し上げますから。
……それより、次の勉強会は、いつにしましょうか」
いっそ毎日開催でもいいかもしれませんね、と私が言うとリドルさんは何故か視線を彷徨わせた。
「……キミ、勉強会開くと他の寮生の面倒を見てしまうじゃないか。自分自身のことは……」
「え?いや、リドルさんも勉強会の後に個人的に勉強しているでしょう」
「や、やっているけれど、……そんな、キミも……そしたら、勉強会を開いて、キミになんの利益があるんだ」
「リドルさんと一緒の時間を過ごせるのが嬉しいのですよ」
「……嘘だ」
「本当です。それに、リドルさんが寮生に勉強を教えていたり、自分の勉学を進めていたりするのを見ていると、私も頑張ろうと思える」
リドルさんは黙る。
「……いえ、今決めずとも、今度のテストの成績を見て決めていただけたらいいかもしれません」
「……それはそう、だけれど、そうしたら、キミどれだけ頑張らなければいけないか」
「リドルさんに言われたくありません」
私は思わず苦笑した。リドルさんは肩を落として、小さく溜息を吐いた。