洋琴抄
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ヴィル・シェーンハイトは、ただただずっとぼんやりと点滴の落ちるのを見ていた。ここ数日は──それしか許される行動がなかったが故に。流したい音楽などはありますかと訊かれて、好きな映画のサウンドトラックを流して貰ったりはしたけれど。
「いつまでこうするつもり?」
「私があなたの顔を完璧に元に戻せる者を見つけるまで。もしくは、あなたに拘束の必要がないと私が判断するまでです」
「……随分暴れたみたいね」
「ええ。はい。凄かったですよ」
連日連夜薬を多量に投与されている、回らない頭で、ヴィルは四肢と腰、膝、肩を専用のベルトでベッド柵へ固定されている自らの状態のことを考える。
現実感がないせいで、拘束に対してさして不快感がないのが救いだった。いや、それを考慮しての投薬なのだろうが。
「認識阻害の魔法をかけて、あなただとわからないようにしながら、医療機関と事務所で対応しています。あなたの知名度を考え、私の自宅と病院を繋いで私の自宅で療養という形になっています。真実を知っているのは事務所の人間と私だけです。何か困っていることなどがあれば、遠慮なくおっしゃってください。手元のコールボタン、使い方は押すだけです」
「……ええ」
慣れているかのような雰囲気を漂わせる対応に、そういえばこの子実家が医者だったわねと関係のないことを考え、必死に気を逸らす。
「活動に関しては、一時休止の表明がマネージャーさんより出ています。病気か怪我かは明瞭にせず、ただ療養ということになっておりますが、犯人は逮捕されています。これからあなたの所属している事務所より起訴、裁判となるでしょう」
「……そう」
「何か経過がありましたら、その都度お教え致します。……映画でも観ますか?」
「……いいわ。少し寝させて頂戴」
「わかりました。ご用があればお気軽にコールしてください」
──このまま寝たら、1年くらい経ってて、起きたら全部解決しててくれないかしら
ヴィルはそう考えて、再度目を瞑った。
薬のおかげで、すぐに意識が落ちてくれるのがせめてもの救いだった。