【JuJu】Short stories
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テストも終わって今日は早く帰ってこれたし、担任の五条先生は出張から今晩帰ってくるから副担任の私は久しぶりに明日は完全オフのお休み
明日は前々から欲しいと思っていた新作コスメを買いに銀座に行こうと思いを馳せ、手毬のようにぽんぽんと弾むような軽い足取りで帰宅した私
万年人手不足である呪術界の後進を育てる高専教諭になってからこのような時間は1年に2~3度取れたら良いところだったりする
担任の五条先生は数少ない特級呪術師で、私は2級呪術師
その関係で五条先生は全国津々浦々任務として呼ばれることが多く、一方の私はあまり現場に出ず、もっぱら教壇に立っていることが多かった
この週末は五条先生がこちらに戻ってきているし、何かあっても担任で特級呪術師である五条先生が対応なさるので副担任で2級呪術師の私には余程のことが無い限りお鉢が回ってくることはなさそうだ
休日の前日……という開放感いっぱいの時間を堪能すべく今月配信が解禁になったらしい、映画館に見に行きたかったけど行けずにいた作品を垂れ流し、普段ならしない晩酌にとっておきのワインを飲みながら、リビングに設置してある1人には大きすぎるソファベッドでゴロゴロと奔放に過ごす
はぁ、幸せ……
幸せすぎてバチが当たりそう……
そんなことを思いながらワインをコクコクと飲み下した
気が付くとあれから寝落ちしていたらしく、垂れ流していた映画は終わっていて
テーブルの上にあるワイングラスのワインは飲み干されていて
正面付けされたロールスクリーンの隙間から弱々しい光がロールスクリーンの枠を強調するかのように縁取っていて、外はもう明るいのだと知らせていた
薄手の毛布を掛けていたお陰で寒くはなかったけど、ダブルサイズになるソファベッドが狭く感じるのは何故だろう……と顔を横に向けると、付けっぱなしになっていたテレビの光で薄らボンヤリ見えるのは銀白色のふわふわしたもの
ソファベッドに置いてたクッションはウニッコ柄のブラックとグレーのペアクッションで、グレーのクッションは私が枕代わりにしていた
ブラックのクッションは白いふわふわしたものの下にある
銀白色のふわふわしたものは頭?に見えるけど、悲しいかな……それなりに良い年齢にも関わらず、私には同衾するような関係の人はいないし、当然心当たりも無い、残念ながら
薄手の毛布に潜り込んでいる銀白色の頭のようなものの全容を見るために毛布を剥ぐとそこにはギリシャ彫刻のように美しく整った顔があって
その顔には心当たりがあるような、ないような
今ここで叫んでいいのか悪いのか……一瞬呼吸を忘れ、ハァと大きく息を吐いた
帰ってきた時、きちんと玄関は施錠したはずなんだけど何故ここに人が入り込んでいるのか、そして何故このギリシャ彫刻さん(仮名)はここで寝ているのか……
昨晩は気持ちよくワインを飲んでいて、つい飲み過ぎたという自覚はある
二日酔いにはギリギリなってないけど、新品を開封したにも関わらず、そこに見えるワインボトルにほぼ中身が残っていないところを見ると、ここ最近では類を見ないほどしたたかに飲んでいたと容易に想像が付いた
アルコールのお陰か、寝入る前の状況がサッパリ思い出せず、今の状況が理解出来ないまま大混乱しているせいで声を発することも失念してしまっていた
私の知ってる人の中で銀白色の髪の持ち主と言えば五条先生が浮かぶけど、彼とはただの同僚教師であり個人的な関係は一切無い
それにいつも黒い目隠しで顔の半分ほどが覆っているので彼の素顔を見たことは無く、このギリシャ彫刻さんが五条先生かどうかの確信は持てなかった
だからと言ってギリシャ彫刻さんをこのままにしておく訳にもいかない
仮にこのギリシャ彫刻さんが五条先生だったとしても、何故彼がここに居るのかも皆目見当が付かないくらいの関係だし
どっかの世界から何らかの理由でこの世界に転生してきた人……なんて、昨晩垂れ流していた映画じゃあるまいし、現実にはあり得ないだろう
危険人物かどうかも分からないギリシャ彫刻さんを今すぐ起こすべきか、このまま起こさず警察に通報すべきか……と、寝ているのに恐ろしいほど整っている顔を無意識のまま見つめ、悩んでいるとギリシャ彫刻さんの瞼がピクッと動いた
ヤバい、起きそう……!
距離を取ろうとソファベッドから下りるため立ち上がると手首を掴まれ引き戻される
勢いのままぽすんとソファベッドに腰を下ろした私は、急なことに対応出来ずポカンとギリシャ彫刻さんを見下ろしていると、ふるふると小刻みに銀白色の睫を揺らしゆっくりと見せた瞳は浅葱色。私はその瞳にさっぱり見覚えは無くて
これほどまでに印象的な瞳なら1度見たら忘れられないだろう
この部屋の少ない光をふんだんに集め、キラキラとしている浅葱色の瞳から目が逸らせないでいると「おはよ」と、形の良い唇から紡がれた言葉に合わせグイッと引き寄せられた拍子に体勢を崩した私は毛布の中へ引き摺り込まれ、ギュッと抱きしめられた
「ちょっ……!」
「あやせんせ、もう少しだけ…一緒に寝よ」
「!……五条先生っ?!」
「はーい、五条先生でーす。さぁもう一度寝ますよー」
少し掠れてはいたけど声でようやくギリシャ彫刻さんが五条先生と認識出来た私は、彼に強く抱きしめられ五条先生の胸元に顔を押しつけられているので彼の顔を見ることは敵わない
五条先生から離れようと藻掻くけど私の力では彼には敵わず、しばらく足掻いた後とうとう諦めて脱力した
するとそれまで聞こえてこなかった、間近で耳を澄まさないと決して聞こえない、小さな小さなトクトクという鼓動が聞こえてくる
自分のものより力強いその鼓動が、顔を押しつけている五条先生の胸の音だと気が付いた刹那、ブワワッと顔に熱が集まった
良かった、五条先生に顔を見られることがない密着している体勢に、少しだけ感謝
だけど何で、五条先生がここに居るのだろう?
どうやって、五条先生はこの部屋に入ってきたのだろう?
なぜ、私は今このような状況になっているのだろう?
分からないことばかりで考えても結論は出ず、五条先生の少しだけ早く聞こえる鼓動を聞きながら彼の様子をそっと伺うと、寝ているわけでは無さそうで
顔は見えないけど、身体の力の入り具合、抜け具合を感じるに五条先生もこちらの様子を伺っているのだろう
それならば分からないことをグルグルと考えていても仕方ないし、五条先生に聞いてみようかと身動ぎすると、ギュッと少しばかり私を抱きしめている手に力が入った
思った通りだ、五条先生は寝ていない
思わず口元が緩む
「五条先生、なんでここに居るんですか?」
「んー。昨日ね、僕名古屋の方で任務があったんだよね」
私の質問をスルーして語り出した五条先生
話を中断するか逡巡したけど、五条先生の話をまず聞いてみようと思ったので大人しく耳を傾ける
「僕、最強だから任務はすぐ終わってさー。少し時間があったし割と近くだったから熱田神宮に初詣に行ったんだよね」
「五条先生、ちょっと待ってください。今の時期の参詣はもう初詣とは言わないのでは?」
一般的には1月中旬、遅くても節分までの参詣を初詣と呼ぶ
なので時期外れな初詣という言葉に、思わずツッコミを入れてしまうとククッと五条先生は喉の奥で笑う
「僕はその年に初めてお参りした時が初詣って思ってるから初詣だよ、あや先生」
「……はぁ」
何とも納得のいかない気持ちになったけど五条先生の中ではそうらしいので、もう何も言うまい
身を起こそうとするけど私を抱きしめる腕は緩むことは無く、そしてそのまま話は続く
「お参りした後に御神籤引いたらさ、中吉だったんだよね」
「それは幸先良かったですね」
「熱田神宮の御神籤はさ、大吉の次が吉でその次が中吉なんだよ。普通の神社の御神籤と順番違うの。だから良くも無く悪くも無く……な感じかな」
「そうなんですか」
「んで本題はこっから。恋愛運に”好きな人には積極的にアピールしろ”って書いてあったんだよね。だからアピールしに来た」
「…………はっ?」
「あや先生に、積極的にアピールしに来た」
五条先生の話は起承転結の”承・転”がぽっかり欠けていると思う
五条先生の好きな人というのが私(?)なことも寝耳に水なのに、全ての課程を吹っ飛ばして御神籤のお言葉を実行するために人の家に勝手に上がり込んで、あまつさえ同衾するとか……アピールの方向間違ってるし、ちょっと頭イカレてませんか?
何と答えたら良いのか、どうしたら良いのか。五条先生から与えられた情報が多すぎて頭がパンクしそうになり、とうとう考えることを拒否してしまった
とりあえず五条先生から離れようと、身を捩ろうとしても捩る隙間すらないほどに密着しているせいで私の早鐘のような鼓動は、とうに五条先生に気づかれてしまっているかもしれない
「あや先生はこれから僕を独り占めするんだから僕にもあや先生を独り占めさせて」
耳元で囁かれた言葉に、私の意思は完全に意気阻喪してしまった
明日は前々から欲しいと思っていた新作コスメを買いに銀座に行こうと思いを馳せ、手毬のようにぽんぽんと弾むような軽い足取りで帰宅した私
万年人手不足である呪術界の後進を育てる高専教諭になってからこのような時間は1年に2~3度取れたら良いところだったりする
担任の五条先生は数少ない特級呪術師で、私は2級呪術師
その関係で五条先生は全国津々浦々任務として呼ばれることが多く、一方の私はあまり現場に出ず、もっぱら教壇に立っていることが多かった
この週末は五条先生がこちらに戻ってきているし、何かあっても担任で特級呪術師である五条先生が対応なさるので副担任で2級呪術師の私には余程のことが無い限りお鉢が回ってくることはなさそうだ
休日の前日……という開放感いっぱいの時間を堪能すべく今月配信が解禁になったらしい、映画館に見に行きたかったけど行けずにいた作品を垂れ流し、普段ならしない晩酌にとっておきのワインを飲みながら、リビングに設置してある1人には大きすぎるソファベッドでゴロゴロと奔放に過ごす
はぁ、幸せ……
幸せすぎてバチが当たりそう……
そんなことを思いながらワインをコクコクと飲み下した
気が付くとあれから寝落ちしていたらしく、垂れ流していた映画は終わっていて
テーブルの上にあるワイングラスのワインは飲み干されていて
正面付けされたロールスクリーンの隙間から弱々しい光がロールスクリーンの枠を強調するかのように縁取っていて、外はもう明るいのだと知らせていた
薄手の毛布を掛けていたお陰で寒くはなかったけど、ダブルサイズになるソファベッドが狭く感じるのは何故だろう……と顔を横に向けると、付けっぱなしになっていたテレビの光で薄らボンヤリ見えるのは銀白色のふわふわしたもの
ソファベッドに置いてたクッションはウニッコ柄のブラックとグレーのペアクッションで、グレーのクッションは私が枕代わりにしていた
ブラックのクッションは白いふわふわしたものの下にある
銀白色のふわふわしたものは頭?に見えるけど、悲しいかな……それなりに良い年齢にも関わらず、私には同衾するような関係の人はいないし、当然心当たりも無い、残念ながら
薄手の毛布に潜り込んでいる銀白色の頭のようなものの全容を見るために毛布を剥ぐとそこにはギリシャ彫刻のように美しく整った顔があって
その顔には心当たりがあるような、ないような
今ここで叫んでいいのか悪いのか……一瞬呼吸を忘れ、ハァと大きく息を吐いた
帰ってきた時、きちんと玄関は施錠したはずなんだけど何故ここに人が入り込んでいるのか、そして何故このギリシャ彫刻さん(仮名)はここで寝ているのか……
昨晩は気持ちよくワインを飲んでいて、つい飲み過ぎたという自覚はある
二日酔いにはギリギリなってないけど、新品を開封したにも関わらず、そこに見えるワインボトルにほぼ中身が残っていないところを見ると、ここ最近では類を見ないほどしたたかに飲んでいたと容易に想像が付いた
アルコールのお陰か、寝入る前の状況がサッパリ思い出せず、今の状況が理解出来ないまま大混乱しているせいで声を発することも失念してしまっていた
私の知ってる人の中で銀白色の髪の持ち主と言えば五条先生が浮かぶけど、彼とはただの同僚教師であり個人的な関係は一切無い
それにいつも黒い目隠しで顔の半分ほどが覆っているので彼の素顔を見たことは無く、このギリシャ彫刻さんが五条先生かどうかの確信は持てなかった
だからと言ってギリシャ彫刻さんをこのままにしておく訳にもいかない
仮にこのギリシャ彫刻さんが五条先生だったとしても、何故彼がここに居るのかも皆目見当が付かないくらいの関係だし
どっかの世界から何らかの理由でこの世界に転生してきた人……なんて、昨晩垂れ流していた映画じゃあるまいし、現実にはあり得ないだろう
危険人物かどうかも分からないギリシャ彫刻さんを今すぐ起こすべきか、このまま起こさず警察に通報すべきか……と、寝ているのに恐ろしいほど整っている顔を無意識のまま見つめ、悩んでいるとギリシャ彫刻さんの瞼がピクッと動いた
ヤバい、起きそう……!
距離を取ろうとソファベッドから下りるため立ち上がると手首を掴まれ引き戻される
勢いのままぽすんとソファベッドに腰を下ろした私は、急なことに対応出来ずポカンとギリシャ彫刻さんを見下ろしていると、ふるふると小刻みに銀白色の睫を揺らしゆっくりと見せた瞳は浅葱色。私はその瞳にさっぱり見覚えは無くて
これほどまでに印象的な瞳なら1度見たら忘れられないだろう
この部屋の少ない光をふんだんに集め、キラキラとしている浅葱色の瞳から目が逸らせないでいると「おはよ」と、形の良い唇から紡がれた言葉に合わせグイッと引き寄せられた拍子に体勢を崩した私は毛布の中へ引き摺り込まれ、ギュッと抱きしめられた
「ちょっ……!」
「あやせんせ、もう少しだけ…一緒に寝よ」
「!……五条先生っ?!」
「はーい、五条先生でーす。さぁもう一度寝ますよー」
少し掠れてはいたけど声でようやくギリシャ彫刻さんが五条先生と認識出来た私は、彼に強く抱きしめられ五条先生の胸元に顔を押しつけられているので彼の顔を見ることは敵わない
五条先生から離れようと藻掻くけど私の力では彼には敵わず、しばらく足掻いた後とうとう諦めて脱力した
するとそれまで聞こえてこなかった、間近で耳を澄まさないと決して聞こえない、小さな小さなトクトクという鼓動が聞こえてくる
自分のものより力強いその鼓動が、顔を押しつけている五条先生の胸の音だと気が付いた刹那、ブワワッと顔に熱が集まった
良かった、五条先生に顔を見られることがない密着している体勢に、少しだけ感謝
だけど何で、五条先生がここに居るのだろう?
どうやって、五条先生はこの部屋に入ってきたのだろう?
なぜ、私は今このような状況になっているのだろう?
分からないことばかりで考えても結論は出ず、五条先生の少しだけ早く聞こえる鼓動を聞きながら彼の様子をそっと伺うと、寝ているわけでは無さそうで
顔は見えないけど、身体の力の入り具合、抜け具合を感じるに五条先生もこちらの様子を伺っているのだろう
それならば分からないことをグルグルと考えていても仕方ないし、五条先生に聞いてみようかと身動ぎすると、ギュッと少しばかり私を抱きしめている手に力が入った
思った通りだ、五条先生は寝ていない
思わず口元が緩む
「五条先生、なんでここに居るんですか?」
「んー。昨日ね、僕名古屋の方で任務があったんだよね」
私の質問をスルーして語り出した五条先生
話を中断するか逡巡したけど、五条先生の話をまず聞いてみようと思ったので大人しく耳を傾ける
「僕、最強だから任務はすぐ終わってさー。少し時間があったし割と近くだったから熱田神宮に初詣に行ったんだよね」
「五条先生、ちょっと待ってください。今の時期の参詣はもう初詣とは言わないのでは?」
一般的には1月中旬、遅くても節分までの参詣を初詣と呼ぶ
なので時期外れな初詣という言葉に、思わずツッコミを入れてしまうとククッと五条先生は喉の奥で笑う
「僕はその年に初めてお参りした時が初詣って思ってるから初詣だよ、あや先生」
「……はぁ」
何とも納得のいかない気持ちになったけど五条先生の中ではそうらしいので、もう何も言うまい
身を起こそうとするけど私を抱きしめる腕は緩むことは無く、そしてそのまま話は続く
「お参りした後に御神籤引いたらさ、中吉だったんだよね」
「それは幸先良かったですね」
「熱田神宮の御神籤はさ、大吉の次が吉でその次が中吉なんだよ。普通の神社の御神籤と順番違うの。だから良くも無く悪くも無く……な感じかな」
「そうなんですか」
「んで本題はこっから。恋愛運に”好きな人には積極的にアピールしろ”って書いてあったんだよね。だからアピールしに来た」
「…………はっ?」
「あや先生に、積極的にアピールしに来た」
五条先生の話は起承転結の”承・転”がぽっかり欠けていると思う
五条先生の好きな人というのが私(?)なことも寝耳に水なのに、全ての課程を吹っ飛ばして御神籤のお言葉を実行するために人の家に勝手に上がり込んで、あまつさえ同衾するとか……アピールの方向間違ってるし、ちょっと頭イカレてませんか?
何と答えたら良いのか、どうしたら良いのか。五条先生から与えられた情報が多すぎて頭がパンクしそうになり、とうとう考えることを拒否してしまった
とりあえず五条先生から離れようと、身を捩ろうとしても捩る隙間すらないほどに密着しているせいで私の早鐘のような鼓動は、とうに五条先生に気づかれてしまっているかもしれない
「あや先生はこれから僕を独り占めするんだから僕にもあや先生を独り占めさせて」
耳元で囁かれた言葉に、私の意思は完全に意気阻喪してしまった