【JuJu】Short stories
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任務後、ピックアップしてもらった車内には後輩の五条が乗っていて、思わず顔をしかめ無言のまま助手席の後ろに座った
高専時代には相方とアホなことをしたり笑えない冗談などで周りを振り回し、なかなかに破天荒だった彼も年齢のせいなのか教職になったせいなのか、随分と落ち着いたようだ
私は彼より先輩だったからそこまで被害は受けてなかったけれど、それでも同期たちの中では格段に五条の被害を受けていて五条悟という男には近寄りたくないという印象を持っていた
高専卒業後、京都の高専で教鞭を執ることになった親友の歌姫に頼られるまま西日本を中心に活動をしてきた私は、秘匿死刑が決定した両面宿儺の器の監視の任を楽巌寺学長から与えられ東京に戻ってきた
そんな私が驚いたのは五条の性格や言葉遣いが随分とマイルドになったことだった
しかし、五条に対する苦手意識は未だ健在だ
「伊地知、ここで停めて」
「えっ?私試されてます?」
「伊地知、停まらないとマジビンタするけど」
「ひぃぃぃっ」
新宿御苑のそばで急に伊地知くんに声を掛けた五条の言葉に呼応するように運動エネルギーを失った車が伊地知くんの焦りを反映することなく緩やかに停まる
流石補助監督官。本人は焦っていても、運転は安心・安全・丁寧の3拍子は揃っているようだ
カッチンカッチンとハザードの音が車内に響くけれど運転席の後ろに座した五条は降りる様子を見せなかった
知ってる人、或いは呪霊か何かを見つけ、確認する為に車を停めさせたとかなのか…と、車を停めさせた意図が読めない五条の方に不本意ながらも視線を向けると、彼は目隠し越しにこちらをジッと見ており、思いも寄らぬ五条の様子に心臓が跳ねた
「な…に、サッサと降りるなら降りて欲しいんだけど」
「ん~、降りようと思ったんだけどね。偶然にも同乗したお久しぶりなあや先輩と親交を深めたいって思ってたところだったし、あや先輩も一緒に降りようか。僕ご馳走するから」
「はぁ?」
すっごい名案を思いついた!…みたいな体の五条は大きい手で私をグイグイとドアの方へ押しつけてくる
こちらの都合は一切考慮されていないようだ
ドアに身体が押しつけられ「やめて」と言っても力は緩まず、苦しいやら窓の冷たさに鳥肌が立つやらで根負けした私はドアハンドルに手を掛けドアを開けた
車から押し出される直前、縋るように伊地知くんに視線を送るけれど彼は申し訳無さそうな顔してるだけだ
伊地知くんは五条に盾突ける立場に無いのは分かっていたけれど、藁にも縋る思いだった……伊地知くんから藁を投下して貰えず全力で溺れてるけれども
「じゃ~ね、伊地知。お疲れ~」
私の腕を掴み爽やかに伊地知くんに手を上げて挨拶する五条を睨み上げるけれど暖簾に腕押しらしく、楽しそうな笑みを浮かべた口元が歪むことは無かった
「…私疲れてるし帰りたいんだけど」
苦虫を噛み潰したような顔をしているであろう私の言葉をスルーして新宿駅の方へ歩き出した五条に引きずられるように私も歩き出す
「腕、離して欲しいんだけど」
引っ張られながらそう声を掛けると「ごめん、ごめん」と悪びれた風も無く五条が腕を放したのでホッとしたのもつかの間、手を取られた
慌てて思い切り手を振ってみるも離して貰えず、逆にギュッと渾身の力を込めて握り返すと「あや先輩って情熱的なのね」と、五条は意にも介していない
そんな五条にとうとう諦めた私は持てる力の全てを込めて睨み付けるもやっぱり五条にはノーダメージで、イラッとしたまま付いていった
「僕、先週北海道に出張に行ってね~…」
聞いてもいないのに楽しそうに話し始めた五条に反応することなく嫌々歩くけれど、五条が私の歩く速度に合わせてくれていると唐突に……気づいてしまった
五条の足の長さと私の足の長さは相当に違う
元々五条の足の長さに敵う人間がこの世にどれだけいるか分からないくらい、五条の足は悔しいけれどとても長い
足の長さが違えば当然歩く速度も変わってくるけれど、今の私は無理して歩いてる速度では無かった
あまりに普通に歩いていたので今の今まで気が付かなかったけれど五条が速度を合わせてくれていたようだ
私の知る五条は自分本位な人間だったと記憶している
人に合わせるなんて芸当はしなかったし、出来なかった
「…あや先輩にも食べて欲しいな~って僕思ったの」
私が高専時代の五条の行動を脳内に喚び起こしていた間に五条の話は進んでいたらしく「あや先輩、聞いてる?」と腰を屈め私を覗き込んだ五条に心臓が跳ねた
今日五条に対して心臓が跳ねたのは2度目だと、その事実が脳裏を掠めた瞬間、身体が熱くなる
五条にドキドキしている自分を穴があったら埋めてしまいたいくらい恥ずかしく、羞恥の海に溺れそうだった
五条と繋いでいる手は熱くなっていないだろうか
五条にこのドキドキは気づかれてないだろうか
「ごめ…ん、聞いてなかった」
そう答えるとふぅと息を吐いた五条は立ち止まり言った
「北海道で食べたジンギスカンが美味しかったからあや先輩と食べたいなって思ってたの、僕」
私も同じように立ち止まり五条の視線の先を追うとそこはジンギスカン専門店の前
「僕といるのに、あや先輩は僕の話が上の空になっちゃうほど……何考えてたの?」
五条の艶色を潜ませた低い声に私の心臓は激しく血液を全身に送り届けようと頑張っていて…
身体全体が熱を持ち、ヒリヒリと擦り傷のような痛みを伴った恥ずかしさに顔を上げることが出来なくなってしまった
高専時代には相方とアホなことをしたり笑えない冗談などで周りを振り回し、なかなかに破天荒だった彼も年齢のせいなのか教職になったせいなのか、随分と落ち着いたようだ
私は彼より先輩だったからそこまで被害は受けてなかったけれど、それでも同期たちの中では格段に五条の被害を受けていて五条悟という男には近寄りたくないという印象を持っていた
高専卒業後、京都の高専で教鞭を執ることになった親友の歌姫に頼られるまま西日本を中心に活動をしてきた私は、秘匿死刑が決定した両面宿儺の器の監視の任を楽巌寺学長から与えられ東京に戻ってきた
そんな私が驚いたのは五条の性格や言葉遣いが随分とマイルドになったことだった
しかし、五条に対する苦手意識は未だ健在だ
「伊地知、ここで停めて」
「えっ?私試されてます?」
「伊地知、停まらないとマジビンタするけど」
「ひぃぃぃっ」
新宿御苑のそばで急に伊地知くんに声を掛けた五条の言葉に呼応するように運動エネルギーを失った車が伊地知くんの焦りを反映することなく緩やかに停まる
流石補助監督官。本人は焦っていても、運転は安心・安全・丁寧の3拍子は揃っているようだ
カッチンカッチンとハザードの音が車内に響くけれど運転席の後ろに座した五条は降りる様子を見せなかった
知ってる人、或いは呪霊か何かを見つけ、確認する為に車を停めさせたとかなのか…と、車を停めさせた意図が読めない五条の方に不本意ながらも視線を向けると、彼は目隠し越しにこちらをジッと見ており、思いも寄らぬ五条の様子に心臓が跳ねた
「な…に、サッサと降りるなら降りて欲しいんだけど」
「ん~、降りようと思ったんだけどね。偶然にも同乗したお久しぶりなあや先輩と親交を深めたいって思ってたところだったし、あや先輩も一緒に降りようか。僕ご馳走するから」
「はぁ?」
すっごい名案を思いついた!…みたいな体の五条は大きい手で私をグイグイとドアの方へ押しつけてくる
こちらの都合は一切考慮されていないようだ
ドアに身体が押しつけられ「やめて」と言っても力は緩まず、苦しいやら窓の冷たさに鳥肌が立つやらで根負けした私はドアハンドルに手を掛けドアを開けた
車から押し出される直前、縋るように伊地知くんに視線を送るけれど彼は申し訳無さそうな顔してるだけだ
伊地知くんは五条に盾突ける立場に無いのは分かっていたけれど、藁にも縋る思いだった……伊地知くんから藁を投下して貰えず全力で溺れてるけれども
「じゃ~ね、伊地知。お疲れ~」
私の腕を掴み爽やかに伊地知くんに手を上げて挨拶する五条を睨み上げるけれど暖簾に腕押しらしく、楽しそうな笑みを浮かべた口元が歪むことは無かった
「…私疲れてるし帰りたいんだけど」
苦虫を噛み潰したような顔をしているであろう私の言葉をスルーして新宿駅の方へ歩き出した五条に引きずられるように私も歩き出す
「腕、離して欲しいんだけど」
引っ張られながらそう声を掛けると「ごめん、ごめん」と悪びれた風も無く五条が腕を放したのでホッとしたのもつかの間、手を取られた
慌てて思い切り手を振ってみるも離して貰えず、逆にギュッと渾身の力を込めて握り返すと「あや先輩って情熱的なのね」と、五条は意にも介していない
そんな五条にとうとう諦めた私は持てる力の全てを込めて睨み付けるもやっぱり五条にはノーダメージで、イラッとしたまま付いていった
「僕、先週北海道に出張に行ってね~…」
聞いてもいないのに楽しそうに話し始めた五条に反応することなく嫌々歩くけれど、五条が私の歩く速度に合わせてくれていると唐突に……気づいてしまった
五条の足の長さと私の足の長さは相当に違う
元々五条の足の長さに敵う人間がこの世にどれだけいるか分からないくらい、五条の足は悔しいけれどとても長い
足の長さが違えば当然歩く速度も変わってくるけれど、今の私は無理して歩いてる速度では無かった
あまりに普通に歩いていたので今の今まで気が付かなかったけれど五条が速度を合わせてくれていたようだ
私の知る五条は自分本位な人間だったと記憶している
人に合わせるなんて芸当はしなかったし、出来なかった
「…あや先輩にも食べて欲しいな~って僕思ったの」
私が高専時代の五条の行動を脳内に喚び起こしていた間に五条の話は進んでいたらしく「あや先輩、聞いてる?」と腰を屈め私を覗き込んだ五条に心臓が跳ねた
今日五条に対して心臓が跳ねたのは2度目だと、その事実が脳裏を掠めた瞬間、身体が熱くなる
五条にドキドキしている自分を穴があったら埋めてしまいたいくらい恥ずかしく、羞恥の海に溺れそうだった
五条と繋いでいる手は熱くなっていないだろうか
五条にこのドキドキは気づかれてないだろうか
「ごめ…ん、聞いてなかった」
そう答えるとふぅと息を吐いた五条は立ち止まり言った
「北海道で食べたジンギスカンが美味しかったからあや先輩と食べたいなって思ってたの、僕」
私も同じように立ち止まり五条の視線の先を追うとそこはジンギスカン専門店の前
「僕といるのに、あや先輩は僕の話が上の空になっちゃうほど……何考えてたの?」
五条の艶色を潜ませた低い声に私の心臓は激しく血液を全身に送り届けようと頑張っていて…
身体全体が熱を持ち、ヒリヒリと擦り傷のような痛みを伴った恥ずかしさに顔を上げることが出来なくなってしまった