【etc】Shed
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―何で、何で…、何で私が追われてるの?!
「見つけ次第殺せ!」
物騒な言葉の後、ザザザザッと声なく散開する白い服の一団に
私は追われていた。
―見つかったら殺される…!
私は慣れた山道を人目に付かない様に草陰に隠れながら子供の頃兄たちと”秘密基地”と称してたまり場にしていた窪地に向かい辿り着いた秘密基地に座り込み乱れた息を整える。
胸に手を当て、大きくため息をひとつ吐いた。
慌てて周りを顧みるコトなく逃げていたせいか手や足に引っかけたような細かい傷がいくつもついており、血がにじんでいる所もある。
血を見ると今まで痛さを感じていなかったのに急にジンジンと痛みを感じた。
手当をするモノも持っていないので傷はそのまま、この場をやり過ごしてから治療しようと滲む血を見て再びため息を一つ。
―ここは昔から変わってない
この窪地は山の中腹にある崖にあり、上からしかこの場所を見るコトは出来ないけど窪地の真上には斜めに大きく張り出した木があり、葉が茂っているのでこの窪地は普通の人には分からないだろう。
―ここにいれば何とかなりそう
私は周りへの警戒を少し緩め、一体どうしてこうなったのかを思い出していた。
私が今日この山に来たのはご飯用のキノコ採集だった。
1日山を歩き回りたくさんのキノコを採取、持参した籠いっぱいになったのと暗くなってきたので満足して下山しようと方向転換した瞬間、私の耳元を風切音がかすめ私が直前までいた地面に風切音の原因となったであろう弓矢が刺さっていた。
もの凄い殺気を感じ何事かと弓矢の飛んできた方向を見ると刀を構えた白い服の男が3人、私に向かって飛びかかってきていた。
命を狙われていると考えるより先に本能で感じた私はそれらをどうにかかわして草陰に隠れ、逃げる為に様子を伺っていたら先出の私を殺せとの声が聞こえ、何故命が狙われてるか分からないまま無我夢中に逃げて今に至る。
キノコの入った籠は襲われた時に落としてしまったらしく今の私は何も持っていない。
こうしている間にも陽はとっぷりと暮れ、寒さがじわじわと迫ってきていた。
しかし、白い服の一団がまだ私を探しているかもしれないと思うとこの場から動けず両脚を抱え体を小さく丸めて少しでも外気に触れる面積を少なくする位しか私には出来なかった。
「…ん…っ」
目を開けると空は明るくなってきていた。
どうやらあのまま寝入ってしまったらしい。
堅い地面にカラダは小さく丸めたまま寝てしまったせいでギシギシきしむような怠さと痛さが襲う。
寒い中で寝ていたけど風邪をひかなかったのだけが良かったのかしら…?
そう思いつつ山道の方を伺うと人の気配は無く、私はソロソロとその場から山道に向かい、周りを警戒しつつも家を目指した。
自宅はこの角を曲がったらすぐ…という所まで来た時、家の前からこちらの角に向けて歩いてきている人の気配と声が聞こえてきたので反射的にそばの茂みに身を隠す。
「まだ見つからないのか?」
「申し訳ありません」
「一度襲撃しているから向こうも警戒してるやもしれん。とにかく探し出せ、そして殺せ!」
私が身を隠しているのに気がつかなかった白い服を着た2人が通り過ぎた。
―これはもう家には帰れないわ…
私は大きくため息を吐き両脚を抱えて昨晩同様、寒さから逃れるかのように小さく丸く座り込んだ。
私の両親は天人に殺された。
それも天人の狩りの標的として…だ。
要するに天人の狩り遊びので両親は殺されたのだ。
私には兄が一人いるが、その兄は両親死亡の理由を聞かされた時に怒りに任せ家を飛び出して以降帰らなかった。
噂では兄は攘夷志士となり、かなり目立つ活躍をしたらしい。
攘夷戦争が終結した今、そんな兄からの沙汰は無かった。
それから私は一人で家を守ってきた。
「ど」がつく程の田舎で、周りの人たちは私の境遇を可哀相と思ってくれておりとても優しくしてくれた。
どうして私の命が狙われているのか、全く心当たりは無いけど周りのみんなに迷惑を掛けるわけにはいかないからもうここにはいられない…。
家に身の回りのものや親の遺品等、持って行きたいものはあったけど戻って見つかったら殺されるので戻る勇気も無かった。
今まで平穏な生活をしていた私がなぜこんなことになったのか…
自然に浮かんできた涙をそのままに、茂みの中で静かに泣いた。
―動くにしても夜の方が人目に付かないよね…?
暗くなるまで茂みで過ごした私は、このままどこに行けばいいのかと思いを巡らせていた。
身よりも無い、たった一人の兄はどこで何をしているか分からない、生きてるかすらも分からない。
幼少の頃、一緒に過ごした兄と年の頃が一緒位の男の子たちがいたけど兄が村を出る時に一緒に出て行ってしまった。
頼れる人はいない。
あまり人目がない所だと白い服の一団に見つかるかもしれない。
見つかったら理由は分からないけどきっと殺されるだろう。
木を隠すには森に…と言うから人から逃れる為にいっそのこと
故郷を一旦離れて人の多い江戸にでも出てみようか…。
そう思い立ち、辺りの気配を伺いつつ江戸に向かう道を目指して歩き出した。
―何日歩いただろうか?
キノコ狩りの時に襲撃された私の所持金はほとんどなく、ほぼ飲まず食わずで江戸に辿り着いた。
幸運なコトに道中私の命を狙う白い服の一団に出会うコトは無かったが空腹と喉の渇きと寝る場所に困った。
木の下で雨と夜をやり過ごし、井戸や道の側にあるせせらぎで喉を潤したが食べ物にありつけるコトはなく、私の体力は限界に達していた。
江戸に出たからと言って、白い服の一団に出会うコトが無いとは言えないし頼る宛も相手もいない私がこれから生活出来るかの不安もあった。
ようやく江戸の町並みを一望出来る高台に着く。
この高台を降りれば江戸に入れるという場所だった。
高台にはベンチが設置されており、そこに座り込んでのどかな町並みを見ていたら今までの空腹と疲れ、そして緊張の糸が切れてしまい突如、私の目の前はブレーカーが落ちたように真っ暗になって意識を失った。
ベンチで崩れるように倒れたみすぼらしい身なりをした女を、通りすがる人はチラチラ見てはいるがあまりのみすぼらしさに誰ひとり近寄り助けようとしなかった。
カポン カポン
どこから現れたのか立派な装具に身を包んだ一頭の馬が現れ、倒れた女の側に近寄り女を器用に自分の背に乗せ
カポン カポン
何事も無かったかの様にゆったりと元来た道を引き返していった―
――深く沈み込んでいた意識が浮上して来る
ふわふわした中で私は目を開けると見知らぬ天井、柔らかく暖かな布団。
体はまだ重く、動かそうにも重すぎて動かそうという気になれず目だけを動かして周りを見回した。
―ここはどこだろうか?
畳の香りが微かに漂う、純日本風の部屋のようで私の頭の上の方には床の間もあるようだ。
私は目に見える範囲を見回したけど部屋に見覚えがなく、どこにいるのか検討も付かずにいた。
ふいに襖の開く音が右手の方からしたので私はそちらに目を向ける。
「目が覚めたようじゃな」
涼やかな眼差しで狩衣に身を包んだ男の人が私の枕元に座り私のおでこの上にあった手ぬぐいを手に取り枕元に置いてあったらしい水桶で手ぬぐいをすすぐ。
私が起き上がろうと体に力を入れようとしたらその男の人は動かなくて良いと言うように手で制したのでおとなしく甘えることにした。
「お世話になったみたいですいません…」
「構わぬ。江戸中に配している式神の一つがそなたを見つけここへ連れてきたのじゃ」
聞きなれない言葉と江戸と言う言葉に浮かんだ疑問を投げかける。
「こちらは江戸なのですか?」
「そうじゃ。そなた江戸の者じゃないみたいじゃな。
かなり衰弱しておるからしばしこちらで養生するがいいだろう」
「しかし…見知らぬ方にこれ以上ご迷惑をお掛けする訳には…」
「構わぬ」
彼はそう言って水で冷えた手ぬぐいを絞り私のおでこに戻した。
ヒヤリとした感覚に軽く目を細めると男性は声もなく笑ったのが分かった。
「お主、まだ話せるか?」
「はい、寝たままの体勢で失礼かと思いますがまだ起き上がれないのでそれでもよろしければ…」
わざわざ見知らぬ私の世話をしてくれてるこの人の質問は出来る限り答えたいと思う。
「お主の名は?」
「あやと申します」
「あやか…良い名じゃ。あやはどうして江戸に来たのじゃ?」
その問いに黙り込んでしまう。
私は誰か、不特定多数の白い服の一団に訳も分からず追われ、殺されそうになったから逃げた。
木を隠すなら木の中、人を隠すなら人の中…と思ったから。
江戸に来たからと言ってアテがある訳でも知り合いがいる訳でもない。
私を助けてくれたこの人にどこまで話せばいいんだろう…というよりどのように話したらいいのだろう…。
自分自身でもなぜ命が狙われていたのか分からないのだ。
「あ…あなたのお名前教えて頂けますか?」
男性は自分の質問に質問が返ってきてほんの少し目を見開いたように見えたがすぐに元の表情に戻り扇子で口元を隠しながら私の問いに答えてくれた。
「結野晴明じゃ」
「結野…晴明…様…」
聞いた名前を反芻すると
「晴明様などと堅苦しく呼ばずとも晴明とかお兄様と呼んでくれて良いぞ」
目を明後日の方向に向けながら晴明様の口から発せられた言葉に
「お…お兄…さ…ま…???」
私の頭には?がいっぱい。
何故初対面なのにお兄様なのか?
晴明様はこちらが心配になるほどの激しい咳払いをされて
「じっ…冗談じゃ。晴明で良い」
口元を覆っていた扇子で目まで覆った。
そんな姿を見て笑いがこみ上げる。
「ありがとうございます、これから晴明さんとお呼びしますね」
この様に私の緊張を解いてくれる人なので私は自分自身でもよく分かってない江戸に来るまでの自分の身の上を語り始めた――
――それから1週間
ドンドンドン
ドンドンドン
万事屋の立て付けの悪い扉を叩く音。
住人の声がしないからか、しつこく扉が叩かれる。
その音が聞こえているハズなのにこの店の主、坂田銀時はソファーに寝そべりジャンプを読んだまま微動だにしない。
来客を迎えようという意志が見えない家主の様子を見ていた新八はため息を一つつき
「は~い、どちら様でしょう?」
パタパタと玄関に向かい、ガラガラと立て付けの悪い扉を開いた。
「久しぶりじゃな」
扉の向こうには思いもかけない訪問者、結野晴明がそこにいた。
「せっ!晴明さん~~~~~~~~~~~~~~?!」
新八が大声を張り上げ、晴明は五月蠅そうに耳をふさぐ。
その声を聞きつけた銀時は頭をかき、怠そうに玄関に姿を現した。
「お兄たまがこんな所に何のご用ですかー?
結野アナを嫁入りさせる決心でも付いたんですかー。」
晴明は後ろを気にしつつ愛用の扇子を開き口元を覆い後ろを気にしつつ言った。
「実はじゃな、ぬしに頼みがあって来たのじゃ。
ここでは話しにくい、部屋に上げては貰えぬか」
そこで初めて銀時と新八は晴明の後ろにいた人物に気付いた。
清明の後ろから顔を出したのは少しやつれた顔をしている女性。
銀時はその女性に見覚えがあった。
数年前、最後に見た時よりずいぶん大人びて見えるが高杉の妹、あやだった。
――――――――――――
このお話はここで終わりです
文章は当時のまま、加筆修正はしていません
この作品について
アニメの陰陽師編を見ていたら推し声優さんが晴明さんを演じられていたのでテンションが上がりに上がって初めて書いた夢小説(仮)になります
余談ですが現在の推し声優さんは当時と変わっておらず、晴明さんを演じられていた方はDCでは犯人役を数名と景光くんを演じておられます
このお話のお相手はここまで出てきてませんが沖田さんでした
真選組動乱編のワンシーンを見て沖田さんにドップリ墜ちまして晴明さんと絡みつつ沖田さんと…な夢小説を書いてみたいと初めてチャレンジした作品です
この後のお話は真選組の近くに居所を設けることになったあやさんが偶然知り合った沖田さんと恋をするけど兄が攘夷志士だったから自分は沖田さんには相応しくない…と悩んで沖田さんの前から黙っていなくなる
沖田さん探すけど見つからない、銀さんたちも探すけど見つからない
あやさんは姿を隠そうとしたけど江戸中に式神を配する晴明さんにはあっけなく見つかっており、晴明さんのとこに匿われていた
そんなある日、真選組が大きな事件に巻き込まれているのが報道され(結野アナが報道してて晴明さんが見てたのを偶然あやさんも見てしまう)いてもたってもいられないあやさんは現場に向かう
その事件は鬼兵隊が仕組んだもので現場であやさんは兄と再会
そこで偶然に沖田さんにも出くわして高杉晋助の妹と知られる
沖田さん既の所で晋助さんに唆されたあやさんを連れ去られてしまう
無事事件を解決した真選組の面々にあやさんを迎えに行くよう背中を押された沖田さんは銀さんたちと一緒に鬼兵隊の船へ潜入してあやさんを連れ戻す
平穏が戻ってきたところ見廻組にあやさんが見つかり、沖田さんが真選組を巻き込んであやさんを守り、これからもあやさんと離れるつもりもないしずっと守り抜くと宣言してハッピーエンド
要約するとこのようなお話を考えてたようです
冒頭に出てきていた白い服の一団は見廻組です
あやさんには特筆するような才能はなく、出自(高杉晋介の実妹)以外はごくごく一般的な女性の設定でした
しかし、夢小説と銘打っておきながらストーリーの前半部分でしか沖田さんとの絡みが無いことと、ここまで書いた文面にお相手が出てこないという時点で夢小説として失格だと友人に言われ、ボツにしました
当時夢小説というジャンルは友人がやっていたので知っていましたが、それまで読んだことがありませんでした
それを友人は「前置きが長くてくどい、恋愛してない、相手が分からない、全て一人称視点で書く方が親近感がわく」等々、この作品の欠点を教えてくれました
その後、それらに気をつけてしばらく活動してましたが仕事の関係で夢小説の世界から離れました
元々私はラノベ書きでミステリーやサスペンスをメインに書いてました
三人称視点で書くことが多く、なかなかそのクセは抜けません
今でも純粋にキャラたちと恋愛して欲しいと思っているのに恋愛よりも事件などをメインに絡ませた作品作りをしてしまっていて友人のアドバイスが生かせてないと歯痒く思うところでもあります
この作品はここに出すまで世に出してなかった作品ですが、これが私の夢小説の原点です
PC入替えに伴うバックアップで目にするまで残っていることすら知りませんでした
そんな作品でありましたが、別ジャンルにもかかわらず読んでくださってありがとうございました
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