【DC】Short stories
お名前設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「と…お、る…さん?」
私の声にお見舞いに来てくれていた研二くんの垂れた目尻が吊り上がるほどに驚いた目をしてこちらを見た
---------
ここは病室
一見するとホテルの個室のように言えるこの部屋は1人用の特別室らしく大きなサイズのベッドに応接セット、洗面台やトイレ、冷蔵庫などがある
その中でホテルと決定的に違うのはいくつかの医療機器が同じ室内にあり、そこから伸びたケーブルが私の身体と繋いでいるということだろう
どうして私がこの場にいることになったかと言うと、増水した川で溺れていた見知らぬ子どもを見かけた私は後先考えず川に飛び込んで子どもを助けたあとからの記憶がハッキリしない
岸辺にいた人に助けた子どもを預けホッとしたところに大きい倒木が流れてきて、それが私の背中を強打しその勢いと痛みに私は水に飲みこまれ溺れて意識を失い、気が付くとここにいた
普通溺れて意識を回復したら数日と経たずに退院することができるのにいまだここにいる理由は私のお腹に子どもがいたから
目が覚めた時、背中に鈍痛があったが、他に違和感などはなくお腹の子は元気にしていていた
精密検査と経過観察であと数日入院後、何事も無ければ退院出来る予定だと聞いているが問題がひとつだけあった
それは、私の記憶が一部欠如しているということだ
日常生活には全く支障は無く子どもがお腹にいることもしっかり覚えており目が覚めた直後、お腹に手を置きぐるぐるとお腹の中で元気に動き回る我が子の様子にホッと胸をなで下ろしたが、その父親の記憶を失ってしまっていたのだ
「あや大丈夫か?」
そんな私に心配そうな声が掛けられ顔を上げるとそこにいたのは金糸の髪に秘色の瞳の男性が、いた
「……あぁ、はい。大丈夫です。先生…、ですか?」
セータにチノパンというラフな格好で外国人のような風貌の彼に見覚えが無く、問いかけるとその男性は目を大きく見開き息を飲んだように見えた
「お前何言ってるんだ。冗談が過ぎるぞ」
言葉尻に少しの怒気を孕んだ兄、松田陣平の声に振り返る
「自分の身体のことを考えず川に飛び込んだのは悪かったと思ってるよ、お兄ちゃん」
「いや、そうじゃないだろあや」
「心配掛けてごめんなさい」
「…っ!そうだけどっそうじゃなくてだな…っ」
「ちょい落ち着こうか、じんぺーちゃん」
兄の横にいた幼馴染みの萩原研二くんが兄の肩に手を置いて宥めている
「研二くんも…わざわざありがとう」
「あやちゃん身体が辛かったり痛かったりしてない?」
「うん、大丈夫。お腹の子も元気みたいで本当に良かった」
「そうだね。まずはゆっくり休んで。また後で話をしようか」
布団を優しく直してにっこりと微笑む研二くんの笑顔に、どこか緊張していたのだろう糸がプツッと切れたようで再び意識が遠のいていった
◇◆◇
「あやちゃん、降谷ちゃんのこと分かってなかったみたいだね…」
静かに目を閉じたあやを見下ろしハギが言った
「あぁ、でも萩原や俺のことは分かってたよな?」
「お腹の子のこともしっかり認識していたね」
兄である松田は口が悪いが妹であるあやは言葉は柔らかく、普段からこんな冗談をいうような人ではない
「もしかしてあやは記憶障害…なのか?」
松田の言葉に誰も答えることは出来なかった
あやが再び目を覚ました後に医者が色々検査した結果、一時的な記憶障害と診断された
忘れてしまったのは僕に関することだけのようで、他のことは問題がないようだ
数日のうちに記憶は戻るだろうと医者は言っていたが、僕に関する記憶だけスッポリと抜け落ちているのは忘れられた側としては胸に大きな穴が開いたような気持ちだった
安室透としての僕のことも忘れているようで、上手い具合に彼女の記憶を探ってくれたハギが「すぐ思い出すだろうから元気出しなよ、降谷ちゃん」と元気づけてくれた
◇◆◇
意識を取り戻してから5日が経過していた
その間に兄や研二くんから聞いた話によると私は降谷零さんという人と結婚してるらしい
お腹の子は降谷さんとの子だそう
降谷さんは私が目を覚ました時にいた、金糸の髪に秘色の瞳の見目麗しい男性
降谷さんはとても忙しい人らしく、毎日面会時間終了直前に病室に現れる
常に私やお腹の子のことを気に掛けてくれているけど、この日本人離れした風貌の男性が私の夫だとは信じられない思いだった
1度手を取られそうになった時、反射的に振り払って以来、降谷さんは私に触れることなく過ごしていた
あの時のことを謝らなければ……と思いながらも時間だけが過ぎていたある日、うたた寝から目を覚ました私の頭の中に突如1人の名前が浮かんだ
その名前が「透」さんだ
夢の中で私は男性の腕に自身の右腕を絡め左手でお腹を撫でながら「透さん、あなたの子どもの名前考えてくれた?」と聞いていたのだ
男性の顔は見えなかった、というより見ることは無かった。自身のお腹を愛おしそうに撫でていたから
記憶を失う前の私は透さんという人との子を身籠もり、あまつさえ降谷さんの子と偽り産もうとしていたのでは無いか
そんなとんでもないビッチだったのではないか……
透さんと降谷さんに関しての記憶だけが抜け落ちているのも、その事実を誰にも知られたくなくて、その事実を分かっている自分の記憶を罪悪感から封印してしまったのではないか……
不意に至ったその考えが、今の状況と如実にマッチングしているように思えた
---------
「と…お、る…さん?」
妙にしっくりくる耳馴染みの良い響きの名前を意図せず呟いてしまった名前に反応した研二くんがとても驚いた反応を示したことでに私の顔から血の気が引いた
降谷さんのことをいまだ思い出せてない私が透さんの名前をクチにしてしまったのだ、研二くんに問いただされるかもしれない
身を竦め目を強く閉じた私の耳は、研二くんの足音が近づいてくることを知らせていた
「あやちゃん、透さんって今言ったよね?」
咎めるでも無く優しく問いかける研二くんの声に私は身を震わせながら小さく頷き、俯く
「みんな思い出したの?」
「……まだ。彼の名前だけ…思い出したの」
私の縮こまった肩に手をポンポンと宥めるように叩いた研二くんの顔を見上げるとポロリと涙がこぼれる
「何で泣くの?記憶戻ってきてるっていいことだと思うよ」
「……でも、でも…っ」
「どうしたの?」
「降谷さんのことは何一つ思い出せないの。そして透さんが誰かも思い出せないの」
お腹をボコボコっと蹴られる感覚に両手でお腹を撫でる
その様子をじっと見ていたのだろう、研二くんも私のお腹に手を伸ばし撫でるとお腹の子が大人しくなった
「そんな追い詰められたような顔してるの、なんで?」
柔々と研二くんにお腹を撫でられ涙が止まらない
「絶対誰にも言わない?」
「うん、あやちゃんと俺の秘密な?」
ぽろぽろと止まらない涙で布団を濡らしながら研二くんを見上げる
子どもの頃からずっと一緒の幼なじみ
兄の親友、私の夫である降谷さんの同期
そんな研二くんにこのことを言ったら見放されるかも……
私は全てを失う、かも……
「ストレスはお腹の子に良くないよ?吐き出してラクになっちゃお」
髪型が崩れないよう優しく頭を撫でて話しを促してくれる研二くん
「研二くんに見放されちゃうような話なんだけど……ね
実は……、お腹の子……降谷さんの子じゃないと思うの……」
抱えきれず、耐えきれず研二くんの優しさに甘えてカミングアウトした瞬間、研二くんは大きく目を見開き穴が開きそうなほどの眼力で私を見下ろす
「何……を思い出したの?」
「お腹の子が、透さんって人の子……ってこと……
降谷さんの子じゃないのに降谷さんとの子なんて……。騙してしまって謝って済むことじゃないし記憶喪失になる前の自分を殴りたい……」
ギュッと目を閉じ言い切った私に研二くんからの言葉は無かった
呆れちゃったよね、人として最低って軽蔑されちゃうようなカミングアウトされちゃったもんね
お腹を抱え沈黙に耐えていた私の耳に、はぁと溜め息が聞こえた
それはとても小さなもので、この部屋にいる音とは思えないくらいのもので……
沈黙に耐えられない私の空耳だったのかもしれない
思わず顔を上げると無表情の研二くんがそこにいた
「……ってことだそうだよ。降谷ちゃん」
私を見下ろした研二くんがいつの間にか手に持っていたスマホに向かって話始める
あぁ、降谷さんと電話繋がってたんだ
今の話、降谷さんに聞かれてしまったんだ
これで全てを失うけど、隠しておくなんて出来ないし子どもは私1人で育てるから
このこと知ったらお兄ちゃん、怒るだろうな
静まりかえった病室
バタバタバタバタと病院にあるまじき大きな足音が段々と近づいてくる
ガラッと扉が勢いよく開き、そこにいたのは降谷さん
「降谷さん、ごめんなさい!」
頭を下げて謝って許されることじゃない
だけど私には謝ることしかできない
この子を守らなきゃいけない
コツコツと近づく足音
頭を下げ続けている私の視界に降谷さんの靴が見え思わずお腹を抱え身構えていると突然抱きしめられ思わず逃げようと身動ぐと耳元で「透、安室透は僕だよ。あや」と囁く優しい声
「えっ…?」
降谷さんの言葉の意味が理解出来ず顔を上げると視界いっぱいの降谷さんの蕩けるような笑顔で「僕のこと思い出してくれないかと思ったけどこれをキッカケに全て思い出して」と言った降谷さん
降谷さんの言葉が理解出来ず呆気にとられた私が記憶を取り戻したのは翌日のことだった
私の声にお見舞いに来てくれていた研二くんの垂れた目尻が吊り上がるほどに驚いた目をしてこちらを見た
---------
ここは病室
一見するとホテルの個室のように言えるこの部屋は1人用の特別室らしく大きなサイズのベッドに応接セット、洗面台やトイレ、冷蔵庫などがある
その中でホテルと決定的に違うのはいくつかの医療機器が同じ室内にあり、そこから伸びたケーブルが私の身体と繋いでいるということだろう
どうして私がこの場にいることになったかと言うと、増水した川で溺れていた見知らぬ子どもを見かけた私は後先考えず川に飛び込んで子どもを助けたあとからの記憶がハッキリしない
岸辺にいた人に助けた子どもを預けホッとしたところに大きい倒木が流れてきて、それが私の背中を強打しその勢いと痛みに私は水に飲みこまれ溺れて意識を失い、気が付くとここにいた
普通溺れて意識を回復したら数日と経たずに退院することができるのにいまだここにいる理由は私のお腹に子どもがいたから
目が覚めた時、背中に鈍痛があったが、他に違和感などはなくお腹の子は元気にしていていた
精密検査と経過観察であと数日入院後、何事も無ければ退院出来る予定だと聞いているが問題がひとつだけあった
それは、私の記憶が一部欠如しているということだ
日常生活には全く支障は無く子どもがお腹にいることもしっかり覚えており目が覚めた直後、お腹に手を置きぐるぐるとお腹の中で元気に動き回る我が子の様子にホッと胸をなで下ろしたが、その父親の記憶を失ってしまっていたのだ
「あや大丈夫か?」
そんな私に心配そうな声が掛けられ顔を上げるとそこにいたのは金糸の髪に秘色の瞳の男性が、いた
「……あぁ、はい。大丈夫です。先生…、ですか?」
セータにチノパンというラフな格好で外国人のような風貌の彼に見覚えが無く、問いかけるとその男性は目を大きく見開き息を飲んだように見えた
「お前何言ってるんだ。冗談が過ぎるぞ」
言葉尻に少しの怒気を孕んだ兄、松田陣平の声に振り返る
「自分の身体のことを考えず川に飛び込んだのは悪かったと思ってるよ、お兄ちゃん」
「いや、そうじゃないだろあや」
「心配掛けてごめんなさい」
「…っ!そうだけどっそうじゃなくてだな…っ」
「ちょい落ち着こうか、じんぺーちゃん」
兄の横にいた幼馴染みの萩原研二くんが兄の肩に手を置いて宥めている
「研二くんも…わざわざありがとう」
「あやちゃん身体が辛かったり痛かったりしてない?」
「うん、大丈夫。お腹の子も元気みたいで本当に良かった」
「そうだね。まずはゆっくり休んで。また後で話をしようか」
布団を優しく直してにっこりと微笑む研二くんの笑顔に、どこか緊張していたのだろう糸がプツッと切れたようで再び意識が遠のいていった
◇◆◇
「あやちゃん、降谷ちゃんのこと分かってなかったみたいだね…」
静かに目を閉じたあやを見下ろしハギが言った
「あぁ、でも萩原や俺のことは分かってたよな?」
「お腹の子のこともしっかり認識していたね」
兄である松田は口が悪いが妹であるあやは言葉は柔らかく、普段からこんな冗談をいうような人ではない
「もしかしてあやは記憶障害…なのか?」
松田の言葉に誰も答えることは出来なかった
あやが再び目を覚ました後に医者が色々検査した結果、一時的な記憶障害と診断された
忘れてしまったのは僕に関することだけのようで、他のことは問題がないようだ
数日のうちに記憶は戻るだろうと医者は言っていたが、僕に関する記憶だけスッポリと抜け落ちているのは忘れられた側としては胸に大きな穴が開いたような気持ちだった
安室透としての僕のことも忘れているようで、上手い具合に彼女の記憶を探ってくれたハギが「すぐ思い出すだろうから元気出しなよ、降谷ちゃん」と元気づけてくれた
◇◆◇
意識を取り戻してから5日が経過していた
その間に兄や研二くんから聞いた話によると私は降谷零さんという人と結婚してるらしい
お腹の子は降谷さんとの子だそう
降谷さんは私が目を覚ました時にいた、金糸の髪に秘色の瞳の見目麗しい男性
降谷さんはとても忙しい人らしく、毎日面会時間終了直前に病室に現れる
常に私やお腹の子のことを気に掛けてくれているけど、この日本人離れした風貌の男性が私の夫だとは信じられない思いだった
1度手を取られそうになった時、反射的に振り払って以来、降谷さんは私に触れることなく過ごしていた
あの時のことを謝らなければ……と思いながらも時間だけが過ぎていたある日、うたた寝から目を覚ました私の頭の中に突如1人の名前が浮かんだ
その名前が「透」さんだ
夢の中で私は男性の腕に自身の右腕を絡め左手でお腹を撫でながら「透さん、あなたの子どもの名前考えてくれた?」と聞いていたのだ
男性の顔は見えなかった、というより見ることは無かった。自身のお腹を愛おしそうに撫でていたから
記憶を失う前の私は透さんという人との子を身籠もり、あまつさえ降谷さんの子と偽り産もうとしていたのでは無いか
そんなとんでもないビッチだったのではないか……
透さんと降谷さんに関しての記憶だけが抜け落ちているのも、その事実を誰にも知られたくなくて、その事実を分かっている自分の記憶を罪悪感から封印してしまったのではないか……
不意に至ったその考えが、今の状況と如実にマッチングしているように思えた
---------
「と…お、る…さん?」
妙にしっくりくる耳馴染みの良い響きの名前を意図せず呟いてしまった名前に反応した研二くんがとても驚いた反応を示したことでに私の顔から血の気が引いた
降谷さんのことをいまだ思い出せてない私が透さんの名前をクチにしてしまったのだ、研二くんに問いただされるかもしれない
身を竦め目を強く閉じた私の耳は、研二くんの足音が近づいてくることを知らせていた
「あやちゃん、透さんって今言ったよね?」
咎めるでも無く優しく問いかける研二くんの声に私は身を震わせながら小さく頷き、俯く
「みんな思い出したの?」
「……まだ。彼の名前だけ…思い出したの」
私の縮こまった肩に手をポンポンと宥めるように叩いた研二くんの顔を見上げるとポロリと涙がこぼれる
「何で泣くの?記憶戻ってきてるっていいことだと思うよ」
「……でも、でも…っ」
「どうしたの?」
「降谷さんのことは何一つ思い出せないの。そして透さんが誰かも思い出せないの」
お腹をボコボコっと蹴られる感覚に両手でお腹を撫でる
その様子をじっと見ていたのだろう、研二くんも私のお腹に手を伸ばし撫でるとお腹の子が大人しくなった
「そんな追い詰められたような顔してるの、なんで?」
柔々と研二くんにお腹を撫でられ涙が止まらない
「絶対誰にも言わない?」
「うん、あやちゃんと俺の秘密な?」
ぽろぽろと止まらない涙で布団を濡らしながら研二くんを見上げる
子どもの頃からずっと一緒の幼なじみ
兄の親友、私の夫である降谷さんの同期
そんな研二くんにこのことを言ったら見放されるかも……
私は全てを失う、かも……
「ストレスはお腹の子に良くないよ?吐き出してラクになっちゃお」
髪型が崩れないよう優しく頭を撫でて話しを促してくれる研二くん
「研二くんに見放されちゃうような話なんだけど……ね
実は……、お腹の子……降谷さんの子じゃないと思うの……」
抱えきれず、耐えきれず研二くんの優しさに甘えてカミングアウトした瞬間、研二くんは大きく目を見開き穴が開きそうなほどの眼力で私を見下ろす
「何……を思い出したの?」
「お腹の子が、透さんって人の子……ってこと……
降谷さんの子じゃないのに降谷さんとの子なんて……。騙してしまって謝って済むことじゃないし記憶喪失になる前の自分を殴りたい……」
ギュッと目を閉じ言い切った私に研二くんからの言葉は無かった
呆れちゃったよね、人として最低って軽蔑されちゃうようなカミングアウトされちゃったもんね
お腹を抱え沈黙に耐えていた私の耳に、はぁと溜め息が聞こえた
それはとても小さなもので、この部屋にいる音とは思えないくらいのもので……
沈黙に耐えられない私の空耳だったのかもしれない
思わず顔を上げると無表情の研二くんがそこにいた
「……ってことだそうだよ。降谷ちゃん」
私を見下ろした研二くんがいつの間にか手に持っていたスマホに向かって話始める
あぁ、降谷さんと電話繋がってたんだ
今の話、降谷さんに聞かれてしまったんだ
これで全てを失うけど、隠しておくなんて出来ないし子どもは私1人で育てるから
このこと知ったらお兄ちゃん、怒るだろうな
静まりかえった病室
バタバタバタバタと病院にあるまじき大きな足音が段々と近づいてくる
ガラッと扉が勢いよく開き、そこにいたのは降谷さん
「降谷さん、ごめんなさい!」
頭を下げて謝って許されることじゃない
だけど私には謝ることしかできない
この子を守らなきゃいけない
コツコツと近づく足音
頭を下げ続けている私の視界に降谷さんの靴が見え思わずお腹を抱え身構えていると突然抱きしめられ思わず逃げようと身動ぐと耳元で「透、安室透は僕だよ。あや」と囁く優しい声
「えっ…?」
降谷さんの言葉の意味が理解出来ず顔を上げると視界いっぱいの降谷さんの蕩けるような笑顔で「僕のこと思い出してくれないかと思ったけどこれをキッカケに全て思い出して」と言った降谷さん
降谷さんの言葉が理解出来ず呆気にとられた私が記憶を取り戻したのは翌日のことだった
1/12ページ