【DC】Con te
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車に乗り込んだエルから開口一番にあやのことを聞かれ、僕は無表情のまま事前に用意していた回答を口にした
「あ、そう。まだ意識が戻っていないのね。骨がありそうだったけど思ったよりヤワだったのかしらね」
フンと鼻を鳴らされ返ってきた言葉に、こちらもエルがあやにした所業を考えると舌打ちしたい気持ちでいっぱいだったがそれを自分の感情の奥深くに覆い隠し、ポーカーフェイスで蓋をしてエルに指示された場所へ車を走らせる
エルから指示された場所は米花サウスホテル10階
サウスホテルの10階と言えば、宿泊が出来ないタイプの多目的特別室があったと記憶している
ある程度の高さを有しているので人目も気にすることなく密会には相応しい場所と言えるだろう
もっと高層階を…という意見も一説にはあるが、実際はこのくらいの階層の方が何かと実用的だ
サウスホテルの正面玄関に車を止め車を降り、出迎えをしてくれたドアマンへチップを渡し、地下駐車場へ車の移動を頼んだ後、助手席のドアを開けエルをエスコートするため手を差し出した
エルが当然のように僕の手に自身の手を委ね車から降り立つ
「どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ」
ドアマンの声を背にエルを伴いホテル内に足を踏み入れた
エレベータが到着を知らせるチンという音の後、左右に扉が開く
目の前には10という数字のオブジェが壁に掛けられている
このオブジェは10階を指し示しているのだろう
それまでエルと適当に会話を交わしつつもユダと僕が対峙した時、僕が取るべき行動は…と思考を巡らせていた
一番は対峙してすぐ風見が突入してくることだが、タイミングが合わない場合のことも考えなければならない
見当は付いているが誰がユダか確定していない今、ユダが余計な口を開き僕がエルに勘ぐられる前に押さえたいところだ
風見にはこちらの様子は盗聴器越しに知ることは出来るが、こちらは風見の動向は一切分からない
しかし風見に限って僕の不利になるような動きはしないと信頼している
正直ユダの出方次第の部分があり、現状自分がかなり足場の悪い綱渡りしていることには気づいていた…が見ないフリをしていた
もうこれ以上この件に時間を掛ける訳にはいかない
「10階ですね?」
「えぇ、この階で間違い無いわ」
盗聴器越しに情報が伝わるように少しだけ説明口調で話をしているがエルは特に疑う様子もないようだ
フロントロビー階と違い人気の無いシンとした廊下には毛足の長い絨毯が引かれ、歩いても足音はほとんどしない
そんな中を進み、とあるドアの前でエルが立ち止まり、眼前のドアベルを鳴らす
初動を間違ってはいけない…と緊張感を最高に高めていたが、中から人の気配は感じられず返事はなかった
「おかしいわね…」
聞こえるか聞こえないかくらいの声でエルが呟き再度ドアベルを鳴らす…がやはり返事はない
「エル、約束はこの部屋、1021号室で間違い無いのですか?」
「えぇ、いつもこの部屋で会っていたの。今まで向こうが先に来てなかったことは無かったわ…」
話ながら次第に眉根を寄せたエルは少し考え込んだ後、くるりと踵を返す
「エル、どこへ?」
「1度ここを離れるわ、バーボン。何だかイヤな予感がするの」
「分かりました。それではロビーで待っていてください。僕は地下駐車場から車を回してきます」
「えぇ、分かったわ」
ユダはまだ来てないようだがエルは僕より長く組織にいてネームドになっているだけあって勘が働くのかもしれない
推測に過ぎないが僕が思っている人物がユダであるなら今回僕がエルに同行するということは当然上に報告済みなので知っているものだと思われる
なのでユダ自身の身を守るためにあえて来なかった可能性もあった
今の風見側の状況を確認するため独りになりたかった僕は車を口実に独りになれそうだ
エルと共にエレベータに乗り込み、エルが降りるロビー階と僕が降りる地下駐車場階のボタンを押す
機内でエルは何か言うのかと思っていたが、ただただ無言のままロビー階へたどり着いた
到着を知らせるチンという音の後、左右に扉が開く
「あまり待たせないでね」
エルはそう言って僕の方を振り返ることなくエレベータを降りた
エルが降りた後のエレベータの中は僕1人だ
カメラの死角になる位置へ移動しスマホを手に取るとメールが1件届いていた
今手にしているスマホはプライベート用なので組織の人間と会う時はこのスマホの存在を知られないため電源は入れてあるが消音状態でバイブにせず完全サイレントにしている
届いたメールのアドレスには見覚えが無いがこちらのスマホに届いているということは身内の人間だろう
メールを開くと「ユダ確保 H」とだけ書かれていた
メールの署名に「H」とあるから見知らぬアドレスだが文面と合わせてこれはヒロからだと確信する
ヒロは昔から必ずメールや手紙の最後に「H」と入れるのだ
どういう経緯でユダをヒロが確保することになったか分からないがヒロの今の連絡先はこのメールアドレス以外分からず、早急に現状確認したかった僕は風見にコールするとワンコールで繋がった
「はい」
「風見か?」
「はい」
「一体何がどうなっている?」
「エルディアブロを確保しました」
「何?」
「管理官からの指示です。ユダも…確保済みです。警視庁へ護送します」
「…分かった。僕も警視庁へ向かう」
「了解です」
何がどうなっているか分からないが急展開のようだ
たった今エレベータから降りたエルが風見たちによって確保されたらしい
電話を切って地下駐車場階にたどり着いたエレベータから気の急くまま足を動かし車へ乗り込む
エンジンをかけ地上に出ると覆面パトカーが3台止まっており、男性が2人エルを左右から取り押さえ、その前に風見がいた
取り押さえられていたエルが髪を振り乱し必死の形相で抵抗し、彷徨わせた視線をこちらに向ける
エルと目が合う…
いつもの不遜な様子はなりを静め、助けを請うような視線をこちらに向けているが僕は表情を変えること無くエルに冷めた視線を送り、そのまま走り去った
組織の人間だからと言って仲間のために自分を危険に晒すことはしない
この僕の行動は組織の人間として正しい行動だったと言える
◇◆◇
「あ、そう。まだ意識が戻っていないのね。骨がありそうだったけど思ったよりヤワだったのかしらね」
フンと鼻を鳴らされ返ってきた言葉に、こちらもエルがあやにした所業を考えると舌打ちしたい気持ちでいっぱいだったがそれを自分の感情の奥深くに覆い隠し、ポーカーフェイスで蓋をしてエルに指示された場所へ車を走らせる
エルから指示された場所は米花サウスホテル10階
サウスホテルの10階と言えば、宿泊が出来ないタイプの多目的特別室があったと記憶している
ある程度の高さを有しているので人目も気にすることなく密会には相応しい場所と言えるだろう
もっと高層階を…という意見も一説にはあるが、実際はこのくらいの階層の方が何かと実用的だ
サウスホテルの正面玄関に車を止め車を降り、出迎えをしてくれたドアマンへチップを渡し、地下駐車場へ車の移動を頼んだ後、助手席のドアを開けエルをエスコートするため手を差し出した
エルが当然のように僕の手に自身の手を委ね車から降り立つ
「どうぞごゆっくりおくつろぎくださいませ」
ドアマンの声を背にエルを伴いホテル内に足を踏み入れた
エレベータが到着を知らせるチンという音の後、左右に扉が開く
目の前には10という数字のオブジェが壁に掛けられている
このオブジェは10階を指し示しているのだろう
それまでエルと適当に会話を交わしつつもユダと僕が対峙した時、僕が取るべき行動は…と思考を巡らせていた
一番は対峙してすぐ風見が突入してくることだが、タイミングが合わない場合のことも考えなければならない
見当は付いているが誰がユダか確定していない今、ユダが余計な口を開き僕がエルに勘ぐられる前に押さえたいところだ
風見にはこちらの様子は盗聴器越しに知ることは出来るが、こちらは風見の動向は一切分からない
しかし風見に限って僕の不利になるような動きはしないと信頼している
正直ユダの出方次第の部分があり、現状自分がかなり足場の悪い綱渡りしていることには気づいていた…が見ないフリをしていた
もうこれ以上この件に時間を掛ける訳にはいかない
「10階ですね?」
「えぇ、この階で間違い無いわ」
盗聴器越しに情報が伝わるように少しだけ説明口調で話をしているがエルは特に疑う様子もないようだ
フロントロビー階と違い人気の無いシンとした廊下には毛足の長い絨毯が引かれ、歩いても足音はほとんどしない
そんな中を進み、とあるドアの前でエルが立ち止まり、眼前のドアベルを鳴らす
初動を間違ってはいけない…と緊張感を最高に高めていたが、中から人の気配は感じられず返事はなかった
「おかしいわね…」
聞こえるか聞こえないかくらいの声でエルが呟き再度ドアベルを鳴らす…がやはり返事はない
「エル、約束はこの部屋、1021号室で間違い無いのですか?」
「えぇ、いつもこの部屋で会っていたの。今まで向こうが先に来てなかったことは無かったわ…」
話ながら次第に眉根を寄せたエルは少し考え込んだ後、くるりと踵を返す
「エル、どこへ?」
「1度ここを離れるわ、バーボン。何だかイヤな予感がするの」
「分かりました。それではロビーで待っていてください。僕は地下駐車場から車を回してきます」
「えぇ、分かったわ」
ユダはまだ来てないようだがエルは僕より長く組織にいてネームドになっているだけあって勘が働くのかもしれない
推測に過ぎないが僕が思っている人物がユダであるなら今回僕がエルに同行するということは当然上に報告済みなので知っているものだと思われる
なのでユダ自身の身を守るためにあえて来なかった可能性もあった
今の風見側の状況を確認するため独りになりたかった僕は車を口実に独りになれそうだ
エルと共にエレベータに乗り込み、エルが降りるロビー階と僕が降りる地下駐車場階のボタンを押す
機内でエルは何か言うのかと思っていたが、ただただ無言のままロビー階へたどり着いた
到着を知らせるチンという音の後、左右に扉が開く
「あまり待たせないでね」
エルはそう言って僕の方を振り返ることなくエレベータを降りた
エルが降りた後のエレベータの中は僕1人だ
カメラの死角になる位置へ移動しスマホを手に取るとメールが1件届いていた
今手にしているスマホはプライベート用なので組織の人間と会う時はこのスマホの存在を知られないため電源は入れてあるが消音状態でバイブにせず完全サイレントにしている
届いたメールのアドレスには見覚えが無いがこちらのスマホに届いているということは身内の人間だろう
メールを開くと「ユダ確保 H」とだけ書かれていた
メールの署名に「H」とあるから見知らぬアドレスだが文面と合わせてこれはヒロからだと確信する
ヒロは昔から必ずメールや手紙の最後に「H」と入れるのだ
どういう経緯でユダをヒロが確保することになったか分からないがヒロの今の連絡先はこのメールアドレス以外分からず、早急に現状確認したかった僕は風見にコールするとワンコールで繋がった
「はい」
「風見か?」
「はい」
「一体何がどうなっている?」
「エルディアブロを確保しました」
「何?」
「管理官からの指示です。ユダも…確保済みです。警視庁へ護送します」
「…分かった。僕も警視庁へ向かう」
「了解です」
何がどうなっているか分からないが急展開のようだ
たった今エレベータから降りたエルが風見たちによって確保されたらしい
電話を切って地下駐車場階にたどり着いたエレベータから気の急くまま足を動かし車へ乗り込む
エンジンをかけ地上に出ると覆面パトカーが3台止まっており、男性が2人エルを左右から取り押さえ、その前に風見がいた
取り押さえられていたエルが髪を振り乱し必死の形相で抵抗し、彷徨わせた視線をこちらに向ける
エルと目が合う…
いつもの不遜な様子はなりを静め、助けを請うような視線をこちらに向けているが僕は表情を変えること無くエルに冷めた視線を送り、そのまま走り去った
組織の人間だからと言って仲間のために自分を危険に晒すことはしない
この僕の行動は組織の人間として正しい行動だったと言える
◇◆◇