【DC】Con te
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◇◆◇
ゼロが車のドアを開け乗るように促すので助手席に座る
今まで何度もゼロの車に乗ったことがあったがバケットタイプのシートは深く、今の俺が座るとフロントガラスの上の方しか見えなかった
ゼロがグローブボックスに入れてあるイエローボディの盗聴発見器を取り出し電源を入れる
トットットットッと断続的な音がして音の変化がないことを確認した後、電源を切りグローブボックスに発見器を直した
いつものゼロのルーティンだ
ゼロは車を動かすつもりは無いのか車のエンジンをかけず両腕を組んでステアリングの上に乗せ、その上に自分のアゴを乗せて目線だけこちらによこしたが、外が見えないことに不満を感じた俺は靴を脱いでシートの上に正座するとようやく目の前の視界が開けた
本当に小さくなってしまったんだなとここでもまた実感してしまう
威儀を正した俺はライに助けられたところからゼロに話しだした
シェリーが作った試薬で仮死状態になったところにバーボンが来て死亡確認した…という話をライから聞いたまま話すとずっと黙っていたゼロが舌打ちとともに「あれは…偽装だったのか…」と呟き、悔しそうな色を見せた
俺が生きていると分かった今、現確(現場確認)したのに気づかずライの偽装について見破れなかったことが悔しいのだろう、幼馴染みなのでそれなりにゼロの考えてそうなことは分かる…が、今は誰が見ても分かりやすい顔をしていて思わず苦笑した
やっぱりあやの言うとおり、意固地にならずゼロに最初から話をしておくべきだったかもしれない
そうしておけばあやが1人で潜入するという危険な行為をせずに済んだかもしれない
…今更仮定法過去の話をしても仕方ない。ゼロに今までの経緯を話しているのだ、これ以上心強い味方はいない
ゼロがユダだった場合はこのまま俺は始末されるかもしれないが、ゼロの様子を見ている限りそれもないと信じたい
しかしライがNOCであるということは伏せておこう
なぜならばライとバーボンは仲が良くなかったからだ
ライがバーボンにどういう感情を持っていたかは俺の知るところでは無いが、バーボンのいなし方を見ている限り特に毛嫌いしているという印象は受けず、俺の目から見ている限り一方的にバーボンがライを嫌っているように見えていた
組織ではその2人の仲を取り持つように俺がいて3人で組んで仕事することも多かった
元々ライは目つきが鋭く言葉が少ないので誤解を受けやすい人間なのかもしれないが、実際は忍耐力、注意力に洞察力、状況判断能力…どれを取っても優れていて優秀な人間だ
それはFBIの2人のライに対する態度を見ていてもよく分かった
あの時聞いたライの話、ライの所属する組織は俺を死なせまいとするライの真摯な思いから俺が知ることになったのであって、現在進行形で組織に潜入中であり隙あらばライを蹴落とそうとしているバーボンに話して黙っているとは思えなかった
バーボンならNOCである証拠とライを手土産に組織のさらなる上層部に食い込もうと考える可能性がある
それが払拭されない限り、バーボンであるゼロにライの件だけは話すつもりは無かった
ライの件以外を話し終え、俺は小さく息を吐いた
その様子を見たゼロは話が終わったのだと分かったのだろう、イグニッションキーを回すとセルが回る音と共にエンジンがかかる
あやの愛車と同じ、ロータリーエンジンの音だ
「ゼロ、何処へ?」
「警察病院」
俺をあやのところへ送ろうとしてくれているんだろう、もしかしたらゼロ自身もあやの様子を見に行くつもりなのかもしれない
どちらも言葉を発さない静かな車内、車は滑るように走り警察病院の駐車場で停まった
エンジンは走行時と違いアイドリング音は小さく、車内は少しだけ静かになる
今まで何度もゼロの車に乗っていたし無言の空間には慣れていたが、何故か今は居心地が悪いと感じていた
車から降りようとシートベルトのバックルに手を掛けた俺の手をゼロの大きな手が押さえる
何事かと顔を上げると意志の強い秘色の瞳の奥を光らせゼロが言った
「ヒロの話と僕の方であったことを繋ぎ合わせてみた。話を、聞いて欲しい」
その言葉に俺はバックルに掛けていた手を離すとゼロは少しホッとしたような顔をして俺の手を離した
「スコッチがNOCだと言う話はどうやらヒロの言うとおり警察内のユダからの情報提供のようだ
情報提供を受けていたのはエル、エルディアブロだ。その情報を聞いたジンがライに処分の指示をした…」
眉根を寄せ目を閉じたゼロ
色んな思いがあるのかもしれない
今、俺自身がこうなっているが、もしゼロやあやが俺のようになったら…俺はどうしていただろう、何を考えただろう
「エルとは先ほどまで一緒に居た。今晩エルはユダと会う予定らしい。僕に同席して欲しいと言われている」
「!それじゃユダは今晩分かるんだな?!」
子どもの高い声なのに、更に声がうわずる
大人の時なら出なかったような高さで普段なら恥ずかしくなるような声だったがそんなの構ってられなかった
真相にたどり着ける、俺の情報を売ったユダが分かる
ユダを確保出来ればゼロがNOCだと組織にバレることもないだろう
俺はエルディアブロとは一緒に仕事をしたことは無かったが、何度も見かけたり話をしたことはあり、ジンが特に気に入ってる人物だと言うことは知っている
だからこそ”疑わしきは罰する”と言っているジンはエルディアブロの話を聞いて俺を始末することにしたんだろう
エルディアブロのお陰で解決に向けて一気に話が進みそうだと俺の気持ちは高揚していた
エルディアブロのせいで俺は今こうなってしまったのに、それを忘れむしろエルディアブロに感謝すらしていた
…そんな俺に次のゼロの言葉で冷水を浴びせられた気分になり、気持ちが一気に冷え込んだ
「あやに自白剤を投与させたのもエルだ…。あやとエルは今回より前から因縁があったんだ
エルは組織からの指示で上山孝太郎という政治家の秘書をして組織に資金を流していた。その証拠を掴むために俺とあやが潜入した特務のパーティ、そこであやと会ってるんだ、エルは。
あやから目を逸らさせるために僕は携帯していた銃を付けていた盗聴器から風見に指示して回収させ、エルと行動を共にした…
しかし先ほどの話だとあやもエルもお互いのことを覚えていたようだったし、そこに僕は組織の人間としてあやの前に立った。エルの手前、あやと敵対しないという選択肢は無かった…
そして組織という言葉に反応したあやに不信感を持ったエルは僕が少し目を離した隙に自白剤を…。だからこれは完全に僕の不始末だ。本当にすまない」
そう言って俺に頭を下げるゼロ
俺は何も言えなかった
そんな数奇な巡り合わせ、神様でもないと避けることは出来ないことだったんじゃないか?
組織のネームドは基本的に個人で動く。そのため、普段なら表に出てこない組織の人間、それもネームドが、組織に資金提供しているフロント企業のパーティに秘書として潜り込んでいるなんて誰も思わないだろうし、エルディアブロの存在に気が付いたであろうゼロは臨機応変に彼女のフォローという形で様子を伺っていたらしいが、当人同士が互いに覚えているかどうかの記憶の部分まではゼロに分かるはずは無い
それを言うならあやに言われた時点で俺がゼロにこの姿を晒していたらあやはこんな危険な潜入はしなかっただろう。潜入しなければゼロだって組織の人間としてあやと対峙する必要も無かった
数々の巡り合わせ、あやとエルの数奇な縁、その結果が今なのだ
全てゼロが責任を抱える必要は無いことだ
それなのにゼロは全て自分のせいだと全てを抱え込もうとする
「ゼロ、おまえは精一杯やってくれたよ。あやを…助けてくれてありがとう。これからもあやのこと…頼むな」
色々考えてたはずなのに口をついて出たのはこんな言葉だった
弾かれたように頭を上げたゼロの目には驚きの色が乗っている
「ゼロ、そのパーティであやと何かあったろ?あやは必死に隠してたけどあやの双子の片割れの俺にはみんなお見通しだ」
軽口を叩くように言った俺に、ゼロは目を細めて言った
「さすがあやの兄貴だな、ヒロは。ヴェレーノ教授の件、後は僕に任せて欲しい。クスリの情報は僕が手に入れる」
◇◆◇
ゼロが車のドアを開け乗るように促すので助手席に座る
今まで何度もゼロの車に乗ったことがあったがバケットタイプのシートは深く、今の俺が座るとフロントガラスの上の方しか見えなかった
ゼロがグローブボックスに入れてあるイエローボディの盗聴発見器を取り出し電源を入れる
トットットットッと断続的な音がして音の変化がないことを確認した後、電源を切りグローブボックスに発見器を直した
いつものゼロのルーティンだ
ゼロは車を動かすつもりは無いのか車のエンジンをかけず両腕を組んでステアリングの上に乗せ、その上に自分のアゴを乗せて目線だけこちらによこしたが、外が見えないことに不満を感じた俺は靴を脱いでシートの上に正座するとようやく目の前の視界が開けた
本当に小さくなってしまったんだなとここでもまた実感してしまう
威儀を正した俺はライに助けられたところからゼロに話しだした
シェリーが作った試薬で仮死状態になったところにバーボンが来て死亡確認した…という話をライから聞いたまま話すとずっと黙っていたゼロが舌打ちとともに「あれは…偽装だったのか…」と呟き、悔しそうな色を見せた
俺が生きていると分かった今、現確(現場確認)したのに気づかずライの偽装について見破れなかったことが悔しいのだろう、幼馴染みなのでそれなりにゼロの考えてそうなことは分かる…が、今は誰が見ても分かりやすい顔をしていて思わず苦笑した
やっぱりあやの言うとおり、意固地にならずゼロに最初から話をしておくべきだったかもしれない
そうしておけばあやが1人で潜入するという危険な行為をせずに済んだかもしれない
…今更仮定法過去の話をしても仕方ない。ゼロに今までの経緯を話しているのだ、これ以上心強い味方はいない
ゼロがユダだった場合はこのまま俺は始末されるかもしれないが、ゼロの様子を見ている限りそれもないと信じたい
しかしライがNOCであるということは伏せておこう
なぜならばライとバーボンは仲が良くなかったからだ
ライがバーボンにどういう感情を持っていたかは俺の知るところでは無いが、バーボンのいなし方を見ている限り特に毛嫌いしているという印象は受けず、俺の目から見ている限り一方的にバーボンがライを嫌っているように見えていた
組織ではその2人の仲を取り持つように俺がいて3人で組んで仕事することも多かった
元々ライは目つきが鋭く言葉が少ないので誤解を受けやすい人間なのかもしれないが、実際は忍耐力、注意力に洞察力、状況判断能力…どれを取っても優れていて優秀な人間だ
それはFBIの2人のライに対する態度を見ていてもよく分かった
あの時聞いたライの話、ライの所属する組織は俺を死なせまいとするライの真摯な思いから俺が知ることになったのであって、現在進行形で組織に潜入中であり隙あらばライを蹴落とそうとしているバーボンに話して黙っているとは思えなかった
バーボンならNOCである証拠とライを手土産に組織のさらなる上層部に食い込もうと考える可能性がある
それが払拭されない限り、バーボンであるゼロにライの件だけは話すつもりは無かった
ライの件以外を話し終え、俺は小さく息を吐いた
その様子を見たゼロは話が終わったのだと分かったのだろう、イグニッションキーを回すとセルが回る音と共にエンジンがかかる
あやの愛車と同じ、ロータリーエンジンの音だ
「ゼロ、何処へ?」
「警察病院」
俺をあやのところへ送ろうとしてくれているんだろう、もしかしたらゼロ自身もあやの様子を見に行くつもりなのかもしれない
どちらも言葉を発さない静かな車内、車は滑るように走り警察病院の駐車場で停まった
エンジンは走行時と違いアイドリング音は小さく、車内は少しだけ静かになる
今まで何度もゼロの車に乗っていたし無言の空間には慣れていたが、何故か今は居心地が悪いと感じていた
車から降りようとシートベルトのバックルに手を掛けた俺の手をゼロの大きな手が押さえる
何事かと顔を上げると意志の強い秘色の瞳の奥を光らせゼロが言った
「ヒロの話と僕の方であったことを繋ぎ合わせてみた。話を、聞いて欲しい」
その言葉に俺はバックルに掛けていた手を離すとゼロは少しホッとしたような顔をして俺の手を離した
「スコッチがNOCだと言う話はどうやらヒロの言うとおり警察内のユダからの情報提供のようだ
情報提供を受けていたのはエル、エルディアブロだ。その情報を聞いたジンがライに処分の指示をした…」
眉根を寄せ目を閉じたゼロ
色んな思いがあるのかもしれない
今、俺自身がこうなっているが、もしゼロやあやが俺のようになったら…俺はどうしていただろう、何を考えただろう
「エルとは先ほどまで一緒に居た。今晩エルはユダと会う予定らしい。僕に同席して欲しいと言われている」
「!それじゃユダは今晩分かるんだな?!」
子どもの高い声なのに、更に声がうわずる
大人の時なら出なかったような高さで普段なら恥ずかしくなるような声だったがそんなの構ってられなかった
真相にたどり着ける、俺の情報を売ったユダが分かる
ユダを確保出来ればゼロがNOCだと組織にバレることもないだろう
俺はエルディアブロとは一緒に仕事をしたことは無かったが、何度も見かけたり話をしたことはあり、ジンが特に気に入ってる人物だと言うことは知っている
だからこそ”疑わしきは罰する”と言っているジンはエルディアブロの話を聞いて俺を始末することにしたんだろう
エルディアブロのお陰で解決に向けて一気に話が進みそうだと俺の気持ちは高揚していた
エルディアブロのせいで俺は今こうなってしまったのに、それを忘れむしろエルディアブロに感謝すらしていた
…そんな俺に次のゼロの言葉で冷水を浴びせられた気分になり、気持ちが一気に冷え込んだ
「あやに自白剤を投与させたのもエルだ…。あやとエルは今回より前から因縁があったんだ
エルは組織からの指示で上山孝太郎という政治家の秘書をして組織に資金を流していた。その証拠を掴むために俺とあやが潜入した特務のパーティ、そこであやと会ってるんだ、エルは。
あやから目を逸らさせるために僕は携帯していた銃を付けていた盗聴器から風見に指示して回収させ、エルと行動を共にした…
しかし先ほどの話だとあやもエルもお互いのことを覚えていたようだったし、そこに僕は組織の人間としてあやの前に立った。エルの手前、あやと敵対しないという選択肢は無かった…
そして組織という言葉に反応したあやに不信感を持ったエルは僕が少し目を離した隙に自白剤を…。だからこれは完全に僕の不始末だ。本当にすまない」
そう言って俺に頭を下げるゼロ
俺は何も言えなかった
そんな数奇な巡り合わせ、神様でもないと避けることは出来ないことだったんじゃないか?
組織のネームドは基本的に個人で動く。そのため、普段なら表に出てこない組織の人間、それもネームドが、組織に資金提供しているフロント企業のパーティに秘書として潜り込んでいるなんて誰も思わないだろうし、エルディアブロの存在に気が付いたであろうゼロは臨機応変に彼女のフォローという形で様子を伺っていたらしいが、当人同士が互いに覚えているかどうかの記憶の部分まではゼロに分かるはずは無い
それを言うならあやに言われた時点で俺がゼロにこの姿を晒していたらあやはこんな危険な潜入はしなかっただろう。潜入しなければゼロだって組織の人間としてあやと対峙する必要も無かった
数々の巡り合わせ、あやとエルの数奇な縁、その結果が今なのだ
全てゼロが責任を抱える必要は無いことだ
それなのにゼロは全て自分のせいだと全てを抱え込もうとする
「ゼロ、おまえは精一杯やってくれたよ。あやを…助けてくれてありがとう。これからもあやのこと…頼むな」
色々考えてたはずなのに口をついて出たのはこんな言葉だった
弾かれたように頭を上げたゼロの目には驚きの色が乗っている
「ゼロ、そのパーティであやと何かあったろ?あやは必死に隠してたけどあやの双子の片割れの俺にはみんなお見通しだ」
軽口を叩くように言った俺に、ゼロは目を細めて言った
「さすがあやの兄貴だな、ヒロは。ヴェレーノ教授の件、後は僕に任せて欲しい。クスリの情報は僕が手に入れる」
◇◆◇