【DC】Con te
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◇◆◇
中央合同庁舎第2号館、警察庁が入っている合同庁舎のヘリポートに私はいた
地上に比べて高層部にあるので風は強いけどヘリコプターが離着陸が出来るよう落下防止柵は付いておらず、申し訳程度の段差があるだけの場所
緊急時以外は立入禁止になっているここへ至るドアは電子ロックがされているが解除キーを知っていれば誰でも屋外に出ることは可能だった
隣にある警視庁のヘリポートと違い、基本的にここより近隣の高い建物は裁判所と他の合同庁舎くらいしかなく人目もさほど気にせずにいられるのでこれまでも1人で考え事をしたい時に私は無断でヘリポートに出ていたりしていた
吹きさらしのこの場所から皇居の方に目を向けると近隣の近代的な建物の数々の中に突如広がる自然…
都会の真ん中にぽっかりと、時代に取り残されたように残る自然多きその空間はさながら大都市のテラリウムだなと個人的には思っている
急に煽られるような強い風に巻き上げられる髪を咄嗟に抑えた手に、その強い風が連れてきたのか雨がポツポツと落ちてきた
季節は晩秋、身体に落ちてくる雨は冷たいけどまだ庁舎内に戻る気持ちにはなれず、くるりと踵を返し皇居を背にヘリポートの方を向くと、落ちてくる雨粒でヘリポートの青い地面に濃いシミのようなものが段々と広がっていた
徐々に強くなる雨足に逆らうように雨粒が落ちてくる空を見上げると鼠色の雲が先を争うかのように東へ東へと勢力を伸ばしている様子が見える
無心になって目で雲を追いかけているとポツと雨粒が目に入り、反射的に目を閉じ俯き屈み込んだ
後頭部から背中にかけて雨粒が先ほどより強くなりながら容赦なく叩きつける
「も…ぅ、どうしたらいいの…かなぁ…」
目に入った雨のせいと自分の心に言い訳をすると、我慢出来なくなった気持ちが溢れてぽろりぽろりと涙が地面に落ちる
ヘリポートに落ちた雨と涙はどちらがどちらかもう見分けることは出来なかった
ヒロが生きてくれていたことが何よりも嬉しい
私のところに帰ってきてくれたことが嬉しい
私を頼りにしてくれていることが嬉しい
だけどそのヒロとの距離を感じる
その距離の理由が分からない
高明兄さん、私はどうしたらいいの?
これからどうヒロと接したらいいの?
双子だったせいか今までこんな風に感じたこと一度も無かったのに…
…それが今までおかしかったのかな?
優しいヒロに甘えすぎたのかな…?
あの小さな少年がヒロであることは紛う事の無い事実なのだ
潜入捜査をする際に仮の身分を確立させるための必要な書類を、今のヒロの為に揃えながら感じた
身一つで外へ放り出されたような疎外感、喪失感、孤独感…
それらが何に対するものかも自分自身でも分からず、私は悶々としていた
ヒロの思うとおり、ユダ探しをしたいけど私にどれだけのことが出来る?
でもやらなければならない、他の誰も頼れない
しかし本当にこのままれーくんに話さずに進めて良いのだろうか?
こういう時、1番に相談してたのはヒロだったけど、今のヒロには拒絶されてるようで相談しにくい
私たち2人だけでどうにかなるんだろうか?
ヒロを殺そうとした組織に、情報を売ったであろうユダを探すことは本当に私たち兄妹だけで可能なのだろうか?
れーくんがユダである可能性は限りなく低いと思う…けどヒロの言うとおりゼロではない
彼がユダじゃないって条件下の話になるけど組織側からも探って貰えたら近道なんじゃないだろうか
本来なられーくんに私たち兄妹は助力を請うべきだと思うし、何より私たちは今、降谷班の一員なのだ
総括であるれーくんに話す方がいい、私はそう思う
しかしどうやってヒロを納得させようか…
顔を上げると今まで顔の側面を流れ落ちていた雨が方向を変え、頬を伝う時に涙と混じり合って流れ落ちる
端から見たら雨に打たれているのか泣いているのか判別が付かないだろう
いつの間にか目の先には水たまりが出来ており、いくつもの波紋が出来ては消え、出来ては消え…としているのを膝に両腕を乗せ、その両腕で顎を支えた私はぼんやりと眺めていた
「…風邪…ひくぞ」
私の真上だけ雨が止む
振り返ると困ったような、怒ったような顔をしたれーくんがそこにいて私に傘を差し向けていた
「な…んでここが…?」
「あやは何かあるといつもここに来てるからな」
「…ここのことは誰にも知られてないと思ってた…」
「知ってるよ、あやのことなら」
そう言いながら柔らかく微笑んだれーくんは私の横に屈み込む
「ここ、入ったら怒られちゃうんだよ?」
「知ってる」
「もしかしたら始末書かも」
「かもな」
「いつから知ってたの?」
「いつから…だったかな…」
屈んだれーくんは私と同じように水たまりに出来る波紋を眺めているようでこちらを見ようとはしなかった
「れーくん出勤してたんだね?」
「ああ、今日は管理官に報告しなければならないことが……あったからな」
「…そっか…」
歯切れ悪く話すれーくんの言葉に、多分それはヒロのことだろうと思う
昨日の今日だかられーくん自身も割り切れてないのかもしれないけど、ヒロの肉親である私に気を遣って言葉を選んでくれているのを感じる
本当はね、れーくん
ヒロ生きてるの!
帰ってきてくれたの!
…そうこの場で言えたらどれだけ良いだろう…
でも良いと思ってるのは私だけで、ヒロは良しとしていない
このことは私だけの問題じゃないから1人で先走る訳にはいかない
私だけが苦しいんじゃない、私だけが辛いんじゃない
ヒロも…れーくんも苦しくて辛いんだ
れーくんが差してる傘の上で弾ける雨の音に耳を傾け目を閉じると、自分自身でも何の感情か分からない涙がほろりとこぼれた
クシュンとくしゃみが出て身震いする
今はれーくんが傘を差し向けてくれているけどそれまでに雨に打たれ濡れ鼠になっていた私の冷えた身体がそろそろ限界を迎えたようだった
「あや、これ以上冷える前に中へ」
れーくんが立ち上がりながら私へ声を投げかける
スキンシップが人よりちょっと過剰なれーくんなのでいつもなら肩を抱き寄せてくれるだろうけど今は触れられることはなかった
昨日の今日だからだろうか、れーくんの気持ちに返事をしてないからだろうか、それとも今朝れーくんの手を拒んでしまったからだろうか…
ヒロが戻ってきてくれたことでその前にあったれーくんとのことはすっかり失念してしまっていた私は他人行儀なれーくんの態度に急に独りぼっちになった気持ちに襲われる
しかしれーくんからそうされるだけの心当たりがありすぎで「自業自得だわ」…と口の中で独りごちる
私はまだ何の返事もしてないかられーくんの気持ちは宙ぶらりんのまま
それなのにこうして私を1人にしないためにれーくんはわざわざ探しに来てくれたのだろう
立ち上がれないまま俯いてギュッと唇を噛みしめているとふわりと肩にジャケットを羽織らされる
温かさと共にふわりとエゴイストプラチナムの香りが柔らかく香る
濡れ鼠になってる私にジャケットを羽織らせたられーくんが困る…と、ジャケットを返そうと立ち上がるとれーくんは傘を私に差し向けたまま1歩、出入口に向かって踏み出す
これ以上離れるとれーくんが濡れてしまうと判断した私はれーくんについてヘリポートを後にした
中央合同庁舎第2号館、警察庁が入っている合同庁舎のヘリポートに私はいた
地上に比べて高層部にあるので風は強いけどヘリコプターが離着陸が出来るよう落下防止柵は付いておらず、申し訳程度の段差があるだけの場所
緊急時以外は立入禁止になっているここへ至るドアは電子ロックがされているが解除キーを知っていれば誰でも屋外に出ることは可能だった
隣にある警視庁のヘリポートと違い、基本的にここより近隣の高い建物は裁判所と他の合同庁舎くらいしかなく人目もさほど気にせずにいられるのでこれまでも1人で考え事をしたい時に私は無断でヘリポートに出ていたりしていた
吹きさらしのこの場所から皇居の方に目を向けると近隣の近代的な建物の数々の中に突如広がる自然…
都会の真ん中にぽっかりと、時代に取り残されたように残る自然多きその空間はさながら大都市のテラリウムだなと個人的には思っている
急に煽られるような強い風に巻き上げられる髪を咄嗟に抑えた手に、その強い風が連れてきたのか雨がポツポツと落ちてきた
季節は晩秋、身体に落ちてくる雨は冷たいけどまだ庁舎内に戻る気持ちにはなれず、くるりと踵を返し皇居を背にヘリポートの方を向くと、落ちてくる雨粒でヘリポートの青い地面に濃いシミのようなものが段々と広がっていた
徐々に強くなる雨足に逆らうように雨粒が落ちてくる空を見上げると鼠色の雲が先を争うかのように東へ東へと勢力を伸ばしている様子が見える
無心になって目で雲を追いかけているとポツと雨粒が目に入り、反射的に目を閉じ俯き屈み込んだ
後頭部から背中にかけて雨粒が先ほどより強くなりながら容赦なく叩きつける
「も…ぅ、どうしたらいいの…かなぁ…」
目に入った雨のせいと自分の心に言い訳をすると、我慢出来なくなった気持ちが溢れてぽろりぽろりと涙が地面に落ちる
ヘリポートに落ちた雨と涙はどちらがどちらかもう見分けることは出来なかった
ヒロが生きてくれていたことが何よりも嬉しい
私のところに帰ってきてくれたことが嬉しい
私を頼りにしてくれていることが嬉しい
だけどそのヒロとの距離を感じる
その距離の理由が分からない
高明兄さん、私はどうしたらいいの?
これからどうヒロと接したらいいの?
双子だったせいか今までこんな風に感じたこと一度も無かったのに…
…それが今までおかしかったのかな?
優しいヒロに甘えすぎたのかな…?
あの小さな少年がヒロであることは紛う事の無い事実なのだ
潜入捜査をする際に仮の身分を確立させるための必要な書類を、今のヒロの為に揃えながら感じた
身一つで外へ放り出されたような疎外感、喪失感、孤独感…
それらが何に対するものかも自分自身でも分からず、私は悶々としていた
ヒロの思うとおり、ユダ探しをしたいけど私にどれだけのことが出来る?
でもやらなければならない、他の誰も頼れない
しかし本当にこのままれーくんに話さずに進めて良いのだろうか?
こういう時、1番に相談してたのはヒロだったけど、今のヒロには拒絶されてるようで相談しにくい
私たち2人だけでどうにかなるんだろうか?
ヒロを殺そうとした組織に、情報を売ったであろうユダを探すことは本当に私たち兄妹だけで可能なのだろうか?
れーくんがユダである可能性は限りなく低いと思う…けどヒロの言うとおりゼロではない
彼がユダじゃないって条件下の話になるけど組織側からも探って貰えたら近道なんじゃないだろうか
本来なられーくんに私たち兄妹は助力を請うべきだと思うし、何より私たちは今、降谷班の一員なのだ
総括であるれーくんに話す方がいい、私はそう思う
しかしどうやってヒロを納得させようか…
顔を上げると今まで顔の側面を流れ落ちていた雨が方向を変え、頬を伝う時に涙と混じり合って流れ落ちる
端から見たら雨に打たれているのか泣いているのか判別が付かないだろう
いつの間にか目の先には水たまりが出来ており、いくつもの波紋が出来ては消え、出来ては消え…としているのを膝に両腕を乗せ、その両腕で顎を支えた私はぼんやりと眺めていた
「…風邪…ひくぞ」
私の真上だけ雨が止む
振り返ると困ったような、怒ったような顔をしたれーくんがそこにいて私に傘を差し向けていた
「な…んでここが…?」
「あやは何かあるといつもここに来てるからな」
「…ここのことは誰にも知られてないと思ってた…」
「知ってるよ、あやのことなら」
そう言いながら柔らかく微笑んだれーくんは私の横に屈み込む
「ここ、入ったら怒られちゃうんだよ?」
「知ってる」
「もしかしたら始末書かも」
「かもな」
「いつから知ってたの?」
「いつから…だったかな…」
屈んだれーくんは私と同じように水たまりに出来る波紋を眺めているようでこちらを見ようとはしなかった
「れーくん出勤してたんだね?」
「ああ、今日は管理官に報告しなければならないことが……あったからな」
「…そっか…」
歯切れ悪く話すれーくんの言葉に、多分それはヒロのことだろうと思う
昨日の今日だかられーくん自身も割り切れてないのかもしれないけど、ヒロの肉親である私に気を遣って言葉を選んでくれているのを感じる
本当はね、れーくん
ヒロ生きてるの!
帰ってきてくれたの!
…そうこの場で言えたらどれだけ良いだろう…
でも良いと思ってるのは私だけで、ヒロは良しとしていない
このことは私だけの問題じゃないから1人で先走る訳にはいかない
私だけが苦しいんじゃない、私だけが辛いんじゃない
ヒロも…れーくんも苦しくて辛いんだ
れーくんが差してる傘の上で弾ける雨の音に耳を傾け目を閉じると、自分自身でも何の感情か分からない涙がほろりとこぼれた
クシュンとくしゃみが出て身震いする
今はれーくんが傘を差し向けてくれているけどそれまでに雨に打たれ濡れ鼠になっていた私の冷えた身体がそろそろ限界を迎えたようだった
「あや、これ以上冷える前に中へ」
れーくんが立ち上がりながら私へ声を投げかける
スキンシップが人よりちょっと過剰なれーくんなのでいつもなら肩を抱き寄せてくれるだろうけど今は触れられることはなかった
昨日の今日だからだろうか、れーくんの気持ちに返事をしてないからだろうか、それとも今朝れーくんの手を拒んでしまったからだろうか…
ヒロが戻ってきてくれたことでその前にあったれーくんとのことはすっかり失念してしまっていた私は他人行儀なれーくんの態度に急に独りぼっちになった気持ちに襲われる
しかしれーくんからそうされるだけの心当たりがありすぎで「自業自得だわ」…と口の中で独りごちる
私はまだ何の返事もしてないかられーくんの気持ちは宙ぶらりんのまま
それなのにこうして私を1人にしないためにれーくんはわざわざ探しに来てくれたのだろう
立ち上がれないまま俯いてギュッと唇を噛みしめているとふわりと肩にジャケットを羽織らされる
温かさと共にふわりとエゴイストプラチナムの香りが柔らかく香る
濡れ鼠になってる私にジャケットを羽織らせたられーくんが困る…と、ジャケットを返そうと立ち上がるとれーくんは傘を私に差し向けたまま1歩、出入口に向かって踏み出す
これ以上離れるとれーくんが濡れてしまうと判断した私はれーくんについてヘリポートを後にした