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【DC】Con te

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デフォルト名は「あや」になります

ヒロ…どこ?
早く姿を見せて
あやはここにいるよ?
迎えに来たよ
一緒に帰ろ…

独りぼっちで瓦礫の中泣きながら、ヒロを探している夢を見た
バッと勢いよく起き上がると素肌の上に掛け布団を掛けていたらしく素肌の上をスルリと抵抗なく布団が滑り落ちた

!!!

ひやりとした空気を感じ慌てて布団を胸元まで引っ張り上げる
瞼は重く腫れぼったく、頬には夢のせいで浮かんだ新たな涙が一筋流れていた

何故一糸纏わぬ格好で寝ていたのかしら…

周りに目をやりふと気が付いた

…ここは私の部屋では…家では、無い…
え…っと昨日何があったんだっけ…?

あや、おはよう」

とろりとした甘い声が聞こえ、背筋に電気が走った
恐る恐る声のした方へ目を向けるとそこにいたのは昔からよく知る幼なじみで、彼も一糸纏わぬ姿でベッドに横になっており、長い腕を伸ばし私の頬の涙の跡を拭ってくれる

その姿を見て全てを思い出した途端一気に身体中に違和感や痛みに近い怠さ、そして罪悪感が襲ってくる
それは今まで感じたことの無いものたちだった



昨晩、涼介くんでれーくんが向かった先はれーくんのマンションで、連れられるままれーくんの家へお邪魔して…
そこでれーくんに渡されたスマホの裏面には見慣れた歪なHという文字が彫り込まれており、見慣れない血液らしきものと銃痕があった

…もしかして胸を狙われヒロはスマホごと撃ち抜かれたのだろうか…?
それともデータ流出を防ぐためスマホを破壊する時に自身も一緒に撃ち抜いたのだろうか…?

スマホを見てもどちらだったのかは判別付かない
しかしそのスマホを見てヒロがいなくなったことを新たに脳へ実感という形で認識させられ、崩れるようにソファで泣いていたられーくんに抱きしめられてそのまま…お互いの気持ちを埋めるように求め合ったんだ…

思い出したのは互いの温かな人肌、悩ましげな吐息、そして私は全てをれーくんに委ねたという事実

ヒロを喪ったその日に何てこと…!

思わず口に両手を当て、押さえていた手がなくなった掛け布団が再び素肌を滑り落ちたことも忘れ自分自身の行為に愕然とした


◇◆◇


「シュウ!聞いてたのと違うわ」
「赤井さん…」
「子どもじゃない…」

女と男の声がして気が付いた
目を開けるが視界がボヤけてはっきり見えない

「俺も驚いている」
「組織に潜入中の男性を保護するという話だったわよね?」
「その通りだ」
「なら何故シュウが連れてきたのは子どもなの?」

ライの声がする
女とライが会話しているようだが他にもう1人男がいるようだ
今のところ3人の声がしているので3人いるのは確定か
女が保護という言葉とライをシュウと呼んでいるところから推測するにライの本来の仲間、FBIなのだろう

目は開けているはずなのだが視界はまだボヤけており、仰向けに寝かされているので天井が見えるはずなのに天井は白っぽいということしか分からず、周りも人も判別が付かない

身体を起こそうと手をつくと手に布が纏わり付く
布と言えば服を連想したが、袖丈の長い服を着ていた覚えは無く、布から手を出そうと少し手を動かすが手は出せず、諦めてそのまま身を起こす

「赤井さん!気が付いたようです」
「気が付いたか、スコッチ」

その俺の姿を認めたのだろう男の声に呼応しライが俺に声を掛ける
視界がはっきりしないので目を閉じ、纏わり付く布から出すことを諦めた指で目頭を軽く揉み込んで再び目を開くとようやく少し視界がクリアになり、漆黒の髪の男の顔が判別できた
側には厳つい顔したドイツ系の男と、男性用と思われるその顔に見合わぬ大きな眼鏡を掛けた黄蘗色の髪の女がいる

「ライ、ここは?」

そう声を発した途端、自分の口から出たとは思えない高い声が耳に届き違和感を覚えた
思わず喉を押さえると出ているはずの喉仏が無く、いつもより肌が柔らかく感じる
先ほどから布が纏わり付いた手を見ると纏わり付いていたのは今日俺が着ていた見慣れた服で、俺の手は袖の半分ほどのところにあり着ている服はずいぶんと大きく見える
服の中で手をモゾモゾと動かしてやっと服から顔を出した手を見て驚いた
とても小さな紅葉のような手だったからだ

?!?!

ライを見上げるとヤツにしては珍しく困った顔を隠しもせずこちらを見ていた

先ほどの女の話と今まで俺が見たことを総合すると俺の今の見た目は子どもということか…?

改めて服から出した手を見やるが正直訳が分からない
俺はライからあの時、仮死状態になる試薬を渡され飲んだのだ
そして目覚めたら子どもになっていた訳だ

「ライ、鏡あるか?」

耳慣れない高い声で声を掛けるとライではなく女が慌ててバッグから手鏡を取り出し俺に差し出す
それを受け取ろうと伸ばした俺の手は小さく、受け取った手鏡は女が手にしていた時より大きく感じた

恐る恐る鏡を覗き込むと鏡の向こうから俺と目が合ったのは小さい頃毎日のように見ていた俺の顔だった
年齢的にはあやと瓜二つと言われていた頃のようで5~6歳といったところか…?
この顔を見るのは約20年ぶりだった
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