【DC】Con te
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「今回のスコッチ始末の件はジンからだ」
俺が落ち着いたのを確認したライがブーツの底でマッチを擦って火を灯し、タバコに火を移して紫煙を吐き出した
俺は何も言えなかった
正直何故バレたかが全く思い当たらない
「何故バレたか心当たりは?」
「いや、分からない」
「そうか…」
空に向けてライは紫煙を吐き出す
その紫煙がゆっくり暗闇に消えていく様を俺は眺めていた
火のない所に煙は立たないと言うが、俺は今日の明け方までバーボンことゼロと共にいつも通り組織の仕事をしていたのだ
特に異変などは感じなかった
俺より鋭いゼロならば感づいたらすぐ行動するなり俺に伝えるなりしてくれるだろう
「俺がNOCという情報が突然出たということか…?」
「ジンは確証があると言っていたが詳細は語らなかった。俺はおまえの本来の職場の中に情報を流しているヤツがいると睨んでいる。仮におまえの他にこの組織に潜入しているものがいるならばそいつの命も危ないだろうな」
「…ライ、教えてくれ。俺…は…」
「おまえはとても優秀な男だ。組織外からでも裏切り者を探したり大切な人を守ることは出来るだろう」
短くなったタバコを地面に落とし、ライはブーツの底で煙草を踏み消す
ジャリッとこすれる耳障りな音がした
ジャケットの内ポケットからPTP包装されたクスリを一錠取り出しライは俺の向かって差し出した
「コレは?」
「一時的に仮死状態になるクスリらしい」
「…らしいとは?」
「明美の妹、シェリーが作った試薬だ。別のクスリを作っていて偶然出来たものらしい。効果持続時間は15分とのことだ。試薬だから死ぬ可能性もあるが、うまく仮死状態になったら俺がこの場を納めよう」
ライの手からクスリを受け取ったものの飲む事には躊躇いがあった
今さっきまで自決しようとしていたのに急に恐ろしくなる
このクスリで死ぬ可能性があるというのだ
急に生にしがみつく思考になった俺自身に我ながら情けなく呆れる
「そろそろスコッチの始末が済んだか組織の人間が確認に来る」
なかなかクスリを飲まない俺にライは言う
直後、階段を駆け上がってくる足音がした
金属製の側桁階段なので静かなこの場所に足音が高く響く
この足音はまるで俺の命のカウントダウンをされているかのようだ
足音に急かされるように俺は覚悟してクスリを嚥下した
即効性があるのだろう、あっという間に意識が朦朧とする
しかし意識を失う前にやらねばならないことがある
意識を持っていかれそうになりながらも必死に耐え、近くのドラム缶の前に自分のスマホを出して拳銃で撃ち抜いた
ライがNOCで信用がおける相手だとしてもこれから確認に来る組織の人間にプライベート用のスマホを奪われるわけにはいかないからだ
可能性は万に一つでも潰しておかなければならない
「ラ…イ、あ…と……む…」
◇◆◇
「バーボン、スコッチはNOCだ。始末はライにさせたから確認してこい」
風見と日本橋で打ち合わせをして車に戻っている最中、ジンから電話があり僕が言葉を発する前にそれだけ言って切れた
一瞬頭の中が真っ白になる
スコッチ、ヒロがNOCだとバレたというのはどういうことだ?!
どこからそのような情報が漏れたのだ?
始末されるのはジンの気まぐれじゃなく確証があるということか?!
俺とライはとにかくウマが合わない
ライが発する言葉その全てに突っかかる程苦手だ
更にヤツはあやと同じ左利きだ
ヤツが左で文字を書いたり銃を構えたりしているのを見るだけであやを思い出してしまうので個人的には殊更苦手意識を持っている人間だ
もう苦手を通り越してムシが好かないと言っても差し支えないし、むしろおまえは右利きに強制しろと言いたい
しかしヤツの仕事に関しては申し分ない
与えられた仕事はきっちりこなす
仕事面に関してだけ言えば悔しいが信頼出来る人間だった
そのライが始末してこいと言われたのならヒロの命はライによって奪われるだろう
その前に俺が上手いこと言いくるめてライを退けることが出来れば…
電話を切ったスマホを握りしめていると振動してメールが届いたことを知らせる
ジンからだ
忌々しく思いながらもメールを開くと確認場所の地図だった
場所を確認した直後、その場から駆け出し側に停めてあった愛車に飛び乗った
地図に示された雑居ビルにたどり着き、永遠に続くと思われた階段を乱暴に駆け上がり屋上の扉を勢いよく開いた
硝煙の匂いがするそこにはライの背中、その向こうにスコッチ…ヒロが力なくへたり込んでいるように見えた
ライの手には銃が握られており、発砲して時間が経っていないのだろう、地面に向いた銃口から細い煙が上がっている
へたり込んでいるように見えたヒロの胸には暗闇で分かりにくかったが鮮血が広がっていた
考えるより先に足が動く
ライには目もくれずヒロの様子を伺うが心臓の鼓動は確認できず、身体も外の寒さに呼応するかのように徐々に冷たくなってきている
「死亡確認が終わったのならスコッチの身柄はこちらで処理させて貰う」
そう話すライに答えることなく黙って再度脈拍を確認し、ヒロの致命傷になったであろう血で染まった胸に収まっていたスマホの穴を確認する
スマホごと心臓を撃ち抜いたのだということが分かる
最初ヒロはライに撃たれたのかと思ったが、ふと目に付いたヒロの手を見るとヒロが自身に向けて発砲したのだと気が付く
ヒロは個人情報の詰まったプライベート用のスマホから情報が流出するのを恐れたのだろう、データが復元出来ないよう的確にスマホの記憶チップ部分を撃ち抜いていた
ヒロが俺との関係が分からないように命を張って守ってくれたのだ
本当はもっと冷静に冷酷にスコッチとの間柄がバレないよう立ち回らなくてはならないと分かってはいるが俺の頭も身体も付いてこなかった
俺はヒロが命と引き換えに守った情報満載だったはずの穴の開いたスマホを手にしたまま、ライと話したり目を合わすことなくフラリと先ほど上ってきた階段に向かった
◇◆◇
俺が落ち着いたのを確認したライがブーツの底でマッチを擦って火を灯し、タバコに火を移して紫煙を吐き出した
俺は何も言えなかった
正直何故バレたかが全く思い当たらない
「何故バレたか心当たりは?」
「いや、分からない」
「そうか…」
空に向けてライは紫煙を吐き出す
その紫煙がゆっくり暗闇に消えていく様を俺は眺めていた
火のない所に煙は立たないと言うが、俺は今日の明け方までバーボンことゼロと共にいつも通り組織の仕事をしていたのだ
特に異変などは感じなかった
俺より鋭いゼロならば感づいたらすぐ行動するなり俺に伝えるなりしてくれるだろう
「俺がNOCという情報が突然出たということか…?」
「ジンは確証があると言っていたが詳細は語らなかった。俺はおまえの本来の職場の中に情報を流しているヤツがいると睨んでいる。仮におまえの他にこの組織に潜入しているものがいるならばそいつの命も危ないだろうな」
「…ライ、教えてくれ。俺…は…」
「おまえはとても優秀な男だ。組織外からでも裏切り者を探したり大切な人を守ることは出来るだろう」
短くなったタバコを地面に落とし、ライはブーツの底で煙草を踏み消す
ジャリッとこすれる耳障りな音がした
ジャケットの内ポケットからPTP包装されたクスリを一錠取り出しライは俺の向かって差し出した
「コレは?」
「一時的に仮死状態になるクスリらしい」
「…らしいとは?」
「明美の妹、シェリーが作った試薬だ。別のクスリを作っていて偶然出来たものらしい。効果持続時間は15分とのことだ。試薬だから死ぬ可能性もあるが、うまく仮死状態になったら俺がこの場を納めよう」
ライの手からクスリを受け取ったものの飲む事には躊躇いがあった
今さっきまで自決しようとしていたのに急に恐ろしくなる
このクスリで死ぬ可能性があるというのだ
急に生にしがみつく思考になった俺自身に我ながら情けなく呆れる
「そろそろスコッチの始末が済んだか組織の人間が確認に来る」
なかなかクスリを飲まない俺にライは言う
直後、階段を駆け上がってくる足音がした
金属製の側桁階段なので静かなこの場所に足音が高く響く
この足音はまるで俺の命のカウントダウンをされているかのようだ
足音に急かされるように俺は覚悟してクスリを嚥下した
即効性があるのだろう、あっという間に意識が朦朧とする
しかし意識を失う前にやらねばならないことがある
意識を持っていかれそうになりながらも必死に耐え、近くのドラム缶の前に自分のスマホを出して拳銃で撃ち抜いた
ライがNOCで信用がおける相手だとしてもこれから確認に来る組織の人間にプライベート用のスマホを奪われるわけにはいかないからだ
可能性は万に一つでも潰しておかなければならない
「ラ…イ、あ…と……む…」
◇◆◇
「バーボン、スコッチはNOCだ。始末はライにさせたから確認してこい」
風見と日本橋で打ち合わせをして車に戻っている最中、ジンから電話があり僕が言葉を発する前にそれだけ言って切れた
一瞬頭の中が真っ白になる
スコッチ、ヒロがNOCだとバレたというのはどういうことだ?!
どこからそのような情報が漏れたのだ?
始末されるのはジンの気まぐれじゃなく確証があるということか?!
俺とライはとにかくウマが合わない
ライが発する言葉その全てに突っかかる程苦手だ
更にヤツはあやと同じ左利きだ
ヤツが左で文字を書いたり銃を構えたりしているのを見るだけであやを思い出してしまうので個人的には殊更苦手意識を持っている人間だ
もう苦手を通り越してムシが好かないと言っても差し支えないし、むしろおまえは右利きに強制しろと言いたい
しかしヤツの仕事に関しては申し分ない
与えられた仕事はきっちりこなす
仕事面に関してだけ言えば悔しいが信頼出来る人間だった
そのライが始末してこいと言われたのならヒロの命はライによって奪われるだろう
その前に俺が上手いこと言いくるめてライを退けることが出来れば…
電話を切ったスマホを握りしめていると振動してメールが届いたことを知らせる
ジンからだ
忌々しく思いながらもメールを開くと確認場所の地図だった
場所を確認した直後、その場から駆け出し側に停めてあった愛車に飛び乗った
地図に示された雑居ビルにたどり着き、永遠に続くと思われた階段を乱暴に駆け上がり屋上の扉を勢いよく開いた
硝煙の匂いがするそこにはライの背中、その向こうにスコッチ…ヒロが力なくへたり込んでいるように見えた
ライの手には銃が握られており、発砲して時間が経っていないのだろう、地面に向いた銃口から細い煙が上がっている
へたり込んでいるように見えたヒロの胸には暗闇で分かりにくかったが鮮血が広がっていた
考えるより先に足が動く
ライには目もくれずヒロの様子を伺うが心臓の鼓動は確認できず、身体も外の寒さに呼応するかのように徐々に冷たくなってきている
「死亡確認が終わったのならスコッチの身柄はこちらで処理させて貰う」
そう話すライに答えることなく黙って再度脈拍を確認し、ヒロの致命傷になったであろう血で染まった胸に収まっていたスマホの穴を確認する
スマホごと心臓を撃ち抜いたのだということが分かる
最初ヒロはライに撃たれたのかと思ったが、ふと目に付いたヒロの手を見るとヒロが自身に向けて発砲したのだと気が付く
ヒロは個人情報の詰まったプライベート用のスマホから情報が流出するのを恐れたのだろう、データが復元出来ないよう的確にスマホの記憶チップ部分を撃ち抜いていた
ヒロが俺との関係が分からないように命を張って守ってくれたのだ
本当はもっと冷静に冷酷にスコッチとの間柄がバレないよう立ち回らなくてはならないと分かってはいるが俺の頭も身体も付いてこなかった
俺はヒロが命と引き換えに守った情報満載だったはずの穴の開いたスマホを手にしたまま、ライと話したり目を合わすことなくフラリと先ほど上ってきた階段に向かった
◇◆◇