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記憶の彼方のカケラ


 ある所に、誰からも好かれる青年が居りました。

 青年は、真面目で働きものでしたので、三人の女神様は一つだけ、願い事を選ばせることにしました。

 一人目の女神さまは言いました。
「お前に眼も眩むような宝物を与えてやろう」

 二人目の女神さまは言いました。
「お前に見渡すばかりの王国をやろう」

 三人目の女神さまは言いました。
「お前に世にも美しい女をやろう」

 青年はとてもとても真面目でしたので、直ぐに答えることが出来ずに、結局うんうん唸りながら悩み、帰路へ着きました。

 夕飯も風呂も済ませて、後は寝るだけという時分になっても、青年はずっと悩んでいました。

 あんまり悩んでいたものですから、いつもならしないはずの夜更かしをしてしまいました。

 悩んでばかりの青年が、いつものように仕事につかないのをみると、それぞれ仕事仲間たちが話を聞きに来ました。

 話を聞いた三人の仕事仲間はめいめいに言いました。

 一人目の仕事仲間は言いました。
「それは勿論、宝物だろう。もう働かなくていいのだから」

 二人目の仕事仲間は言いました。
「それは勿論、王国だろう。だって憧れの王様になれるんだから」

 三人目の仕事仲間は言いました。
「それは勿論、女だろう。そんな出会いは滅多にない」

 それぞれの提案になるほどなぁと思いながらも、やっぱり青年は決めることが出来ません。

 散々迷った青年は、その日の終わりに女神さまたちに会いに行きました。

「僕にはどれも選べません。きっとどの願い事を選んでも後悔だけが残るでしょう」

 女神さまたちは、噂には聞いていたけどここまで真面目だなんて、と驚き、青年に言いました。

「ならば、お前に財宝の山と、広い広い王国と、美しい女をやろう」

 こうして青年は大金持ちの王様になり、素敵なお妃さまを迎えました。

 王様になった青年は国を良く治め、お妃さまは王様を良く支えました。

 子宝にも恵まれ、国民たちにも愛された国王の統治は長く続き、歴史に残る名君となりました。

 その後、子供たちは王国を巡って争うことになるのですが、それはまた、別のお話。


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