記憶の彼方のカケラ
昔々、お城で一番高い塔に閉じ込められたお姫様が居ました。
そのお姫様は太陽のように輝く美しさを持っていて、人々は、この世の何より美しいとお姫様を称えました。
あんまりお姫様を称えるので、美の女神への祈りは疎かになってしまい、女王様は美の女神より美しい子を産んだ私は、美の女神よりもずっと偉いとうぬぼれてしまいました。
それに嫉妬した美の女神が、2度とその美しさを称えられないように、王様と女王様に、塔に閉じ込めるよう命令したのです。
ですので、お姫様は物心ついた時から、ずっとずっと塔の上で暮らしておりました。
そんなお姫様の元に、ある日、外の世界から鳥がやってきて、お姫様に言いました。
「お姫様、お姫様。
どうしていつも、ここでお空を見ているの?
そんなに外が羨ましいなら、今すぐ塔を降りてお外に行こう」
鳥の言葉に、お姫様はすぐにでも外に飛び出したくなりました。
「ああ、私も外の世界へ行ってみたいわ。
一体どんな場所なのかしら」
しかし、塔に住む影がお姫様を捕まえて、何度も外へ出ることを邪魔してしまいました。
影は執拗に迫ってきて、どんなにうまく隠れてもあっという間にお姫様を見つけてしまうので、お姫様はすっかり諦めてしまいました。
そんなお姫様を見た鳥は、沢山の仲間を呼んで、お姫様を持ち上げようとしました。
ですが、またも邪悪な影が邪魔をしてしまい、鳥たちはそれ以来、影を恐れて塔に近づくことはありませんでした。
お姫様は等々、耐え切れなくなって毎夜泣き明かして過ごすようになりました。
「きっと、私は永遠にこの塔に閉じ込められたままなんだわ」
そんなお姫様の泣き声は遠くまで響き、一つの立派な竜の耳に入りました。
毎夜響く泣き声が気になって、竜はお姫様に会いに行きました。
「どうしたの、美しい姫君や。
そんなに泣いたら、瞳が零れ落ちてしまうよ」
お姫様は大きな竜の姿にとても驚きましたが、暫くしてこう言いました。
「大きな竜よ、私はずっとこの塔に閉じ込められたままです。
ずっとずっと閉じ込められて、決して外には出られません。
その事がたまらなく悲しくて仕方ないのです」
竜は、お姫様が哀れで仕方なくなりました。
「では、貴方をここから連れ出してあげましょう。
ただし、一つ約束してほしいのです」
「約束って、なにかしら?」
「ここから出したら、貴方の父君と母君の元へ送って差し上げます。
貴方が塔に戻らないように進言しましょう。
ですから、父君と母君以外の言うことを、決して聞いてはいけません」
お姫様は、それぐらいならとうなずいた。
「誓うわ。
私決して、父様と母様以外の言うことは聞かない」
すると竜はその背にお姫様を乗せて、地面に届けてあげると、王様と女王様にお姫様の気持ちを伝えました。
竜の言葉でお姫様の気持ちを理解して、深く反省した王様と女王様は、お姫様を塔に閉じ込めることは2度となくなりました。
これに怒ったのは美の女神です。
自分に身勝手にも逆らう者達に激怒した美の女神は、お姫様の召使として城に潜り込みました。
あっという間にお姫様と仲良しになると、ある日小奇麗に装飾された箱を見せてこう言いました。
「姫様、隣国の王子があなたの為にとこの贈りものをくださいました。
どうぞ、お開けになってください」
「けれど、私は父様と母様以外の言うことは聞いてはいけないの」
「問題ございませんわ。
何故なら国王様が私に預け、姫様に届けるよう申し付けました。
届けた後に姫様が開けてもいいと国王様は仰りました」
召使として潜り込んだ美の女神は、言葉巧みにお姫様を騙すと、ありったけの悪意を詰め込んだ箱をまんまと開けさせることに成功しました。
すると、箱の中の悪意は、お姫様の顔と声を奪ってしまい、王様と女王様にお姫様が見えなくなる呪いをかけてしまいました。
竜はその見事な翼を引きちぎられてしまい、小さなトカゲにされてしまいました。
なおも怒りが収まらない美の女神によって、お姫さまは再び塔に閉じ込められて、2度と太陽の光も月の輝きも、見ることができなくなってしまったのです。
結局、自由なんてそんなもので、お姫様は夢の為に唯一無二の安全を失うことになったのでした。
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