記憶の彼方のカケラ
ぽかぽかのお天気、少しだけの雲、今日はピクニックに行くにはとってもピッタリな天気です!
リュックサックにいっぱいのお弁当を詰め込んで、ウキウキなナナちゃんは早速近くの山へと向かいました。
少し太陽が上がってお昼時になったころ、ナナちゃんは山の中に不思議な広場を見つけました。
大きな木が真ん中に生えた丸い草原みたいな場所でした。
「わぁ~、きれ~い」
ナナちゃんは目をキラキラさせて周りを見回します。
広場の周りには花や木々が綺麗に手入れされていて、まるで絵本に出てくるような不思議な雰囲気のある場所です。
喜んだナナちゃん、早速敷物をしいて、お弁当を食べようとしたところ、突然、風が吹いてナナちゃんの帽子が飛んで行ってしまいました!
「あ~あ、待って~!」
ナナちゃんは帽子を追いかけます。
そして、帽子が飛んで行ってしまった大木の裏側へと行くと、そこには石造りの何かに引っ掛かった帽子がありました。
そこでナナちゃん、ピーンと来ました!
これは祠と呼ばれるものです!さすがナナちゃん、賢い!
おじいちゃんから昔話を聞いてた甲斐がありました。
でもなんだか、この祠は何処か違和感を感じます。
「なんだろ?なんか不思議な感じ?」
ナナちゃんは祠をまじまじと見つめました。
あっそうだ!この祠はボロボロなんです!緑色の苔が沢山生えて、蔓がぐるぐる巻いています。
「よーし!」
心優しいナナちゃん、帽子をとってくれたお礼に祠を綺麗にすることに決めました。
よいしょ、よいしょ、石を積みなおして、うんしょ、うんしょ、苔や蔓をとっちゃいます。
やがて、カアカアとカラスたちが鳴いたころ、漸く祠はちょっとだけ綺麗になりました。
大人たちが見れば少し首を傾けちゃいますが、そこはナナちゃん、やり切った表情です。
「よし!…あ!」
ここでナナちゃんは、どうやらお弁当を食べ損ねちゃったことに漸く気付いたようです。
そこでナナちゃん、閃きました。
そうです、お供え物です。おじいちゃんはいつも言っています。
こういう祠や神社には神様がいるものだと。
賢いナナちゃん、きちんと覚えていましたね。
「はい、どーぞ!」
優しいナナちゃんは大きなおにぎりを三つ石の祠の前に置くと、いただきまーす!お弁当を食べました。
でもナナちゃん、おじいちゃんが心配しちゃうからもう帰らなきゃ。「バイバーイ」
手を振って祠を後にしたナナちゃんでした。
日暮れ、夕暮れが過ぎ、夜になって、もう皆が寝る時間。
誰かがナナの家に尋ねてきた。
スルリとドアのほんのわずかな隙間から潜り込んだ黒い影は、迷うことなくナナの寝室へ侵入し、小さな子供を見やった。
黒い影に包まれた腕を動かし、柔い小さな頬にスルスルと己を指を擦り付けた影は、その次の瞬間、ナナごと消えた。
この失踪事件はたちまちのうちに話題になった。
誰もが同居する祖父を怪しんだが明確な証拠は出ず、等々未解決事件となりやがて、人々の記憶から忘れ去られることだろう。
そしてナナも、廃れた祠に宿りし者が如何な存在か知らないばかりに、堕ち神の神嫁として、今後一生祠の外へ出ることを許されず、夫と交わり続け、我が子たちを産み出し続けるしか道はなくなってしまったのだ。
憐れにも、無知であるがゆえに。
憐れにも、幼子であるがゆえに。
