記憶の彼方のカケラ
中流階級の子、カナアンは、物心ついたころから軍部に強いあこがれを持っていた。
だって格好いいじゃないか、未知の惑星に降り立って、野蛮極まる原住民と戦って、華々しく勝利し戦利品を持ち帰るなんて。
快活活発なカナアンは、軍部は国の英雄を育てるところと信じて止まなかったので、まっすぐに軍部を目指した。
路地裏の、自分と同じ形をした肉塊たちの呻き声に、いつまでたっても気づかないままで。
軍部での訓練だとかは、熾烈を極めた。
ここまでするか、誰もがそう思うほどだった。
そんな過激さというか苛烈さというかは、もう色々有名な話だったが、それでもいくら快活なカナアンでも、何度も心をへし折られた。
憧れの場所で、憧れの体現者たちから、凡そ思い出したくもない言葉を豪雨のように振りかけられれば、そうなるのもさもありなんだが。
それでもカナアンは諦めなかった。
何もかも捨てて、馬鹿みたいに真っすぐ突き進んできたカナアンにはもうこれしか残っていないので、退路がなかったともいえるが、とにかくカナアンはひたむきだった。
カナアンは努力した、誰よりも真っすぐに努力した。
血反吐を吐いても頑張った、意識朦朧となりながら頑張った。
その頑張りが認められたのか、段々褒められることが増えてきたし、カナアン自体も順調に力をつけていった。
そんなカナアンの噂はすぐさま軍部に駆け込んで、どうやら期待の新人らしいと、カナアンは一躍軍部の有名人になったことにそれはそれは喜んだ。
そんなカナアンに、上官から一つの提案が舞い降りた。
今度結成される小隊に所属しないか。
カナアンには願ってもない事だった。
これで自分も英雄の仲間入りをする、憧れが形になって、自分のもとにやってくる。
浮足立ったカナアンの答えは元気のいいものだった。
カナアンは小隊の皆と不思議なくらい打ち解けた。
互い互いが初対面だと思えないくらい、すんなり受け入れ、受け入れられた。
この皆とならどこでもやっていける、本気でそう思えて、そう言葉に出して、照れくさくなって、揉みくちゃにされて、それからいったいどうなったのだろう。
寝て覚めて、不毛の大地。
可笑しくなった友達に、もっとおかしい状況に、カナアンの理解は及ばなかった。
カナアンは怖い、この先が怖い、どうしてこうなったのかがわからないのが怖いし、変わり果てた友人も怖い。
カナアンはすっかり臆病になった。
しかしカナアンは、臆病になってもなおの子と仲間と一緒に進み続けた。
仲間共々、退路を断たれたともいうし、進み続けるほかない状況ともいうが、どのみち臆病になったカナアンにはもう、足踏みは愚か、引き戻すことすら許されなかったのだ。
