記憶の彼方のカケラ


___どうしてこうなったのだろう。

 エーレミヤは本が好きだ。

 自分の知らないことが沢山書いてあってしかも本によって書いてあることが違うのだ。

 知識の泉は尽きることなく湧き出て何時だってエーレミヤの果てない好奇心を満たしてきた。

 その沢山の、エーレミヤの興味の矛先の中で、最も強く惹かれたのが医学だった。

 知り尽くしているはずの自分の身体に、知らなかった神秘が、自分の身体を埋め尽くしている。

 たったそれだけの、単純な好奇心でエーレミヤは医学を志すことを決めた。

___何が間違っていたのだろう。

 エーレミヤは順調に勉学に励み、やがて医者になった。
 自分の知識で人の命を助けることに密かに優越感を覚えたりもした。

 ある日、エーレミヤの元に、見たことないくらい上品な紙を使い、丁寧に蝋で封をされた手紙が届いた。

 蝋には見知った紋様が入っていた。

 エーレミヤはその手紙の存在が信じられなかった。

 手紙は、政府に所属する、軍部からの徴収命令であり、軍医として従軍するようにとのことだった。

 半信半疑のまま、同僚や先輩後輩から祝われ、盛大なお別れ会を開いてもらい、信じられずに手紙に書かれた指定場所に向かって、エーレミヤは、漸く現実を知った。

 ある小隊に配属され、不安とは裏腹に、みんなと打ち解けて、故郷を出立したまでは良かった。

___まさかこんなことになるなんて。


 その先にあったのは、果たして何だったのだろうか。

 目まぐるしく時は過ぎて、何度も何度も繰り返される世界に、何度も夢かと疑った。

 何度も泣いた。その度にみんなから慰められた。

 あの時、ああしていれば。

 そんな気持ちばかり、いつも湧き上がってくる。

 エーレミヤは生まれた時から持っている自分の特性を心の底から嫌悪した。

 臆病なばっかりに、何度も地獄を繰り返すことになった。

 臆病なばっかりに、何時も皆に迷惑をかける。

 臆病なばっかりに、臆病なばっかりに…。

 そう考えだすとキリがなくなるので、エーレミヤは皆に悟られまいと、無理やり笑顔を張り付けるようになった。

___いつこれは終わるのだろう。

 そうしてエーレミヤは、繰り返す日々が、いつか変わると良いなと、少しだけ期待しながら、そして、きっといつまでも終わらないんだろうなと、ぼんやり思いながら、今日も小さな少女を導いている。


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