見習い一年目 春夏秋冬
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「…何か、あったのか?」
「えっとー…色々な事が、あって…」
「色々?」
「…うちのアホどもがな、間違ごおてゆうひに怪我させてたんや」
「怪我?!どこ怪我したんだ?!」
真島くんは見るからに慌てており、今にも冴島くんに食ってかかりそうな勢いだった。
「腕や」
「腕?…なら、背負わなくても歩けるだろ?」
「えっと…その、怖かったから…足に上手く力が入らなくて…」
言い終わってから、背負ってくれてる冴島くんの頭の後ろに少し隠れた。背負われてる恥ずかしさもあるけど…やっぱりまだ真島くんの顔見ると恥ずかしくなっちゃうな…。
「…そうか」
「あ、冴島くん。もう、大丈夫だから…降ろしてくれるかな?」
「ああ」
冴島くんは、ゆっくりとしゃがんでくれて。私を支えてくれた左腕は、私が着地してから離してくれた。
「ありがとう」
「いや。…で、コレは店まで運んだらええんか?」
冴島くんは、砂糖の袋を一度軽く持ち上げてみせた。
「お願いできるかな?」
「お安い御用や」
お店の扉を、左手で開けて冴島くんを中は招き入れた。
「…真島くんは、お使い?」
「あ、ああ…予約したケーキを取りに来たんだ」
真島くんもお店の中へ入ったのを見届けてから、自分も店内へ入り扉をゆっくりと閉めた。
オーナーや先輩達へ事情を説明し、病院へ受診する為。今日は早退させて貰う事になった。
「治療費は、此方で支払います。ご迷惑をおかけしました」
冴島くんは、オーナーへ頭を下げた。オーナーは、宜しく頼みます。と、冴島くんへ伝えていた。
オーナーは私へと向き直り、明日は受診結果を報告しにお店へ来て欲しい事と。大事な利き腕だから、今日は一日安静にする事。と、優しく声をかけてくれた。
冴島くんと真島くんは店を出て、私は着替える為にロッカーへと向かった。利き腕が使えないならなかなか上手に着替えられなくて時間がかかってしまったが、やっと支度を済ませてお店の裏口から外へと出た。
保険証はアパートだから一度帰らないとなー。と、考えながらお店横の歩道へ出ると真島くんが待っていてくれた。
「病院行くんやろ?送ってったる」
「え?でも…真島くん、お使いがあるんじゃ…」
「… …」
「それに、私一度アパート戻らないといけなくて…」
「そんなら、ゆうひのアパートで待ち合わせや」
「へ?」
「俺、コレ親父ん所に届けたら今日はもう上がりなんや」
「そ、そうなの?でも…」
「治療費の立て替えを冴島の兄弟にも頼まれとるしな」
「そう、なんだ…」
わかったー。と、返事をすると。真島くんは、アパートまで迎えに行くから待っててくれ。と言って、足早に去って行った。
─────────────────
アパートへ着いて、鍵を鞄から取り出して左手で解錠する。玄関を入って靴を脱ぎ、部屋へと入った。押入れの襖を開けて、貴重品類を入れてあるポーチを取り出して、保険証を鞄の中へと入れた。
ふぅー… 玄関の鍵を開けるのにも時間かかっちゃったし、ポーチを開けるのにも一苦労だな…。
襖を閉めて部屋を見渡した。部屋干しの洗濯物が目に止まり、洗濯物を触ってみると寒いからかまだ乾いてはいないようだ。
アパートで待ち合わせだけど、真島くんが部屋に入る事はないだろうから…いっか、このままで。
アパートの外で待つ事にして、玄関へ向かい。先程と同じように左手でゆっくり施錠した。
アパートの外へ出てから10分後──
真島くんは走って来てくれた。
「走らなくても大丈夫だよ」
「早く病院で診てもらったほがええやろ?」
「…うん、ありがとう」
ほな行こうか。と、真島くんと一緒に病院へ。
「… …」
「… …」
「…痛いか?」
「へ?」
「腕や腕」
「あ、うん…」
「怖い思いさせてしもたって、兄弟言うてたけど…どうゆう状況やったんや?」
「えっとー…それが…」
「兄弟も濁してて教えてくれへんかったんや」
「…その、真島くんと、似たような感じかな?」
「ん?俺と似たような?」
「うん…」
「どうゆうことや?」
「間違えられちゃったんだよね…その、取引?と…」
「… … …」
真島くん目を見開いたと思ったら、パシッ!と、勢いよく顔に右手を当てて黙ってしまった。
「あ、でも!真島くんの時は、怖かったは怖かったけど、怪我まではしなかったし、ね?だから、真島くんの時は大丈夫だったよ!」
「…ゆうひ」
「な、何?」
「また15kgのベイキングパウダー運んどったんか?」
真島くんは顔から右手を少しだけ退けて、此方を覗き見られた。
「あ、や…今日は砂糖だよ?ちなみに、20kg」
「…そうゆう重いもんのお使いは今後もあるんか?」
「どーだろ?私まだ見習いだから、言われた事はやらなきゃだしね…」
「だよな…」
「真島くんも?」
「…ああ」
「そっか…」
「…重いもん運ぶ時に見かけたら手伝ったる」
「…へ?」
「腕の怪我が悪化したりしたら、作ってもらえないだろ?」
ケーキ!と言われて、また顔が熱くなってきてしまって今度は私が左手でパシッ!と、自分の顔を隠してしまった。
真島くんは「なんで顔隠しとんねん?」と覗かれたけど、なんでもないー!と、小走りをすると真島くんが追いかけるように着いて来た。