見習い一年目 春夏秋冬
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真島君はうちの常連さんになっていた。
お店でしか真島君との接点は無いけど、同い年ってのもあって。知り合い以上の関係に最近なってきているのを感じていた。
「今日は、どのケーキにしますか?」
知り合い以上の関係とはいえ、お店の中ではあくまでもお客さんと店員の立場には変わりないから。いつもと同じように接客をする。
「今日はこっちのホールケーキと、モンブラン3つや」
いつもは、オーナーが作るホールケーキを買っていくけど。モンブランの個数を指を3本出してニカッと笑う。
私が作ったモンブランだ…。
オーナーから、やっと1人で任せてもらえるようになった初めてのケーキ。少しだけ緊張しながら箱詰めして、真島君へ渡した。
「このモンブラン、私が作ったんだよ」
少しだけ声のボリュームを落として真島君へ伝えた。
「そうなんか?」
真島君も私に合わせてくれたのか、声のボリュームを下げてくれた。
「うん!真島君が食べるの?」
「ああ、これ親父ん所届けたら俺今日上がりなんや。…友達と、一緒にな」
「そっか。じゃあ、今度来た時に感想教えて欲しいな。やっと1つ担当のケーキを任せてもらえるようになったんだ」
「ほー、ほんなら楽しみにしとるわ」
ニカッと笑った真島君の笑顔が少し眩しくて、ドキッとなった気がした。会計途中でお客さんが来たので真島君は、またなー!と、帰って行った。
次の日、店の前を掃除してると。後ろから肩を叩かれた。振り向くと真島君が立っていた。
「ゆうひのモンブラン、美味かったで!」
昨日と同じでニカッと笑う真島君。嬉しくて、恥ずかしくて。胸がいっぱいになった。
「ほ、本当?」
「ああ!友達も喜んどった」
「そっか…。良かった。ありがとう!」
幸せを噛み締めてからお礼を伝えた。
「今日もモンブランあるんか?」
「うん、さっきショーケースに並べたよ」
「なら、全部!買ってくわ」
「…へ?」
「栗が好きな にぃ…あ、いや。先輩がおってな、その人達所へ手土産にしたいんや」
「あ…ありがとうございます」
思わず、真島君へお辞儀をした。嬉し恥ずかしくて、なかなか顔を上げない私を急かして店へ入り。モンブランを箱詰めして、昨日と同じように真島君へ渡した。真島君はまた来るな!と、帰って行った。
モンブランが並んでいたショーケースに【売り切れ】の札を立てた。
まさか、自分が作ったケーキにこの札が立つ日がこんなにも早く来るとは思ってもみなくて。その光景をじぃーっと見入ってしまった。
扉が開く音に我に帰り、いらっしゃいませー。と、お客さんへ声をかけた。
「あのー。モンブラン、ありますか?」
声をかけたお客さんは、関西訛りの女の子だった。
「申し訳ありません。先程完売してしまいました」
「えー!昨日食べて美味しかったから、また食べたかったんやけど…」
「あ、そうだったんですか!」
「明日もモンブラン置いてあります?」
「はい、明日も販売しますよ」
「ほんなら、また明日出直します」
「お待ちしております」
お客さんが退店した後に、オーナーから頼まれていた事務的作業を開始する。
あのお客さんには申し訳ないことしちゃったなー。まさか、真島君が全部買ってちゃうとは私も思わなかったし、リピーターで買いに来てくれる人がいるなんて思わなかったなー。
… …あれ?
昨日初めて私が作ったモンブランを店頭に並べて、買ってくださったお客さんは全部で三組。
一組目は、親子連れで幼稚園児の子が「僕モンブラン大好きなんだ!」と言ってたから、あの子がモンブランを食べてるはず。
二組目は、女子高生達で各々好きなケーキを選んでたから誰かのお家でケーキを食べて色々な話に花を咲かせるんだろーなー。良いなー。って思いながら箱詰めしたんだよね。
三組目は、真島君。
「…友達と、一緒にな」
作業していた手が思わず止まってしまった。
友達とは言ってたけど、男友達とは言ってなかった。言う前に少し間があった。
もしかして…さっきのお客さんが真島君の友達で…
真島君の好きな人とかだったりして…
作業の手が止まっているし、お客さんが来てるのに反応しなかった私は先輩から怒られてしまった。