狂犬と堕天使
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ナースステーションへ戻ると、師長が電子カルテを覗いていた。
戻りましたと。声をかけると、師長がお疲れ様と。声をかけてくれた。
「急外で”手当“様御一行じゃない」
(急外=救急外来)
「私服に着替えてたのに、急外の師長に呼び止められたんです…」
「あらら…。ヅッカさん、昨日居なかったの?」
「今有給休暇中ですよ、貯まりに貯まってたそうで」
電子カルテ前に座り、先程途中になってしまった入力作業を進める。
「んー…やっぱり、ヅッカさんと旭さんだけじゃ回らないわねー…。誰か他にいないかしら?」
師長の言葉に耳を傾けてはいたが、返事はせずに入力作業へと集中した。
ここは都東大学医学部附属病院。
総合病院から、クリニック経て。新たにまた看護の知識を広げようと転職をして半年が経った頃に、急外主任…通称ヅッカさんからスカウトされた。一体全体何のスカウトなんだろうか?と思い、尋ねてみると。ヅッカさんが今1人で対応している某患者様達の対応を一緒にお願いをしたい。との話だった。人手が足りなくて困っており、何があっても冷静な対応をしてくれる人材を探しているのだと。
「新人育てたいんだけど…。新卒の看護師だと、皆最終的に辞めちゃうのよね…」
困った顔をしながら、ヅッカさんは話を進める。
「旭さん、こないだ大暴れした患者さんにも物怖じしないで対応していたって聞いたから、私と一緒に某患者さんの対応と、新人育成もして欲しいのよ!」
手当も出ると力説された。
その手当というのが、都東大学医学部附属病院にある特別手当「893手当」である。
神室町に近い分、非常にガラの悪い方々が受診される事も多く。担当に当たってしまうと相当な労力を強いられる事からそう言った手当が出る事になったのだという。
「1人担当すると、8,930円の手当が出るのよ!」
「…0が一つ少なくないですか?」
それにゴロに合わせたんだろうけど、なんとも中途半端な金額…。
「3人対応したら、26,790円」
同じ患者でも、日付が変われば1人としてカウントが追加されると。救急外来に受診した後に入院となると、ヅッカさんだけでは対応が厳しいと…。
出勤日に、そういった方々が来院した際は対応はするが。その金額だと割に合わないと。お断りをした。
その断った日に、マジマゴロウの対応をした。
バッティングセンターで刃物で刺され、救急車で運ばれて入院していたにも関わらず。勝手に抜け出し、挙句にダンプで繁華街の店に突っ込み、ボロボロになってまた救急車で運ばれたんだとか。
塞いだ傷は見事に開いてしまい、再度オペをして安静に寝かせていた所。いつの間に病室を抜け出していた。
人手が足りないから!と。他病棟から応援を頼まれ、院内を探していると。レンタル用のガウンの上にパイソン柄のジャケットを羽織って、ふらふらと歩いている男の人を見かけた。
近くにあった車椅子を押して、男に声をかけて座るように促す。
「大事な、用がッ…あるんや…!」
車椅子に乗らないと、手をブンと振って拒否をする。
私と男とのやり取りに気がついたヅッカさんが合流してくれて、2人で説得をするも聞く耳を持ってくれない。
「四代目の、襲名披露に…行かなアカンねや…」
「そんな状態で行けるわけないでしょーが!」
ヅッカさんの声がどんどん大きくなる。
それに男も反応して、拒否が続いて拉致が開かず…。2人のイライラは爆破寸前だった。が、残業続きで寝不足の私が先にキレてしまい。放ってしまった一言に…マジマゴロウという男に偉く気に入られしまい。その日から、マジマゴロウの受持看護師となってしまった。
「お座り!」