どこでも?
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「こんばんは」
キャバクラでゆうひは働いていた。源氏名は、ゆず。
「お仕事お疲れ様です」
と、客におしぼりを渡して相手の出方を待つ。
「ナンバーワンの子じゃないって聞いてたけど… … 。おねえちゃん可愛いね。名前は?」
「ゆずです。」
嫌気が差す視線で品定されて、心の中で舌打ちを我慢し。営業スマイルで交わす。
「お飲み物はどうされますか?」
会話の流れを変えたくて、メニューを渡す。
「じゃあ、ウイスキーのロックで」
「はーい」
注文通りに酒を作る準備を始める。
「ゆずちゃん」
客の手が腰に周り、ゾワっとした。
「俺、この後暇なんだよねー。どう?」
アフター
と、耳元で囁かれ。頭の中で警報が鳴り始めた。
「お客様、大変申し訳ございません。」
笑顔で振り向き。腰に周された手を優しく後ろから前に回し。両手で包んで言葉を続ける。
「アフターは、お断りしております。折角ご来店頂いたので、アフターできない分、楽しんでいただける様に頑張ります。」ね。と、更に笑顔増しで微笑む。大抵の客はこれで引き下がってくれていたが、今日の客は違った。
「ハァー…。じゃあ、他の子に変わって貰おうかなー!」
やっぱり、アフター目当ての下心満載のクソ男のようだ。ボーイが近くを通ったタイミングで、男は私へのクレームを言い始めた。
ボーイも、アフターはキャスト達に強制はさせていない事。任意で任せているが、身体を提供させるような事はしないように教育している事を説明すると。男はカッと怒鳴り始めた。
「あ?!俺がこんなブスに欲情してるとでも言いたいのか!!」
「ほんなら、ウチがアフターしよか?」
ボーイ、ゆず、男が一斉に声の方を向く。
「えー…と?」
金髪に眼帯。ピンクの口紅に、肩出しのドレスに網タイツ。露出度高いドレスからは入れ墨は丸見えで、奇抜すぎて反応に困っているとボーイが紹介してくれた。
「あ、彼女はゴロ美ちゃん」
「ゴロ美でぇーす」
語尾にハートマークを飛ばして挨拶された。
「ゆずちゃん、挨拶まだだったね。さっき採用決まったばっかりなんだよ。」
「そ、そうなんですか…」
「ゴロ美、そこのお客様とアフター行ってもええ?」
「!! や、俺は…」
男が断る前に、ゴロ美ちゃんは男の両手を取り男へ顔を近づける。
「ウチ、アフター憧れてたから楽しみやわー!」
「ヒッ!?」
男の荷物を持ち、外へと一緒に出ようとしている。男が何か声を上げているがゴロ美が全て被せて話をしている。ギャーギャー騒がしかった店内が静かになった。
「ゆずちゃん、頑張ったね」
「いえ、私は…何も…」
してないです。と言おうとしたら、ゴロ美ちゃんが帰って来た。
「ただいま、戻りましたー!」
え?アフター早くない?
顔に思いっきり書いてあったようで、ゴロ美ちゃんが言葉を続けた。
「あのお客様、身体目的だったみいでー。ゴロ美ぃ、襲われそうになって怖くてー」
クネクネしながら、ゴロ美ちゃんの説明は続く。
「怖かったから、近くにいた人に助けてもろたから、お店に連れて来ちゃったんだけどー。ゴロ美サービスしてもええ?」
と、首を傾げてボーイに確認する。
「も、もちろん!あの男はもう出禁にするから!」
ボーイは、ゴロ美ちゃんにお礼を伝え。ゴロ美ちゃんを助けてくれた客を席に案内した。
「ウチィ、今日が初日やからゆず先輩に色々とお勉強させてもらいたーい」
「じゃあ、ゆずちゃん。ゴロ美ちゃんサポートしてあげてね」
「はい」
ゴロ美ちゃんを助けてくれた客は西田さんと言う方だった。お世辞にもあんまり強そうには見えないけど…。きっと困ったゴロ美ちゃんを見て見ぬふりはできなかったんだらうなと思う事にした。
ゴロ美ちゃんは、凄い勢いでハートマークを飛ばして接客している。お店での決まり事をいくつか説明はしたが、接客に関しては私が教える事ほとんど無かった。
──────────
「今日は、ありがとうございました」
閉店後一緒に掃除をしているゴロ美ちゃんに頭を下げた。
「ウチ、何もしてへんでー」
「アフター断れなくて、ちょうど困っていた所なんです。ゴロ美ちゃんが声かけてもらわなかったら、あの男暴れてたと思います。」
「なら、ウチ役に立てたんやね!」
良かったわー!と、ハートマークを飛ばされた。
掃除しながら、ゴロ美ちゃんと話をした。
ゴロ美ちゃんは、大好きな男の人を探すためにここへ働きに来たと言っていた。その大好きな男の人を最近キャバクラへ出入りしているのを見かけたという。
「そのヒト、桐生ちゃん言うてな。めっちゃゴッツイの!」
ゴッツイ…?カッコいいって意味かな?
「桐生さん、か。んー…私が対応したお客さんの中にはいないかなー」
「ここのお店自体にまだ来てないだけかもしれへんから、もし。桐生ちゃん来てたらウチに教えて欲しいんやけど…」
ゴロ美ちゃんは、少しクネクネしながら私へお願いしてきた。
「いいよ。今日助けてもらったし。他の子にも情報回しとくね!」
「ほんまに?!ゆず先輩、おおきに!!」
やる気出てきたわー!!
そう言って残りの掃除をゴロ美ちゃんは大股全開気味で終わらせた。
数日後、長身のお客様が来店された─
「桐生ちゃんはー。ウチより少し背が高くてー。声も、低くめやなー。後、絶対ムッツリやから分かるで!」
ゴロ美ちゃんからの情報を思い出す。最後のムッツリかどうかは、ちょっと分からないけど……。
「こんばんは」
「ああ…こんばんは」
あ、声低い!てか、凄い低音!
リーチかも。じゃあ、後は名前を聞ければ…!
「ゆずです。今日はよろしくお願いします。」
「桐生だ」
ビンゴ!ゴロ美ちゃんの思い人!!
心の中ではフィーバーしているのを悟られないように接客を進める。
「どうぞ」
「ありがとう。ゆずも何か飲むか?」
「わぁ!ありがとうございます。」
胸の前で両手を合わせながら笑顔でお礼を伝えて、飲み物をボーイへ伝える時にサインを出した。
パー (5)
親指は出してグー (6)
指を3本にして頬へくっつけた (3)
ボーイは、お客様へ少し視線を向けてから一礼してから控室へと向かった。
「桐生さん、1つお願いがあるんですけど…」
「お願い?」
「ええ、私今新人の子を指導してるんですけど。桐生さんが良ければご一緒させてもらっても良いですか?」
「ああ、構わない」
「ありがとうございます!」
ボーイの方を向くと、親指を立てて良い笑顔をしている。その後ろから満面の笑みを浮かべたゴロ美ちゃんが歩いて来た。
「どうもー!ゴロ美でーす!」
桐生さんは飲んでいたお酒を盛大に吹き出した。
「桐生さん?!だ、大丈夫ですか??」
桐生さんへおしぼりを渡した。桐生さんは口元を押さえながら、目を白黒させている。
「ま、ま…じ、Ma」
「桐生ちゃーん!会いたかったわー!」
「にぃ…!!」
ゴロ美ちゃんは、桐生さんに凄い勢いで近づいて。桐生さんの頬を両手で包んだ。
「ウチは、 ゴ ロ 美 よ!」
「… … …」
「良かったね。ゴロ美ちゃん!」
「ゆず先輩のおかげやわ!」
桐生さんから顔を離して、私へ満面の笑みを向ける。
「ゴロ美は…何故、ここに?」
「何故って…桐生ちゃんに会うためやないの!甲斐甲斐しく、毎晩ここで働いてムッツリ桐生ちゃんがお客さんとして来るの待っとんたんやで!」
「ゴロ美ちゃんから、桐生さんの事を伺ってましたよ。ゴロ美ちゃんずーっと会いたがってましたよ!」
「会いたがって…… 一昨日喧嘩し」
「もー!ゴロ美、桐生ちゃんに会いたくて会いたくてしょーがなかったんやでー!」
「だから!一昨日」
「もー!桐生ちゃん焦らすの上手いんやからー!」
と、桐生さんへゴロ美ちゃんが勢い良く抱きついて耳元で何か囁いた。桐生さんは、「分かった」と言うと静かになった。
「桐生ちゃん、ウチとアフターしてくれるよな?」
「… …ああ」
「よしゃ!ほな、今から行こか!」
ゴロ美ちゃんは桐生さんと腕を組んで外へ出て行った。
ゴロ美ちゃん、思い人の桐生さんと会えて良かったなー。会えたから、もうお店辞めちゃうのかな…?なんだか寂しくなっちゃうなー。
その後、ゴロ美ちゃんは帰って来る事はなく、店長から後日ゴロ美ちゃんが辞めた事を知らされた。
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