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「ゆずちゃん、連休の所申し訳ないんだけど…。今日って、出勤できるかな?」
お昼頃に、店長からお伺いをされるかのような電話がかかってきた。例の後輩の子が二日酔いならぬ四日酔いらしく。昨日は出勤はしたものの、全く動けてなくて早退させたらしい。
体調良くなるまでお休みする事になったとかで、人手が足らず。私の所へお鉢が回って来てしまった。
「店長、申し訳ないんですけど…」
「あー。やっぱり、ダメだよね?」
「今日は、穂花の店がオープンする日で…」
「…そっか。穂花ちゃん、懐かしいなー」
同期で入った穂花は念願の夢である自分のお店をこの度オープンする事になった。
オープン記念日に招待されていると、前に店長にも話はしていたけど。忘れちゃうくらい今切迫つまってるみたい。
「1時間だけでも出てくれないかな…?イチゴちゃん20時からなら来れるって言ってくれて…。1時間cast手が空かなくても…なんとか繋げられると思うんだ…お願い!!」
店長のお願いを断りきれず。穂花に遅れる旨を一言断ってからのお返事でも良いですか?と、一旦電話を切った。
穂花へメッセージを送ると「店長相変わらずだねー!」と、笑った顔文字と一緒に送られて来た。「終わったら必ず行くから!」と、ごめんね。と、顔文字を選んび送信。店長へ連絡を入れて1時間だけ出勤する事になった。
──────────
「いやー!助かったよ!」
「いえいえ」
「イチゴちゃんも早めに来てくれたし、本当に助かった!」
「お客さんも懐に余裕ある方で、お話も上手だったし。私も楽しかったですよ」
「ね!俺もビックリ!1時間の売り上げとしては思えない金額だよ!」
給料日楽しみにしててね!お疲れ様!
と、店長に見送ってもらい。穂花のお店へと急いだ。
この辺のはずなんだけどなー…。
招待状に送付されていた地図を見ながら繁華街を進んで行く、人にぶつからないように歩いているけど、華金だからか人通りもかなり多い。一旦邪魔にならない所まで歩いて行き、建物の前で止まった。
えっとー… ココがココで…。一旦道を覚えてしまえばなんて事ないんだけど…私は地図を見るのがどうも苦手…。
んー…?……ミレニアムタワー寄りだから…とりあえず。ミレニアムタワーまで行ってみよう…。
ミレニアムタワーまで歩く事にして、真新しそうな看板がないかキョロキョロしながら歩いていた。側から見たらお上りさんに見えたらしく、ミレニアムタワー前に着いて再び地図を出そう鞄に手を入れた所を後ろから手首を掴まれしまった。驚いて振り向くと、明らかに品と頭の悪そうな輩3人が立っていた。
「おねえさん、ココは初めて?」
「なんなら、俺らが道案内してやってもいいぜー?」
へへへへへ!と、やはり品悪く笑い声を各々させて掴まれた手首をグッ!と引っ張られてしまった。引っ張られた拍子に、手に持っていた地図がヒラヒラと落ちてしまい。あ!と声を上げると、可愛い声出るじゃーん!今日は、ラッキーだなー!!と、盛り上がり初めてしまった。
「離してください…!」
抵抗したけど、全然びくともしなくて焦ってしまった。私の表情を見ると、男達の表情はどんどん高揚していった。
「ヒュー!可愛いねー!」
「暴れても無駄だぜ?」
よっと、更に引き寄せられしまい。腰に手を回されてしまった。
ひっ!と、小さな悲鳴をあげると、男はニヤリと笑って顔がどんどん近づいてくる。目を閉じて、やめて下さい!!と、必死に大きな声を出すと、別の男に後ろから口を手で塞がれた。
「あんまり大きな声出すなよ!なぁ?!」
「おい、もうそこのホテルでいいよな?」
男達の会話を聞いて必死にもがいていると、ガアッ!という鈍い音と共に悲鳴が聞こえた。
「あ?!」
私の口を塞いでいた男が振り向き、手が離れた。男が前にいるので様子が分からないが、明らかに動揺していた。
「警察?!」
「…て、おい!?どーした?!」
1人の男は倒れており、意識が無いようだった。
私の前にいた男は、倒れていた男に駆け寄り身体を揺らしていた。男が退いた事により、お巡りさんの姿を見る事が出来た。
「た!助けてくンン!」
助けを求めようと言葉を発すると、手首を掴まれていた手が口元へと移動し、言葉を消されてしまった。
「俺ら痴話喧嘩してるだけなんで、お ま わ り さ ん には!関係ないっすよね?!」
「…職務質問させてもらうで?」
「あ?!断るね!」
「…ほんなら、力ずくで聞かせてもらうわ…!」
お巡りさんは後ろに手を回し、所持していたであろう鉄バットで肩をトントンと叩き始めた。
「鉄バット?!」
「おいおい、警官なら鉄バットじゃなくて警棒なんじゃねーの?!」
「ごちゃごちゃ煩いのぉー…」
ほれ、行くで!と、一気に距離を詰めて来た。
私を押さえていた男は舌打ちをし、胸ポケットからナイフを取り出した。私が悲鳴を上げる前に、勢いよく私の事を突き飛ばした。
「…ぃったぁ…」
受け身は取れず、両手と両膝を思いっきり地面に打ちつけてしまった。目閉じて、痛みに耐えている間は数秒だったはずなんだけど。ドサドサッと、大きな音がしてゆっくり顔を上げると男達は倒れていた。
「…ぁっ… がっっ!!」
お巡りさんが倒れた1人の男の胸ぐらを掴んだ。
「…職質するか?それとも… …」
「…ゆ、るして…くだ、さぃ」
乱暴に男をドサッと地面に置いた。私の視線に気がつくと、帽子の位置を直して深めに被りながら此方へ近づいて来た。
「… …」
右手を無言で差し出された。呆けてしまって、一瞬間が空いてしまった。
「立てますか?」
「…あ、はい…!」
お巡りさんの手を取り、立ち上がらせて貰った。
「ありがとうございました…」
「…いえ、パトロール任務中ですので」
そう言うと、お巡りさんは持っていた鉄バットを後ろへ仕舞う動作をした。
「お怪我はありませんか?」
お巡りさんに言われてから、打ちつけてしまった箇所の確認をした。膝や掌に痛みはあるものの、どこも出血はしていなかった。
「大丈夫みたいです」
「…そうですか」
お巡りさんの左肩にあるトランシーバーがビィっと鳴った。トランシーバーへの応答をしている時に、ハッ!となり。落ちた地図の紙を探した。
倒れた男の近くに落ちていたので、男が起き上がらないうちに急いで取りに行き、男とお巡りさんの間当たりで足を止めた。
トランシーバーでやり取りしている最中に、お巡りさんは帽子の鍔をクイッと上げて周りを見渡していていた。
助けてくれたお巡りさんは眼帯をしていた。
思わず見入ってしまい、お巡りさんがこちらを振り向く時に思わず体ごと後ろへ避けてしまった。
…え? 待って、眼帯…
ゴロ美ちゃんと同じだし、バーテンダーさんとも同じだった… それに…
鞄から携帯を取り出して、デポラで一緒に撮ったアイドルゴローさんの写メを確認した。
…たぶん、同じ眼帯だ。
周りの音がかき消されるくらい、写メを見入ってしまったらしく。大丈夫ですか?と、先程のお巡りさんに肩をトントンと優しく叩かれた。
写メを咄嗟に隠して振り向いて、お巡りさんの姿を確認すると、街の喧騒が再び鼓膜を刺激し始めた。
「やはり、何処かお怪我されてませんか?」
帽子は目深に被っていて、眼帯をしてるかは見えなくなっていた。
「あ、いえ。その…」
眼帯の事を切り出したら良いのか、ゴロ美ちゃんの事を尋ねたら良いのか…脳みそを回転させる。
「今日は、変な輩も多いので。駅まで送りましょう」
「あ…えっと、私まだこの後予定があって…」
拾った地図をお巡りさんへと見せて、事情を説明した。
お巡りさんは地図を手に取り、周りを見渡し。お店の場所まで案内してくれると申し出てくれた。
「でも…パトロール中なんじゃ…」
「お困りの方を見捨てて立ち去る事はできませんので」
さ、行きましょう。と、優しく誘導してくれた。
──────────
ミレニアムタワーから歩いて10分程の場所にお店があった。お店の前に無事に着いて、お巡りさんに再度お礼を伝えた。
「助けて頂いた上に、道案内もして頂き。ありがとうございました」
「いえ、帰り道はお気をつけてくださいね」
「はい、タクシー乗り場まで誰かと一緒に帰ります」
そうしてください。と、渡していた地図を返却され、では。と、お巡りさんが立ち去ろうとした時に思わず引き止めてしまった。
「あの…!」
お巡りさんの服の袖を掴んでおり、お巡りさんを見上げる形となってしまった。ネオンの光はあるものの、お巡りさんの立っていた位置は建物の影になる所で、目深に被っている帽子の中までは流石に確認はできなかったけど、お巡りさんの顔を見ながら言葉を続けた。
「私、人を探してまして…お巡りさんなら、知ってるかなって、ここに案内してもらっている間もずっと、考えてて…」
お巡りさんは、無言のままだった。
「私、キャバ嬢やってまして…えっと。名刺、名刺…あった!」
掴んでいた裾から手を離して、鞄の中から名刺を取り出してお巡りさんに渡した。
「私、ここのお店で働いているゆずと言います。以前、一緒に働いていたキャバ嬢の子を探していて…ゴロ美ちゃんて言う子なんですけど…」
「… … …」
「彼女に、どうしても…どうしても!もう一度、会いたくて…。彼女、左眼に眼帯をしてて。眼帯してる人見かけたりすると…ゴロ美ちゃんかな?って、思っちゃって、ついつい話かけてしまってて…その……。さっき、お巡りさんのお顔を見た時に、眼帯してるのが少し見えたんですけど…」
ゴロ美ちゃん…ですか?
声には出さず、心の中で問いかけてしまった。
自分の気持ちを言葉に出して話している事に急に恥ずかしくなってきてしまった。今まで誰にも話していなかった事だったから、顔どころか全身熱い気がする…。
瞼を閉じて頭をフルフルと横に振り、意を消してお巡りさんの姿を見ると。敬礼をしていた。
「ゴロ美という女性を見かけたら、ご連絡します」
「へ?あ、はい。お願い、します…」
「お話の途中で申し訳ありませんが、別の現場へ応援に行かないと行けなくなりました!」
お巡りさんが話している最中も何回か左肩にあるトランシーバーがビィと鳴り続いていた。
「あの…!…お巡りさん、お名前は…?」
「私は… … 真島巡査です」
「真島、さん…」
「では、失礼致します!」
ピシっ!と、再度敬礼をし直してからお巡りさん…真島巡査は、足早に去って行った。