どこでも?
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ゴロ美が店を辞めて1週間経った頃。ゆうひは休みの日に、ゴロ美から聞いていたBARでお酒を呑んでいた。
「ウチのお気に入りのBARがあるんやけど、今度ゆず先輩と一緒に行きたいわー!」
眩しい笑顔でハートを飛ばされる。
「へー。何てお店なのー?」
「Bantamって店なんや」
「ゴロ美ちゃんと一緒に行けるの楽しみにしてるね」
笑顔で伝えると、ゴロ美ちゃんもとびきりの笑顔で返してくれた。
「約束やで!」
ゴロ美ちゃんとの会話を思い出して、少し口角が上がった。
ゴロ美ちゃん、元気かな。今どこで何してるんだろう?
ゴロ美ちゃんに初めて会った時は、奇抜な容姿にビックリしてしまったけど。話すと気さくで面白いし、可愛いし。これからも仲良くしたいと思って、彼女の想い人を一緒に探していたんだけど…。まさか見つけたその日に辞めてしまうとは思ってなくて、寂しくなってしまっていた。
シェイカーでカクテルを作る音が響く。BARで物静かに思い耽るには良い店だ。
一杯目が飲み終えそうになる頃、次は何を頼もうかとメニューを眺める。バーテンダーにお好みがあればそのようにお作りする事もできますよ。と、声をかけられた。
「…じゃあ。ピンクの色で、甘いお酒ってできますか?」
バーテンダーの顔は見ず、節目がちに伝えた。
「かしこまりました」
ピンクはゴロ美ちゃんのドレスの色、甘いのは彼女の可愛らしさ。
テーブルに肘を突いて、両手で頬を覆ってまたゴロ美ちゃんの事を考える。同じ女性のはずなのに、どうしてこんなにも惹かれるのか…。自分の恋愛対象は男のはず、でも。今、恋をしているのは…。
ゴロ美という女
「ゆず先輩♡」
満面の笑みで名前を呼ばれた時を思い出す。
… … はぁー…!
目を閉じてため息を吐く。アルコール摂取はしたのもあると思うけど…きっと今、私の顔は赤に違いない。これ、もう一回ゴロ美ちゃんに会って、自分の気持ちを確かめないと…ダメかもしれない。
「お待たせ致しました」
注文したオリジナルカクテルが、目の前にすっと置かれた。
品のあるピンク色のグラデーションに、炭酸の泡がキラキラと反射している。小さな苺が三つプカプカと浮いてて、グラスにはレモンが飾られおり。甘いけどスッキリとした味わいのカクテルなんだろうか?と、想像が膨らんだ。
「ゴロ美スペシャルです」
え…?!何で、ゴロ美ちゃんの事を知ってるんだろうか?
ビックリした表情のままバーテンダーを見ると、ゴロ美ちゃんと同じ眼帯をしたタキシード姿の男が微笑んでいた。
「あの…」
「お客様は、ゴロ美という女性をご存知ですか?」
「ええ、彼女がここのお店を、話してくれて…」
そうでしたか。と、優しく微笑まれた。
「あの…彼女の事、知ってるんですか?」
「知ってるも何も、彼女はここの常連ですから」
「ゴロ美ちゃん、来る曜日とか時間とか決まってるんですか?」
「さぁ…?日によっても違いますからね」
「そう、ですか…」
「もしかして、お客様は、ゆずさんですか?」
「え?…はい」
何で私の名前を知っているんだろうか?
「手紙を預かってます」
「手紙?」
眼帯の男は奥の棚から手紙を取り出して、ゆうひへと渡した。手紙を受け取ると、丁寧な字で文章が書かれていた。
ゆず先輩へ
急にお店を辞めてしまってごめんなさい。
桐生ちゃんを見つけてくれて、本当にありがとうございました。
あの後、桐生ちゃんと色々お話ができました。これもゆず先輩のお陰です。
今はゴロ美としてではなく、違う姿で生活をしています。
ゴロ美は、ゆず先輩とはまた会いたいと思ってます。落ち着いたら、会いに行きます。待っててください。
ゴロ美より
手紙を読んで涙がじわじわと目に溜まるのを自覚する。手の甲で涙を拭き取り、バーテンダーへお礼を伝えようと顔を上げると姿は無かった。
他の店員へ、眼帯のバーテンダーさんは?と聞くと。時間になったから帰ったと言う。次いつ来るかは分からないとの事だった…。
もしかして…あのバーテンダーの人が、ゴロ美ちゃん??
ゴロ美スペシャルに目を落とす。写メを数枚撮ってから、一口飲むと。甘くてとろける口当たりが炭酸で口の中へ一気に広がった。
「ゴロ美ちゃん…」
ゆうひは、ゴロ美からの手紙を大切に鞄へ入れて店を後にした。