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真島さんとの出会いは、会社からだいぶ離れた場所にある倉庫から両手で段ボールいっぱいの書類を抱えて運んでいた時だ。何往復したか覚えてないが、これが最後の荷物。全身で紙の重さに耐えながら、いつもより重い足取りで会社へ戻っている時に、おもいっきり転んでしまった。
「ッー…痛ぃッ……!!」
何が起こったのかが分からず痛みに耐えながら起き上がろうとすると頭上から数名の笑い声が聞こえてきた。
「あらら~??おねーさん、大丈夫ー?」
「足元ちゃーんと見てないと危ないよー?」
「あーあー 大事そうな書類がバッラバラだねー」
心配している言葉から小馬鹿にした含みを感じ取り、こいつらに足を引っかけられたのだと理解した。
「…そうですね、気をつけます」
睨んでやりたいが、これ以上関わりたくなくて顔も見ずに一言告げ。痛みに耐えながら起き上がり、段ボールから飛び出てしまった書類を回収しようと手前の書類へ手を伸ばすと、男の足が書類の上にバンと音を鳴らして降りてきた。
「おいおい、こっちは心配してやってんだぜー?なんだよその態度?!」
「あー!俺傷ついちゃったなー!なぁ?」
「ああ、こっちは親切で声かけてやってんだぜー?その態度は無いんじゃなーい?」
あーもー!!関わりたくない、早く戻ってこの散らばってしまった資料を処理しなければならないのに…!!苛立つ気持ちを抑えて立ち上がり、男たちの顔を上げて一言。
「ご心配おかけして申し訳ありません。通行の方に迷惑にならないように気をつけて運びますので、どうか足をどかしてもらえませんか?」
煽られてたまるか!絶対負けない!!
と、笑顔で気持ちを抑えつける。転んだ時に顔も撃ったらしく微笑むと頬がヒリヒリと痛んだ。きっと笑顔がひきつっているに違いない。
「そーだよ、最初っからそうゆう態度だったら俺たちだって気分悪くならないよ、なー?」
「へっへっへっへっ!」
「俺らの気分良くなるまで、おねーさんに相手してもらおーか!」
「申し訳ありません。至急会社へ戻らないといけませんので…」
「ああ?!だったら、この落とし前どーしてくれるんだぁ!?」
「ブスが!!調子乗ってんじゃねーぞ!!」
「だったら有り金全部置いてけよ!!」
「ねぇーちゃん大丈夫か?」
聞こえた声の方を振り向くと左目に眼帯をしたパイソン柄のジャケットを素肌に着ている長身の男が歩いてこちらに向かって来ている。
「…ゲッ!」「お、おい!ヤベーッて!!」
男たちの焦った声が聞こえて見てみると、男たちの表情がどんどんと青ざめており、少しずつ後退りをしている。
カツと足音が止まり、眼帯の男が散らばった書類を見渡す。
「この紙は、ねーちゃんのか?」
「あ、はい。」
「随分と散らばっとるのー」
「…ええ、…まあ」
「転んでしもたんか?」
大丈夫か?と、私の顔を覗き込んできた。頬や顎にかすり傷を見つけると表情が一気に変わり、発した声色の低さに私も男たちも固まってしまった。
「で?ねーちゃんは何で転んでしまったんやろなー?」お前ら、知ってるかー?と、聞きながら男たちに近づく。
「ぁ…ゃ…」
「あ?!なんや?聞こえんで?さっきまで大きな声出して、このねーちゃんに怒鳴ってたやろ?」
男の襟元を黒い手袋で鷲掴み、違うか?と顔を近づけて睨みつける。
襟元を捕まれた男は言葉にならない悲鳴を上げ、後の男たちは「俺ら関係無いんで!!」と、逃げようと背を向けた瞬間に襟元を捕まれた男の身体が宙を浮き男たちの背中めがけて飛んで行った。
ドサッと男たちが倒れて、近くにあった書類が再び宙を舞った。
「俺は嘘が大ッ嫌いなんや」
眼帯の男が、倒れた男たちの方へ再び近づき男たちの目線に合うようにしゃがみこんで一言告げた言葉に男たちが悲鳴を上げ次々に謝罪し始めた。
「ぁ、の…」
私が声をかけると眼帯の男が振り返り、狂気じみた表情を見て、言葉を詰まりかけ顔を反らしてしまった。なんや?と聞かれて、眼帯の男へ頭を下げた。
「た、助けて頂きありがとうございます。もう、大丈夫なので…」その…と、言葉を続けようとすると、大丈夫やないやろ?と、呆れ声が聞こえた。
「ねーちゃんの顔傷ついてんで?それに足からも血ぃ出てるし」
頭を下げたまま自分の足を見てみると、右膝から出血しているらしくパンツスーツに染みができている。眼帯の男に言われるまで気がつかず、思わず本当だと心の声が漏れた。
「せやから、こいつらにも同じように痛い目にあわせんと、な?」
再び男たちの方へ顔を向けると「もうしません」と叫び声が聞こえた。
「もうしないと言ってるので、その…会社にも戻らないといけないですし」
眼帯の男からため息が聞こえ「アマアマやな。まあ、ねーちゃんがええなら俺もこれ以上はなーんもせーへんで」と、私に笑顔を見せ男たちへは「…ただし、次似たような事してんの見たら…」容赦せーへんで?と低い声で忠告した
「俺ら、もうしませーん!!」
「す、すいませんでした!」
逃げていく男たちを見て、フゥと息を吐き、眼帯の男にお礼を言った。
「助けて頂き、ありがとうございました。」
「ええんや、ちょうど暇やったし。にしても、準備運動にもならんかっなー。」
男が肩をぐるぐる回しているのを見て、刺青が入っていることにここで初めて気がつく。
えー…っと、ヤクザ…?でも、悪い人に見えるようで見えないような…
ゆうひが考え事をしているうちに眼帯の男は散らばってしまった書類を回収し始めた。ゆうひもを慌てて書類の回収をした。
「すみません、後は私一人で大丈夫ですので…」
「二人で回収した方が早いやろ?」
「でも…」
「あ、ほれ。そっちの風で飛ばされてしまうで!」
「…へ?…あ!」
待ってー!と書類を追いかけ、風に飛ばされてしまった書類を無事に回収して戻ると、書類回収を全て終わらせた男が段ボールの横に立って待っていた。
「それで全部か?」
「あ、はい。…あの」
「いちよう中身確認してな?」
眼帯の男が段ボールを地面に下ろして、無くなってない書類が無いか確認をした。
「ちゃんと全部揃ってます。本当にありがとうございました。」
「かまへんで」
お礼を言いつつ段ボールを抱えようとすると、眼帯の男が段ボールを片手で持ち上げた。
「怪我しとるんやから送ってくで」
「へ?!あの、助けて頂いただけでも十分で」
「こないに重いの女の子が持って歩いたらアカン。また怪我したり絡まれるで?」
「でも…」
「ええから、俺にまかしときー!」
足の痛みもあるのでお言葉に甘えて眼帯の男に会社前まで送って貰う事になった。
「あの、本当にありがとうございました」
「もうお礼の言葉はぎょうさん聞いたからええで」気にせんといて、とニッと笑顔を向けられた。
「それより何でねーちゃん1人でこないに重い荷物運んでるんや?」
「男性スタッフが今出払ってしまっていて、一番丈夫そうな私が任命されました」
私は女性にしては身長も高く、肩幅もある。小柄な男性と同じくらい手や足も大きいし、握力も女性の平均値を上回っていらる。はっきり言ってあまり女性らしくはない。むしろ、たくましい方だと思う。絡んできた男たちは私を女としてではなく、金目当てだったのも容易に分かっていた。でも、この眼帯の男は私を女性扱いしてくれている気がする…。あまり慣れていない状況すぎて不思議な気持ちになっていた。
そら大変やったなーと、返ってきた返事にどう返して良いか分からず困っていると。迷惑だったか?と、聞こえて来て焦った。
「ぃ、いえ!助けて頂けなかったら今頃まだ絡まれてましたし!本当に助かりました!」
「なら、ええんやけど…ねーちゃん困った顔ずーっとしてんで?」
「あ…えっと……」
下を向き、あんまり女性扱いされる事に慣れていないと伝えようか迷っていると…怖いか?と言葉が降ってきた。
「え…?」
「そりゃ、そうやなぁ。怖い思いさせて悪かったなー。ああゆうやり方しか俺知らんから、おねーちゃん怖がってんの気ぃつかんくて堪忍な」
「へ?!あ、いえ、確かに怖いとは思いましたけど…私を助ける為の行動だと分かっていたので、大丈夫です。その…」
怖わがってはいないと、返ってきた言葉に男はそうか。とニッと笑い、私の言葉の続きを待っている。
「…あまり、女性扱いされる事が今まで無かったので、どうしたら良いのか…その、分からなくて…」
困った顔のまま説明すると、男はポカンとしてしまった。
「す、すみません!本当いつもこういう力仕事任されるし…たくましいって誉められちゃうし、お兄さんにご迷惑おかけした上に気を使わせてしまって、本当に申し訳ありません!あの、もう会社見えてきたのでここで大丈夫です!」
段ボールを受け取ろうと、手を出すも男はひょいと軽々と段ボールを高く持ち上げた。
「これは重いからアカン」
「でも…」
「ねーちゃんが男慣れしてへんのは分かった。次にこういう状況になったら、笑顔でお礼言ってくれれば男はいちころやで」
「…へ?」
「ねーちゃんの笑った顔が見たいなー、俺」
「あの…」
ねーちゃんは、困った顔が得意なんやなー?と言われて、焦って笑顔を作り「ありがとうございます」と伝えた。
「ええ顔やな」
満足したのか男も笑顔で返してくれた。自分の顔が赤くなるのを感じた。
──────────
会社の前に到着し、重いから気ぃつけや。と、段ボールを男から受け取った。
「ちゃんと傷治療するんやで!跡残ったら大変やからな」と、私の頭にポンと手を置き「ほなな」と、去って行く。私は顔が赤いまま男の姿を見送り、会社へ戻った。
私の姿に皆は驚き、上司から病院へ行くように言われて「労災はおりますか?」と冷静に返すもどこか上の空で、早退し病院へ受診し家に帰って一息ついた所で自分の気持ちに気がついた
あの人に、また会いたい──
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