餅はいかが?

 何度お嬢様に手を叩かれたのかわからなくなった頃、ようやく餅がつき終わりました。
 すり鉢の中に出来上がった白色の塊をお嬢様が指で突っついています。反発具合を見る限り、その塊はもちもちなのでしょう。

「ねえ真琴」
「なんでしょう」
「これは紛れもなく餅よね」
「餅です」
「そうね。よし、焼いてちょうだい」
「え、焼くんですか?」
「焼かないと食べられないじゃない」
「……お嬢様、つきたての餅はそのまま食べられます」

 お嬢様は餅を一口大ほどの大きさに分けて、またびよーんと伸ばして食べました。
 つきたての餅は粘りが強いな、と思いながらその様子を見ていましたが、餅を飲み込んだお嬢様は怪訝な顔をされました。

「お嬢様、どうなさいました?」
「……美味しくない」
「……つきたてなのに?」
「やっぱりお餅は杵と臼でつくべきなのかしら」

 使う道具で味が決まることはないと思います、とツッコミを入れたくなりましたが、お嬢様に「お餅は真琴にあげるわ」と言われてしまったのでそれどころではありませんでした。食べたくないからと人に押し付けるのはいかがなものかと思います。

「真琴、やっぱり杵と臼を買いましょう。ネットでポチってしたら届くのよね?」
「そうですけど、一瞬で届くわけではないですからね? 早くても翌朝ですし、まず今日は正月です。トラックのドライバーにも休みをあげてください」
「……お餅つきしたい!」
「諦めてください。子供じゃないんですから」
「私、まだ未成年よ」

 ぶーぶー言うお嬢様を宥めていると、別の執事が来客を知らせにきました。
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