「ビールきたよ～！」

相葉さんが佐藤ちゃんにビールを渡す。

「ありがとうございます！あーおいしー！」

みんなお酒が強く、ジョッキの数がどんどん増えていく。

打ち合わせのあと、みんなで合流し
会社近くの居酒屋に入った。

席はスーツを来た人たちで満席で、賑わっていた。

「そういえば井川さん、彼氏いないんですか？」

佐藤ちゃんが興味津々、という顔で聞いてくる。

「今はいないよ」

この手の話は苦手だ

「そうなんですか？私の周りの男性陣が知りたい人多いみたいで…相葉さんとか」

「ちょちょ！ばらさないでよ」

相葉さんは口にしていた手羽先を吹き出しそうになる。

「どれくらいいないんですか？」

「どれくらい…3年？4年くらい？」

「えっ…年単位？」

相葉さんが唖然とした表情になる。

「…それ、仕事が恋人、とか言ってたら完全事故物件ですね」

佐藤ちゃんの一言がグサッと刺さる。

「…だめ？」

相葉さんと佐藤ちゃんが同時に頭抱えて「あちゃー」とため息混じりに言う。

「あ、相葉さんはどうなんですか？
やっぱりモテますよね？」

「井川ちゃんそれ聞いちゃう～？
俺はね…」

上手く相葉さんに話を振れた。
この手の話は、放っておいてほしい。

恋愛なんて…
もういい
私の心の中の大きな傷が、今でもズキズキする
でも癒えなくていい
このままでいい
傷がなくなるくらいなら
新しい恋愛なんてしない
私は過去と生きていくと決めた

そしてまた、刺さるような視線を感じた
二宮さんだ

「…勝手に蓋して何がおもしろいの？」

「え？何がですか？」

相葉さんと佐藤ちゃんは2人で盛り上がっている。

「いつまで蓋してんの？」

「…どういう意味ですか？」

「さあな。自分で考えろ」

そこまで聞こえると、相葉さんが二宮さんに
「ニノも彼女募集中でしょ？！」と勢いよく話しかける。

二宮さんの反応が聞こえないくらい
さっきの会話の意味を考える

何か見透かされてる？
まさか、私の過去を知っている…？

心臓がバクバクし始めて止まらなくて、
落ち着くために少し大きく息を吸った。

二宮さんを見ると、2人と楽しく談笑している。
でも会話の内容は頭に入って来ない。
二宮さん、何を言いたかったんだろう…

もし仮に私の過去を知っているのなら、
私の過去には触れないでほしい

そっとしておいてほしい

誰にも触れてほしくない

誰にも