I got my feelings back
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「井川、至急対応」
「はい」
二宮さんが東北へ出張に行って2日目
マイペースに仕事を進めながら11:00を回った頃、
同じチームの真剣な表情の先輩がこちらの反応も見ず話を進める
「中国のとある企業とうちの会社で合同出資して新会社を作るらしい。
水面下で調整を進めてたのが、急進展で昨日の社長トップ会談で決まった。ビジネスエリアは東南アジアがメインで、うちの下期事業計画に大幅な変更が必要だ」
「はい」
「部長は木曜まで帰ってこない。明日の水曜にお前が大阪出張に行ってる間、課長に俺が説明しとくから。木曜部長説明。手分けして資料作成な」
「…はい」
急に、不安になる。
そんな大きな話、どうまとめたらいいのか即答できない
「オーバーヘッド組織は海外営業本部だ。そこの本部長が、新会社の社長を兼任する。組織図も忘れんな。流通インフラを相手方の会社が担うことになる大筋はぶれてない。」
「はい」
「昨日の会談のフィードバックはすでに役員クラスに落とし込まれてるはずだから、今日の午後イチには各部長まで届いてる。うちの部長は今日いないから、隣の部長にヒアリングに行くぞ。」
「わかりました」
「それまでありったけの情報集めとけ。事前に頭の中整理しとくように。ニュースリリースは来週だ。その時に収益見込みを発表する。その叩き案も作れ。株主が食らいつく発表になるからな、気を引き締めてやるぞ!」
息を巻いた先輩の勢いに圧倒される
はぁ、と少しため息をつく。
情報が断片的だし、先輩の話から感じるスピード感からか不安が押し寄せる
まず合同出資する相手企業の情報を調べて、簡単にまとめよう
あとは海外営業本部の事業計画を確認して…
「二宮さん、下期の収支計画なんですが…」
慌てて口を押さえる
幸いにも、誰も聞いていなかった
そうだった
二宮さん 今日はいないんだった
二宮さん、いないのか…
私、いつも頼りにしてたんだ
改めて思い知らされる
考えなきゃ、二宮さんはいつも何をアドバイスしてくれたっけ
何の情報が必要で、どうまとめたらいい?
二宮さんが教えてくれたこと…
不安に押し潰されそうになっているのか、
よくわからない胸の締め付けを感じる
二宮さんがそばにいてくれる安心感は
こんなに大きかったんだ
飲みかけのコーヒーを全部口に入れて、
パソコンに向き合う
今は 自分の力でなんとかして
二宮さんに報告できるように片付けよう
「はぁー…」
今日1日パソコン作業でフル活用した肩が重い。
時計は22:00をまわっていた
仕事はなんとか形になったけど
スピードも正確性もがんばればもっといい仕事ができたかも
次はもっとがんばらないとなー…
2階の社内で一番大きなリフレッシュスペースに寄って少し高めのコーヒーでも買おう
コーヒーの蓋を開けて軽く息を吐き出す
今日、いつも二宮さんがそばにいてくれたことを実感して
仕事の合間に二宮さんのことばかり考えていた
二宮さんはいつも
知識も豊富で判断も的確で早くて
みんな信頼を置いているし
私にもいつもヒントをくれる
最近では息の合った仕事ができて
周りの期待以上に応えられている気がしていた
でもそれは全部 二宮さんがいたからできたことなんだ
ふと、ぼーっと考える
二宮さんが出張に行って2日目
昨日までの週末は引っ越しに向けて準備を進めてたのもあって
二宮さんとライン以外で連絡をとっていない。
出張に行っているこの2日間も、忙しいのか二宮さんのラインの返事もほとんどない。
と言っても仕事の話ばかりだけど
いつも隣にいて、助けてくれるのが当たり前だった
何だか胸に穴が開いたようで
すーっと息を吸うと 風が通り抜ける感覚で
胸が苦しくなる
「会いたいなぁ…」
はっと気付く
今口に出して呟いた言葉に
正直に驚いた
私、二宮さんに会いたいって思ってる
なんとも言えない強い胸の締め付けを
心の奥から感じた
二宮さんの安心できる声、「何やってんだよ」って心配してくれる笑顔
わからないことを教えてくれるときの真剣な目
あの日キスしたこと
好きだって言ってくれたこと
急に、二宮さんが心の中で大きな存在になる
二宮さんに、会いたい
はっきりとそう感じたことに
また胸が苦しくなる
今日二宮さんがいないことを実感すると
会いたい気持ちが溢れてくる
コーヒーを手にしてぼーっと考えていると
スマホの振動を感じた
画面を見ると、松潤の名前が出ていてはっとした
「も、もしもし?お疲れ」
『お疲れ。今いい?』
「うん、どうした?」
『引っ越しの件なんだけど、ちょっと至急耳に入れておきたくて』
「うん、なに?」
『今名前が引っ越そうとしてるマンションさ、急に耐震構造の不備が発覚したみたいでさ。急きょ入居者募集ストップしたんだよ』
松潤のはぁ、というため息が聞こえる
「えっ…そうなの?」
『だからすげー残念なんだけど。入れると思ってたマンションに入れないってこと』
「そんな…どうしよう」
『こないだ3件内覧したじゃん?そのうちの2件目もあたってみたんだけど、借り手が見つかったみたいで募集終わってた』
「じゃあ残りは…」
『そ、3件目だけ』
松潤の言葉に一瞬胸が高まった
ということは、二宮さんと同じマンションになる
さっき締め付けられた心臓がまたトクンと鳴り出す
「ほ、他に入れるマンションをもっかい探そうかな…」
『いや俺もそれを提案したいんだけどさ、お前もう今のマンションに出てくって言ったし、今から探すのはさすがにリスクかも』
「そう、だね…」
二宮さんと同じマンションなんて
どうしよういいのかな
よくわからない不安を感じながらも、
今回入居を申し込んだのに断られた耐震構造に不備のあったマンションから
せめてもの誠意ということで他のマンションに決めた際は敷金・礼金を出してくれるという条件も付けてくれた、と松潤は説明してくれた
最悪のリスクを考えると、このマンションを押さえるしかないかな
そのあと少しだけ世間話をして、松潤の電話を切った
二宮さんと同じマンションになったら
今の私のこの気持ちはどこに落ち着くんだろう
私、二宮さんのこと好きなのかな
ぶんぶんと頭を振る
そんなことない
私は恋愛しないししたくない
恋愛に時間かけてる暇なんてない
目の前には仕事がある
いや、仕事しかないはず
私に、誰かを好きになる余裕なんてない
でもなんでだろう
胸の締めつけが止まらない
二宮さんに、会いたくて
苦しい