I got my feelings back
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松潤のオフィスを後にしてごはんを食べていると、引っ越しの話になり
週末に内覧したうちの1件目の部屋で契約を進めてくれることになった
二宮さんと同じマンションという選択肢もあったけど、やっぱり仕事でも距離が近いのにプライベートまで、というのは躊躇してしまう
松潤からは、「来月から入居可能だから、今月中に今のマンション退去できるか管理会社に聞いておいて」とのことだった
そして翌日、昼休みに管理会社に電話すると、
本来なら退去月の前月に申し出が必要なところ、まだ6月に入って間もないということもあり好意で今月中の退去でも問題ないとのことだった
松潤にラインで報告する
即返事が返ってきた内容には
『了解。また契約の手続きに来て』と書いてあった
一区切りついて、変わるための環境の準備は順調だ
「打ち合わせ」
「あっ、はい!」
…二宮さんも、相変わらず仕事でお世話になりっぱなしで
私の気持ちは松潤に一区切りはついたものの
二宮さんに対しては前に進むことをためらっていた
それでも仕事は前に進めなきゃ
ノートパソコンを慌てて抱えて二宮さんを追いかけた
打ち合わせも無事に終わり、今日の業務時間もあと一息、という時間帯に差し掛かったとき
パソコンに見覚えのある人からメールがきた
プロジェクトとは直接関係はないけど、新プロダクトを発売するにあたってトライアルを実施する案件の中心になって主導してくれた現場の営業の人だった
二宮さんと昔一緒に仕事をしたことがある、という中堅社員の人で
支店の営業担当者のなかでも腕があり、どんな案件でも受注できるスーパー営業の異名を持つ人だった
私も二宮さんのサポートという立場で、メールのCCに入っている
『本件、二宮さんのお陰で無事トライアルが完了しました。お客様からも痒いところに手が届く機能だった、とお誉めとお礼の言葉を頂戴しています。二宮さんの手厚いサポートあっての結果です。』
そこには二宮さんへの感謝の気持ちが綴られていた
「無事にうまくいったみたいでよかったですね」
二宮さんも同じメールを見ているのか、少し口元が緩んでいた
ただ、この案件は正直私たちの業務範囲外だった
トライアル実施にあたって会社の制度・規定を超えて解釈をせざるを得ないことがあり、
幹部説明や調整に二宮さんがあたってくれた
この営業担当の人の、俗人的な繋がりだけで二宮さんは頼られただけなのに、嫌な顔ひとつすることなく対応していた
「まぁ、ワタシがやったことなんて微力ですけどもね」
素直に、すごいと思った。
大きな組織となると、どの組織でどんな業務をやるかが明確で細分化しすぎていて
困ったときに助けてもらえるというよりは
たらい回しにされることの方が多い。
『この業務は担当外なので-』
社内流行語といっても過言ではない。
そんな中で、血の通った対応ができる二宮さんが素直にすごいと思えた
「…この営業さんの気持ちわかるなぁ」
「なに?どういうことよ」
「二宮さんの対応力、すごいなぁって」
二宮さんはふっと少し鼻で笑った
「これね、ワタシの力じゃないのよ。俺を巻き込んで、困難な状況で解決の糸口をワタシに準備させた、この人の力だから。この人がすごいのよ」
二宮さんはパソコンに顔を向けたまま言う
少し照れているのか、耳が赤い。
肌が白いと余計に目立つ。
「…そういう、二宮さんの仕事から逃げないところ、すごくかっこいいです」
二宮さんが驚いた顔でこちらを見た
思ったことが口から出てしまい、あ、恥ずかしいこと言ってしまった、と気付くのが遅すぎた
「ふーん。惚れた?」
イタズラな笑みが私を捉える
幸い、周りの人はみんな離席中でこの会話を聞いている人はいない
「あ、いや、その、えーと、尊敬の間違いです、はい」
「素直になりなさいよ」
そう言ってククク、と笑った
恥ずかしさに耐えられなくなり、パソコンに顔を向ける
そもそも、思ったことがそのまま口に出てしまったことが恥ずかしすぎるし、
かっこいい、なんて思っていた自分にもびっくりするし
何より 信じられないくらい心臓がバクバクしている
パソコンの画面を見るものの、意味もなくマウスを動かして
適当にフォルダを何度も開く
落ち着け、私の心臓
なんだろうこの感覚
いつぶりだろう
ドキドキしたまま、止まらない
「あ、俺、来週の月曜日と火曜日、出張でいないから」
二宮さんが思いだしたように言う
「…はい。東北支社行かれるんですよね?」
「そ。櫻井課長と」
次年度からのホールディングス体制の見直しで、二宮さんと櫻井課長は全国の支社にヒアリングに出向く
実際には部長も一緒に行くらしい
そして来週の水曜日は部長と二宮さんと私で西日本事業本部がある大阪に出張するスケジュールだった
「あ、そうだ井川、部長は大阪に前泊するみたいだから当日の部長のスケジュール作成しておいて」
櫻井課長の指示がとぶ
「はい、わかりました」
朝9:30には新大阪に着いておかなきゃ
てことは家を出るのが…
「6:15に俺のマンションね」
「ん?私が、迎えに行くんですか?私が?」
「来ないの?」
そう言ってこちらを見る二宮さんの目は鋭かった
「…行きます」
その鋭い目線に屈してしまった
「6:00に電話で起こして」
なんで電話までしなきゃいけないんですか、という言葉を無理やり喉の奥に押し込む
「…はい。でも15分で準備できるんですか?」
「あ、心配してくれてんの?だったら一緒に暮らせばいいじゃないの」
二宮さんが挑発的な目でこちらを見る
「…それはダメです」
「なんで。いいじゃん。あ、てかさ、引っ越しの件どうなったの?」
「引っ越し先決めました。来月から入居します」
「ふーん。どこ?」
「今の駅の隣駅です」
「あっそ。俺のマンションかと思った」
「…やめておきます。」
「あっそう?」
二宮さんは「いいと思うんですけどねー」と呟きながら
パソコンに向かって仕事を再開した
二宮さんと同じマンションなんて
どう事態が展開するのかわからない
この間二宮さんは好きという思いを伝えてきた
何か反応しなきゃいけないことはわかってる
でもやっぱりわたしの気持ちは未だに所在がわからなくて
頭の中で二宮さんが好きって言ってくれたことはずっと意識している
考えても考えても
今はやっぱり仕事しなきゃっていう気持ちになる
私には仕事がある
仕事しかないってこの4年間信じてきた
それにこのプロジェクトに参加して
もうすぐ2ヶ月が経とうとしている
このプロジェクトの一員として成功したいし、
結果を出すのに貢献したい
…二宮さんのことは、時間が経てば
きっと二宮さんも他の人でいいやって思うかもしれないし
無責任なことわかってるけど
いまは仕事にしか責任持てない
週末に内覧したうちの1件目の部屋で契約を進めてくれることになった
二宮さんと同じマンションという選択肢もあったけど、やっぱり仕事でも距離が近いのにプライベートまで、というのは躊躇してしまう
松潤からは、「来月から入居可能だから、今月中に今のマンション退去できるか管理会社に聞いておいて」とのことだった
そして翌日、昼休みに管理会社に電話すると、
本来なら退去月の前月に申し出が必要なところ、まだ6月に入って間もないということもあり好意で今月中の退去でも問題ないとのことだった
松潤にラインで報告する
即返事が返ってきた内容には
『了解。また契約の手続きに来て』と書いてあった
一区切りついて、変わるための環境の準備は順調だ
「打ち合わせ」
「あっ、はい!」
…二宮さんも、相変わらず仕事でお世話になりっぱなしで
私の気持ちは松潤に一区切りはついたものの
二宮さんに対しては前に進むことをためらっていた
それでも仕事は前に進めなきゃ
ノートパソコンを慌てて抱えて二宮さんを追いかけた
打ち合わせも無事に終わり、今日の業務時間もあと一息、という時間帯に差し掛かったとき
パソコンに見覚えのある人からメールがきた
プロジェクトとは直接関係はないけど、新プロダクトを発売するにあたってトライアルを実施する案件の中心になって主導してくれた現場の営業の人だった
二宮さんと昔一緒に仕事をしたことがある、という中堅社員の人で
支店の営業担当者のなかでも腕があり、どんな案件でも受注できるスーパー営業の異名を持つ人だった
私も二宮さんのサポートという立場で、メールのCCに入っている
『本件、二宮さんのお陰で無事トライアルが完了しました。お客様からも痒いところに手が届く機能だった、とお誉めとお礼の言葉を頂戴しています。二宮さんの手厚いサポートあっての結果です。』
そこには二宮さんへの感謝の気持ちが綴られていた
「無事にうまくいったみたいでよかったですね」
二宮さんも同じメールを見ているのか、少し口元が緩んでいた
ただ、この案件は正直私たちの業務範囲外だった
トライアル実施にあたって会社の制度・規定を超えて解釈をせざるを得ないことがあり、
幹部説明や調整に二宮さんがあたってくれた
この営業担当の人の、俗人的な繋がりだけで二宮さんは頼られただけなのに、嫌な顔ひとつすることなく対応していた
「まぁ、ワタシがやったことなんて微力ですけどもね」
素直に、すごいと思った。
大きな組織となると、どの組織でどんな業務をやるかが明確で細分化しすぎていて
困ったときに助けてもらえるというよりは
たらい回しにされることの方が多い。
『この業務は担当外なので-』
社内流行語といっても過言ではない。
そんな中で、血の通った対応ができる二宮さんが素直にすごいと思えた
「…この営業さんの気持ちわかるなぁ」
「なに?どういうことよ」
「二宮さんの対応力、すごいなぁって」
二宮さんはふっと少し鼻で笑った
「これね、ワタシの力じゃないのよ。俺を巻き込んで、困難な状況で解決の糸口をワタシに準備させた、この人の力だから。この人がすごいのよ」
二宮さんはパソコンに顔を向けたまま言う
少し照れているのか、耳が赤い。
肌が白いと余計に目立つ。
「…そういう、二宮さんの仕事から逃げないところ、すごくかっこいいです」
二宮さんが驚いた顔でこちらを見た
思ったことが口から出てしまい、あ、恥ずかしいこと言ってしまった、と気付くのが遅すぎた
「ふーん。惚れた?」
イタズラな笑みが私を捉える
幸い、周りの人はみんな離席中でこの会話を聞いている人はいない
「あ、いや、その、えーと、尊敬の間違いです、はい」
「素直になりなさいよ」
そう言ってククク、と笑った
恥ずかしさに耐えられなくなり、パソコンに顔を向ける
そもそも、思ったことがそのまま口に出てしまったことが恥ずかしすぎるし、
かっこいい、なんて思っていた自分にもびっくりするし
何より 信じられないくらい心臓がバクバクしている
パソコンの画面を見るものの、意味もなくマウスを動かして
適当にフォルダを何度も開く
落ち着け、私の心臓
なんだろうこの感覚
いつぶりだろう
ドキドキしたまま、止まらない
「あ、俺、来週の月曜日と火曜日、出張でいないから」
二宮さんが思いだしたように言う
「…はい。東北支社行かれるんですよね?」
「そ。櫻井課長と」
次年度からのホールディングス体制の見直しで、二宮さんと櫻井課長は全国の支社にヒアリングに出向く
実際には部長も一緒に行くらしい
そして来週の水曜日は部長と二宮さんと私で西日本事業本部がある大阪に出張するスケジュールだった
「あ、そうだ井川、部長は大阪に前泊するみたいだから当日の部長のスケジュール作成しておいて」
櫻井課長の指示がとぶ
「はい、わかりました」
朝9:30には新大阪に着いておかなきゃ
てことは家を出るのが…
「6:15に俺のマンションね」
「ん?私が、迎えに行くんですか?私が?」
「来ないの?」
そう言ってこちらを見る二宮さんの目は鋭かった
「…行きます」
その鋭い目線に屈してしまった
「6:00に電話で起こして」
なんで電話までしなきゃいけないんですか、という言葉を無理やり喉の奥に押し込む
「…はい。でも15分で準備できるんですか?」
「あ、心配してくれてんの?だったら一緒に暮らせばいいじゃないの」
二宮さんが挑発的な目でこちらを見る
「…それはダメです」
「なんで。いいじゃん。あ、てかさ、引っ越しの件どうなったの?」
「引っ越し先決めました。来月から入居します」
「ふーん。どこ?」
「今の駅の隣駅です」
「あっそ。俺のマンションかと思った」
「…やめておきます。」
「あっそう?」
二宮さんは「いいと思うんですけどねー」と呟きながら
パソコンに向かって仕事を再開した
二宮さんと同じマンションなんて
どう事態が展開するのかわからない
この間二宮さんは好きという思いを伝えてきた
何か反応しなきゃいけないことはわかってる
でもやっぱりわたしの気持ちは未だに所在がわからなくて
頭の中で二宮さんが好きって言ってくれたことはずっと意識している
考えても考えても
今はやっぱり仕事しなきゃっていう気持ちになる
私には仕事がある
仕事しかないってこの4年間信じてきた
それにこのプロジェクトに参加して
もうすぐ2ヶ月が経とうとしている
このプロジェクトの一員として成功したいし、
結果を出すのに貢献したい
…二宮さんのことは、時間が経てば
きっと二宮さんも他の人でいいやって思うかもしれないし
無責任なことわかってるけど
いまは仕事にしか責任持てない