決断
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「…走ってきたの?」
肩でぜいぜい息をする私に、松潤は半笑いで問いかけた
「そう、会社…から、はぁー疲れたー」
「ゆっくりでいいのに」
松潤は笑っていた
松潤のオフィスはベンチャー企業の一般的なイメージ通り、比較的新しいオフィスビルをリノベーションして使用している
鮮やかなオフィス家具と斬新なインテリアは私たちの会社にはない自由な空間が演出されている
上層階のフロア2階分を松潤のいる会社が貸しきっていているらしく、松潤が案内してくれたリフレッシュスペースはフロアの隅っこにあった
大通りに面した窓からたくさんの人や車が行き来しているのが見えて都会の騒がしさが伝わってくる
「はい。アイスでいいっしょ」
「ありがと。フリードリンク?」
「そ。社長がさ、上質な豆は効率的なリラックスができるとかって高級豆が常備されてんの」
「いい環境だね」
さすが社長と距離が近い。私たちのような大きな会社にはないいい点だな
「…みんな帰ったの?」
「ああ、今日社長秘書の誕生日でさ、誕生会やるってみんなそっち行った」
「えっ、松潤行かなくて大丈夫?」
「もともと仕事入ってたし、もうすでにプレゼント渡したしいいかなって」
「さすが。デキル男は違いますね」
「だろ」
そう言って松潤は大きな笑顔を見せた
「…で?話しにきてくれたの?」
その松潤の一言で、心臓が音を変えた
少しだけ 息を吸って吐き出した
「松潤、あのね」
もう、目をそらさない
松潤をまっすぐ見つめる
「私、もう松潤に甘えない」
松潤も、まっすぐ私を見ていた
「いつも困ったとき助けてくれて、祐が亡くなったときも励ましてくれて、松潤のそばにいるのが自然なことだって思ったけど」
お互いの目線は交わったまま、そらさない
「流れに任せて答を出すなんて、甘えたことできない」
「…つまり?」
「つまり、私は…」
勇気を振り絞って言わなきゃ
「私は、松潤とは付き合えない」
松潤は小さな息を吐き出した
「どうせお前のことだから散々悩んで出した答えなんだろうけど」
コーヒーカップを持つ両手に目を落としたまま静かに放った言葉が、私の耳に届く
「やっと巡ってきたチャンスだったんだけどね」
胸が、ズキンとなる
4年間、私が祐から立ち直るのを待っててくれた
私が作った空白期間だ
「ごめん…ごめんなさい」
松潤は顔を上げて私を見た
いつもの松潤の顔に変わりはないけど
その目はどこか悲しみを映し出していた
「だから、謝るなって…」
「それから」
松潤の言葉を遮って、声を出す
ちゃんと伝えよう
「それから、ありがとう」
松潤は少し驚いた顔をしていたけど
ありがとうの言葉に軽く吹き出した
「よくできました」
その、笑顔に
不安で仕方なかった私の心は
緊張の糸が切れたようにほっとした
「本当に、本当にありがとう。たくさん支えてくれて、時間をかけてくれて、私の話を聞いてくれて、辛いときそばにいてくれて」
松潤は私を見つめたままだった
「心から感謝してます」
松潤はふっと笑った
「なんか感謝状でも出てきそうじゃん」
「感謝状なんかじゃ足りないよ」
「じゃ付き合ってよ」
「そ、それは…」
「冗談。あー、フラれた」
そう言って松潤は少し上を見上げた
松潤ならいい人いるよ、って思ってても
言えない
少しの沈黙が流れる
「…やっぱ二宮さん?」
「え?」
「いや、二宮さんと一緒に仕事するようになって名前変わったからさ」
「変わった…かな?」
「いや、なんつーか、二宮さんと仕事始めて吹っ切れたってのもあるっしょ?」
「うーん確かに二宮さんと仕事するようになって、環境が変わったかなぁ」
「ま、それもあるし、単純に二宮さんがお前に前向けって言ってるように見えるわ」
「そうかな…」
「やっぱ二宮さんがいいの?」
言葉に詰まる
「…よく、わからないというか」
「…こりゃ二宮さんも大変だ」
松潤はふっと笑った
「あ、思い出したんだけど」
「うん、なに?」
「祐の葬式の1週間くらいあと、名前倒れたの覚えてる?」
「うん、松潤病院に来てくれたよね」
「あの時名前を病院まで運んでいったの、二宮さんだよ」
「え?うそだ」
「俺、二宮さんと同じ支社だったじゃん?朝出社して、しばらくした頃二宮さんに病院来いって急かされてさ。俺も二宮さんと名前に接点あったの知らなくてさ」
「そんなことありえないよ。私、あの頃二宮さんと知り合ってなかったよ?それにあの時、松潤名乗らなかったって…」
「あんまり考えること増やしてほしくなかったしね」
「そっか…そうだったんだ」
二宮さん、今の職場で初対面だと思ってたけど
前から私のこと知ってたってこと?
そういえばあの倒れたときも井川、って呼ばれたっけ
…祐の昔からの知り合いだし、
祐を通じて私を知ってたのかな
「…言っとくけど、俺を振った罪はでかいからな」
「はい、知ってます」
「知らねーだろ。お前ほんと…やめとこ」
「なに?最後まで言ってよ」
「言ってやんねーよ。そうやって俺のことずっと考えといて」
「何それ」
たまらず、吹き出してしまう
「さ、メシいこーぜ。傷心の俺に奢ってもらわねーと」
「えっ、じゃあ付き合おうかな」
「そんな軽い女はゴメンだね」
「あっ私フラれた!松潤の奢り!」
松潤はばーか、と一言呟いた
「俺、別にお前のこと諦める訳じゃねーから。今回は一歩引いてやるだけ」
優しいなあ…
きっと、気まずくなるのを気遣って言ってくれているんだろうな
「あんだよその顔」
「何でもないよ」
「ニヤニヤしやがって」
松潤の手が私の頭に伸びてきて、軽く揺らされる
「ごめんごめん!」
「ほら、行くぞ」
先に歩き出した松潤を追いかける
正直、松潤を振った自分が許せないんじゃないかって怖くて怖くて仕方なかったけど
素直に伝えることができてよかった
松潤の優しさに
これまで私にくれた時間に
ありがとうって伝えられてよかった
肩でぜいぜい息をする私に、松潤は半笑いで問いかけた
「そう、会社…から、はぁー疲れたー」
「ゆっくりでいいのに」
松潤は笑っていた
松潤のオフィスはベンチャー企業の一般的なイメージ通り、比較的新しいオフィスビルをリノベーションして使用している
鮮やかなオフィス家具と斬新なインテリアは私たちの会社にはない自由な空間が演出されている
上層階のフロア2階分を松潤のいる会社が貸しきっていているらしく、松潤が案内してくれたリフレッシュスペースはフロアの隅っこにあった
大通りに面した窓からたくさんの人や車が行き来しているのが見えて都会の騒がしさが伝わってくる
「はい。アイスでいいっしょ」
「ありがと。フリードリンク?」
「そ。社長がさ、上質な豆は効率的なリラックスができるとかって高級豆が常備されてんの」
「いい環境だね」
さすが社長と距離が近い。私たちのような大きな会社にはないいい点だな
「…みんな帰ったの?」
「ああ、今日社長秘書の誕生日でさ、誕生会やるってみんなそっち行った」
「えっ、松潤行かなくて大丈夫?」
「もともと仕事入ってたし、もうすでにプレゼント渡したしいいかなって」
「さすが。デキル男は違いますね」
「だろ」
そう言って松潤は大きな笑顔を見せた
「…で?話しにきてくれたの?」
その松潤の一言で、心臓が音を変えた
少しだけ 息を吸って吐き出した
「松潤、あのね」
もう、目をそらさない
松潤をまっすぐ見つめる
「私、もう松潤に甘えない」
松潤も、まっすぐ私を見ていた
「いつも困ったとき助けてくれて、祐が亡くなったときも励ましてくれて、松潤のそばにいるのが自然なことだって思ったけど」
お互いの目線は交わったまま、そらさない
「流れに任せて答を出すなんて、甘えたことできない」
「…つまり?」
「つまり、私は…」
勇気を振り絞って言わなきゃ
「私は、松潤とは付き合えない」
松潤は小さな息を吐き出した
「どうせお前のことだから散々悩んで出した答えなんだろうけど」
コーヒーカップを持つ両手に目を落としたまま静かに放った言葉が、私の耳に届く
「やっと巡ってきたチャンスだったんだけどね」
胸が、ズキンとなる
4年間、私が祐から立ち直るのを待っててくれた
私が作った空白期間だ
「ごめん…ごめんなさい」
松潤は顔を上げて私を見た
いつもの松潤の顔に変わりはないけど
その目はどこか悲しみを映し出していた
「だから、謝るなって…」
「それから」
松潤の言葉を遮って、声を出す
ちゃんと伝えよう
「それから、ありがとう」
松潤は少し驚いた顔をしていたけど
ありがとうの言葉に軽く吹き出した
「よくできました」
その、笑顔に
不安で仕方なかった私の心は
緊張の糸が切れたようにほっとした
「本当に、本当にありがとう。たくさん支えてくれて、時間をかけてくれて、私の話を聞いてくれて、辛いときそばにいてくれて」
松潤は私を見つめたままだった
「心から感謝してます」
松潤はふっと笑った
「なんか感謝状でも出てきそうじゃん」
「感謝状なんかじゃ足りないよ」
「じゃ付き合ってよ」
「そ、それは…」
「冗談。あー、フラれた」
そう言って松潤は少し上を見上げた
松潤ならいい人いるよ、って思ってても
言えない
少しの沈黙が流れる
「…やっぱ二宮さん?」
「え?」
「いや、二宮さんと一緒に仕事するようになって名前変わったからさ」
「変わった…かな?」
「いや、なんつーか、二宮さんと仕事始めて吹っ切れたってのもあるっしょ?」
「うーん確かに二宮さんと仕事するようになって、環境が変わったかなぁ」
「ま、それもあるし、単純に二宮さんがお前に前向けって言ってるように見えるわ」
「そうかな…」
「やっぱ二宮さんがいいの?」
言葉に詰まる
「…よく、わからないというか」
「…こりゃ二宮さんも大変だ」
松潤はふっと笑った
「あ、思い出したんだけど」
「うん、なに?」
「祐の葬式の1週間くらいあと、名前倒れたの覚えてる?」
「うん、松潤病院に来てくれたよね」
「あの時名前を病院まで運んでいったの、二宮さんだよ」
「え?うそだ」
「俺、二宮さんと同じ支社だったじゃん?朝出社して、しばらくした頃二宮さんに病院来いって急かされてさ。俺も二宮さんと名前に接点あったの知らなくてさ」
「そんなことありえないよ。私、あの頃二宮さんと知り合ってなかったよ?それにあの時、松潤名乗らなかったって…」
「あんまり考えること増やしてほしくなかったしね」
「そっか…そうだったんだ」
二宮さん、今の職場で初対面だと思ってたけど
前から私のこと知ってたってこと?
そういえばあの倒れたときも井川、って呼ばれたっけ
…祐の昔からの知り合いだし、
祐を通じて私を知ってたのかな
「…言っとくけど、俺を振った罪はでかいからな」
「はい、知ってます」
「知らねーだろ。お前ほんと…やめとこ」
「なに?最後まで言ってよ」
「言ってやんねーよ。そうやって俺のことずっと考えといて」
「何それ」
たまらず、吹き出してしまう
「さ、メシいこーぜ。傷心の俺に奢ってもらわねーと」
「えっ、じゃあ付き合おうかな」
「そんな軽い女はゴメンだね」
「あっ私フラれた!松潤の奢り!」
松潤はばーか、と一言呟いた
「俺、別にお前のこと諦める訳じゃねーから。今回は一歩引いてやるだけ」
優しいなあ…
きっと、気まずくなるのを気遣って言ってくれているんだろうな
「あんだよその顔」
「何でもないよ」
「ニヤニヤしやがって」
松潤の手が私の頭に伸びてきて、軽く揺らされる
「ごめんごめん!」
「ほら、行くぞ」
先に歩き出した松潤を追いかける
正直、松潤を振った自分が許せないんじゃないかって怖くて怖くて仕方なかったけど
素直に伝えることができてよかった
松潤の優しさに
これまで私にくれた時間に
ありがとうって伝えられてよかった