決断
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「おはよ」
「…おはようございます」
「何ふてくされてんの?」
月曜日の朝、二宮さんが出社してきた。
なんとなく、顔を見れない。
「あ、昨日のこと?」
二宮さんが続けて質問してくる
昨日…二宮さんは松潤の前で確かに誤解を生むようなことを言った
答えないでいると、下を向いてくくくっと笑った
「で、いつ引っ越してくんの?」
「…引っ越しません。松潤、二宮さんの発言で誤解してました」
「事実しか言ってませんけどね?」
ダメだ。きっとずっとこの調子なんだろうな
「ニノ、おはよ!」
相葉さんが元気な声で二宮さんに近寄る
「…朝から元気そうで」
二宮さんは呆れた声で言う
「なんだよ!もう朝だけど?!ねーこのあとの研修さ、ニノと同じグループだったよ!」
そうだ。二宮さんと相葉さんの年次の人は、チームリーダー研修を受けるタイミングだ
今後の管理職へのステップアップを見込んで、グループワークやフレームワークをする研修で
終日だから大変だろうな
「足引っ張らないでくださいよ。朝礼終わったらエレベーター前ね」
相葉さんは「なんだよそれ!あ、井川ちゃん、またね!」と言って去っていった
そのまま終業時間を過ぎ18:30をまわる頃、二宮さんは研修から戻ってきた
「はー疲れた」
「お疲れ様です、研修どうでした?」
「相葉さんのぶっ飛んだ考えに付いていくの必死で疲れた」
「斬新な考え、ですね」
「いや、違うけどそうっつーか…」
背もたれに体を倒し、上を向いたままごにょごにょ言っている
余ほどお疲れなんだろうな
「で?井川は残業なの?」
「はい。新体制のリソース配分の考え方の資料作っておこうかと」
「それ、来週じゃん。仕事熱心だこと」
「…いえ、勉強のために早めにやっておこうかと」
本当は19:00に松潤の約束あるから、時間があったっていう理由もあるけど
「で?松潤のイケメンとはどうなったの?」
二宮さんは上を向いたまま呟く
「…この間、二宮さんのお気持ち聞いたんですが、私、松潤の気持ちに応えようかと思ってます」
二宮さんは無言のまま、動かない
「せっかく、二宮さんのお気持ちをいただいたのですが、その、お気持ちはありがたく受け取って…」
「固い」
「え?」
二宮さんは怪訝そうな顔をこちらに向ける
「固いのよ。もっとシンプルなものでしょうが。好きか、好きじゃないか。それだけでしょうよ」
好きか、好きじゃないか、
シンプルなもの…
「好きなの?あのイケメン」
好きだと思います、と口にしようとしたものの、言葉がでなかった
「なんで?なんで付き合うの?」
「…これまでずっと支えてもらったのもあって、純粋に、松潤の気持ちに応えたいな、と」
二宮さんははぁ、と大きなため息をついた
「あのね、アナタ恋愛はギブアンドテイクで決めるもんじゃないのよ」
二宮さんは諭すように続ける
「いいんじゃない?好きか、好きとは言えないのか、それだけで」
二宮さんの言葉の意味を考える
たぶん、きっとわかってた
祐と付き合うときだって、好きで付き合い始めた
好きだって実感できたから
でも恋愛から遠のいて、たくさんの時間が過ぎて
恋愛なんて蓋をして
自分の気持ちなんてどっかに置いてきたまま
見て見ぬふりしようとしてた
答えとかないから
何が正解かわかんないから
恋愛って自分の気持ちに向き合わなきゃいけないのが面倒だから
だから
だから松潤の気持ちに応えるのが自然な流れだって
どこかで思い込もうとしてた
わかってた
本当は
私の気持ちは
松潤の気持ちに応えよう、って必死だったこと
松潤を好きじゃないって理由が見当たらなくて、イコール好きってことにしようって思い込んでたこと
松潤の期待を裏切った自分を見たくないって思ってたこと
あんなに支えてくれたから
松潤いなかったら立ち直ってなかったかもしれないから
「…俺だったらね?」
下を向いて考え込む私に、二宮さんは問いかける
「俺がアイツだったら、そんな同情で付き合ってもらいたくはないね」
「同情だなんて、そんな…」
「好きだっていう事実があるかないか。それだけですよ。アイツのためを思って付き合おうなんて思ってるかもしれないけど、実態のない決断をすることが、間違ってるってこと」
ストレートに、突かれた気がした
「お前はただ可哀想なアイツを見たくないだけ。アイツ傷つける自分になりたくないだけ。でしょ?」
二宮さんは正しい
ずっともやもやしてた
これでいいんだよねって、誰かに答を求めてたんだ
でもそれは 間違ってる
このブレブレの、実態のない、薄っぺらい私の決断に
二宮さんが自分を見失うなって言ってくれている気がした
「私…松潤のところに行ってきます」
二宮さんは少しビックリした顔をして、
口を閉じたまま少し笑って手を振った
「行ってらっしゃい」
二宮さんに深く頭を下げて、荷物を急いでまとめる
「また、お礼させてください!」
「はいよー」
バッグを握りしめて、「お先に失礼します」と早口で伝えて、フロアを出る
腕時計を見ると 18:40を少し過ぎていた
このまま、走ろう
松潤のオフィスまで15分だ
もう迷わないし、もう逃げない
そのまま大都会の夜の中を走っていった
「…おはようございます」
「何ふてくされてんの?」
月曜日の朝、二宮さんが出社してきた。
なんとなく、顔を見れない。
「あ、昨日のこと?」
二宮さんが続けて質問してくる
昨日…二宮さんは松潤の前で確かに誤解を生むようなことを言った
答えないでいると、下を向いてくくくっと笑った
「で、いつ引っ越してくんの?」
「…引っ越しません。松潤、二宮さんの発言で誤解してました」
「事実しか言ってませんけどね?」
ダメだ。きっとずっとこの調子なんだろうな
「ニノ、おはよ!」
相葉さんが元気な声で二宮さんに近寄る
「…朝から元気そうで」
二宮さんは呆れた声で言う
「なんだよ!もう朝だけど?!ねーこのあとの研修さ、ニノと同じグループだったよ!」
そうだ。二宮さんと相葉さんの年次の人は、チームリーダー研修を受けるタイミングだ
今後の管理職へのステップアップを見込んで、グループワークやフレームワークをする研修で
終日だから大変だろうな
「足引っ張らないでくださいよ。朝礼終わったらエレベーター前ね」
相葉さんは「なんだよそれ!あ、井川ちゃん、またね!」と言って去っていった
そのまま終業時間を過ぎ18:30をまわる頃、二宮さんは研修から戻ってきた
「はー疲れた」
「お疲れ様です、研修どうでした?」
「相葉さんのぶっ飛んだ考えに付いていくの必死で疲れた」
「斬新な考え、ですね」
「いや、違うけどそうっつーか…」
背もたれに体を倒し、上を向いたままごにょごにょ言っている
余ほどお疲れなんだろうな
「で?井川は残業なの?」
「はい。新体制のリソース配分の考え方の資料作っておこうかと」
「それ、来週じゃん。仕事熱心だこと」
「…いえ、勉強のために早めにやっておこうかと」
本当は19:00に松潤の約束あるから、時間があったっていう理由もあるけど
「で?松潤のイケメンとはどうなったの?」
二宮さんは上を向いたまま呟く
「…この間、二宮さんのお気持ち聞いたんですが、私、松潤の気持ちに応えようかと思ってます」
二宮さんは無言のまま、動かない
「せっかく、二宮さんのお気持ちをいただいたのですが、その、お気持ちはありがたく受け取って…」
「固い」
「え?」
二宮さんは怪訝そうな顔をこちらに向ける
「固いのよ。もっとシンプルなものでしょうが。好きか、好きじゃないか。それだけでしょうよ」
好きか、好きじゃないか、
シンプルなもの…
「好きなの?あのイケメン」
好きだと思います、と口にしようとしたものの、言葉がでなかった
「なんで?なんで付き合うの?」
「…これまでずっと支えてもらったのもあって、純粋に、松潤の気持ちに応えたいな、と」
二宮さんははぁ、と大きなため息をついた
「あのね、アナタ恋愛はギブアンドテイクで決めるもんじゃないのよ」
二宮さんは諭すように続ける
「いいんじゃない?好きか、好きとは言えないのか、それだけで」
二宮さんの言葉の意味を考える
たぶん、きっとわかってた
祐と付き合うときだって、好きで付き合い始めた
好きだって実感できたから
でも恋愛から遠のいて、たくさんの時間が過ぎて
恋愛なんて蓋をして
自分の気持ちなんてどっかに置いてきたまま
見て見ぬふりしようとしてた
答えとかないから
何が正解かわかんないから
恋愛って自分の気持ちに向き合わなきゃいけないのが面倒だから
だから
だから松潤の気持ちに応えるのが自然な流れだって
どこかで思い込もうとしてた
わかってた
本当は
私の気持ちは
松潤の気持ちに応えよう、って必死だったこと
松潤を好きじゃないって理由が見当たらなくて、イコール好きってことにしようって思い込んでたこと
松潤の期待を裏切った自分を見たくないって思ってたこと
あんなに支えてくれたから
松潤いなかったら立ち直ってなかったかもしれないから
「…俺だったらね?」
下を向いて考え込む私に、二宮さんは問いかける
「俺がアイツだったら、そんな同情で付き合ってもらいたくはないね」
「同情だなんて、そんな…」
「好きだっていう事実があるかないか。それだけですよ。アイツのためを思って付き合おうなんて思ってるかもしれないけど、実態のない決断をすることが、間違ってるってこと」
ストレートに、突かれた気がした
「お前はただ可哀想なアイツを見たくないだけ。アイツ傷つける自分になりたくないだけ。でしょ?」
二宮さんは正しい
ずっともやもやしてた
これでいいんだよねって、誰かに答を求めてたんだ
でもそれは 間違ってる
このブレブレの、実態のない、薄っぺらい私の決断に
二宮さんが自分を見失うなって言ってくれている気がした
「私…松潤のところに行ってきます」
二宮さんは少しビックリした顔をして、
口を閉じたまま少し笑って手を振った
「行ってらっしゃい」
二宮さんに深く頭を下げて、荷物を急いでまとめる
「また、お礼させてください!」
「はいよー」
バッグを握りしめて、「お先に失礼します」と早口で伝えて、フロアを出る
腕時計を見ると 18:40を少し過ぎていた
このまま、走ろう
松潤のオフィスまで15分だ
もう迷わないし、もう逃げない
そのまま大都会の夜の中を走っていった