a crossing point
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森屋さんが落ち着くのを待って、二宮さんと自席に戻る
今回の件は誰にも報告せず、内密にしておくことを約束した
そしてもう1つ
二宮さんと森屋さんはまた一緒に仕事をするということも
「…森屋さんから聞きました。二宮さん、森屋さんのことパワハラ被害から救ったんですね」
「あー、そんなこともあったねぇ」
「…なんで助けたんですか?」
「え?だってみんな楽しく仕事したいでしょ?イヤだよそんなピリピリした中で仕事すんの」
二宮さんはオフィスチェアに座って、手を頭の後ろに組んで背もたれが倒れるほど仰け反る
定時を過ぎて外は暗くなり始め、フロアの人はみんな帰って私たち以外誰もいない
「…そういえば森屋さんのことタイプって言ってましたよね」
「ああ、あれね、嘘」
「うそ?!なんで嘘ついたんですか」
「お前の反応見たかったから」
二宮さんがこちらの反応をうかがうように見る
「…そうやって私で遊ぶのやめてください」
自分の気持ちが定まらないのに反応を見て遊ばれても困る。
あのときのキスも私の反応を見て楽しみたかったのかな、なんて考えてしまう
「…森屋さん、真っ直ぐでしたね」
「何が」
「その、二宮さんへの思いが」
「だからと言って何でもやっていい訳じゃないですからね」
「それはそうですけど…」
「お前は?」
「何がですか?」
「あのとき、俺のことどう思ってんのかって聞かれて、なんて答えようとしたの?」
二宮さんは手を頭の後ろに組んだまま
オフィスチェアに体を預けてこっちを見ている
「…聞いてたんですか?」
「まあね」
どんな風にって…あのときも詰まってしまったし、
今ここで不意にそんなこと聞かれるなんて思ってもいなくてフリーズしてしまう
「で、俺のことどう思ってんの?」
「どうって、厳しいけど優しくて仕事ができる先輩だと思ってます」
「それだけなわけないでしょーよ。他には?」
「き、今日は助けてくれてありがとうございましたと思ってます」
「ふーん。あとは?」
「あとは…?」
核心に触れられそうで、怖い
言葉に詰まっていると二宮さんが口を開く
「俺はさ、井川のこと好きだよ」
「え…?」
不意打ちの好きということばに
またフリーズしてしまった
いま、二宮さんに告白されてるよね?
「だから、ワタシはアナタが好き。そしてアナタがワタシのことどう思ってるかを知りたいんですよ」
「恋愛対象として、ですか」
「そ。仕事相手じゃなくてさ」
例えば、機嫌を損ねたくなくて好きなんて言ったら、嘘だって見透かされる
でも二宮さんのことを考えると
中途半端な気持ちがあるし
好きじゃないなんて言うのは嘘になる気がする
自分に、嘘はつけない
ただ、まだ新しい恋愛への一歩を踏み出すのが怖い
それだけは事実だ
「…どう思ってるんでしょうか」
「…は?」
「いや、だからその…私、二宮さんのことどう思ってるんでしょう…?」
二宮さんがキョトンした顔をして、笑いだした
「ぶはははっ!!ちょ、タイムタイム!!」
二宮さんはお腹を抱えて笑っている
「いやいやそういうコーナーじゃないんですよ、なんで質問に質問で返すかな~」
「か、からかわないでください!」
「もう小学生と話してるかと思ったわ」
こんなに笑われるとは思わず、恥ずかしくなる。
でも嘘はつけないし、正直でありたかった。
「わかった。じゃあさ、これから一緒に考えよ。いや、わかってたのよ。本当はアナタまだ恋愛できるステージにいないんでしょ?じゃ探すしかないよね。答えをさ」
「…はい、そうだと思います」
「じゃ答えが出るまでお付き合いしましょ。ワタシにできる唯一のことだしね」
「…ん?どういう意味ですか?」
二宮さんは意味深な笑顔を見せた
「…そのうち、わかるから」
その笑顔は少し寂しそうにも見えた
「お前の答えが出るまで、俺はお前を諦めないよ」
二宮さん どうしてそんなこと言うんだろう
私にどうして好意を抱いてくれるのだろう
そもそも私たちはほんの少し前から一緒に仕事を始めただけで
最初は私へのあたりもひどくて
祐っていう共通点はあるものの
二宮さんが、私のこと好きだったなんて
考えてられない…はず
でもあの日 キスをした
そしていま 私を好きだって言ってる
不思議な展開に頭がついていかなくてよくわからない。
いろんな考えが頭の中でぐるぐるする
「その…私じゃなくてもいいんじゃないでしょうか…答えが出るまで付き合うなんて時間がもったいないです」
「俺の時間であって、アナタの時間ではない。決めたことだから、いいの」
どうして、そこまでしてくれるんだろう
二宮さんは不思議な人だ
「さっ、帰ろ。腹へったー。ハンバーグね」
「えっ、ちょっ…」
二宮さんは鞄を持って席を立ち、スタスタと歩き始めた
「あ、待ってください!」
急いで荷物をまとめて、鞄を持つ
小走りで出入口まで向かうと、二宮さんが待っていてくれた
「遅い。おごり決定」
「いやいやそこは先輩の二宮さんが…」
どっちがハンバーグ代を出すか、を決めながらフロアを出る。
他愛もない話をしながら、ふと思う
いま私を待っていてくれたように
大事なところで二宮さんは私の進むべき道を指し示してくれるのかもしれない
私の手を引いて
時に背中を押して
守ってくれて
困ったときは助けてくれて
二宮さんが 心に入り込んでいるのがわかる
二宮さん、中途半端でごめんなさい
今すぐ返事できなくてごめんなさい
好きだって実感できる気がする日が来るかもしれないけど
過去のせいになんてしたくないけど
まだ一歩を踏み出すのが怖い