別れと出会い
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結局飲み会は終電まで続き、大いに盛り上がった。
ただ、二宮さんとの距離は縮まらず、
これといった会話もなくおわった。
そして、週が明けて月曜日
「井川、ここの分析なんだけど」
「あ、はいっ」
上司である櫻井課長に呼ばれる。
櫻井課長は憧れの人だ。
もちろんビジネス上で、という意味だけど。
いくつもの商品を展開する家電メーカーである私たちの会社は、とても規模が大きくて
全国に支社があるし組織構造も複雑だ。
その中で実績を残し、思い描くキャリアステップをこなすことは
ごく限られた人にしか叶えられないと思っている。
そしてこの櫻井課長は、誰もが羨むキャリアを歩んでいる。
そのうえイケメン、独身というわけで
何かと有名な人でいろいろすごい。
「このシミュレーションはよくできてると思う。これなら部長も納得する」
「はい」
「ただ、話の流れとして販売戦略の前に
過去実績をもう少し足してほしい。
今の現状に至るまでに過去5年間の組織のあり方がどう影響してるか示してほしい」
「はい」
「期待してるから」
「は、はい」
「なに?不安?」
厳しい表情から一転、優しい笑顔を見せてくれる。
「はい、これ、このままいけば経営会議資料になるんですよね?」
「そうそう。でもそこに行き着くまで、俺も部長もちゃんとチェックしてフォローするから安心しなよ」
「ありがとうございます」
とは言え大きな仕事だ。
支店じゃ味わえない。
不安を感じる私を感じ取ったのか、櫻井課長がふっと笑う。
「そんな肩肘張らなくて大丈夫だよ。これはチャンスなんだから。お前ならできる。終わったら飲みに行こうぜ」
課長の明るさで、前向きになれる。
がんばるしかないか。
「はい、がんばります」
「あ、そうそう井川、来週ちょっと面談していい?」
「はい、わかりました。」
「またスケジュール入れとくから見といて。」
「はい、失礼します。」
自席に戻ってふと疑問に思う。
なんの面談だろう?
なんとなく疑問に思いながらも、
仕事を再開すると、後ろの席の同期が声をかけてくる。
「ねえねえ、名前」
「ん?」
「櫻井課長と何の面談するの?」
「それがわからないんだよ。
なに話すんだろうね?」
「あんなイケメンに気にかけてもらえるとは…人生の運全部使ったんじゃない?」
ニヤニヤしながらつつかれる。
「失礼な。私の人生まだまだこれからなんですけど」
「いやー、そろそろあんたも身の振り方考えたら?せっかく美人なのにずっと彼氏作ってないでしょ。難アリ物件確定ですね。あちゃー。こりゃ課長にもらってもらうしかないっしょ」
「それ、誉めてんの?イヤミなの?
それに課長だって選ぶ権利あるよ」
はいはいごめんなさーいと笑いながら同期は席に戻った。
確かにかっこいいわ仕事できるわ神的な人格者だけど
今は仕事。
小さくため息をついて、パソコンに向き合った。
もうこんな時間か…
伸びをしながら時計を見る。
結局今日は残業して区切りのいいところまで仕事を進めるつもりだったけど、もうすぐ21:00だ。
そろそろ終わろうかな…
デスクを片付け、帰り支度をする。
フロアにはもう1人いるようだけど、
その人も帰り支度をしているようだ。
カバンを持って出口の扉に向かう。
そこで見えた。あと1人は二宮さんだ。
「あ、お疲れ様です。
昨日はありがとうございました」
「…どーも、お疲れさん」
フロアの電気を消して、エレベーターホールに出る。
エレベーターを待つ間の静けさが、すごく気まずい。
かと言って話題もなく。
そう考えてるうちに、エレベーターが到着した。
残念ながら先客はおらず、2人きりで乗り込む。
フロアを出る最終退出者は、守衛室に報告に行ことになっていることを思い出した。
「あの、守衛室は私が寄って行きますね」
「ども…」
やっと話しかけたものの、やはりぶっきらぼうで冷たい反応だった。
チラリと横を見ると、エレベーターの表示階を見上げていた。
それはきれいな横顔で、通った鼻筋とクールな目元がよりその雰囲気を際立てている。
でも、その表情はどこか大きな穴を見つめているようで。
寂し気にも見える。
無意識に見つめていると、二宮さんがチラリとこちらを見て慌てて目をそらす。
「ねぇ」
「はい」
「お前、根性あんの?」
「え?根性ですか?
…人並みだと思いますけど」
「途中で投げ出さない?」
「そういうタイプではないと思うのですが…そもそも何がですか?」
「ふーん」
二宮さんはニヤリと笑った。
どうやら会話が噛み合わないことは理解した。
その意味をもう少し聞きたかったところで、
エレベーターは1階に着いた。
「お疲れ」
エレベーターを出るとき、背中越しに右手をあげてそのまま帰っていった。
「あの、」と声をかけたところで振り返りもせず歩いて行った。
何だったんだろう…
何を聞きたかったんだろう…
もやもやする。
ただ、二宮さんとの距離は縮まらず、
これといった会話もなくおわった。
そして、週が明けて月曜日
「井川、ここの分析なんだけど」
「あ、はいっ」
上司である櫻井課長に呼ばれる。
櫻井課長は憧れの人だ。
もちろんビジネス上で、という意味だけど。
いくつもの商品を展開する家電メーカーである私たちの会社は、とても規模が大きくて
全国に支社があるし組織構造も複雑だ。
その中で実績を残し、思い描くキャリアステップをこなすことは
ごく限られた人にしか叶えられないと思っている。
そしてこの櫻井課長は、誰もが羨むキャリアを歩んでいる。
そのうえイケメン、独身というわけで
何かと有名な人でいろいろすごい。
「このシミュレーションはよくできてると思う。これなら部長も納得する」
「はい」
「ただ、話の流れとして販売戦略の前に
過去実績をもう少し足してほしい。
今の現状に至るまでに過去5年間の組織のあり方がどう影響してるか示してほしい」
「はい」
「期待してるから」
「は、はい」
「なに?不安?」
厳しい表情から一転、優しい笑顔を見せてくれる。
「はい、これ、このままいけば経営会議資料になるんですよね?」
「そうそう。でもそこに行き着くまで、俺も部長もちゃんとチェックしてフォローするから安心しなよ」
「ありがとうございます」
とは言え大きな仕事だ。
支店じゃ味わえない。
不安を感じる私を感じ取ったのか、櫻井課長がふっと笑う。
「そんな肩肘張らなくて大丈夫だよ。これはチャンスなんだから。お前ならできる。終わったら飲みに行こうぜ」
課長の明るさで、前向きになれる。
がんばるしかないか。
「はい、がんばります」
「あ、そうそう井川、来週ちょっと面談していい?」
「はい、わかりました。」
「またスケジュール入れとくから見といて。」
「はい、失礼します。」
自席に戻ってふと疑問に思う。
なんの面談だろう?
なんとなく疑問に思いながらも、
仕事を再開すると、後ろの席の同期が声をかけてくる。
「ねえねえ、名前」
「ん?」
「櫻井課長と何の面談するの?」
「それがわからないんだよ。
なに話すんだろうね?」
「あんなイケメンに気にかけてもらえるとは…人生の運全部使ったんじゃない?」
ニヤニヤしながらつつかれる。
「失礼な。私の人生まだまだこれからなんですけど」
「いやー、そろそろあんたも身の振り方考えたら?せっかく美人なのにずっと彼氏作ってないでしょ。難アリ物件確定ですね。あちゃー。こりゃ課長にもらってもらうしかないっしょ」
「それ、誉めてんの?イヤミなの?
それに課長だって選ぶ権利あるよ」
はいはいごめんなさーいと笑いながら同期は席に戻った。
確かにかっこいいわ仕事できるわ神的な人格者だけど
今は仕事。
小さくため息をついて、パソコンに向き合った。
もうこんな時間か…
伸びをしながら時計を見る。
結局今日は残業して区切りのいいところまで仕事を進めるつもりだったけど、もうすぐ21:00だ。
そろそろ終わろうかな…
デスクを片付け、帰り支度をする。
フロアにはもう1人いるようだけど、
その人も帰り支度をしているようだ。
カバンを持って出口の扉に向かう。
そこで見えた。あと1人は二宮さんだ。
「あ、お疲れ様です。
昨日はありがとうございました」
「…どーも、お疲れさん」
フロアの電気を消して、エレベーターホールに出る。
エレベーターを待つ間の静けさが、すごく気まずい。
かと言って話題もなく。
そう考えてるうちに、エレベーターが到着した。
残念ながら先客はおらず、2人きりで乗り込む。
フロアを出る最終退出者は、守衛室に報告に行ことになっていることを思い出した。
「あの、守衛室は私が寄って行きますね」
「ども…」
やっと話しかけたものの、やはりぶっきらぼうで冷たい反応だった。
チラリと横を見ると、エレベーターの表示階を見上げていた。
それはきれいな横顔で、通った鼻筋とクールな目元がよりその雰囲気を際立てている。
でも、その表情はどこか大きな穴を見つめているようで。
寂し気にも見える。
無意識に見つめていると、二宮さんがチラリとこちらを見て慌てて目をそらす。
「ねぇ」
「はい」
「お前、根性あんの?」
「え?根性ですか?
…人並みだと思いますけど」
「途中で投げ出さない?」
「そういうタイプではないと思うのですが…そもそも何がですか?」
「ふーん」
二宮さんはニヤリと笑った。
どうやら会話が噛み合わないことは理解した。
その意味をもう少し聞きたかったところで、
エレベーターは1階に着いた。
「お疲れ」
エレベーターを出るとき、背中越しに右手をあげてそのまま帰っていった。
「あの、」と声をかけたところで振り返りもせず歩いて行った。
何だったんだろう…
何を聞きたかったんだろう…
もやもやする。