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「お先に失礼します」
通勤バッグを肩にかけて、同じチームの人たちに声をかけて席をたつ。
あの会議のあと、二宮さんは外出でそのまま直帰予定になっていた。
やっぱり今日の失敗は失敗だし、部長や櫻井課長や二宮さんに迷惑をかけたことは変わらない。
落ち込むなー…
櫻井課長ともあの後顔を合わせてないし、気まずいな
エレベーターのボタンを押して到着を待つ。
気分が落ち込んでいると、不思議と自然に下を向いてしまう。
気持ち切り替えられない。
エレベーターが到着して、足を踏み出したときだった。
「お、井川。帰るの?」
聞き覚えのある声に慌てて顔を上げると、櫻井課長がいた。
「あ、はい、お疲れ様です」
「気をつけてな」
「はい。…あの、今日は本当にすみませんでした」
とにかく迷惑をかけたことをもう一度お詫びしたくて、少し早口で言葉が出てくる
櫻井課長は少し驚いて、優しく笑った
「いや、俺こそごめんな。ちょっとピリピリしてた。井川に期待してるからこそ、厳しくあたってしまった」
「いえ、ご迷惑をおかけしたことには変わりないので」
「俺もカバーできなくて悪かったよ。
また明日からがんばろう」
「はい」
「じゃ、お疲れ様」と言って課長はフロアに戻った。
課長に許してもらえてよかった。
次こそ期待に応えよう。
肩にかけたバッグを握りしめて、エレベーターに乗った
その後会社を出たものの、なんとなく家に帰る気がしなくて会社の近くをぶらぶらと歩いていた。
失敗、引きずってるな
車も人の通りも多くて、都会の騒がしさが落ち込んだ気持ちを少し和らげてくれるかな、なんて期待してしまう
この大都会で私は
ちっぽけな人間なんだ
そのちっぽけな人間の失敗なんて、ちっぽけすぎてかわいいもんだ
そう考えると、少し楽になる
そろそろ帰ろうかな、と思い始めると
スマホが震えた
松潤からの着信だ。
あの告白された日以来、松潤と連絡をとってなくて少しドキドキする
「もしもし」
『あ、名前?お疲れ』
「お疲れ様。どうしたの?」
『声、聞きたくてさ』
その一言にどきっとする
『…なんてね。恋人っぽかったっしょ?』
…なんだ、びっくりする
「もう、びっくりするじゃん」
『ごめんって。面白そうだったから』
電話の向こうから、楽しそうにはしゃぐ声が聞こえる
「で?どうしたの」
『あ、物件探しの件なんだけど』
「ああ!ありがとう」
『今週の日曜空いてる?内覧できるところもいくつかあって』
「うん、空いてる」
会社の車が使えるから自宅の最寄り駅まで迎えにきてくれること、お昼過ぎに待ち合わせることを話した。
『おっけ。じゃ日曜に』
「うん、忙しいのにありがとね」
『ぜんぜん。…それよりさ、何かあった?
声、元気なくね?』
話そうか迷った。
今日の会社での失敗
「…そうかな?いつも通りだよ」
『わっかりやっす。今どこにいんの?』
「会社の近くだよ」
『ふーん。待ってて。まだ仕事中だからあんま時間取れないけど行くわ』
「えっ、いやいいよそろそろ帰るから」
『ばーか。そんな落ち込んだ声してんのにほっとけるわけないじゃん』
「松潤…」
『本社の近くのスタバ行ける?そこで待ってて。また連絡するから』
「…ありがとう」
電話は切れた。
いつもそうだ。
松潤は私の気持ちの浮き沈みを敏感に感じ取ってはすぐに寄り添ってくれた
松潤は優しい。
勢いがあるから、根底にある優しさを見抜けない人は悪く言うこともあるけど
すべてが良くなるように、って緻密にかつ合理的に考えた上での行動力はいつも脱帽だった
それから15分くらいで松潤に会えた。
転職先は実は近くて、すぐに来れる距離だった
最近はいつも週末に会っていたのもあって、久々に見るスーツ姿にドキッとした
「お待たせ。」
「ううん、すぐ来るかなと思ってコーヒー買っておいたけど、ブラックでよかったかな」
「おっ。あざーす。ブラック正解」
松潤はコーヒーに口をつけた。
「…で?どうしたの?何があったの」
「うん、今日ね…」
今日の一連の出来事を松潤に話す。
途中でうんそれで?とかまじ?とか
相槌を交ぜて話を聞いてくれて、少しずつ気が楽になってきた。
来たはずの来客がいなくて、櫻井課長に咎められたところまで話すと松潤が口を開いた
「…なんかのドラマみたいだな、その展開」
「うん、よくできた台本だね」
「考えたヤツ天才だな」
「そう、森屋さん…すごいね」
「で、なんでその森屋ってヤツがお前に嫌がらせすんの?」
「…私は本当に森屋さんなのか判断がつかないけど…もし本当に森屋さんが仕組んだんだとしたら、二宮さんと一緒に仕事してる私が気にくわないのかな」
「何それ」
「森屋さん、二宮さんのこと狙ってるらしいからなぁ」
「マジでドラマみたい」
「うん、私は仕事を全うしたいだけなのになぁ…」
そう呟くと、松潤がふっと笑った
「名前のさ、そうやって仕事に対して真面目にがんばるのはいいとこだと思うけど」
松潤の優しい目が私を捕らえる
「がんばりすぎ。ちょっと肩の力抜いてみ?」
「…うん」
温かくて優しい口調が私の心を溶かしていく。
「みんな知ってるよ。名前がずるをすることもなく、真面目に結果が出せるようにがんばる奴だって。お前が普通にしてればその森屋ってヤツには負けるわけないっしょ」
「普通、でいいのかな」
「そ。名前らしくいればいいんじゃねーの?」
コーヒーを口に当てたまま、満面の笑みで私を見た。
松潤の言葉で、少しスッキリした。
息を吸って、吐き出すと
気持ちが楽になった。
「…うん、ありがとう。森屋さんが何をどう考えてるかわかんないけど、自然体でいることにするよ」
「そうそう。意識しない、無理しない」
松潤は指を折って数える仕草を始めた
「いつも通りがんばる、俺のこと考える」
最後のひとつに思わず吹き出す
「これで全部うまくいくわ、よかったな!」
今日一番の笑顔を見せる
その営業スマイルにまた笑いが込み上げる
「うん、うまくいく気がして仕方ない」
「だろ?あー走ってきたかいあった」
いつの間にか、さっきまでの落ち込んだ暗い気持ちを感じなくなっていた
「…いつもありがとう、松潤」
「いーえ。ご用命であればいつでも」
その笑顔が、ほっとさせてくれる。
「じゃ、そろそろ戻るわ」
「うん、私も出るよ」
そのまま2人で店を出る。初夏に向けて暖かさを増した風を感じる。
「じゃ、また日曜に」
「うん。忙しいのに本当にありがとう」
「気にすんなって。気を付けて帰れよ」
「はーい」
じゃあね、と声をかけようとしたとき、
松潤が口を開く。
「それと、あの話の件、また聞かせて」
口元は笑ってるけど、目が真剣だ
さっきまでの笑顔とはまったく違う表情に、胸が締め付けられる
「…うん、時間、もらっててごめんね?
ちゃんと、返事します」
「はいよ。立ち直ってからな」
「松潤のおかげで立ち直れたよ。ありがと」
「そりゃよかった。」
松潤は名残惜しそうに「じゃあな」と言って都会の波に消えていった
笑顔で見送って、立ち止まったまま考える
松潤が彼氏だったら。
きっと今日みたいに、落ち込む度支えてくれる。
仕事への姿勢も尊敬できる。
笑わせてくれる。
いいところしか思い付かない
何一つ文句ない
なのになんで、本当にいいのかなって引き留められる気持ちがあるんだろう
二宮さんが頭を過るから?
…やっぱり、もう少し時間をかけて考えよう
通勤バッグを肩にかけて、同じチームの人たちに声をかけて席をたつ。
あの会議のあと、二宮さんは外出でそのまま直帰予定になっていた。
やっぱり今日の失敗は失敗だし、部長や櫻井課長や二宮さんに迷惑をかけたことは変わらない。
落ち込むなー…
櫻井課長ともあの後顔を合わせてないし、気まずいな
エレベーターのボタンを押して到着を待つ。
気分が落ち込んでいると、不思議と自然に下を向いてしまう。
気持ち切り替えられない。
エレベーターが到着して、足を踏み出したときだった。
「お、井川。帰るの?」
聞き覚えのある声に慌てて顔を上げると、櫻井課長がいた。
「あ、はい、お疲れ様です」
「気をつけてな」
「はい。…あの、今日は本当にすみませんでした」
とにかく迷惑をかけたことをもう一度お詫びしたくて、少し早口で言葉が出てくる
櫻井課長は少し驚いて、優しく笑った
「いや、俺こそごめんな。ちょっとピリピリしてた。井川に期待してるからこそ、厳しくあたってしまった」
「いえ、ご迷惑をおかけしたことには変わりないので」
「俺もカバーできなくて悪かったよ。
また明日からがんばろう」
「はい」
「じゃ、お疲れ様」と言って課長はフロアに戻った。
課長に許してもらえてよかった。
次こそ期待に応えよう。
肩にかけたバッグを握りしめて、エレベーターに乗った
その後会社を出たものの、なんとなく家に帰る気がしなくて会社の近くをぶらぶらと歩いていた。
失敗、引きずってるな
車も人の通りも多くて、都会の騒がしさが落ち込んだ気持ちを少し和らげてくれるかな、なんて期待してしまう
この大都会で私は
ちっぽけな人間なんだ
そのちっぽけな人間の失敗なんて、ちっぽけすぎてかわいいもんだ
そう考えると、少し楽になる
そろそろ帰ろうかな、と思い始めると
スマホが震えた
松潤からの着信だ。
あの告白された日以来、松潤と連絡をとってなくて少しドキドキする
「もしもし」
『あ、名前?お疲れ』
「お疲れ様。どうしたの?」
『声、聞きたくてさ』
その一言にどきっとする
『…なんてね。恋人っぽかったっしょ?』
…なんだ、びっくりする
「もう、びっくりするじゃん」
『ごめんって。面白そうだったから』
電話の向こうから、楽しそうにはしゃぐ声が聞こえる
「で?どうしたの」
『あ、物件探しの件なんだけど』
「ああ!ありがとう」
『今週の日曜空いてる?内覧できるところもいくつかあって』
「うん、空いてる」
会社の車が使えるから自宅の最寄り駅まで迎えにきてくれること、お昼過ぎに待ち合わせることを話した。
『おっけ。じゃ日曜に』
「うん、忙しいのにありがとね」
『ぜんぜん。…それよりさ、何かあった?
声、元気なくね?』
話そうか迷った。
今日の会社での失敗
「…そうかな?いつも通りだよ」
『わっかりやっす。今どこにいんの?』
「会社の近くだよ」
『ふーん。待ってて。まだ仕事中だからあんま時間取れないけど行くわ』
「えっ、いやいいよそろそろ帰るから」
『ばーか。そんな落ち込んだ声してんのにほっとけるわけないじゃん』
「松潤…」
『本社の近くのスタバ行ける?そこで待ってて。また連絡するから』
「…ありがとう」
電話は切れた。
いつもそうだ。
松潤は私の気持ちの浮き沈みを敏感に感じ取ってはすぐに寄り添ってくれた
松潤は優しい。
勢いがあるから、根底にある優しさを見抜けない人は悪く言うこともあるけど
すべてが良くなるように、って緻密にかつ合理的に考えた上での行動力はいつも脱帽だった
それから15分くらいで松潤に会えた。
転職先は実は近くて、すぐに来れる距離だった
最近はいつも週末に会っていたのもあって、久々に見るスーツ姿にドキッとした
「お待たせ。」
「ううん、すぐ来るかなと思ってコーヒー買っておいたけど、ブラックでよかったかな」
「おっ。あざーす。ブラック正解」
松潤はコーヒーに口をつけた。
「…で?どうしたの?何があったの」
「うん、今日ね…」
今日の一連の出来事を松潤に話す。
途中でうんそれで?とかまじ?とか
相槌を交ぜて話を聞いてくれて、少しずつ気が楽になってきた。
来たはずの来客がいなくて、櫻井課長に咎められたところまで話すと松潤が口を開いた
「…なんかのドラマみたいだな、その展開」
「うん、よくできた台本だね」
「考えたヤツ天才だな」
「そう、森屋さん…すごいね」
「で、なんでその森屋ってヤツがお前に嫌がらせすんの?」
「…私は本当に森屋さんなのか判断がつかないけど…もし本当に森屋さんが仕組んだんだとしたら、二宮さんと一緒に仕事してる私が気にくわないのかな」
「何それ」
「森屋さん、二宮さんのこと狙ってるらしいからなぁ」
「マジでドラマみたい」
「うん、私は仕事を全うしたいだけなのになぁ…」
そう呟くと、松潤がふっと笑った
「名前のさ、そうやって仕事に対して真面目にがんばるのはいいとこだと思うけど」
松潤の優しい目が私を捕らえる
「がんばりすぎ。ちょっと肩の力抜いてみ?」
「…うん」
温かくて優しい口調が私の心を溶かしていく。
「みんな知ってるよ。名前がずるをすることもなく、真面目に結果が出せるようにがんばる奴だって。お前が普通にしてればその森屋ってヤツには負けるわけないっしょ」
「普通、でいいのかな」
「そ。名前らしくいればいいんじゃねーの?」
コーヒーを口に当てたまま、満面の笑みで私を見た。
松潤の言葉で、少しスッキリした。
息を吸って、吐き出すと
気持ちが楽になった。
「…うん、ありがとう。森屋さんが何をどう考えてるかわかんないけど、自然体でいることにするよ」
「そうそう。意識しない、無理しない」
松潤は指を折って数える仕草を始めた
「いつも通りがんばる、俺のこと考える」
最後のひとつに思わず吹き出す
「これで全部うまくいくわ、よかったな!」
今日一番の笑顔を見せる
その営業スマイルにまた笑いが込み上げる
「うん、うまくいく気がして仕方ない」
「だろ?あー走ってきたかいあった」
いつの間にか、さっきまでの落ち込んだ暗い気持ちを感じなくなっていた
「…いつもありがとう、松潤」
「いーえ。ご用命であればいつでも」
その笑顔が、ほっとさせてくれる。
「じゃ、そろそろ戻るわ」
「うん、私も出るよ」
そのまま2人で店を出る。初夏に向けて暖かさを増した風を感じる。
「じゃ、また日曜に」
「うん。忙しいのに本当にありがとう」
「気にすんなって。気を付けて帰れよ」
「はーい」
じゃあね、と声をかけようとしたとき、
松潤が口を開く。
「それと、あの話の件、また聞かせて」
口元は笑ってるけど、目が真剣だ
さっきまでの笑顔とはまったく違う表情に、胸が締め付けられる
「…うん、時間、もらっててごめんね?
ちゃんと、返事します」
「はいよ。立ち直ってからな」
「松潤のおかげで立ち直れたよ。ありがと」
「そりゃよかった。」
松潤は名残惜しそうに「じゃあな」と言って都会の波に消えていった
笑顔で見送って、立ち止まったまま考える
松潤が彼氏だったら。
きっと今日みたいに、落ち込む度支えてくれる。
仕事への姿勢も尊敬できる。
笑わせてくれる。
いいところしか思い付かない
何一つ文句ない
なのになんで、本当にいいのかなって引き留められる気持ちがあるんだろう
二宮さんが頭を過るから?
…やっぱり、もう少し時間をかけて考えよう