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その日は資料の作り直しで、ずっと二宮さんが付き合ってくれた。
昨日の作業の繰り返しで時間もそこまでかからず、二宮さんチェックもあったおかげでより精度の高いものができた。
「付き合っていただいてありがとうございました」
「いーえ。お疲れさん」
今回はバックアップもとってあるし、同じ失敗は繰り返さない
帰る支度をして、フロアに出る。
エレベーターに乗ると二宮さんは他のフロアのボタンを押した
「帰らないんですか?」
「ちょっと寄るとこあるんでね。
守衛室で退出のサインだけしといて」
「はい、わかりました」
「じゃ」
二宮さんは鞄を肩にかけ、もう片方の手をポケットに入れてスタスタと行ってしまった
「はい、お疲れ様です」
ここのフロア、何が入ってるんだっけ?
社内ヘルプデスクだったかな?
二宮さんが真っ直ぐ家に帰らないなんて、珍しいな…
疑問に思いながらも、守衛室に寄って、会社を出た
「よくできてる。資料、問題ないからこのまま会議準備に入ろう」
翌日、朝イチで作成した資料の課長のチェックを受け、一発OKが出てほっとした。
会議は14:00からだから、13:30に会場設営になる。
「ありがとうございます」
「二宮は俺と一緒に会議室で陪席。井川は自席で電話会議繋いでおいて」
「はい」
「俺と二宮は会議中パソコン見れないから、追加の資料求められたら井川がファイルサーバからひっぱってきて会議用フォルダに入れるなり柔軟に対応してほしい」
「わかりました」
今日の会議は営業系各部、人事部、そして私たちがいる経営企画部の部長以上が集まって例の次年度以降の体制見直しの議論を図る場になっている。
プロジェクトの中でもかなり重要な要素を占める議題で、今後の検討を大きく左右するものでもあるから、
会議主催の私たちはいつもより少しピリピリしている。
二宮さんもいつも以上に真剣な顔を見せている
お昼休みが終わって、会議準備に入る。
櫻井課長と二宮さんでデスク配置やAV機器の設定をして、私は会議室の大きなモニタと各席のタブレット端末に資料が表示されるか確認していた
「資料、表示問題ないです」
「ありがとう。じゃ井川は電話会議でスタンバイして」
「はい」
会議室を出て、自席に戻る。
電話会議システムにログインして、自分の社内携帯に接続する。
会議室の電話会議マイクは二宮さんの上着のポケットに入っていて、二宮さんの声を拾う。
接続確認のために一度電話すると、二宮さんが応答した。
「井川です。声、聞こえます?」
二宮さんは私の音声をイヤホンで聞いている。
『聞こえてるよー。俺の声も聞こえるっしょ?』
「はい、大丈夫です。じゃ、音声ミュートにしときますね」
『はいよ』
二宮さんから指示が出されない限り、私は発声しない。
ミュートボタンを押して、会議が始まるのを待つ。
あと10数分かな
『そういえばニノさぁ、どこに住んでるんだっけ』
二宮さん、音声マイク入れっぱなしだ
会話盗み聞きしてるみたいで罪悪感だけど、仕方ないか
『今っすか?こっから電車で20分くらいのとこですよ』
『近くていいね。家賃高い?』
『翔さんの稼ぎなら余裕ってとこですかね』
『ふはは。じゃ別荘にでもしようかな』
楽しそうな談笑が聞こえる。
そういえば、二宮さんと櫻井課長って同じ大学出身って言ってたっけ
その頃から仲いいのかな、フランクに話してる
『そうだ、仕事の話なんだけど』
『はい』
『…人事部の動きが怪しい』
『と言うと?』
『プロジェクト室に人員を割きすぎじゃないかと言ってるらしい。現場に人をまわせ、と』
『へぇ…そうなんすね』
『人事部長はプッシュが強いタイプだ。隙があればすぐ突いてくるだろう』
二宮さんが腕を組んで櫻井課長の目線をダイレクトに見ている想像ができる。
『特に若手は人事部長の隙の突きどころだ。井川に狙いを定めるかもしれない』
井川、という私の名前を聞いて、どきっとする。
櫻井課長、私が聞いてるの知らないのかな
イヤホンをはずそうかと迷ったけど、続きが気になる
『つまり?』
『こちらが何か失態を犯すと、すべて責任を井川に押し付けるとか平気でやるから。昨日の資料の件みたいなことがあったらまずいぞ』
すっと寒気がした。
誰かに鋭いナイフを向けられているような、
漠然とした不安が襲ってくる
偉い人たちは手段を選ばないんだ
その時、二宮さんが静かに口を開いた
『大丈夫っすよ。そんなことさせませんから。俺があいつ守りますよ』
さっきの恐怖がすーっと消えて、胸がとくん、と鳴った。
『ふっ…頼もしいな。助かるよ、お前と井川をペアにしてよかった』
『俺とアイツの仕事は誰にも邪魔させませんよ』
そこで、コンコンとノックの音が遠くで聞こえた。
部長陣が到着のようだ
二宮さんと櫻井課長の声も仕事モードに戻る
…さっきの二宮さん、かっこよかった
一人デスクでぼーっと考える
守る、なんて
仕事ばかりで戦場にいるような私に、守るなんて縁の遠い言葉だ
この嬉しいようなくすぐったい気持ちはなんだろう
二宮さんのたまに見せる強くて優しいところは反則だ
不意打ちだからこそどきっとする
一人でドキドキしていると、会議が始まったようでピンと張り詰めた空気がイヤホン越しにこちらにも伝わってくる
ダメだ、集中しよう。
二宮さんのさっきの一声が頭から離れないけど、イヤホンから聞こえる会議に意識を向けた。
会議も中盤になってきた頃、先輩トントン、と肩を叩かれた。
慌ててイヤホンを片方はずす。
「井川さん、受付から連絡なんだけど来客来てるって」
「え?来客ですか?私、そんな予定今日ないと思うのですが…」
「なんでも、鈴木さんってお名前とかで至急とのことなんだけど…電話会議中?」
「はい、どうしようかな…」
来客を待たせる訳にはいかないし、二宮さんに断って一瞬で確認しにいこう
「先輩、ありがとうございます。対応しときます」
先輩は「よろしくね」と言って席に戻った
「二宮さん、すみません」
電話会議のミュートを解除して、二宮さんに話しかける
「来客が来たようで、ちょっと離席します」
『了解、すぐ戻ってこい』
「はい」
電話会議のイヤホンと社内携帯を置いて、一階の受付に向かった
イヤホンから、何か聞こえた気がしたけど来客を待たせる訳にはいかなくてそのまま席を離れた
「え?いない?」
一階に着いて、受付の人に確認するとそもそも鈴木さんなんて来ていないし、私を呼び出してもないらしい。
「はい、ここ10分程ご来客の方は一人もお見えになってないですね」
「そんな…誰だったんだろう」
受付の人にお礼を言って自分のフロアに戻る
会議を抜け出してきたのに、とんだタイムロスだったな
会議、何事もなく進んでればいいんだけど
自席に戻って、イヤホンをつけて会議の進み具合を確認しようとすると、怒号が聞こえた
昨日の作業の繰り返しで時間もそこまでかからず、二宮さんチェックもあったおかげでより精度の高いものができた。
「付き合っていただいてありがとうございました」
「いーえ。お疲れさん」
今回はバックアップもとってあるし、同じ失敗は繰り返さない
帰る支度をして、フロアに出る。
エレベーターに乗ると二宮さんは他のフロアのボタンを押した
「帰らないんですか?」
「ちょっと寄るとこあるんでね。
守衛室で退出のサインだけしといて」
「はい、わかりました」
「じゃ」
二宮さんは鞄を肩にかけ、もう片方の手をポケットに入れてスタスタと行ってしまった
「はい、お疲れ様です」
ここのフロア、何が入ってるんだっけ?
社内ヘルプデスクだったかな?
二宮さんが真っ直ぐ家に帰らないなんて、珍しいな…
疑問に思いながらも、守衛室に寄って、会社を出た
「よくできてる。資料、問題ないからこのまま会議準備に入ろう」
翌日、朝イチで作成した資料の課長のチェックを受け、一発OKが出てほっとした。
会議は14:00からだから、13:30に会場設営になる。
「ありがとうございます」
「二宮は俺と一緒に会議室で陪席。井川は自席で電話会議繋いでおいて」
「はい」
「俺と二宮は会議中パソコン見れないから、追加の資料求められたら井川がファイルサーバからひっぱってきて会議用フォルダに入れるなり柔軟に対応してほしい」
「わかりました」
今日の会議は営業系各部、人事部、そして私たちがいる経営企画部の部長以上が集まって例の次年度以降の体制見直しの議論を図る場になっている。
プロジェクトの中でもかなり重要な要素を占める議題で、今後の検討を大きく左右するものでもあるから、
会議主催の私たちはいつもより少しピリピリしている。
二宮さんもいつも以上に真剣な顔を見せている
お昼休みが終わって、会議準備に入る。
櫻井課長と二宮さんでデスク配置やAV機器の設定をして、私は会議室の大きなモニタと各席のタブレット端末に資料が表示されるか確認していた
「資料、表示問題ないです」
「ありがとう。じゃ井川は電話会議でスタンバイして」
「はい」
会議室を出て、自席に戻る。
電話会議システムにログインして、自分の社内携帯に接続する。
会議室の電話会議マイクは二宮さんの上着のポケットに入っていて、二宮さんの声を拾う。
接続確認のために一度電話すると、二宮さんが応答した。
「井川です。声、聞こえます?」
二宮さんは私の音声をイヤホンで聞いている。
『聞こえてるよー。俺の声も聞こえるっしょ?』
「はい、大丈夫です。じゃ、音声ミュートにしときますね」
『はいよ』
二宮さんから指示が出されない限り、私は発声しない。
ミュートボタンを押して、会議が始まるのを待つ。
あと10数分かな
『そういえばニノさぁ、どこに住んでるんだっけ』
二宮さん、音声マイク入れっぱなしだ
会話盗み聞きしてるみたいで罪悪感だけど、仕方ないか
『今っすか?こっから電車で20分くらいのとこですよ』
『近くていいね。家賃高い?』
『翔さんの稼ぎなら余裕ってとこですかね』
『ふはは。じゃ別荘にでもしようかな』
楽しそうな談笑が聞こえる。
そういえば、二宮さんと櫻井課長って同じ大学出身って言ってたっけ
その頃から仲いいのかな、フランクに話してる
『そうだ、仕事の話なんだけど』
『はい』
『…人事部の動きが怪しい』
『と言うと?』
『プロジェクト室に人員を割きすぎじゃないかと言ってるらしい。現場に人をまわせ、と』
『へぇ…そうなんすね』
『人事部長はプッシュが強いタイプだ。隙があればすぐ突いてくるだろう』
二宮さんが腕を組んで櫻井課長の目線をダイレクトに見ている想像ができる。
『特に若手は人事部長の隙の突きどころだ。井川に狙いを定めるかもしれない』
井川、という私の名前を聞いて、どきっとする。
櫻井課長、私が聞いてるの知らないのかな
イヤホンをはずそうかと迷ったけど、続きが気になる
『つまり?』
『こちらが何か失態を犯すと、すべて責任を井川に押し付けるとか平気でやるから。昨日の資料の件みたいなことがあったらまずいぞ』
すっと寒気がした。
誰かに鋭いナイフを向けられているような、
漠然とした不安が襲ってくる
偉い人たちは手段を選ばないんだ
その時、二宮さんが静かに口を開いた
『大丈夫っすよ。そんなことさせませんから。俺があいつ守りますよ』
さっきの恐怖がすーっと消えて、胸がとくん、と鳴った。
『ふっ…頼もしいな。助かるよ、お前と井川をペアにしてよかった』
『俺とアイツの仕事は誰にも邪魔させませんよ』
そこで、コンコンとノックの音が遠くで聞こえた。
部長陣が到着のようだ
二宮さんと櫻井課長の声も仕事モードに戻る
…さっきの二宮さん、かっこよかった
一人デスクでぼーっと考える
守る、なんて
仕事ばかりで戦場にいるような私に、守るなんて縁の遠い言葉だ
この嬉しいようなくすぐったい気持ちはなんだろう
二宮さんのたまに見せる強くて優しいところは反則だ
不意打ちだからこそどきっとする
一人でドキドキしていると、会議が始まったようでピンと張り詰めた空気がイヤホン越しにこちらにも伝わってくる
ダメだ、集中しよう。
二宮さんのさっきの一声が頭から離れないけど、イヤホンから聞こえる会議に意識を向けた。
会議も中盤になってきた頃、先輩トントン、と肩を叩かれた。
慌ててイヤホンを片方はずす。
「井川さん、受付から連絡なんだけど来客来てるって」
「え?来客ですか?私、そんな予定今日ないと思うのですが…」
「なんでも、鈴木さんってお名前とかで至急とのことなんだけど…電話会議中?」
「はい、どうしようかな…」
来客を待たせる訳にはいかないし、二宮さんに断って一瞬で確認しにいこう
「先輩、ありがとうございます。対応しときます」
先輩は「よろしくね」と言って席に戻った
「二宮さん、すみません」
電話会議のミュートを解除して、二宮さんに話しかける
「来客が来たようで、ちょっと離席します」
『了解、すぐ戻ってこい』
「はい」
電話会議のイヤホンと社内携帯を置いて、一階の受付に向かった
イヤホンから、何か聞こえた気がしたけど来客を待たせる訳にはいかなくてそのまま席を離れた
「え?いない?」
一階に着いて、受付の人に確認するとそもそも鈴木さんなんて来ていないし、私を呼び出してもないらしい。
「はい、ここ10分程ご来客の方は一人もお見えになってないですね」
「そんな…誰だったんだろう」
受付の人にお礼を言って自分のフロアに戻る
会議を抜け出してきたのに、とんだタイムロスだったな
会議、何事もなく進んでればいいんだけど
自席に戻って、イヤホンをつけて会議の進み具合を確認しようとすると、怒号が聞こえた